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ひら
ふりがな文庫
“
披
(
ひら
)” の例文
今日もその第一頁を
披
(
ひら
)
いて眺めているうちに、雨が小ぶりになったので、再た再た読まずに、眺めただけで、書架に戻してしまった。
雨の日
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
そう云いながら
披
(
ひら
)
いたのを見ると、いつかせがまれて貸与えた翡翠の文鎮であった。お石は平之丞の熱い眸子を頬笑みながら受けた
日本婦道記:墨丸
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
「いえ、単なる文学者と云うものは
霞
(
かすみ
)
に酔ってぽうっとしているばかりで、霞を
披
(
ひら
)
いて本体を見つけようとしないから
性根
(
しょうね
)
がないよ」
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
帝はすぐ、べつな十冊の書物を
披
(
ひら
)
いてこれには
倦
(
う
)
むことをしらなかった。寝るまと食事のほかは、机によってお眼を離すこともない。
私本太平記:06 八荒帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかるに、目前に元の外務大臣、今の総理大臣広田弘毅氏の書を
披
(
ひら
)
いて、その予想外なる能書振りに一驚三嘆している次第である。
現代能書批評
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
▼ もっと見る
ここに苔しろき石燈はその数段をあらはし、全景のうへより見たるところ、おのづから一
幀
(
てい
)
の絵画を
披
(
ひら
)
くに似て、いともうるはし。
松浦あがた
(新字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
張訓もおなじく押し頂いて
披
(
ひら
)
いて見ると、どうしたわけか自分の貰った扇だけは白扇で、なにも書いてない。裏にも表にもない。
青蛙堂鬼談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
又対岸の蘭領のリオ島
外
(
ほか
)
諸島が遠近に
由
(
よ
)
つて明るい緑と
濃
(
こい
)
い
藍
(
あゐ
)
とを際立たせ
乍
(
なが
)
ら屏風の如く
披
(
ひら
)
いて居るのも蛮土とは想はれない。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
その御内意を宗祇に伝え彼を
安堵
(
あんど
)
せしめたのは、すなわち実隆その人で、その際に宗祇は御蔭で胸襟愁霧を
披
(
ひら
)
いたといっている。
東山時代における一縉紳の生活
(新字新仮名)
/
原勝郎
(著)
房奴
(
カメリエリ
)
はけふの拿破里日報(ヂアリオ、ヂ ナポリ)を持ち來りぬ。
披
(
ひら
)
きて見れば、
我
(
わが
)
假名
(
けみやう
)
あり。さきの日の初舞臺の批評なりき。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
彼に人間の魂と彼自身のとを
披
(
ひら
)
いて見せたし、彼に透視力を与えて、世の内部と、言語行為の背後にある、あらゆる究極のものとを示した。
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
彼女たちはピカピカと光る破片の上におりたち、白い
上衣
(
うわぎ
)
に明るい陽光を浴びながら、てんでに弁当を
披
(
ひら
)
いているのであった。
壊滅の序曲
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
客は
忽
(
たちま
)
ち
慚愧
(
ざんき
)
の体にて
容
(
かたち
)
を改め、貴嬢願わくはこの書を一覧あれとの事に、
何心
(
なにごころ
)
なく
披
(
ひら
)
き見れば、思いもよらぬ結婚申し込みの書なりけり。
妾の半生涯
(新字新仮名)
/
福田英子
(著)
そして菜穂子のいつも鉛筆でぞんざいに書いた手紙らしいのが来ていても、それを
披
(
ひら
)
いて妻の文句を見ようともしなかった。
菜穂子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
則重公その書を
披
(
ひら
)
き見給ふに、槍垣御坊より和泉守へ差立てたる文の態にて、東西より筑摩家の領内へ攻入らんとする
相図
(
あひづ
)
の状に紛れもなし。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
然し彼はそれを
披
(
ひら
)
かないで、二人して灰にしてしまった。彼は前にたえ子の手からそれを見せて貰ったことをとうとう隠してしまったのである。
恩人
(新字新仮名)
/
豊島与志雄
(著)
ややあって目をさまし、暮れがたき日を憾みながら、かの帳を
披
(
ひら
)
き、端から奥まで一通り繰り返してもとのごとくに収め、暇乞して帰られける。
失うた帳面を記憶力で書き復した人
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
勝手口の小さな圃に、風にでも吹かれて飛んで来たらしい小さな種子が、芽を出し、幾つかの葉を
披
(
ひら
)
いて
蓼
(
たで
)
となつたのは、夏の日のことだつた。
独楽園
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
待兼
(
まちか
)
ねたるは妻君よりも客の大原、早く我が頼み事を言出さんと思えども主人の小山
携
(
たずさ
)
え来れる大荷物を
披
(
ひら
)
くに
忙
(
せわ
)
しくて大原にまで手伝いを頼み
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
ただ我が思ふままに
馳駆
(
ちく
)
して可なり。試みに芭蕉一派の連句を
披
(
ひら
)
き見よ。その古格を破りて縦横に思想を吐き散らせし処常にその妙を
見
(
あら
)
はすを。
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
私どもは
倫敦
(
ロンドン
)
の婦人が少しの暇さえあれば家庭でも電車の中でも書物を
披
(
ひら
)
いている熱心と聡明とを学ばねばなりません。
婦人改造と高等教育
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
うまく行きそうな家は、見かけからして既に
胸襟
(
きょうきん
)
を
披
(
ひら
)
いている感じなのである。私がこの路地を黙殺してしまったのは主として地理的関係に
由
(
よ
)
る。
安い頭
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
織江が
種々
(
いろ/\
)
周旋いたしたところから、丁度十日目に松蔭大藏の
許
(
もと
)
へお
召状
(
めしじょう
)
が到来致しましたことで、大藏
披
(
ひら
)
いて見ると。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
桶
(
をけ
)
の
穴
(
あな
)
より入れさするに安五郎
忝
(
かたじ
)
けなしと何心なく
饅頭
(
まんぢう
)
を二ツに
割
(
わる
)
に中に
少
(
ちひ
)
さく
疊
(
たゝみ
)
し紙ありければ
不審
(
ふしん
)
に思ひ
披
(
ひら
)
き見るに
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
(博士がおきたる書を
披
(
ひら
)
きつつ)女の国の東海道、道中の唄だ。何とか云うのだった。この書はいくらか覚えがないと、文字が見えないのだそうだ。
海神別荘
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
机の上には、
書
(
ほん
)
が五六冊。不図其中に、黒い表紙の写生帳が目に付いた。静子は何気なく其を取つて、或所を
披
(
ひら
)
いた。
鳥影
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
披
(
ひら
)
いて観るに、前に旋頭歌一首がある。「初落髪而作歌一首。
努釈迦之教学氐曾流仁波非黒髪者速須佐之男命習氐
(
ゆめさかのをしへまなびてそるにはあらずくろかみははやすさのをのみことならひて
)
。」
伊沢蘭軒
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
一旦の悲哀よりして互に終生を棄つるなく、他日手を執りて今日を追想し、
胸襟
(
きょうきん
)
を
披
(
ひら
)
いて相語るの折もあらば、これに過ぎたる幸はあらじと存じ候……
家:01 (上)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
二人は蒲田が案外の物持てるに
驚
(
おどろか
)
されて、
各
(
おのおの
)
息を
凝
(
こら
)
して
瞪
(
みは
)
れる
眼
(
まなこ
)
を動さず。蒲田も無言の
間
(
うち
)
に他の一通を取りて
披
(
ひら
)
けば、妻はいよいよ
近
(
ちかづ
)
きて
差覗
(
さしのぞ
)
きつ。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
それゆえ出征した時も、入院中も均平はちょっと顔を合わしただけで、お互いに胸を
披
(
ひら
)
くようなことはなかった。
縮図
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
お絹はその証文をお角の前に置くと、お角は不審な
面
(
かお
)
をして煙管を投げ出し、証文を取り上げて
披
(
ひら
)
いて見ました。
大菩薩峠:10 市中騒動の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
または円朝の『
牡丹燈籠
(
ぼたんどうろう
)
』や『塩原多助』のようなものは、貸本屋の手から借りた時、
披
(
ひら
)
いて見たその挿絵が文章よりもかえって明かに記憶に
留
(
とどま
)
っている。
十六、七のころ
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
電車の中でも
紙包
(
つつみ
)
を
披
(
ひら
)
いて見た、オリーブ表紙のサイモンヅの「
伊太利
(
イタリー
)
紀行」の三冊は、十幾年来憧れていて、それも此の春漸く手に入ったものであった。
別れたる妻に送る手紙
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
俊助は野村の手紙を
披
(
ひら
)
いた時、その
半切
(
はんきれ
)
を
埋
(
うず
)
めているものは、多分父親の三回忌に関係した、家事上の
紛紜
(
ふんうん
)
か何かだろうと云う、
朧
(
おぼろ
)
げな予期を持っていた。
路上
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
その片手に眼の前の新聞の包みを引き寄せて、無雑作にガサガサ引き
披
(
ひら
)
くと、中から長方形の白木の箱が出た。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
旅行案内の
披
(
ひら
)
かれたまゝになつてゐるのを取り上げて見ると、もうそろ/\小池の汽車が大垣へ來る時刻である。大垣から米原、大津、京都、それから大阪。
兵隊の宿
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
今日——
未刻
(
やつ
)
半(三時)頃、平次のところへ、手紙を一本抛り込んだ者があったのでした、
披
(
ひら
)
いてみると
銭形平次捕物控:096 忍術指南
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
まあ少し歩きながら話そうとの
仰
(
おお
)
せで、わたくしの差上げました御消息ぶみ七八通を、片はしより
披
(
ひら
)
かれてお眼を走らせながら、坂を足早に登って行かれます。
雪の宿り
(新字新仮名)
/
神西清
(著)
披
(
ひら
)
いて見ると色々面白い事がある。牧場も創業以来已に十年、汽車も開通して、万事がこゝに第二期に入らんとして居る。既往を思えば翁も一夢の感があろう。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
ひとゝせ是を風入れするため
舗
(
みせ
)
につゞきたる
坐
(
ざ
)
しきの
障子
(
しやうじ
)
をひらき、年賀の帖を
披
(
ひら
)
き
並
(
なら
)
べおきたる所へ
友人
(
いうじん
)
来り、年賀の
作意
(
さくい
)
書画の
評
(
ひやう
)
などかたりゐたるをりしも
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
老番頭、帳面を
披
(
ひら
)
き見ながら来たる。人々を一瞥して去る。一同、軽くほっと息をして、後を見送る。
中山七里 二幕五場
(新字新仮名)
/
長谷川伸
(著)
親分とあっしが、直ぐに出向きましたが咽喉を突いて、
腑伏
(
うつぶ
)
している袖ノ井の傍にありやしたこの手紙を、親分が
披
(
ひら
)
いて見ましたので、事情はすっかり判りやした。
乳を刺す:黒門町伝七捕物帳
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
一尺余りの辮子を
披
(
ひら
)
いて方の上に振り下げ、まるで
蓬々髪
(
ほうほうがみ
)
の
劉海
(
りゅうはい
)
仙人のような恰好で立っていたのだ。
阿Q正伝
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
「千歳の後に事無からむと欲す」と、久遠の和を念じ給い、各皇子盟約の後、自ら
襟
(
えり
)
をお
披
(
ひら
)
きになって皇子達を抱かれた。そのときの憂悩の深さを思うべきである。
大和古寺風物誌
(新字新仮名)
/
亀井勝一郎
(著)
肩幅の広い、ガッシリした六十余歳の、常に鼠色の洋服を着て、半ば白くなった
顎髭
(
あごひげ
)
をもじゃもじゃと
延
(
のば
)
して、両手でこれを
披
(
ひら
)
いている。会堂の両側は
硝子窓
(
ガラスまど
)
である。
点
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
橘屋のは便りの序の通り一ぺんの
問候
(
もんこう
)
のものと合点し、母親のを半分読みさしただけで他の一本の手紙は封も
披
(
ひら
)
かず一緒に
袂
(
たもと
)
へ入れてしまって、なおも洗濯を続けた。
宝永噴火
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
当時の人々は地図を
披
(
ひら
)
いて、彼の尨大国——富力に於ても、軍艦兵器の数に於ても、遙かに我に勝りし清国に勝ちし事をば、我ながら不思議に堪えずと叫びし程なりき。
警戒すべき日本
(新字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
閑事と表記してあるのは、急を要する用事でも何んでも無いから、
忙
(
いそ
)
がしくなかったら
披
(
ひら
)
いて読め、
他
(
た
)
に心の
惹
(
ひ
)
かれる事でもあったら
後廻
(
あとまわ
)
しにしてよい、という注意である。
野道
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
此の室へまでの道路の秘密を心得た上此の室で
披
(
ひら
)
いて見れば随分思い当る所が有ったかも知れぬが、悲しい事には今はないのだ、虎井夫人が
竊
(
ぬすん
)
で養蟲園へ送って遣ったのだ
幽霊塔
(新字新仮名)
/
黒岩涙香
(著)
幽山に
登
(
のぼる
)
の興は
登
(
のぼり
)
つきたる時にあらず、
荒榛
(
くわうしん
)
を
披
(
ひら
)
き、
峭※
(
せうがく
)
を
陟
(
わた
)
る間にあるなり、栄達は
羨
(
うらや
)
むべきにあらず、栄達を得るに至るまでの
盤紆
(
はんう
)
こそ、まことに
欽
(
きん
)
すべきものなるべし。
三日幻境
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
披
常用漢字
中学
部首:⼿
8画
“披”を含む語句
披露
披瀝
披見
披露目
披閲
披払
打披
御披露
御披見
立披
文海披沙
披露宴
披露式
披講
披靡
披露旁馳走
披針形
披麻
押披
拝披
...