すぢ)” の例文
旧字:
わたし亜米利加の旗を見ると胸が悪くなつてよ。星だのすぢだの、けばけばしいつたら有りやしない、まる有平糖のお菓子チエツカベリイ・キヤンデイのやうよ。」
夜更よふけの事とてたれも知らず、あしたになりて見着みつけたる、お春の身体からだは冷たかりき、蜘蛛のへりし跡やらむ、縄にてくびりし如く青きすぢをぞゑがきし。
妖怪年代記 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
人家じんかにちかきながれさへかくのごとくなれば、この二すぢながれ水源みなかみも雪にうづもれ、水用すゐよううしのふのみならず水あがりのおそれあるゆゑ、ところの人ちからあはせて流のかゝり口の雪を穿うがつ事なり。
カーキ色に赤いすぢの入った軍服のズボンを出して廻診衣を着た、いつもにこ/\した赤い顔の軍医のスリッパの音を呑み込んでしまって、彼女の見当は当らない時はなくなった。
青白き夢 (新字旧仮名) / 素木しづ(著)
それは先づ此方の心に一すぢの滑かな平らな路が出来て、それによつてその微かな母親の囁きが静かに百合子に近寄つて来たやうにも思へた。それを聞いた時には、かの女は思はず顔を赤くした。
百合子 (新字旧仮名) / 田山花袋田山録弥(著)
夫から日本にも来てゐるが、矮狗ちん位な大きさで頭の毛が長く幾すぢとなく前額ひたひに垂れて目をかくしてゐる「スカイ、テリヤー」といふ奴、彼奴あいつはどうも汚臭ぢゞむさくて、人間なら貧乏書生染みて不可いかんな。
犬物語 (新字旧仮名) / 内田魯庵(著)
裂け目のないところにも赤いすぢの通ってゐるところがあるでせう。この裂け目を温泉が通ったのです。温泉の作用で岩が赤くなったのです。こゝがずうっとつちの底だったときですよ。わかりますか。
台川 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
父の顔ありありと見る雲間にて涙すぢなすわれ堪へむとす
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
精霊が怪しげなるすぢを描く。
山羊の歌 (新字旧仮名) / 中原中也(著)
願ひのすぢがあるものか
心持こゝろもち西にしと、ひがしと、真中まんなかやまを一ツいて二すぢならんだみちのやうな、いかさまこれならばやりてゝも行列ぎやうれつとほつたであらう。
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
梅王には今浪花座で多見蔵のやつてゐるやうに車曳くるまびきすぢで、両臂りやうひぢを張り手先を肩に預けないやうに腕を組むで
冬の雪はやはらかなるゆゑ人の蹈固ふみかためたるあとをゆくはやすけれど、往来ゆきゝ旅人たびゝと宿しゆくの夜大雪降ばふみかためたる一すぢの雪道雪にうづまみちをうしなふゆゑ、郊原のはらにいたりては方位はうがくをわかちがたし。
すぢほそくひま漏る冬の日の光鵲の巣は枝にこごれり
夢殿 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
みち此処こゝで二すぢになつて、一すぢはこれからぐにさかになつてのぼりもきふなり、くさ両方りやうはうから生茂おひしげつたのが、路傍みちばたかどところにある、それこそ四かゝへさうさな、五かゝへもあらうといふ一ぽんひのき
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
ゆき小止をやみなく、いまあめまじらずかわいたかるいのがさら/\とおもち、よひながらもんとざした敦賀つるがまちはひつそりして一すぢすぢ縦横たてよこに、つじかど広々ひろ/″\と、しろつもつたなかを、みちほどちやうばかりで
高野聖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
うね/\とうすひかみづすぢかげえない船脚ふなあしなみ引残ひきのこされたやうなのが、あたままるとがどうながくうねり、あし二つにわかれて、たとへば(これ)がよこの(はち)の向合むかひあつて、みづうみなかばりやうしてうか
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
相対あひたひする坊主ばうずくちは、三日月形みかづきなりうへおほきい、小鼻こばなすぢふかにやつて
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
百条もゝすぢとなり、千すぢつて、やがて軒前のきまへしろすだれおろろした。
十和田湖 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
かみすぢ身躾みだしなみわすれないひとの、これ至極しごくしたことである。
続銀鼎 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)