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滞
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とどこお
ふりがな文庫
“
滞
(
とどこお
)” の例文
旧字:
滯
「お前は勤めの身でないか。花代さえ
滞
(
とどこお
)
りなく貰って行ったら、誰も不足をいう者はあるまい。まだほかにむずかしい
掟
(
おきて
)
でもあるか」
鳥辺山心中
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
別荘の門を入る時には、雨はぱったり止んで、又まんまるい月が、けろりとした顔をして、
滞
(
とどこお
)
りなく晴れた中空の風に吹かれていた。
九月一日
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
御当家の大命が、
滞
(
とどこお
)
りなく、おすみになった後のお思召と申すなら格別、当座は、何ぞ、
印
(
しるし
)
だけの物で、よくはないかと心得まするが
新編忠臣蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
間借の人の義務は
滞
(
とどこお
)
りなく間代を払い
畳
(
たたみ
)
に
焼焦
(
やけこが
)
しをしなければよいのである。間代を払っても古家の雨漏りは速急に直るものではない。
仮寐の夢
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
然し、万事は親戚や出入りの衆によって、何の
滞
(
とどこお
)
りもなく運ばれ、
愈々
(
いよいよ
)
四月のはじめに、自宅で式を挙げることになったのである。
血の盃
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
▼ もっと見る
それがまた
幸
(
さいわ
)
いと、即座に話がまとまって、表向きの
仲人
(
なこうど
)
を
拵
(
こしら
)
えるが早いか、その秋の中に婚礼も
滞
(
とどこお
)
りなくすんでしまったのです。
開化の良人
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
大家はその金でその男の簡単な葬式をしてやったばかりでなく自分のところの
滞
(
とどこお
)
っていた家賃もみな取ってしまったという話であった。
のんきな患者
(新字新仮名)
/
梶井基次郎
(著)
そのまにも試合は番組通りに開始されて、最初の十二番の槍術が
滞
(
とどこお
)
りなく終ってから、呼びものの馬術にかかったのが丁度お
午
(
ひる
)
。
旗本退屈男:03 第三話 後の旗本退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
ある時外へ散歩に出て居りますと、何か喉の所に塊が
滞
(
とどこお
)
って居るようであるから何心なく吐いて見ると血の塊を吐き出したです。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
「利子は今まででも
滞
(
とどこお
)
りなくちょうだいしておりますから、利子さえ取れれば
好
(
い
)
い金なら、いつまででも御用立てて置きたいのですが……」
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
そうなれば、自分一個人だけではなく、我々の住んでいる社会全体がいかにも
滑
(
なめ
)
らかに
滞
(
とどこお
)
りなく愉快なものとなるであろう。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
「矢っ張り成績のお宜しい方は違いますわ。御就職にしても御縁談にしても、
滞
(
とどこお
)
りなくお運びになるんでございますから」
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
ここにも、流るる水のごとく
滞
(
とどこお
)
ることなき清らかさと、軽さの美しさが、淡い哀感の中に、滲みでているのであります。
日本の美
(新字新仮名)
/
中井正一
(著)
……そうでしょう、下宿料が月の九つ以上も
滞
(
とどこお
)
った処だから、みじめな女郎買じゃないけれども、油さしも来やしない。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
その中で
解
(
げ
)
し得た者は
白玉
(
しろたま
)
、
解
(
げ
)
し
傷
(
そこな
)
うた者は
黒玉
(
くろだま
)
、夫れから自分の読む領分を
一寸
(
ちょっと
)
でも
滞
(
とどこお
)
りなく立派に読んで
了
(
しま
)
ったと云う者は白い三角を付ける。
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
ただそのために君は筆の先をとぎ僕はハサミを使い、そのときいささかの
滞
(
とどこお
)
りもなく、僕も人を理解したと称します。
虚構の春
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「本来無一物」とも説かれた。もとよりこの「無」は無に
滞
(
とどこお
)
る無ではない。有無の二を超えた「無」である。この境に入らずば何ものも真実ではない。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
それでもついに
吉田
(
よしだ
)
は
出
(
で
)
てゆきました。そして
黒板
(
こくばん
)
に
答
(
こた
)
えを
書
(
か
)
きました。それは
滞
(
とどこお
)
りなくできていたので、
吉田
(
よしだ
)
の
顔
(
かお
)
は
華
(
はな
)
やいでうれしそうでありました。
残された日
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
よく知っているよ、なア、黒助兄哥、お前さんの
父
(
とっ
)
さんは御用金が
嵩
(
かさ
)
んだ上、上納が
滞
(
とどこお
)
って
水牢
(
みずろう
)
で死んだはずだ。
銭形平次捕物控:022 名馬罪あり
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
緋
(
ひ
)
の
袈裟
(
けさ
)
、むらさきの袈裟——高僧の
読経
(
どきょう
)
の声に、香烟、咽ぶがごとくからんで、焼香は
滞
(
とどこお
)
りなくすすんでゆく。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
以前にもわしが勘定の
滞
(
とどこお
)
りに気を詰らせ、おずおず夜、遅く、このようにして度び度び言い訳に来ました。
家霊
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
えらい商売を始めたものやと思っているうちに、酒屋への支払いなども
滞
(
とどこお
)
り勝ちになり、結局、やめるに
若
(
し
)
かずと、その旨柳吉に言うと、柳吉は
即座
(
そくざ
)
に同意した。
夫婦善哉
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
長年
(
ながねん
)
の顔があるところから、暫くは無理が
利
(
き
)
いたけれども、坪十五銭の地代が二年近くも
滞
(
とどこお
)
つて、百二三十円にもなつてゐるのは、どうにも返済の見込みが立たない。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「御別家様、まず以て
滞
(
とどこお
)
りなく運びましてお
慶
(
めで
)
とう存じまする。
御結納
(
ごゆいのう
)
はこの暮のうちに日を
択
(
えら
)
んでお
取交
(
とりかわ
)
しなさいますように。お婚礼は来春になりまして花々しく」
大菩薩峠:13 如法闇夜の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
パリのガール・デュ・ノールでは誰だか知らない人が書式へいい加減のことを書いてくれてそれで万事が
滞
(
とどこお
)
りなくすんだのであった。到る処の青山に春風が吹いていた。
チューインガム
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
生命は
滞
(
とどこお
)
るところなく流動する。創造の華が枯木にも咲くのである。藤原南家の
郎女
(
いらつめ
)
が
藕糸
(
はすいと
)
を
績
(
つむ
)
いで織った
曼陀羅
(
まんだら
)
から光明が泉のように
涌
(
わ
)
きあがると見られる暁が来る。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
歌は、天平の
寧楽
(
なら
)
の都の繁栄を讃美したもので、直線的に云い下して
毫
(
ごう
)
も
滞
(
とどこお
)
るところが無い。
万葉秀歌
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
声音
(
こわね
)
も変えなければいけますまい。……
木声
(
もくせい
)
は高く清らかく、火声は
焦
(
こが
)
れて
潤
(
うるお
)
いなく、土声は重く且つ沈み、金声は
響鐘
(
ひびきがね
)
の如く、水声は円く
滞
(
とどこお
)
りなく、これを五音と申します。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
勧修寺
(
かんじゅじ
)
に隠れていた
成法已講
(
じょうほういこう
)
が探し出されて、御斎会の儀は
滞
(
とどこお
)
りなく済んだのであった。
現代語訳 平家物語:06 第六巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
「不幸ちゅうのさいわいには、すでに奉納のお役は
滞
(
とどこお
)
りなく終ったあとでございました」
日本婦道記:箭竹
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
将軍家の、オランダ人御覧が昨日
滞
(
とどこお
)
りなく終ったので、カピタンを初め、二人の
書記役
(
シキリイバ
)
、大小の通辞たちも、みなのびのびとした気持になっていたので、会談がいつになく賑わった。
蘭学事始
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
でも、今度は
滞
(
とどこお
)
りなく江戸下りが出来まして、お目にかかられ、かように嬉しいことはござりませぬ。それに、ただ今道すがら、八幡さまにお
詣
(
まい
)
りいたしますと、孤軒老師にはからず御対面。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
よほど大きな
破風
(
はふ
)
の窓を開いて風通しをつけないと、家のなかのしめった空気が上に
滞
(
とどこお
)
って、屋根のいたみが早いだけでなく、炉の煙をじかにあてて
燻
(
いぶ
)
して、防腐をすることもできなくなる。
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
月謝の
滞
(
とどこお
)
りが原因だったから、復籍するに
造作
(
ぞうさ
)
はなかったが、私は考えた
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
そこで権兵衛は
己
(
じぶん
)
の代理として、総之丞に二三の下僚をつけて高知へやり、己は普請役所に留まっていると、十日ばかりして下僚の一人が引返して来て、藩庁の報告は
滞
(
とどこお
)
りなく終ったと云った。
海神に祈る
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
それはさて置き、当日の葬儀は、極めて盛大に
滞
(
とどこお
)
りなく行われて行った。
悪魔の紋章
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
下宿
(
げしゅく
)
から通学していたとき、友人
某
(
ぼう
)
が九州の親
許
(
もと
)
より来る学資金が
後
(
おく
)
れたために寄宿料、食料、月謝の支払いに
滞
(
とどこお
)
りが起こり大いに
当惑
(
とうわく
)
せるを見、僕は彼を自分の下宿につれて来たことがある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
職工たちの俸給はそれから二日遅れただけで、
滞
(
とどこお
)
りなく渡された。
オンチ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
また
今更
(
いまさら
)
考
(
かんが
)
えれば
旅行
(
りょこう
)
に
由
(
よ
)
りて、
無惨々々
(
むざむざ
)
と
惜
(
あた
)
ら千
円
(
えん
)
を
費
(
つか
)
い
棄
(
す
)
てたのはいかにも
残念
(
ざんねん
)
。
酒店
(
さかや
)
には
麦酒
(
ビール
)
の
払
(
はらい
)
が三十二
円
(
えん
)
も
滞
(
とどこお
)
る、
家賃
(
やちん
)
とてもその
通
(
とお
)
り、ダリュシカは
密
(
ひそか
)
に
古服
(
ふるふく
)
やら、
書物
(
しょもつ
)
などを
売
(
う
)
っている。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
達人は
玄言
(
げんげん
)
に
滞
(
とどこお
)
らんや。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
「
観主
(
かんず
)
、
観主
(
かんず
)
。
院司
(
いんじ
)
もおらんか。勅使は早や
渭河
(
いが
)
の河口へお着きになるぞ。なぜ出迎えん。一山の用意は
滞
(
とどこお
)
りなかろうな」——と。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
敬太郎は
先刻
(
さっき
)
自分の報告が
滞
(
とどこお
)
りなく済んだ
証拠
(
しょうこ
)
に、御苦労さまと云う謝辞さえ受けた
後
(
あと
)
で、こう難問が続発しようとは
毫
(
ごう
)
も思いがけなかった。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
滞
(
とどこお
)
らないもの、常に自分自身からぬけだして発展していくものを、彼らは、「うるわしきもの」とよんだのであった。
日本の美
(新字新仮名)
/
中井正一
(著)
「一寸伺いますが、アノ、アノ、田村と云う女のお墓で御在ますが、アノ、それはこちらのお寺で御在ましょうか。」と道子は
滞
(
とどこお
)
り勝ちにきいて見た。
吾妻橋
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
こういう言葉を聞くというのは、途中
滞
(
とどこお
)
りなく目的地へ到達し得るというおめでたい縁起になったかも知れない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
菊五郎自身もどうにか
滞
(
とどこお
)
りなく舞台に出ているというだけのことで、ふだんの活気はまったく見られなかった。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
下宿の払いが
滞
(
とどこお
)
り滞りして、「もう、どうも。」と云う所まで来た時、持ち物をすべて取り上げられてそこを突き出されるのを彼は
拒
(
こば
)
む訳にはゆかなかった。
田舎医師の子
(新字新仮名)
/
相馬泰三
(著)
冬の日は分けて短いが、まだ
雪洞
(
ぼんぼり
)
の入らない、
日暮方
(
ひくれがた
)
と云ふのに、
滞
(
とどこお
)
りなく式が果てた。
多日
(
しばらく
)
の
精進潔斎
(
しょうじんけっさい
)
である。世話に云ふ
精進落
(
しょうじんおち
)
で、
其辺
(
そのへん
)
は人情に変りはない。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
長年
(
ながねん
)
の顔があるところから、
暫
(
しばら
)
くは無理が
利
(
き
)
いたけれども、
坪
(
つぼ
)
十五銭の地代が二年近くも
滞
(
とどこお
)
つて、百二三十円にもなつてゐるのは、どうにも返済の見込みが立たない。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
百蔵も江戸へ出て
小商
(
こあきな
)
いでもして堅気になると言い、七兵衛もそれを賛成したのに、まだこの辺に
滞
(
とどこお
)
っていて、ついにこんなだいそれたことをやり出すようになったのか
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
滞
常用漢字
中学
部首:⽔
13画
“滞”を含む語句
滞在
凝滞
停滞
渋滞
滞在中
滞留
遅滞
滞陣
沈滞
結滞
無滞
萎靡沈滞
血滞
鬱滞
礙滞
疑滞
無遅滞
潴滞
滞米
滞留中
...