“手桶:ておけ” の例文
“手桶:ておけ”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花9
夏目漱石6
島崎藤村6
吉川英治5
森鴎外4
“手桶:ておけ”を含む作品のジャンル比率
社会科学 > 風俗習慣・民俗学・民族学 > 社会・家庭生活の習俗13.3%
哲学 > 心理学 > 超心理学・心霊研究9.1%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.2%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
花畠の方で、手桶ておけから柄杓ひしゃくで水を汲んでは植木に水をくれているのは、以前生家さとの方にいた姉の婿であった。
あらくれ (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
茫然とそれを見送ったお蓮様が、ふと気がつくと、手桶ておけをさげた源三郎、露草にぬれる裾を引きあげて、むこうへ帰ってゆく。
丹下左膳:03 日光の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
現時の文化は大は政治の大から小は手桶ておけの小に至るまでことごとく男子の天才によって作り上げられたものだといっていい。
惜みなく愛は奪う (新字新仮名) / 有島武郎(著)
立ち並ぶ仮屋に売り声やかましくどよんで、うす木鉢きばち手桶ておけなどの市物が、真新しい白さを見せている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
敵はこの方面へも来たなと、そーっと忍び足で近寄ると手桶ておけの間から尻尾しっぽがちらと見えたぎり流しの下へ隠れてしまった。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
台所の戸の開捨てた間から、秋の光がさしこんで、流許ながしもと手桶ておけ亜鉛盥ばけつひかって見える。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
「ガラッ八、今朝食った物へ、みんな封印をしろ。鍋や皿ばかりでなく、水甕みずがめ手桶ておけも一つ残らずやるんだ、解ったか」
床几しょうぎの前には冷たそうな小流こながれがあったから手桶ておけの水をもうとしてちょいと気がついた。
高野聖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
といひながらまだ何か話したさうに、手桶ておけ川端かはぎしへ置き、一本橋を渡つて私どものそばへ参り升た。
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
この汚いどぶのような沼地を掘返しながら折々は沙蚕ごかい取りが手桶ておけを下げて沙蚕を取っている事がある。
武蔵が声をかけると、童はこころよ手桶ておけを差し出した。武蔵は手拭を取り出して、少しばかり包もうとする、童はそれを見て、
随筆 宮本武蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ところへ裏のかけひから手桶ておけに水をんで来たかみさんが、前垂まえだれで手をきながら、
夢十夜 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
深い掘り井戸でも家に持たないかぎりのものは、女でも天秤棒てんびんぼうを肩にかけ、手桶ておけをかついで、そこから水を運ばねばならぬ。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
その一杯の水で下火になったところへ、私たちも手に手に手桶ておけを持って来て、水をかけて火を消しました。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
二人共跣足はだしになって、手桶ておけを一杯ずつ持って、無分別に其所等そこいららして歩いた。
それから (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
風呂場ふろば手桶ておけには山百合やまゆりが二本、無造作むぞうさにただほうりこんであった。
子供の病気:一游亭に (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
手桶ておけに五六ぱい流しといて、といの水を引きながら湯かき棒で掻回かきまわそうとした時です。
浴槽 (新字新仮名) / 大坪砂男(著)
間近に見える草屋根のうちから、ばあさんが古手桶ふるておけを下げて出て参り升て、私どもの腰かけてるかたはらの小川の中へ手桶ておけを浸し
黄金機会 (新字旧仮名) / 若松賤子(著)
ざあと釣瓶つるべをあけて、手桶ておけへ水を汲み入れていた。その巨大に見える鎧武者の影である。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
お豊さんは台所のたなから手桶ておけをおろして、それを持ってそばの井戸端に出て、水を一釣瓶汲ひとつるべくみ込んで、それに桃の枝を投げ入れた。
安井夫人 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「待ってくれ、怪談でいっぱいはおかしいな。誰が手桶ておけでいっぱいの怪談をぶちまけたんだ」
人を呼ぶ声、手桶ておけの水を運ぶ音、走り回る寺男や徒弟僧などのにわかな騒ぎの中で、半蔵はいちはやくかけ寄る庄助の手に後方うしろから抱き止められていた。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
老爺が手桶ておけに汲んで来てくれた水を、竹の柄杓ひしゃくで一口飲んで、余水のこりを敷居越しに往還へ投げ捨てて、柄杓を手桶に差し込んでホッと息をつく。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
起きぬけに、手桶ておけと大きなバケツとを両手に提げて、霜をんで流れに行く。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ミサ子はすばやく立って小走りに、道ばたの家へはいっていった。まもなく手桶ておけをもって出てくるのを見ると、大石先生はあごをしゃくって墓地のほうをしめしながら、
二十四の瞳 (新字新仮名) / 壺井栄(著)
水汲に行く下女なぞは頭巾ずきんを冠り、手袋をはめ、寒そうに手桶ておけを提げて出て行くが、それが帰って来て見ると、手の皮膚は裂けて、ところどころ紅い血が流れた。
岩石の間 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
竹の手桶ておけと焼き物の金魚とで、余念なく遊んでいる虻蜂蜻蛉あぶはちとんぼ、——狭い流しにはそういう種々雑多な人間がいずれも濡れた体をなめらかに光らせながら
戯作三昧 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
手桶ておけを右の手にげているので、足のさしに都合が悪い。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
冷水れいすいをたたえた手桶ておけ小柄杓こびしゃく、それに、あせどめの白布はくふをそえてはこんできた若い武士ぶしがある。一同にその使用をすすめたのち、
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
その男はきれいな手桶ておけを二つ、天秤棒てんびんぼうで担いでやって来た。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
すぐに跡から小形の手桶ておけ柄杓ひしゃくを投げ入れたのを持って出た。
百物語 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
女子が嫁に行くとき持参する第一の要具は、墓掃除の手桶ておけであるそうだ。
迷信と宗教 (新字新仮名) / 井上円了(著)
春の日はきのうのごとく暮れて、折々の風に誘わるる花吹雪はなふぶきが台所の腰障子の破れから飛び込んで手桶ておけの中に浮ぶ影が、薄暗き勝手用のランプの光りに白く見える。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
庫裡くり手桶ておけを借りて、水をくんで、手ずから下げて裏へ回った。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
さらに手桶ておけというものが発明せられて、あまり遠くない井戸からならば
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
手桶ておけを提げて井戸に通う路は、柿の落葉で埋まった日もあり、霜溶しもどけのぐちゃぐちゃで下駄の鼻緒を切らした日もあり、夷講えびすこうの朝は初雪を踏んで通いました。
旧主人 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
そのあとにトリゴーリンが、釣竿つりざお手桶ておけをさげてつづく
伴「それたらいを持って来て、手桶ておけへホレ湯を入れて来い」
お婆さんの傍にある手桶ておけの水で手を洗い、さて坐って見ますと、竹箸たけばしげて気味がわるいので、紙でいていただこうとして、「お兄さんは」と聞きますと、
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
例の書生は手桶ておけげて、表の方から裏口へ廻って来た。飲水をむ為には、唐松からまつの枝で囲った垣根の間を通って、共同の掘井戸までいかなければ成らなかった。
家:01 (上) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
例えば、樽だの、釣瓶つるべだの、手桶ておけだの、かた手桶だの、注口そそぎくちの附いたのや附かない木の酌器だの、柄杓ひしゃくだの、白樺の皮でつくった曲物まげものだの
第一鍋、かま手桶ておけなどという世帯しょたい道具の始末はどうつけたろうと、よけいなことまで考えたが、口に出して言うほどのことでもないから、べつだんの批評は加えなかった。
三四郎 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
とお源は柄杓ひしゃくで、がたりと手桶ておけの底をむ。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
手桶ておけの水で、ざっと、手を洗って、休み部屋へ、腰かけた。
山浦清麿 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
肉とあぶらと生血のにおいは屠場に満ち満ちていた。板の間の片隅には手桶ておけに足を差入れて、牛の血を洗い落している人々もある。牝牛の全部は早や車に積まれて門の外へ運び去られた。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
大勢がどやどや駈寄って、口々に荒い言葉で指図さしずし合って、燃えついている障子を屋根から外へほうりだしたり、バケツや手桶ておけ水甕みずがめの水をすくってきたりした。
入江のほとり (新字新仮名) / 正宗白鳥(著)
夜を越した手桶ておけの水は、朝に成って見ると半分は氷だ。
千曲川のスケッチ (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
湯づけを食べさせて宴を終り、一同を次の間に控えさせて、座敷に法の通りの切腹の仕度をととのえさせ、彼は庭へ降りて手桶ておけの水を三杯あびて白ムクに着かえ、その上に平時の服装をつけた。
安吾史譚:05 勝夢酔 (新字新仮名) / 坂口安吾(著)
起きようと寝ようと勝手次第、おまんまを食べるなら、冷飯おひやがあるから茶漬にしてやらっせえ、水を一手桶ておけんであら、いか、そしてまあ緩々ゆっくりと思案をするだ。
葛飾砂子 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
お延も手桶ておけげて、竹の垣を廻った。
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
与八は手桶ておけをさげて井戸端へ出かけます。
あの人もまた遣附やりつけないつまを取って、同じく駒下駄をぶら提げて、跣足はだしで、びしょびしょと立った所は、煤払すすはきの台所へ、手桶ておけ打覆ぶっかえった塩梅あんばいだろう。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
——「尋常に手桶ておけとも言わないで、バケツはどうだ。しかし水をちまくかわりに、舞台へ雑巾を掛けます。」と、月を経て、嬉しそうに元老が吹聴ふいちょうした。娘の婿にきまった時である。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
宗助は次の間にある亜鉛トタンの落しのついた四角な火鉢ひばちや、黄な安っぽい色をした真鍮しんちゅう薬鑵やかんや、古びた流しのそばに置かれた新らし過ぎる手桶ておけを眺めて、かどへ出た。
(新字新仮名) / 夏目漱石(著)
爺は手桶ておけひっさげいたり。
清心庵 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
手桶ておけ枕に立てかけありし張物板に
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
鼠色の石持こくもち、黒いはかま穿いた宮奴みやっこが、百日紅さるすべりの下に影のごとくうずくまって、びしゃッびしゃッと、手桶ておけを片手に、ほうきで水を打つのが見える、と……そこへ——
茸の舞姫 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
畑も手伝いたいと、前はおっしゃっていたが、いちど私が、およしなさいと申し上げたのに、井戸から大きい手桶ておけで畑に水を五、六ぱいお運びになり、翌日、いきの出来ないくらいに肩がこる、とおっしゃって一日、寝たきりで
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
首斬くびき手桶ておけ
牢獄の花嫁 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
半台。河岸手桶ておけ
河明り (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
と云うと、奇異なのは、宵に宰八が一杯——んで来て、——縁の端近はしぢかに置いた手桶ておけが、ひょい、と倒斛斗さかとんぼひっくりかえると、ざぶりと水をこぼしながら、アノ手でつかつかと歩行あるき出した。
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
そこへ相役の一人が供先から帰って真裸まはだかになって、手桶ておけげて井戸へ水を汲みに行きかけたが、ふとこの小姓の寝ているのを見て、「おれがお供から帰ったに、水も汲んでくれずに寝ておるかい」と言いざまに枕をった。
阿部一族 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「それは本当に大変でございますの。障子を締めると、飛んで来て、ばたばた紙にぶっ附かるでしょう。そしておっこって、廊下をがさがさ這い廻るのを、男達がさらって、手桶ておけの底に水を入れたのを持って来て、その中へ叩き込んで運んできますの」
青年 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
手桶ておけ薬缶抔やかんなどげたる人だち我も我もと押し掛くる事故ことゆえ我ら如き弱虫は餓鬼道の競争に負けてただしりごみするのみなれば何時飯を得べくとも見えざるにぞ思ひかねて甲板の右舷より大廻りして他の口に行けばここも同じ事なり。
従軍紀事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
落ちた耳を拾って居る奴があるものか、白痴たわけめ、汲んで来たか、かまうことはない、一時に手桶ておけの水みんな面へ打つけろ、こんな野郎は脆く生きるものだ、それ占めた、清吉ッ、しっかりしろ、意地のねえ、どれどれこいつは我が背負って行ってやろう
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
そこで、ウッカリ出ると人に見つけらるるから、ドウしようかとタバコを吸いながら考えていたあたかもそのとき、境内を掃除している社僕が、神木の洞中より煙の上がるを認め、これは大変である、あの大切の木が焼けている、すぐに大手桶ておけに水をくんでその洞口へ注ぎ込んだ。
おばけの正体 (新字新仮名) / 井上円了(著)
女房はしきりに心急こころせいて、納戸に並んだ台所口に片膝つきつつ、飯櫃めしびつを引寄せて、及腰およびごし手桶ておけから水を結び、効々かいがいしゅう、嬰児ちのみかいなに抱いたまま、手許もうわの空で覚束おぼつかなく、三ツばかり握飯にぎりめし
海異記 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
つづいて、こうさけぶ声がしたので、こわいもの見たさの眼をソッと向けてみると、はかますそに、かえり血をつけた半助はんすけのすがたが、すさまじくれた大刀へ、ふたたび手桶ておけの水をそそぎなおして、つぎの者へズカリとっていったかと思うと、
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
あしたから、あなたが、ごはんをたくのですよ。まきも割ってもらわなくちゃこまるし、糠味噌ぬかみそもよくきまわして、井戸は遠いからいい気味だ、毎朝手桶ておけに五はいくんで来て台所の水甕みずがめに、あいたたた、馬鹿な亭主を持ったばかりに、あたしは十年寿命をちぢめた。
新釈諸国噺 (新字新仮名) / 太宰治(著)
「ようし! 頑張ったぞ!」と附添の者が叫んで、それを抱き上げ、私の見ている窓の下に連れて来て、用意の手桶ておけの水を、ざぶりとその選手にぶっかけ、選手はほとんど半死半生の危険な状態のようにも見え、顔は真蒼まっさおでぐたりとなって寝ている、その姿を眺めて私は、実に異様な感激に襲われたのです。
トカトントン (新字新仮名) / 太宰治(著)
水汲みずくみが手桶ておけになり、にない桶になり、また水道になった結果、女の頭の上に物をのせる練習が足りなくなったことは、もう前に話をしてしまったが、これを専門にさかななどを売りあるいた女たちも、いよいよこの運送法の変遷へんせんのために、あの古風こふうな形をやめなければならぬ時に、出あっている。
母の手毬歌 (新字新仮名) / 柳田国男(著)