當分たうぶん)” の例文
新字:当分
うして、其樣そんところ這入はいつたのだ。當分たうぶん其所そこにゐるつもりなのかい」と宗助そうすけかさねていた。安井やすゐはたゞすこ都合つがふがあつてとばかりこたへたが
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
友達ともだちかほつぶれては、むらにはられねえから、當分たうぶんこれがおわかれにらうもれねえ。隨分ずゐぶん達者たつしやてくんねえよ。
一席話 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
それはもとよりうはさだけにとゞまつたが、それ以來いらい當分たうぶん芝居しばゐながら煙草たばこふものがほとんどなくなつた。
死刑 (旧字旧仮名) / 上司小剣(著)
とき柳川君やながはくんきみ當分たうぶんこのみなと御滯在おとまりでせうねえ、それから、西班牙イスパニヤはうへでもおまはりですか、それとも、さらすゝめて、亞弗利加アフリカ探險たんけんとでもお出掛でかけですか。
「いや、可かんよ。これじや來る奴にも見られるんだからな。俺は當分たうぶん隱れてゐなけアならん體なんだ。」
平民の娘 (旧字旧仮名) / 三島霜川(著)
なにおどろかせるがるしさに結局つまりいはねばならぬこと今日けふまでもだまつてりしなり、三ねんか五ねんかへるつもりなれどもそのほどは如何どうわからねばまづ當分たうぶんわかれの覺悟かくご
経つくゑ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
當分たうぶん押込おしこめおきなほたすけ候半んと存ぜし中相役の立花左仲と申者竊に主人しゆじんと申合せ絞殺しめころし其儀に付右等の儀は全くあとにてうけたまはりたることゆゑ萬事の儀ども相違さうゐ仕つりて候と申たてけるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
佐伯さへきでは一旦いつたんあゝしたやうなものゝ、たのんでたら、當分たうぶんうちぐらゐことは、好意上かういじやうてくれまいものでもない。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
まさか自動車じどうしやで、ドライブして、さがしてまはるほどのかねはなし……えんれめか、よしはらすゞめ、當分たうぶんせかれたと斷念あきらめてると、當年たうねん五月ごぐわつ——房州ばうしうつた以前いぜんである。
木菟俗見 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
役人捕違とりちがへて是迄吟味ぎんみに及びし事氣の毒の至りなり定めし身體もよわり手足もきくまじれば此儘に歸しては當分たうぶんさぞ難儀なんぎなるべし依て金五兩とらせ遣はすあひだ是にて能々療治をなし渡世を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
わたし手足てあしはたらかぬときりて何分なにぶんのお世話せはをおたのまをさねばらぬあかつき月給げつきうゑんらう、れをおもふといまのうち覺悟かくごめて、すこしはたがひにらきことなりとも當分たうぶん夫婦ふうふわかれして
われから (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
『はゝゝゝゝ。ひどつたよ。しかしこれで當分たうぶん餓死うゑじにする氣遣きづかひはない。』とわたくしたゞちに小刀ナイフ取出とりだした。勿論もちろん沙魚ふかといふさかな左程さほど美味びみなものではないが、この塲合ばあひにはいくらつても喰足くひたらぬ心地こゝち
安之助やすのすけ當分たうぶんあひだわづかな月給げつきふと、この五千ゑんたいする利益りえき配當はいたうとでらさなければならないのださうである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
長家はもとより四邊あたりへも吹聽ふいちやうなせば其邊へはつうはさの立行て或は之れをうらやむあり或は之をねたむもありて衆口しうこう喋々てふ/\當分たうぶんはお光の事のみ云あへるをみゝに入たる家主の庄兵衞にはかに安からず思うて一人心を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)