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独語
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ひとりごと
ふりがな文庫
“
独語
(
ひとりごと
)” の例文
旧字:
獨語
「これは妙だ。おつにひねつてゐらあ。」どんなお客でもが
独語
(
ひとりごと
)
のやうに言つたものだ。「伯爵の持物にしては少し洒落過ぎてら。」
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「気まぐれものの景彦がまた何をしでかすかな。まあ、じっとして見ていてやろう」と
独語
(
ひとりごと
)
のようにいって、鶴見は黙ってしまう。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
八太郎はさう
独語
(
ひとりごと
)
を
云
(
い
)
つて、二匹の子犬を拾ひ上げて、懐の中に入れてやりました。子犬は
温
(
あたたか
)
い懐の中で、
嬉
(
うれ
)
しがつて鼻を鳴らしました。
犬の八公
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
そして十歩ばかりも歩いた時、僕は左手に並んでいる二階造の家を見て、「ここが
桜痴
(
おうち
)
先生と末造君との
第宅
(
ていたく
)
だ」と
独語
(
ひとりごと
)
のように云った。
雁
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「どうしたのだろう」と
独語
(
ひとりごと
)
を
云
(
い
)
った。そして自分もどうして
好
(
い
)
いか、分らなかった。ただ意味もなく
柵
(
さく
)
の内をあちこち走り
廻
(
まわ
)
っている。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
▼ もっと見る
それが
独語
(
ひとりごと
)
のやうな調子である。こんな時の友達の様子が、余所に気を取られたやうな、不思議な様子だと云ふ事は、己は前に話した筈だ。
病院横町の殺人犯
(新字旧仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
どうかすると
空
(
くう
)
を見て
独語
(
ひとりごと
)
を言つてゐる。これで三度目に樺太を脱ける筈のこの年寄の流浪人は、見る見る弱つて行くらしい。
樺太脱獄記
(新字旧仮名)
/
ウラジミール・ガラクティオノヴィチ・コロレンコ
(著)
「もうすつかりになりました。」長火鉢の前に坐つてすず子は
独語
(
ひとりごと
)
のやうに云つた。いかにもがつかりしたやうな風も見えた。
計画
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
『来ないのは来ないでせうなア。』と、校長は
独語
(
ひとりごと
)
の様に意味のないことを言つて、
卓
(
つくゑ
)
の上の
手焙
(
てあぶり
)
の火を、煙管で
突
(
つつ
)
いてゐる。
足跡
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
利
(
き
)
くまいと思った……そうすると
独語
(
ひとりごと
)
を始めた、往来を歩いていても何か言うように成った……とても沈黙を守るなんてことは出来ない……
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
と思わず
独語
(
ひとりごと
)
した其の物音に熊は起上り、暫く
四辺
(
あたり
)
を見廻して居りましたが、何思いけん、また穴の入口を目がけ、ひらりと飛上りました。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「どうだね。七尺からある。三円は安いもんだ」と老爺は
独語
(
ひとりごと
)
のようにいっております。全くその通りで私は三円でその樹を買い取りました。
幕末維新懐古談:73 栃の木で老猿を彫ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
平田は驚くほど
蒼白
(
あおざめ
)
た顔をして、「遅くなッた、遅くなッた」と、
独語
(
ひとりごと
)
のように言ッて、忙がしそうに歩き出した。足には上草履を忘れていた。
今戸心中
(新字新仮名)
/
広津柳浪
(著)
擦れ違った拍子に、この探偵が
毒蛇
(
コブラ
)
からでも頼まれたのであろう、唇を動かさずに腹話術みたいな声で、
独語
(
ひとりごと
)
を言った。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
「私、これから帰って、清月にいって菊ちゃんを呼んでもらおうかしら!」
独語
(
ひとりごと
)
のように考えかんがえいってやった。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
と、
或朝
(
あるあさ
)
早
(
はや
)
く
非常
(
ひじょう
)
に
興奮
(
こうふん
)
した
様子
(
ようす
)
で、
真赤
(
まっか
)
な
顔
(
かお
)
をし、
髪
(
かみ
)
も
茫々
(
ぼうぼう
)
として
宿
(
やど
)
に
帰
(
かえ
)
って
来
(
き
)
た。そうして
何
(
なに
)
か
独語
(
ひとりごと
)
しながら、
室内
(
しつない
)
を
隅
(
すみ
)
から
隅
(
すみ
)
へと
急
(
いそ
)
いで
歩
(
ある
)
く。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
瞼
(
まぶた
)
を潤おす涙も見えた。併も女は泣く事に依て一層勇気付けられ、一層雄弁に成るのであった。「
口惜
(
くや
)
しいッ」
独語
(
ひとりごと
)
の様にこう云って置いて又続けた。
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
大原ばかりは朋友と話す時にも教師の事はいつでも誰先生と尊敬していうし、
独語
(
ひとりごと
)
にも先生先生という。最も感心な事は朋友の事をも決して
呼捨
(
よびずて
)
にしない。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
極めて突然、全く無意味と云ってもよい取り止めのない
独語
(
ひとりごと
)
を
洩
(
も
)
らす癖がある、それは大概
傍
(
そば
)
に聞いている者がいないと思う時に洩らすらしいのであるが
細雪:01 上巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
彼はこう
独語
(
ひとりごと
)
をつぶやきながら、
鋤頭
(
すきがしら
)
によりかかったまま、教会で祈祷をする時のように両手に額を
埋
(
うず
)
めた。
作男・ゴーの名誉
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
黒吉は、自分の一寸した
独語
(
ひとりごと
)
にも、葉子が聞きとがめて、わざわざ来てくれるのが、
耐
(
たま
)
らなく、嬉しかった。
夢鬼
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
「しかし、いったいここは、どこなんだろう。」と、
雪割草
(
ゆきわりそう
)
は、あたりをながめて、
独語
(
ひとりごと
)
をもらしました。
みつばちのきた日
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
しかし非常に平凡な、そして相当に貧乏な、(決して石の家には住まつてゐないところの——)、更に又、時々私がわけの分らぬ
独語
(
ひとりごと
)
を思ひ余つて呟く時にも
蝉:――あるミザントロープの話――
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
と相手の顔は見ず、質問のように、
独語
(
ひとりごと
)
のように、駱駝の膝掛に話しかけるように、立ん坊を繰り返した。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
文三は
吻
(
ほっ
)
と一息、寸善
尺魔
(
せきま
)
の世の習い、またもや御意の変らぬ内にと、
挨拶
(
あいさつ
)
も
匆々
(
そこそこ
)
に起ッて坐敷を立出で二三歩すると、
後
(
うしろ
)
の
方
(
かた
)
でお政がさも聞えよがしの
独語
(
ひとりごと
)
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
こういいながら、彼は起ち上がって、大きな帳簿をもって何かぶつぶつ
独語
(
ひとりごと
)
を言って引きかえしてきた。
私はかうして死んだ!
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
「軽便かしら。」と、青年が
独語
(
ひとりごと
)
のやうに云つた。いかにも、自動車の爆音にもまぎれない轟々と云ふ響が、山と海とに
反響
(
こだま
)
して、段々近づいて来るのであつた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
自分の身に金があろうとなかろうと
敢
(
あえ
)
て他人に関係したことでない、自分一身の利害を下らなく人に語るのは
独語
(
ひとりごと
)
を言うようなもので、こんな
馬鹿気
(
ばかげ
)
た事はない
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
「沢田君、敗けてるんだよ、敗けてるんだよ。ヘビーを出さう。」と
独語
(
ひとりごと
)
して全速力で駆け出した。
月下のマラソン
(新字旧仮名)
/
牧野信一
(著)
その迷惑をするのが却て
慰藉
(
なぐさめ
)
になり、たよりになるのである。ステパンはこんな
独語
(
ひとりごと
)
を言つてゐる。
パアテル・セルギウス
(新字旧仮名)
/
レオ・トルストイ
(著)
門外に佇んで勘右衛門の
独語
(
ひとりごと
)
を、聞くともなしに聞いた宮川茅野雄は、こう思わざるを得なかった。
生死卍巴
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
勿論粗末な品では有るが、此の様な旨い思いは、覚えてから仕た事がない。甚蔵は感心した様子で「アア好い度胸だ、立派な悪党に成れる」と
独語
(
ひとりごと
)
の様に云うて居る。
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
「おれの
角
(
つの
)
はなんて
美
(
うつく
)
しいんだらう。だが、この
足
(
あし
)
の
細
(
ほそ
)
いことはどうだろう、もすこし
太
(
ふと
)
かつたらなア」と
独語
(
ひとりごと
)
を
言
(
いつ
)
た。そこへ
猟人
(
かりうど
)
が
来
(
き
)
た。おどろいて
鹿
(
しか
)
は
迯
(
に
)
げだした。
コドモノスケッチ帖:動物園にて
(新字旧仮名)
/
竹久夢二
(著)
帰る途中、祖父は
独語
(
ひとりごと
)
をやめなかった。ハスレルから受けた賛辞に有頂天になっていた。ハスレルこそは一世紀に一人くらいしか見られないほどの天才だと叫んでいた。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「有難い。これで今夜から
暖
(
あたたか
)
に眠られるて。」といふ
独語
(
ひとりごと
)
を云ひながら、にやにや笑つてゐる。
虱
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
父は少し落ち着いたらしく、半分は言い聞かすような、半分は
独語
(
ひとりごと
)
をいうような調子になった。
星座
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
これは
譫言
(
うわごと
)
ではなかったのです。眼がさめて、正確な意識を取戻した時の
独語
(
ひとりごと
)
でありました。
大菩薩峠:38 農奴の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
はなはだ機嫌が悪く、ぶつぶつ
独語
(
ひとりごと
)
をつぶやきながら、金剛杖で立木を撲りなどしていた。
怪異暗闇祭
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
「紀州は親も兄弟も家もなき
童
(
わらべ
)
なり、我は妻も子もなき
翁
(
おきな
)
なり。我彼の父とならば、彼我の子となりなん、ともに幸いならずや」
独語
(
ひとりごと
)
のようにいうを人々心のうちにて驚きぬ
源おじ
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「
明後日
(
あさって
)
は市の立つ日だな。」と、安行は
独語
(
ひとりごと
)
のように、「
何
(
ど
)
うか天気に
為
(
し
)
たいものだ。」
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
これほどに
吾家
(
うち
)
の
母様
(
おっかさん
)
の
為
(
な
)
さるのも、おまえのためにいいようにと思っていらっしゃるからだとお話があったわ。それだのに
禽
(
とり
)
を見て
独語
(
ひとりごと
)
を云ったりなんぞして、あんまりだよ。
雁坂越
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼はそう、併し、
独語
(
ひとりごと
)
のように云いながら、
階上
(
うえ
)
へ行って了うのであったが、それはおそらく、解剖のときに、自分の手が思うように動かないことを気に
悩
(
や
)
んでいたのに相違ない。
三稜鏡:(笠松博士の奇怪な外科手術)
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
手品師は、急にさびしくなつてきたので、かう
独語
(
ひとりごと
)
をしてむつくり起きあがりました。
小熊秀雄全集-14:童話集
(新字旧仮名)
/
小熊秀雄
(著)
これは鴉の
独語
(
ひとりごと
)
である。実に円い
音
(
ね
)
をころがす。上機嫌の場合にそれが限るのである。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
と
独語
(
ひとりごと
)
を洩らしつつ頭に手を
遣
(
や
)
って見ると……又も不思議……今朝から私が感じていた奇怪な頭の痛みは、どこを探しても撫でまわしてもない。拭いて取ったように消え失せていた。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「はてな、今の
弾丸
(
たま
)
は確かにあたつた
筈
(
はず
)
だが……」と
独語
(
ひとりごと
)
を言ひながら与兵衛は樫の大木に近づきました。すると大きな猿が一疋、右の手で技を
掴
(
つか
)
んで、ぶらりとぶら下つてゐました。
山さち川さち
(新字旧仮名)
/
沖野岩三郎
(著)
いまも夕雲の赤きに対して、かれはそんな
独語
(
ひとりごと
)
をもらしていたのではあるまいか。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
遠方から来て群衆の中に混じっていましたが、人波をかきわけてひそかにイエスの後ろに寄り「その衣にだに
触
(
さわ
)
らば救われん」と
独語
(
ひとりごと
)
を言いながら、イエスの衣に触りました(五の二五—二八)。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
「その
前
(
めえ
)
もね、毎日だ。どこかで見掛ける。いつも雷神坂を下りて、この町内をとぼくさとぼくさ。その癖のん気よ。角の蕎麦屋から一軒々々、きょろりと見ちゃ、毎日おなじような
独語
(
ひとりごと
)
を言わあ。」
白金之絵図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
波越氏はやや
憤怒
(
ふんど
)
の色を現わして、
独語
(
ひとりごと
)
のように囁いた。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
“独語”の意味
《名詞》
独 語(どくご)
ひとりごとの漢語的表現。
ドイツ語(独逸語)の略称。
(出典:Wiktionary)
独
常用漢字
小5
部首:⽝
9画
語
常用漢字
小2
部首:⾔
14画
“独”で始まる語句
独
独逸
独言
独楽
独身
独身者
独活
独鈷
独乙
独木舟