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敢
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あえ
ふりがな文庫
“
敢
(
あえ
)” の例文
切角
(
せっかく
)
の甲賀氏の作がその洗練されていないユーモアのために安手に感じられるということは如何にも残念です。
敢
(
あえ
)
て苦言を呈します。
マイクロフォン:「新青年」一九二六年一一月
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
で、作品として出来上った所の其作品が、何かの教訓を読者に与えるなれば、
敢
(
あえ
)
て作家の辞する所でない。一向
差支
(
さしつか
)
えないのである。
予の描かんと欲する作品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
これ実に祭司長が述べんと欲するものの中の
糟粕
(
そうはく
)
である。これをしも、祭司次長が諸君に告げんと
欲
(
ほっ
)
して、
敢
(
あえ
)
て
咎
(
とが
)
めらるべきでない。
ビジテリアン大祭
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
それで
敢
(
あえ
)
て恋とか愛とかそんなものでなく、たゞ
頼母
(
たのも
)
しい男性の友だちというものを得られたらわたくしはどんなに嬉しいでしょう。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
……御曹子、それでもなお、あなたは
強
(
た
)
って、もう一度、生ける人にひき戻して、
敢
(
あえ
)
ないお苦しみをそのお方にかけたいと思いますか
源頼朝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
朝鮮一条(一八七一年米国艦隊の
江華
(
こうか
)
島事件)の関係を
竊
(
ひそか
)
に探索するに、此国(アメリカ)の政府
敢
(
あえ
)
て再び
之
(
これ
)
を討伐するの論なし。
黒田清隆の方針
(新字新仮名)
/
服部之総
(著)
僕は
何故
(
なにゆえ
)
にお稲荷さんが、特に女中をしていたお梅さんを
抜擢
(
ばってき
)
したかということまで、神慮に立ち入って究めることは
敢
(
あえ
)
てしない。
独身
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
折返して「そういうことなら
敢
(
あえ
)
て反対もできまい。無い
袖
(
そで
)
は振られぬというからね」と応じ、あっさり見放してしまったのである。
チェーホフ序説:――一つの反措定として――
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
竜之助は
敢
(
あえ
)
て兵馬を怖れて逃げ隠れているのではない。兵馬は目の先に近づいて、それでどうも
刃
(
やいば
)
を合せることができないのです。
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それに対して抵抗し反撥することは
難
(
むずかし
)
かった。理不尽に陥ってまでもそれを
敢
(
あえ
)
てすることはないとかれは思っていたからである。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
しかも
敢
(
あえ
)
てこのような文章を書くのは、老大家やその亜流の作品を罵倒する目的ではなく、むしろ、それらの作品を取り巻く文壇の
輿論
(
よろん
)
可能性の文学
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
私にとってナオミは妻であると同時に、世にも珍しき人形であり、装飾品でもあったのですから、
敢
(
あえ
)
て驚くには足りないのです。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
一つにはその青年の思い出を葬り去るに忍びない私の或る気持ちが、こんな決心を
敢
(
あえ
)
てさしたのかも知れませぬけれども……。
能とは何か
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
吾輩は
敢
(
あえ
)
て重い荷物を担がせられたから憤慨するのではないが、一国の生命は地方人士の朴直勤勉なる精神にありとさえいわれているのに
本州横断 癇癪徒歩旅行
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
悲劇とはみずから
羞
(
は
)
ずる所業を
敢
(
あえ
)
てしなければならぬことである。この故に万人に共通する悲劇は
排泄
(
はいせつ
)
作用を行うことである。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
女がどうかいう場合、男にも
優
(
まさ
)
った決心とその実行とを
敢
(
あえ
)
てすることがあるのは、思慮分別の結果ではなくして、大抵は一時の発作による。
ひかげの花
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
文壇の表面に立って居る人は常に流行の
魁
(
さきがけ
)
におる人である。青年には常に古いことが
嫌
(
きら
)
われる。私は
敢
(
あえ
)
て文壇の表面に立とうとは思わない。
俳句への道
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
王騎射
尤
(
もっと
)
も
精
(
くわ
)
し、追う者王を
斬
(
き
)
るを
敢
(
あえ
)
てせずして、王の射て殺すところとなる多し。
適々
(
たまたま
)
高煦
(
こうこう
)
、
華衆
(
かしゅう
)
等を率いて至り、追兵を撃退して去る。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
それで私は今なお病床にある身だが、衰弱を押しても
敢
(
あえ
)
て「日本の眼」と題する一文を
艸
(
そう
)
して世に訴えたい志を起すに至った。
民芸四十年
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
浜川平之進、大刀を、ぐっと腰に帯びると、そのまま、これも非常門から出たが、
敢
(
あえ
)
て、三郎兵衛をじかに追おうとはしない。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
事実、私は、いい作品ならば三度の飯を一度にしても、それに読みふけり、
敢
(
あえ
)
て苦痛を感じない。私は、そんな馬鹿である。
春の盗賊
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
世の多くの人達は、そういう幾パーセントかの幸福であり得る場合に望みをかけて、戸籍法違反を
敢
(
あえ
)
てするのかも知れない。
黄鳥の嘆き:——二川家殺人事件
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
それに対する我当の弁解は、先年の
捫着
(
もんちゃく
)
はそのあいだに種々の事情が潜んでいることで、先輩に対して
敢
(
あえ
)
て無礼を働いたというわけではない。
明治劇談 ランプの下にて
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
今や本校の政治・法律を先にし而して理学に及ぼすものは、その意
敢
(
あえ
)
て理学を軽じてこれを後にせしものにあらざるべし。
祝東京専門学校之開校
(新字新仮名)
/
小野梓
(著)
男の愛情が
如何
(
いか
)
に猛烈に発現しても、女は拒む事を
敢
(
あえ
)
てしない。この
頃
(
ごろ
)
の夜のように、女が控え目でなく自由になっていた事は、これまでない。
みれん
(新字新仮名)
/
アルツール・シュニッツレル
(著)
ましてや鯉坂君のごとき、不道徳なことをまで
敢
(
あえ
)
てして、学問的興味を満足せしめようとする人は、ずいぶん焦燥を感じたのにちがいありません。
新案探偵法
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
そういう明らかな定った考があれば前に既に二度までも近寄って来た機会を
攫
(
つか
)
むに
於
(
おい
)
て
敢
(
あえ
)
て
躊躇
(
ちゅうちょ
)
するところは無い
筈
(
はず
)
だ。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
時あってこれらの動機が非常なる力を現わし来り、人をして思わず悲惨なる犠牲的行為を
敢
(
あえ
)
てせしむることも少くない。
善の研究
(新字新仮名)
/
西田幾多郎
(著)
そうして
自分
(
じぶん
)
を
哲人
(
ワイゼ
)
と
感
(
かん
)
じている……いや
貴方
(
あなた
)
これはです、
哲学
(
てつがく
)
でもなければ、
思想
(
しそう
)
でもなし、
見解
(
けんかい
)
の
敢
(
あえ
)
て
広
(
ひろ
)
いのでも
無
(
な
)
い、
怠惰
(
たいだ
)
です。
自滅
(
じめつ
)
です。
六号室
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
この点において新聞記者の猛省を乞はざるべからざる者また少からず。しかれども論旨ここにあらざれば
敢
(
あえ
)
て記さず。
従軍紀事
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
門末の私が先生について
敢
(
あえ
)
て論讚にわたる言をなすのは、おのずから
僭越
(
せんえつ
)
の
誚
(
しょう
)
を免れず、不遜の罪を免れぬであろう。
呉秀三先生
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
榎本氏の
挙
(
きょ
)
は
所謂
(
いわゆる
)
武士の
意気地
(
いきじ
)
すなわち
瘠我慢
(
やせがまん
)
にして、その
方寸
(
ほうすん
)
の中には
竊
(
ひそか
)
に必敗を期しながらも、武士道の
為
(
た
)
めに
敢
(
あえ
)
て一戦を
試
(
こころ
)
みたることなれば
瘠我慢の説:02 瘠我慢の説
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
その無慈悲を
敢
(
あえ
)
てしても、ものごとの真相を突きとめなければ、犯人の姿も
亦
(
また
)
、つきとめることが出来ないのですよ。
不連続殺人事件
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
墓を発くような詮索は、奇談クラブの名に
於
(
おい
)
ても
敢
(
あえ
)
てすべきではありません。だが、発いた事が事実と全く違って居たとしたら、どんなものでしょう。
奇談クラブ〔戦後版〕:01 第四の場合
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
それが私にとっては自己克服の精進の道として、
敢
(
あえ
)
て難きに就き、成功のない世界に向かっての義務的の向上であることが肯かれる時もあるであろう。
光り合ういのち
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
筆者は……実は、この時の会の発起人の
一人
(
いちにん
)
であった。
敢
(
あえ
)
て言を構うるのではないが、塔婆の
閨
(
ねや
)
の議には
与
(
あずか
)
らない。
露萩
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それにしてもこの人たちは、何故に自分たちのための新詩型を創造しようとしないで、三十一音の短歌形式をまもりながら彫心鏤骨を
敢
(
あえ
)
てしたのだろう。
中世の文学伝統
(新字新仮名)
/
風巻景次郎
(著)
集合的
(
しふがふてき
)
独立
(
どくりつ
)
を
望
(
のぞ
)
んで
個人的
(
こじんてき
)
独立
(
どくりつ
)
を
敢
(
あえ
)
てせざるものは
独立
(
どくりつ
)
するとも
独立
(
どくりつ
)
の
好結果
(
かうけつくわ
)
に
与
(
あづ
)
かり得ざるなり、我等は厄介者と共に独立するを甚だ迷惑に感ずるなり
時事雑評二三
(新字旧仮名)
/
内村鑑三
(著)
それに前にいった様に温雅な——
寧
(
むし
)
ろ陰気と言う方の
質
(
たち
)
だったから、
敢
(
あえ
)
て立派な
処
(
とこ
)
へ嫁に行きたいと云う様な
望
(
のぞみ
)
もない、幸い
箏
(
こと
)
は何よりも好きの道だから
二面の箏
(新字新仮名)
/
鈴木鼓村
(著)
敢
(
あえ
)
て
恥
(
はじ
)
ず、その有様を
撮
(
と
)
らせ、そのまた写真を公然と新聞に掲げていたのが、
漸
(
ようや
)
く影を見せなくなったのは、やっと、大正十二年大震後のことではないか。
明治大正美人追憶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
己
(
おのれ
)
の
珠
(
たま
)
に
非
(
あら
)
ざることを
惧
(
おそ
)
れるが
故
(
ゆえ
)
に、
敢
(
あえ
)
て刻苦して
磨
(
みが
)
こうともせず、又、己の珠なるべきを半ば信ずるが故に、
碌々
(
ろくろく
)
として
瓦
(
かわら
)
に伍することも出来なかった。
山月記
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
初めは親類縁者から金を借りた。親類縁者が、見放してしまうと、高利貸の手からさえ、借ることを
敢
(
あえ
)
てした。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「事務に懸けちゃこう云やア
可笑
(
おか
)
しいけれども、跡に残ッた奴等に
敢
(
あえ
)
て多くは譲らん積りだ。そうじゃないか」
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
如何
(
いか
)
なる
露国
(
ロシア
)
の、日本に対する圧迫、
凌辱
(
りょうじょく
)
に
依
(
よ
)
って、日本の政府が、あの
如
(
ごと
)
く日本国民を憤起させて
敢
(
あえ
)
て満洲の草原に幾万の同胞の
屍
(
しかばね
)
を
曝
(
さら
)
させたかは、当時
戦争雑記
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
罪悪と不良行為とを
敢
(
あえ
)
てして
愧
(
は
)
じず、いわゆる経済学とか社会学とか商業道徳とかいう事は講壇の空文たるに
留
(
とどま
)
って
毫
(
ごう
)
も実際生活に行われていないのである。
婦人と思想
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
灸所
(
きゅうしょ
)
の痛手に金眸は、一声
嗡
(
おう
)
と叫びつつ、
敢
(
あえ
)
なく
躯
(
むくろ
)
は倒れしが。これに心の張り弓も、一度に弛みて両犬は、左右に
摚
(
どう
)
と
俯伏
(
ひれふ
)
して、
霎時
(
しばし
)
は起きも得ざりけり。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
殊更
(
ことさら
)
それが文政天保の交の訳文だけに、一段の面白味を添えて、
敢
(
あえ
)
て新奇ではないが、幽婉なこの挿話を読んで情趣溢るる南島の空を偲ぶこと更に切であった。
南嶋を思いて:――伊波文学士の『古琉球』に及ぶ――
(新字新仮名)
/
新村出
(著)
私は同君が譲ってくれたこの興味ある記録を、そのまま私の名で活字にすることを
敢
(
あえ
)
てしたからである。
悪霊
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
と一生懸命に組付いて長二の鬢の毛を
引掴
(
ひッつか
)
みましたが、何を申すも急所の深手、諸行無常と
告渡
(
つげわた
)
る浅草寺の鐘の
音
(
ね
)
を
冥府
(
あのよ
)
へ
苞
(
つと
)
に
敢
(
あえ
)
なくも、其の儘息は絶えにけりと
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
佐久間の佐久間たるは、
己
(
おの
)
が信ずる所を公言せずんば、
敢
(
あえ
)
て休せざる光明なる勇気と、己が信ずる所にあらざれば、これを公言する
能
(
あた
)
わざるの正大なる精神とに在り。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
敢
常用漢字
中学
部首:⽁
12画
“敢”を含む語句
果敢
取敢
勇敢
不取敢
果敢無
敢行
果敢々々
不敢
果敢々々敷
石敢当
敢然
敢為
敢果
勇猛果敢
敢無
物果敢
敢爲
淺果敢
浅果敢
波疑敢問
...