トップ
>
独言
>
ひとりごと
ふりがな文庫
“
独言
(
ひとりごと
)” の例文
旧字:
獨言
「
俺
(
おいら
)
あ
可厭
(
いや
)
だぜ。」と押殺した
低声
(
こごえ
)
で
独言
(
ひとりごと
)
を云ったと思うと、ばさりと
幕摺
(
まくず
)
れに、ふらついて、隅から
蹌踉
(
よろ
)
け込んで見えなくなった。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
申上げても
嘘
(
うそ
)
だといっておしまいなさいましょう。(半ば
独言
(
ひとりごと
)
のように、心配らしく。)ははあ、あの
離座敷
(
はなれざしき
)
に隠れておったわい。
痴人と死と
(新字新仮名)
/
フーゴー・フォン・ホーフマンスタール
(著)
「本当に沈没したかな」
独言
(
ひとりごと
)
が出る。気になって仕方がなかった。——同じように、ボロ船に乗っている自分達のことが頭にくる。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
且
(
か
)
つは彼れ如何に口重き証人にも其腹の
中
(
うち
)
に在るだけを充分
吐尽
(
はきつく
)
させる秘術を知れば
猶
(
な
)
お失望の様子も無く
宛
(
あたか
)
も
独言
(
ひとりごと
)
を云う如き調子にて
血の文字
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
大人が
傍
(
かたわら
)
にいるうちは黙っているが、それでも
独言
(
ひとりごと
)
や心の中の言葉が数を増して、感情のようやく
濃
(
こま
)
やかになって行くのがよくわかる。
こども風土記
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
▼ もっと見る
こんなことを
独言
(
ひとりごと
)
のやうに言つた。で、そこを出て、かれは
用水縁
(
ようすゐべり
)
の路にその都人士らしい姿を見せつゝ寺の方へとやつて来た。
ある僧の奇蹟
(新字旧仮名)
/
田山花袋
(著)
「折角教わったお経だ。よく覚え込むまで、何度もやっておこう」と
独言
(
ひとりごと
)
をいいながら「香炉や、花立や、花立や、香炉や……」
でたらめ経
(新字新仮名)
/
宇野浩二
(著)
私は得意になってあたりを見まわして、こう
独言
(
ひとりごと
)
を言った。——「さあ、これで少なくとも今度だけは
己
(
おれ
)
の骨折りも
無駄
(
むだ
)
じゃなかったぞ」
黒猫
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
誰
(
だれ
)
にいうともない
独言
(
ひとりごと
)
ながら、
吉原
(
よしわら
)
への
供
(
とも
)
まで
見事
(
みごと
)
にはねられた、
版下彫
(
はんしたぼり
)
の
松
(
まつ
)
五
郎
(
ろう
)
は、
止度
(
とめど
)
なく
腹
(
はら
)
の
底
(
そこ
)
が
沸
(
に
)
えくり
返
(
かえ
)
っているのであろう。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
やがて、これから晩まで何をして暮らそうかしらと
独言
(
ひとりごと
)
のように云って、不意に思い出したごとく、
玉
(
たま
)
はどうですと僕に聞いた。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
心臓のしびれてしまう様な恐怖に、二人はおびえ切った目と目を見合わせて、黙り反っていたが、やがて姫が
独言
(
ひとりごと
)
の様に呟く。
黄金仮面
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
いつも
独
(
ひと
)
りで黙っていて、人形や木片で一つ所にじっと音もたてず遊びながら、ぶつぶつ
唇
(
くちびる
)
を動かして何か
独言
(
ひとりごと
)
を言っていた。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
と、後は何かぶつぶつと口の中で
独言
(
ひとりごと
)
をいうて、草藪の中を分けて行きます。二郎は悲しくなって、涙ぐんで黙って後についてまいりました。
迷い路
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
主膳はこんな
独言
(
ひとりごと
)
を言っているうちに、立てつづけに
呷
(
あお
)
りました。浴びるように飲みました。気がようやく荒くなりました。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
とも
独言
(
ひとりごと
)
しているのを見て、玉鬘の母であった人は、前に源氏の言ったとおりに、深く愛していた人らしいと女王は思った。
源氏物語:22 玉鬘
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
(突然
活溌
(
かっぱつ
)
になりて二三歩前の方へ
出
(
い
)
で、
独言
(
ひとりごと
)
。)そのくせゆうべヘレエネと話しているうちに
直
(
すぐ
)
にでもかき始められるように思ったのだが。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
「なるほど独創は平凡じゃございませんわね」と
独言
(
ひとりごと
)
のように
呟
(
つぶや
)
いてから、再び
旧
(
もと
)
どおり冷酷な表情に返って、法水を見た。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
どう云う筋の近附きだろうかと、純一が心の
中
(
うち
)
に思うより先きに、大村が「妙な人に逢った」と、
独言
(
ひとりごと
)
のようにつぶやいた。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「茨城県磯崎に『
狼
(
ウルフ
)
』の巣を見付け出したのは、何といっても
驚嘆
(
きょうたん
)
すべきお手柄だ」草津大尉は、前方を注視しながら、
独言
(
ひとりごと
)
のように云った。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
美奈子の心の大きな動揺を、夢にも知らない
瑠璃子
(
るりこ
)
夫人は、その真白な腕首に喰い入っている時計を、チラリと見ながら
独言
(
ひとりごと
)
のように
呟
(
つぶや
)
いた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
酒屋の御用を
逐返
(
おいかえ
)
してから、おお、斯うしてもいられん、と
独言
(
ひとりごと
)
を言って、机を持出して、
生計
(
くらし
)
の足しの安翻訳を始める。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
友達の旆騎兵中尉は、「なに、
色文
(
いろぶみ
)
だろう」と、
自
(
みずか
)
ら慰めるように、跡で
独言
(
ひとりごと
)
を言っていたが、色文なんぞではなかった。
世界漫遊
(新字新仮名)
/
ヤーコプ・ユリウス・ダビット
(著)
悔
(
くや
)
しいにつけゆかしさ忍ばれ、
方様
(
かたさま
)
早う帰って下されと
独言
(
ひとりごと
)
口を
洩
(
も
)
るれば、
利足
(
りそく
)
も払わず帰れとはよく云えた事と
吠付
(
ほえつか
)
れ。
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
馬鹿らしい
独言
(
ひとりごと
)
を云って机の上に
散
(
ち
)
らばった
原稿紙
(
かみ
)
や
古
(
ふる
)
ペンをながめて、誰か人が来て今の此の私の気持を
仕末
(
しまつ
)
をつけて呉れたらよかろうと思う。
秋風
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
「往かなくったって好いよ、あんたは
独言
(
ひとりごと
)
を云ってるから、それがほんとなら、今晩来た時に、その
方
(
かた
)
から証拠になるものを貰っておきなさいよ」
岐阜提灯
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
そんな
独言
(
ひとりごと
)
を云っているうちにタッタ一人で真青に昂奮したらしい銀次は、緊張した態度でセカセカと身支度を初めた。
骸骨の黒穂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
部屋へ帰って来て床を敷き乍らも叔母さんは
独言
(
ひとりごと
)
のように云っている。「どうも変だよ、あの人はまるで、うしろ暗い事でも持っているようだ。」
鶴は病みき
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
独言
(
ひとりごと
)
のようにこう云いながらしかも帰るような
風情
(
ふぜい
)
もなく市之丞はじっと立っている。それに
嫋
(
なよや
)
かに寄り添いながら芳江は言葉もなく立っている。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
やがてもう一度「ふーむ」といってそれから
独言
(
ひとりごと
)
の様に「そうか、何ちゅうのー。」と不平らしく恨めし相に言った。
恭三の父
(新字新仮名)
/
加能作次郎
(著)
おげんの
内部
(
なか
)
に居る二人の人が
何時
(
いつ
)
の間にか頭を持上げた。その二人の人が問答を始めた。一人が何か
独言
(
ひとりごと
)
を言えば、今一人がそれに
相槌
(
あいづち
)
を打った。
ある女の生涯
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
と
独言
(
ひとりごと
)
のように呟きながら腰を延し延し立ち上って、長い眉毛の老いたる眼をしばたたきながら、
凝乎
(
じっ
)
と幼い主人の後姿を見守っている様子であった。
逗子物語
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
主人のコゼツは、粉袋や粉挽機械の間をせっせと働きながら、いよいよ心をかたくなにして
独言
(
ひとりごと
)
を言うのでした。
フランダースの犬
(新字新仮名)
/
マリー・ルイーズ・ド・ラ・ラメー
(著)
『何を言っても命あっての
物種
(
ものだね
)
だ、』と大きな声で
独言
(
ひとりごと
)
を初めた、『どうせ自分から死ぬるてエなアよくよくだろうが死んじまえば命がねえからなア。』
郊外
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「気の毒だからな、これから遺骨を迎えに行くときいては見捨ててはおけない」と彼は
独言
(
ひとりごと
)
を云った。すると
廃墟から
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
妹が出て行ってしまうと、ミンチン先生は、思わず大きな声で
独言
(
ひとりごと
)
をいいながら、部屋の中を歩き廻りました。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
「道理で、ひどく不味いと思ひました。」と、ビスマルクは
独言
(
ひとりごと
)
のやうに言つて、英吉利生れの
婦人
(
をんな
)
でも見るやうに、馬鹿にした眼つきでその酒壜を見た。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「今日は駄目だ。」と
独言
(
ひとりごと
)
云つて、シャボンを手に湯へ出掛けたのは余程過ぎてである。外はもう暗かつた。
茗荷畠
(新字旧仮名)
/
真山青果
(著)
席の隅の方に居た生徒が「そこが天才の偉いところだ」と、
独言
(
ひとりごと
)
のやうに
呟
(
つぶや
)
くところが書いてありました。
一人の無名作家
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
しかし感じの鈍い單四嫂子も魂は返されぬものくらいのことは知っているから、この世で寶兒に逢うことは出来ぬものと諦めて、
太息
(
といき
)
を洩らして
独言
(
ひとりごと
)
をいった。
明日
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
馬車は
停車場
(
ていしゃじょう
)
を離れた。学士は
真面目
(
まじめ
)
な顔をして、
暫
(
しばら
)
く見送っていて、「気の毒だなあ」と
独言
(
ひとりごと
)
を云った。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
もはや誰にも道を聞くまいぞと、
渠
(
かれ
)
は思うた。「誰も彼も、えらそうに見えたって、実は何一つ
解
(
わか
)
ってやしないんだな」と悟浄は
独言
(
ひとりごと
)
を言いながら帰途についた。
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
お幸は思はず
独言
(
ひとりごと
)
をしました。其処には
轡虫
(
くつわむし
)
が沢山
啼
(
な
)
いて居ました。前側は黒く続いた中村家の納屋で、あの向うが屋根より高く穂を上げた
黍
(
きび
)
の
畑
(
はた
)
になつて居ます。
月夜
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
独言
(
ひとりごと
)
を言つて
吃驚
(
びつくり
)
した様に立上ると、書院の方の庭にある
柿
(
かき
)
の樹で大きな
油蝉
(
あぶらぜみ
)
が
暑苦
(
あつくる
)
しく啼き出した。
蓬生
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
(著)
「ろくな酒も飲まねえ癖に文句ばっかり言ってやがる。」と
独言
(
ひとりごと
)
を言って、新吉は
旧
(
もと
)
の座へ帰って来た。得意先の
所思
(
おもわく
)
を気にする様子が不安そうな目の色に見えた。
新世帯
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
そのなかに芝居土用やすみのうち
柏筵
(
はくえん
)
一蝶が引船の絵の小屏風を風入れする
旁
(
かたはら
)
にて、
人参
(
にんじん
)
をきざみながら此絵にむかしをおもひいだして
独言
(
ひとりごと
)
いひたるを
記
(
しる
)
したる文に
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
一枚物では五番目の「
黒鍵
(
こっけん
)
=変ト長調(作品一〇ノ五)」ではビクターのパハマンのが面白く、例の
独言
(
ひとりごと
)
の入っているのまで物々しい
妖気
(
ようき
)
を
撒
(
ま
)
き散らす(JF五五)。
楽聖物語
(新字新仮名)
/
野村胡堂
、
野村あらえびす
(著)
大藏は
密
(
そっ
)
と
後
(
あと
)
へ廻って、三尺の
開戸
(
ひらきど
)
を見ますと、慌てゝ締めずにまいったから、戸がばた/\
煽
(
あお
)
るが、外から締りは附けられませんから石を
支
(
か
)
って置きまして、
独言
(
ひとりごと
)
に
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
何か余程気にかかることがあると見えて、時々思い出したようにブツブツと
独言
(
ひとりごと
)
をいうかと思うと、急に立止って腕組をする。見るさえ気の重くなるようなようすである。
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
張氏は半分
独言
(
ひとりごと
)
のように、いかにも残念そうに申します。妻君はいまいましそうに夫を見て
耳香水
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
姉に向つても姉さん/\となついて、何か
頻
(
しき
)
りと
独言
(
ひとりごと
)
を云ひながら洗面台の掃除をして居た。
お末の死
(新字旧仮名)
/
有島武郎
(著)
“独言”の意味
《名詞》
独り言を言うこと。独語。
(出典:Wiktionary)
独
常用漢字
小5
部首:⽝
9画
言
常用漢字
小2
部首:⾔
7画
“独言”で始まる語句
独言悟浄