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萎
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しぼ
ふりがな文庫
“
萎
(
しぼ
)” の例文
見巧者
(
みごうしゃ
)
をはじめ、芸人の仲間にも、あわれ梨園の眺め唯一の、白百合一つ
萎
(
しぼ
)
んだりと、声を上げて惜しみ悼まれたほどのことである。
葛飾砂子
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
而
(
しか
)
してその妖巫の眼力が邪視だ。本邦にも、
飛騨
(
ひだ
)
の
牛蒡
(
ごぼう
)
種てふ家筋あり、その男女が悪意もて
睨
(
にら
)
むと、人は申すに及ばず菜大根すら
萎
(
しぼ
)
む。
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
萎
(
しぼ
)
んだ軽気球が水素ガスを吹込まれると満足げに
脹
(
ふく
)
れあがつて、大きな影を落しながら、ゆるゆると昇つて行くのを眺めたり
日本三文オペラ
(新字旧仮名)
/
武田麟太郎
(著)
今朝は
臘梅
(
ろうばい
)
の花が
萎
(
しぼ
)
んでいるのに心づいて、
侘助椿
(
わびすけつばき
)
に活けかえようと思って行ったら、あの時と同じ所にあの鍵が落ちていた。
鍵
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
私は
何
(
なん
)
に限らず、例えば美しく咲く花を見れば、これ散り
萎
(
しぼ
)
む時の哀れさを思わせるために咲いているのではないかと思う。
監獄署の裏
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
▼ もっと見る
小豆
(
あずき
)
を板の上に遠くでころがすような雨の音が朝から晩まで聞えて、それが
小休
(
おや
)
むと湿気を含んだ風が木でも草でも
萎
(
しぼ
)
ましそうに寒く吹いた。
カインの末裔
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
「七人の子をもてば大概の女の容色は
萎
(
しぼ
)
むものなのに、あの人は
頸
(
くび
)
にも、耳の下のあたりにさえ、衰えをも見せていない」
大橋須磨子
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
幾人の子を生み、幾人の子を
亡
(
な
)
くして、貧苦の中に耐えてきた肉体か、その姿はいかにも小さい。そして
萎
(
しぼ
)
みきっている。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
花大に色ふかく、陰りたる日は晩までも
萎
(
しぼ
)
まず。あさがほの名にこそたてれ此花は露のひるまもしをれざりけりとよみ候。
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
それに、
柔
(
やは
)
らかくて同時に、生き/\としてきび/\したあの人特有のあの聲だ。それが私の
萎
(
しぼ
)
んだ心を明るくする。その中に生命を吹き込む。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
樹木もすべて死んだやうで、寒気の強い朝などには、厚ぼつたい常磐木の葉ですらわるく
萎
(
しぼ
)
んだやうになつてゐる。
樹木と空飛ぶ鳥
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
傍
(
わき
)
に「
是
(
これ
)
は
萎
(
しぼ
)
み
掛
(
か
)
けた所と思い玉え。
下手
(
まず
)
いのは病気の
所為
(
せい
)
だと思い玉え。
嘘
(
うそ
)
だと思わば
肱
(
ひじ
)
を突いて描いて見玉え」
子規の画
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ドアが開くと同時に白い
萎
(
しぼ
)
んだ顔を入ってゆく自分に向け、歩くから、椅子にかけるまで眼もはなさず追って、しかし、椅子にかけている体は崩さず
刻々
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
東天金星輝き、下弦の月、白馬峯頭に
白毫
(
びゃくごう
)
の光りを添う。白馬連山、南国の果実の色を染め、ようやく覚めるや、空も紫気を払って碧光冴え、月
萎
(
しぼ
)
んで蒼白。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
(
足許
(
あしもと
)
を見廻して)この黄色な花、何という色の褪せたような花だろう、この白ちゃけた沙原に咲いて、沈黙の
裡
(
うち
)
に花を開いて、やがては
萎
(
しぼ
)
んでしまう花だもの
日没の幻影
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
湯に
馴染
(
なじ
)
めそうには見えず、花の
萎
(
しぼ
)
むような気の衰えが感じられるのだったが、湯を控えめにしていても、血の気の薄くなった
躰
(
からだ
)
に、
赤城
(
あかぎ
)
おろしの風も冷たすぎ
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
露が先に地に落ちるか、花が先に
萎
(
しぼ
)
んでしまうか、どちらにしても所詮は落ち、萎むべきものである。
現代語訳 方丈記
(新字新仮名)
/
鴨長明
(著)
わざとらしくてこの人が携えて来たのでもないのに、よく露も落とさずにもたらされたものであると思って、中の君がながめ入っているうちに見る見る
萎
(
しぼ
)
んでいく。
源氏物語:51 宿り木
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
賑
(
にぎ
)
やかな老紳士は息子を連れて、モナミを出て行った。あとでかの女は気が
萎
(
しぼ
)
んで、自分が老紳士にいった言葉などあれや、これやと、神経質に思いかえして見た。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
「まあいいや。それは思い違いと言うもんだ」と、その男は風船玉の
萎
(
しぼ
)
む時のように、張りを
弛
(
ゆる
)
めた。
淫売婦
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
もしあなたの心に恋が生じたことが聖旨であるならば、それを私が
萎
(
しぼ
)
ませようとすることは不謙遜でしょう。人間の純なやさしい心の芽を乾らばしてはなりません。
愛と認識との出発
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
青田
(
あをた
)
の
畦畔
(
くろ
)
には
處々
(
しよ/\
)
に
萱草
(
くわんさう
)
が
開
(
ひら
)
いて、
田
(
た
)
の
草
(
くさ
)
を
掻
(
か
)
くとては
村落
(
むら
)
の
少女
(
むすめ
)
が
赤
(
あか
)
い
帶
(
おび
)
を
暑
(
あつ
)
い
日
(
ひ
)
に
燃
(
も
)
やさない
日
(
ひ
)
でも、
萎
(
しぼ
)
んでは
開
(
ひら
)
いて
朱杯
(
しゆはい
)
の
如
(
ごと
)
く
點々
(
てん/\
)
と
耕地
(
かうち
)
を
彩
(
いろど
)
るのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
わが少壯の心は、かの
含羞草
(
ねむりぐさ
)
といふものゝ葉と同じく
萎
(
しぼ
)
み卷きて、
曩
(
さき
)
に一たび死の境界に臨みてよりこのかた、死の天使の接吻の痕は、猶明かに我額の上に存せり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
ですから済みませんが僕の
室
(
へや
)
を換えて下さい。イエイエ。口実じゃ無いのです。僕はソンナ恐ろしいお茶の中毒患者になって、青春を
萎
(
しぼ
)
ましてしまいたくないのです。
狂人は笑う
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
非常に暑い日盛りに、枯れないばかりに
萎
(
しぼ
)
んだ植木に水をやらうとすると、次のやうな事が起るね。
科学の不思議
(新字旧仮名)
/
ジャン・アンリ・ファーブル
(著)
若し権力をもって得たるものは、
瓶鉢中
(
へいはつちゅう
)
の花の如く、その
根
(
ね
)
植
(
う
)
えず、その
萎
(
しぼ
)
むこと立って待つべし
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
しかし僕の学才は矢張り
莟
(
つぼみ
)
のまゝで
萎
(
しぼ
)
む運命を持っていた。人の
所為
(
せい
)
にするのではないが、本科に進んでから未だ学校が始まらない中に、菊太郎君はもう決心が生返って
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
それはジャムにつぶされ、そこの自然愛好者の味覚を満足させる運命にあるのである。同様に肉屋は
草原
(
プレーリー
)
の草から
野牛
(
バイスン
)
の舌を掻き取り、折られて
萎
(
しぼ
)
む植物をかえり見ない。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
母は胸の皮を引張って来て(それはいつの間にか、
萎
(
しぼ
)
んだ乳房のようにたるんでいた)一方の腫物を一方の腫物のなかへ、ちょうど
釦
(
ボタン
)
を
嵌
(
は
)
めるようにして嵌め込んでいった。
ある心の風景
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
わたしたちのうえに
朧
(
おぼろ
)
げに
綻
(
ほころ
)
びかけた夢の華はそれっきり
萎
(
しぼ
)
んでしまったのである。時は流れるという言葉を、しみじみ思う。イサベルの
訃
(
ふ
)
を聞いてからも、すでに数年になる。
暴風雨に終わった一日
(新字新仮名)
/
松本泰
(著)
折角そうしてくれても、翌日になって見れば、その花が
萎
(
しぼ
)
んでいるかも知れない。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
冷たい水に
葛
(
くず
)
の花の流るるをくみ、また
萎
(
しぼ
)
まぬ対岸の月見草の野を望み、それからまた第二の家の横手を帰ってきたが、貧富の差はあっても家の作りはまったく一つであることを知った。
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
色の一つのものだけが一時に咲き出して、一時に
萎
(
しぼ
)
む。さうして、凡一月は、後から後から替つた色のが匂ひ出て、若夏の青雲の下に、禿げた岩も、枯れた柴木山も、はでなかざしをつける。
死者の書:――初稿版――
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
尼も塩竈街道に植えられて、さびしく咲いて、寂しく
萎
(
しぼ
)
んだ白菊であった。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
一つの花が咲き、次の
蕾
(
つぼみ
)
が咲き、株上のいくつかの花が残らず咲き
尽
(
つ
)
くすまで見て、
二十日
(
はつか
)
もかかったというのであろう。いくら牡丹でも、一
輪
(
りん
)
の花が
二十日
(
はつか
)
間も
萎
(
しぼ
)
まず咲いているわけはない。
植物知識
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
米良はソーマの花が
萎
(
しぼ
)
むのを感じた。イサックが悲しげに彼に握手して
地図に出てくる男女
(新字新仮名)
/
吉行エイスケ
(著)
堰近くにあったのだが、どうだ良い匂いがするだろう。タバヨス
木精
(
レセタ
)
蓮と云う熱帯種でね。此の花は夜開いて昼
萎
(
しぼ
)
むのだよ。そして、閉じられた花弁の中に蛭がいたとすると、犯人が池の向岸で何を
後光殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
加徒力
(
カトリック
)
教の教義が極端にあらわれているんだが、それの結婚の尊重が度を過ごして、決して離婚ということを許さない
掟
(
おきて
)
になってるので、間違って咲いた神の花はどうにも
萎
(
しぼ
)
みようなくて往生する。
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
今は見る影もなく
萎
(
しぼ
)
んで、口もろくにきけないような有様です。
銭形平次捕物控:036 八人芸の女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
朝顔は咲きて
萎
(
しぼ
)
みてくりかへしころりと鉢に散りにけるかな
小熊秀雄全集-01:短歌集
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
朝顔の
萎
(
しぼ
)
みてちりし日かげをば見て見ぬごとし。
東京景物詩及其他
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
けっして
萎
(
しぼ
)
まないから、便利なこともあった。
幽霊船の秘密
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
チューリップひとたび
萎
(
しぼ
)
めば開かない。
ルバイヤート
(新字新仮名)
/
オマル・ハイヤーム
(著)
世をば
萎
(
しぼ
)
み去りて、——水は海に。
独絃哀歌
(旧字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
壺
(
つぼ
)
には、
萎
(
しぼ
)
みゆくままに
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
咲く間を待たで
萎
(
しぼ
)
むらむ
藤村詩抄:島崎藤村自選
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
雲は
焚
(
や
)
け、草は
萎
(
しぼ
)
み、水は
涸
(
か
)
れ、人は
喘
(
あえ
)
ぐ時、一座の劇は
宛然
(
さながら
)
褥熱
(
じょくねつ
)
に対する氷の如く、十万の市民に、一
剤
(
ざい
)
、清涼の気を
齎
(
もた
)
らして
剰余
(
あまり
)
あつた。
伯爵の釵
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
傍
(
わき
)
に「是は
萎
(
しぼ
)
み
掛
(
か
)
けた所と思ひ玉へ。
下手
(
まづ
)
いのは病氣の
所爲
(
せゐ
)
だと思ひ玉へ。嘘だと思はゞ肱を突いて
描
(
か
)
いて見玉へ」
子規の画
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
もし誰かが、一枚の板を切窓の外から打ちつけて、獄人どもからこの一つの愉快を奪ったら、それだけでも、中の人間はみな自然
萎
(
しぼ
)
み
死
(
し
)
んでしまうだろう。
茶漬三略
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
享和二年
戌
(
いぬの
)
四月十六日と十八日との中間に
真野敬勝
(
まのけいしよう
)
ぬし漳州の牽牛花の種を給ひける、こはやまとのとはことにて、夕方までも
萎
(
しぼ
)
まで花もいとよろしと也
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
萎
常用漢字
中学
部首:⾋
11画
“萎”を含む語句
萎縮
萎靡
萎々
打萎
足萎
萎氣
濡萎
萎微
萎気
気萎
萎枯
萎縮腎
凋萎
萎黄病
萎靡凋落
萎靡因循
萎靡振
身萎
萎靡沈滞
萎靡沈衰
...