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窘
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たしな
ふりがな文庫
“
窘
(
たしな
)” の例文
(……至らぬぞ、至らぬぞ。あのくらいの働きで有頂天になり、その図にのッて、一本
窘
(
たしな
)
められるなどは……われながら未熟至極)
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
とお母さんが
窘
(
たしな
)
めた。芳夫さんは
里
(
さと
)
の
惣領息子
(
そうりょうむすこ
)
だ。学生時代から家へは
能
(
よ
)
くやって来るので、殊に遠慮のない間柄になっている。
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
などと、美奈子の心を察するやうに、忠勤ぶつた蔭口を利く時などには、美奈子は、その女中をそれとなく
窘
(
たしな
)
めるのが常だつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
「どうしたもんだおとつゝあは、お
平
(
ひら
)
の
盛換
(
もりけ
)
えするもな
有
(
あ
)
んめえな、
馬鈴薯
(
じやがいも
)
は
前
(
めえ
)
に
幾
(
いく
)
らでも
有
(
あ
)
んのに」おつぎは
更
(
さら
)
に
窘
(
たしな
)
めるやうに
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
ナアニ……翁はその小さい声の主をちゃんと知っていたのであるが、特に
窘
(
たしな
)
めるために故意とこうした意地の悪い態度を
執
(
と
)
ったものである。
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
▼ もっと見る
こつちに隙があるからだと
窘
(
たしな
)
めてやりたいほどですのに、若しそんなことでも云はうものなら、向うは、きつとわたくしに
顔
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
栗栖は
仄
(
ほの
)
かな六感が働き、まさかとは思ったが、いわば小娘の銀子なので、その心理状態は測りかね、
窘
(
たしな
)
めるように言った。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
と石崎爺さんは、
窘
(
たしな
)
めるやうに
態
(
わざ
)
と
頭
(
かぶり
)
をふつてみせた。滑つこい頭の上では、小さな丁髷が魚のやうに尻つ尾を掉つてゐた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
こう口先きだけは
窘
(
たしな
)
めるように云うても眼は笑ってお初のぼってりとして胸もとの汗ばんだ
膚
(
はだえ
)
をこっそりと愉しんでいる。
神楽坂
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
「まあ、そんなに召しあがってようござりますか」と、おしおは注ぎかけた銚子を
控
(
ひか
)
えて、思わず
窘
(
たしな
)
めるように言った。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
芸者は
窘
(
たしな
)
めるように、ちょいと僕を見て、僕の右前の方の人に杯を差した。
笑談
(
じょうだん
)
ではない。笑談を
粧
(
よそお
)
ってもいない。右前にいたのは某教授であった。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「圭一郎もそないな罰當りを言や今に掘立小屋に住ふやうにならうぞ」と父は殆ど泣いて彼の不心得を
諫
(
いさ
)
め
窘
(
たしな
)
めた。
崖の下
(旧字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
部屋の中の火気に蒸されて、一層血色の
鮮
(
あざやか
)
になった初子が、ちょっと
睨
(
ね
)
める真似をしながら、こう弟を
窘
(
たしな
)
めると、民雄はまだ俊助の手をつかまえたまま
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
其
(
その
)
云
(
い
)
ひ
方
(
かた
)
が、
自分達
(
じぶんたち
)
の
淋
(
さみ
)
しい
生涯
(
しやうがい
)
を、
多少
(
たせう
)
自
(
みづか
)
ら
窘
(
たしな
)
める
樣
(
やう
)
な
苦
(
にが
)
い
調子
(
てうし
)
を、
御米
(
およね
)
の
耳
(
みゝ
)
に
傳
(
つた
)
へたので、
御米
(
およね
)
は
覺
(
おぼ
)
えず
膝
(
ひざ
)
の
上
(
うへ
)
の
反物
(
たんもの
)
から
手
(
て
)
を
放
(
はな
)
して
夫
(
をつと
)
の
顏
(
かほ
)
を
見
(
み
)
た。
門
(旧字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
「こんなこッちゃあ
可
(
い
)
かん。」と自から
窘
(
たしな
)
めるがごとく
呟
(
つぶや
)
いて、
洋燈
(
ランプ
)
を見て、再び机に向った時、
室
(
ま
)
が広いので灯も届かず、薄暗い
古襖
(
ふるぶすま
)
の外に
咳
(
しわぶ
)
く声して
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「下手だなあ、それで芸人の泣き方といえるか」と
窘
(
たしな
)
めたり、口では終えなくて箸を逆持ちにした太い方で少年のわたしの小腕をぴしりと打つときもあり
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
ふき子にきつく
窘
(
たしな
)
められた。不幸な嫁入り先から戻って来てそのような暮しをしている岡本から見ればふき子も陽子も仕合わせすぎて腹立たしい事もあろう。
明るい海浜
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「學校の戻りに遊んでるんやおまへん、ちやんと家へ戻つて、『只今』をしてから遊びに行きなはらんかいな。」と、お光は小さい娘の顏を見詰めつゝ
窘
(
たしな
)
めた。
兵隊の宿
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
お勢は、まじまじと茂太郎の顔を眺めて、
窘
(
たしな
)
めるようにいいますと、茂太郎は恥かしそうに、また
怖気
(
おじけ
)
づいているように、がんりきの後ろへ隠れて返事をしない。
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
前回参看※文三は既にお勢に
窘
(
たしな
)
められて、憤然として部屋へ
駈戻
(
かけもど
)
ッた。さてそれからは独り
演劇
(
しばい
)
、
泡
(
あわ
)
を
噛
(
かん
)
だり、
拳
(
こぶし
)
を握ッたり。どう考えて見ても心外でたまらぬ。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
こう老武士の
窘
(
たしな
)
めるような声が、浪之助の耳へ聞こえてきたので、老武士の方へ眼を移して見た。
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ややともすれば二人の妹からあべこべに
窘
(
たしな
)
められると云う風なのであるが、そんな調子であるから、病気の看護に限らず、
総
(
す
)
べて子供をしつけることには
甚
(
はなは
)
だ不向きで
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
その悲鳴を寧ろ厳しく
窘
(
たしな
)
めるために、唇を顫はせ乍ら、ムッとして歩き進んで行くのであつた。
蝉:――あるミザントロープの話――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
大七の場、金五郎の
窘
(
たしな
)
めを上手にてきき居て
切迫
(
せっぱ
)
つまりしところにて、百両包を投げ出し「
何
(
なん
)
にも言はずとこの金を、そつくりかへしておしまいなせえ」のところ
応
(
こた
)
へたり。
両座の「山門」評
(新字旧仮名)
/
三木竹二
(著)
と
窘
(
たしな
)
めるような声が切れ切れに聞えた。どうやら一人の方が、この穴蔵の中を覗こうとしたところを、老人にエイッと尻を突かれて、穴蔵の中に転げこんだものらしかった。
深夜の市長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
妾は定まる
雄
(
おっと
)
あれば、更に
承引
(
うけひ
)
く色もなく、常に
強面
(
つれな
)
き返辞もて、かへつて
他
(
かれ
)
を
窘
(
たしな
)
めしが。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
「貴女に訊いて居るんじゃない」巡査は女を
窘
(
たしな
)
めた。而して再び同じ問いを彼に発した。
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
「御免下さい、通りすがり、思わず名香の匂いに引き寄せられました。お
窘
(
たしな
)
みの程も奥床しい、近頃不躾乍ら、いささか用意の香も御座います。お合せ下されば仕合せに存じます」
新奇談クラブ:05 第五夜 悪魔の反魂香
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
己は細君の余り思慮のないのを
窘
(
たしな
)
めるやうに、成るたけ威厳を保つやうに云つた。
鱷
(新字旧仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
かれその軍、悉に破れて逃げ
散
(
あら
)
けぬ。ここにその逃ぐる軍を追ひ
迫
(
せ
)
めて、
久須婆
(
くすば
)
の
渡
(
わたり
)
一一
に到りし時に、みな迫めらえ
窘
(
たしな
)
みて、
屎
(
くそ
)
出でて、
褌
(
はかま
)
に懸かりき。かれ
其地
(
そこ
)
に名づけて
屎褌
(
くそはかま
)
といふ。
古事記:02 校註 古事記
(その他)
/
太安万侶
、
稗田阿礼
(著)
石田氏は賢夫人に、そこでよけいな口をきくことはない、と
窘
(
たしな
)
めておいて
我が家の楽園
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「いや、そういう童話めいた夢ならば、改めてゆっくりと見てもらうことにしよう——今度は監房の中でだ」と熊城が毒々しげに
嘯
(
うそぶ
)
くと、法水はそれを
窘
(
たしな
)
めるように見てから、伸子に云った。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
前の二人を
窘
(
たしな
)
めるやうに言つて、その会話に加つた。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
「十八公麿のすがたが見えぬとて、そう、
噪
(
さわ
)
ぎたてることはない」侍女のことばを
窘
(
たしな
)
めて、彼女は、静かに良人の枕元を離れた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
などと、美奈子の心を察するように、忠勤ぶった
蔭口
(
かげぐち
)
を利く時などには、美奈子は、その女中をそれとなく
窘
(
たしな
)
めるのが常だった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
勘次
(
かんじ
)
は
何
(
ど
)
れ
程
(
ほど
)
それが
激
(
げき
)
した
心
(
こゝろ
)
に
忌々敷
(
いま/\しく
)
くても
其
(
そ
)
れを
窘
(
たしな
)
めて
叱
(
しか
)
つて
遣
(
や
)
る
何
(
なん
)
の
手
(
て
)
がかりも
有
(
も
)
つて
居
(
を
)
らぬ。三
人
(
にん
)
は
只
(
たゞ
)
默
(
だま
)
つて
歩
(
ある
)
いた。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
と台所へ
窘
(
たしな
)
めに行った。何かというと
覗見
(
すきみ
)
をして厭な人ねとも言えない。尤ももうお昼の支度の出来る頃である。
好人物
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
その口吻には、嫉妬を起してもらっちゃあ此方が迷惑をするからなあ、と暗に夫人を
窘
(
たしな
)
めておいて、その心に釘を一本ぶちこんでいるようなところがある。
女心拾遺
(新字新仮名)
/
矢田津世子
(著)
「何でもないじゃないか」とむす子はフランス語で女たちを
窘
(
たしな
)
めて置いて、今度はかの女に日本語でいった。
母子叙情
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
その云い方が、自分達の
淋
(
さみ
)
しい
生涯
(
しょうがい
)
を、多少
自
(
みずか
)
ら
窘
(
たしな
)
めるような
苦
(
にが
)
い調子を、御米の耳に伝えたので、御米は覚えず
膝
(
ひざ
)
の上の反物から手を放して夫の顔を見た。
門
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
小野田がまだ全く忘れることのできないその女のことを口にすると、お島はそう言って
窘
(
たしな
)
めたが、別れてからも、小野田に執着を持っている女を不思議に思った。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
「あれ、また、乱暴なことを
有仰
(
おっしゃ
)
います。」と
微笑
(
ほほえ
)
みながら、道は
馴々
(
なれなれ
)
しく
窘
(
たしな
)
めるがごとくに言った。
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
廣い家には道臣も昔から慣れてゐたけれど、網島の邸の内部の
數寄
(
すき
)
を
凝
(
こ
)
らしたのと、美しい小間使たちの多いのとには、キヨロ/\して京子に
窘
(
たしな
)
められることも多かつた。
天満宮
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
予ハ婆サンニ
窘
(
たしな
)
メラレテ一層
依怙地
(
いこじ
)
ニナッタ。ソノ癖手ノ冷エ方ハマス/\激シカッタ。
瘋癲老人日記
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「ちよツ、馬鹿言ふな、人に笑はれるぜ、お
止
(
よ
)
しツ」と伊藤は
冠
(
かぶ
)
せるやうに私を
窘
(
たしな
)
めた。
途上
(新字旧仮名)
/
嘉村礒多
(著)
「いささか執拗ではござらぬかな」小一郎は今度は
窘
(
たしな
)
めにかかった。
神秘昆虫館
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
駒井が
窘
(
たしな
)
めるようにいい放っても、女はべつだん驚きもしないで
大菩薩峠:24 流転の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と
窘
(
たしな
)
めておいて、翁は筆者を振返った。
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
窘
(
たしな
)
めるように云ってから
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
信一郎を、
窘
(
たしな
)
めるやうに、叱るやうに、夫人の言葉は力を持つてゐた。信一郎は、今は止むを得ないと云つたやうに、夫人と擦れ/\に腰を降した。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
窘
漢検1級
部首:⽳
12画
“窘”を含む語句
窘逐狂
窘蹙
立窘
窘窮
窘迫
居窘
窘逐
掻窘
窘束
窘歩
窘渋
窘付
窘乏
狭窘
窘追
抱窘
困窘