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手桶
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ておけ
ふりがな文庫
“
手桶
(
ておけ
)” の例文
ばあさんが
古手桶
(
ふるておけ
)
を下げて出て参り升て、私どもの腰かけてる
側
(
かたはら
)
の小川の中へ
手桶
(
ておけ
)
を浸し、半分ほどはいつた水を重気に
持
(
もち
)
あげ升た。
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
そこへ相役の一人が供先から帰って
真裸
(
まはだか
)
になって、
手桶
(
ておけ
)
を
提
(
さ
)
げて井戸へ水を汲みに行きかけたが、ふとこの小姓の寝ているのを見て
阿部一族
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
手桶
(
ておけ
)
薬缶抔
(
やかんなど
)
を
提
(
さ
)
げたる人だち我も我もと押し掛くる
事故
(
ことゆえ
)
我ら如き弱虫は餓鬼道の競争に負けてただ
後
(
しり
)
ごみするのみなれば何時飯を
従軍紀事
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
町はすぐ引返し、
手桶
(
ておけ
)
を提げて来て足盥へうめた。蝙也はざぶっと足を入れた、いや、実は爪先が入ったくらいであろう。そのとたんに
松林蝙也
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
左手へ退場。そこに水浴び場がある気持。やがて、彼女が家に歩いて行くのが見える。そのあとにトリゴーリンが、
釣竿
(
つりざお
)
と
手桶
(
ておけ
)
を
かもめ:――喜劇 四幕――
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
▼ もっと見る
台所の戸の開捨てた間から、秋の光がさしこんで、
流許
(
ながしもと
)
の
手桶
(
ておけ
)
や
亜鉛盥
(
ばけつ
)
が
輝
(
ひか
)
って見える。青い煙は
煤
(
すす
)
けた窓から壁の外へ漏れる。
旧主人
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
勝手から持出した
手桶
(
ておけ
)
、井戸端へ行って二た
釣瓶
(
つるべ
)
まで汲み入れ、満々と水を
湛
(
たた
)
えたのを持って、東作の枕元に突っ立ちました。
銭形平次捕物控:075 巾着切りの娘
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
癇張声
(
かんばりごえ
)
に胆を冷やしてハッと思えばぐゎらり
顛倒
(
てんどう
)
、
手桶
(
ておけ
)
枕に立てかけありし張物板に、我知らず一足二足踏みかけて踏み
覆
(
かえ
)
したる
不体裁
(
ざまのな
)
さ。
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
茫然とそれを見送ったお蓮様が、ふと気がつくと、
手桶
(
ておけ
)
をさげた源三郎、露草にぬれる裾を引きあげて、むこうへ帰ってゆく。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
などと
辞
(
ことば
)
をかけたり水を汲んでやったり致しますが、妙なもので若い女が
手桶
(
ておけ
)
を持って
行
(
ゆ
)
くと「姉さん汲んで上げましょう」と云いますが
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
冷水
(
れいすい
)
をたたえた
手桶
(
ておけ
)
に
小柄杓
(
こびしゃく
)
、それに、
汗
(
あせ
)
どめの
白布
(
はくふ
)
をそえてはこんできた若い
武士
(
ぶし
)
がある。一同にその使用をすすめたのち
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
老爺が
手桶
(
ておけ
)
に汲んで来てくれた水を、竹の
柄杓
(
ひしゃく
)
で一口飲んで、
余水
(
のこり
)
を敷居越しに往還へ投げ捨てて、柄杓を手桶に差し込んでホッと息をつく。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
自分は子供ながら、この爺さんの年はいくつなんだろうと思った。ところへ裏の
筧
(
かけひ
)
から
手桶
(
ておけ
)
に水を
汲
(
く
)
んで来た
神
(
かみ
)
さんが、
前垂
(
まえだれ
)
で手を
拭
(
ふ
)
きながら
夢十夜
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
自分はすぐに顔を洗いに行った。
不相変
(
あいかわらず
)
雲のかぶさった、
気色
(
きしょく
)
の悪い天気だった。
風呂場
(
ふろば
)
の
手桶
(
ておけ
)
には
山百合
(
やまゆり
)
が二本、
無造作
(
むぞうさ
)
にただ
抛
(
ほう
)
りこんであった。
子供の病気:一游亭に
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
あの人もまた
遣附
(
やりつ
)
けない
褄
(
つま
)
を取って、同じく駒下駄をぶら提げて、
跣足
(
はだし
)
で、びしょびしょと立った所は、
煤払
(
すすはき
)
の台所へ、
手桶
(
ておけ
)
が
打覆
(
ぶっかえ
)
った
塩梅
(
あんばい
)
だろう。
沼夫人
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
現時の文化は大は政治の大から小は
手桶
(
ておけ
)
の小に至るまで
悉
(
ことごと
)
く男子の天才によって作り上げられたものだといっていい。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
日曜日の朝、かれは
樒
(
しきび
)
と山吹とを持って出かけた。
庫裡
(
くり
)
で
手桶
(
ておけ
)
を借りて、水をくんで、手ずから下げて裏へ回った。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
お婆さんの傍にある
手桶
(
ておけ
)
の水で手を洗い、さて坐って見ますと、
竹箸
(
たけばし
)
が
剥
(
は
)
げて気味がわるいので、紙で
拭
(
ふ
)
いて
戴
(
いただ
)
こうとして、「お兄さんは」と聞きますと
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
花畠の方で、
手桶
(
ておけ
)
から
柄杓
(
ひしゃく
)
で水を汲んでは植木に水をくれているのは、以前
生家
(
さと
)
の方にいた姉の婿であった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
まもなく
手桶
(
ておけ
)
をもって出てくるのを見ると、大石先生はあごをしゃくって墓地のほうをしめしながら
二十四の瞳
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
用意の
手桶
(
ておけ
)
の水を、ざぶりとその選手にぶっかけ、選手はほとんど半死半生の危険な状態のようにも見え、顔は
真蒼
(
まっさお
)
でぐたりとなって寝ている、その姿を眺めて私は
トカトントン
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
この汚い
溝
(
どぶ
)
のような沼地を掘返しながら折々は
沙蚕
(
ごかい
)
取りが
手桶
(
ておけ
)
を下げて沙蚕を取っている事がある。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
まずわたしは
斧
(
おの
)
と
手桶
(
ておけ
)
とをもって——それが夢でないならば——水をさがしに往くのである。寒い、雪の降った翌朝には水を見出すのは鉱脈占いの杖を要する仕事である。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
釣瓶
(
つるべ
)
だの、
手桶
(
ておけ
)
だの、
片
(
かた
)
手桶だの、
注口
(
そそぎくち
)
の附いたのや附かない木の酌器だの、
柄杓
(
ひしゃく
)
だの、白樺の皮でつくった
曲物
(
まげもの
)
だの、よく女が苧やいろんなくだらないものを入れる桶だの
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
手桶
(
ておけ
)
に五六ぱい流しといて、
樋
(
とい
)
の水を引きながら湯かき棒で
掻回
(
かきまわ
)
そうとした時です。棒の先にぬらりと黒い物が
絡
(
から
)
んできた。と、それに続いて、大きな白い影がゆらりと動いた。
浴槽
(新字新仮名)
/
大坪砂男
(著)
大勢がどやどや駈寄って、口々に荒い言葉で
指図
(
さしず
)
し合って、燃えついている障子を屋根から外へ
抛
(
ほう
)
りだしたり、バケツや
手桶
(
ておけ
)
で
水甕
(
みずがめ
)
の水を
掬
(
すく
)
ってきたりした。父の目も血走った。
入江のほとり
(新字新仮名)
/
正宗白鳥
(著)
ミチは超然として
蛇口
(
じゃぐち
)
の前に
突立
(
つった
)
ち、ざあざあと
手桶
(
ておけ
)
の湯を幾杯となく浴びる。
刺青
(新字新仮名)
/
富田常雄
(著)
何
(
な
)
ァに玉川の水だ、朝早くさえ汲めば汚ない事があるものかと、男役に彼は
水汲
(
みずく
)
む役を引受けた。起きぬけに、
手桶
(
ておけ
)
と大きなバケツとを両手に提げて、霜を
䠖
(
ふ
)
んで流れに行く。顔を洗う。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
横にも
竪
(
たて
)
にも水をひく工事は発達して、
掘井戸
(
ほりいど
)
は家々にちかくなり、共同の
泉
(
いずみ
)
まで
汲
(
く
)
みにゆくひつようが、多くの
村里
(
むらざと
)
ではなくなってしまった上に、さらに
手桶
(
ておけ
)
というものが発明せられて
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
湯づけを食べさせて宴を終り、一同を次の間に控えさせて、座敷に法の通りの切腹の仕度をととのえさせ、彼は庭へ降りて
手桶
(
ておけ
)
の水を三杯あびて白ムクに着かえ、その上に平時の服装をつけた。
安吾史譚:05 勝夢酔
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
女子が嫁に行くとき持参する第一の要具は、墓掃除の
手桶
(
ておけ
)
であるそうだ。
迷信と宗教
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
河岸
手桶
(
ておけ
)
。
河明り
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
門内には水を張った
手桶
(
ておけ
)
が、幾十となく並べてあり、また夜戦に備えるためだろう、ところどころに
松明
(
たいまつ
)
を組んで立ててあるのが見えた。
初夜
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
武蔵が声をかけると、童は
快
(
こころよ
)
く
手桶
(
ておけ
)
を差し出した。武蔵は手拭を取り出して、少しばかり包もうとする、童はそれを見て
随筆 宮本武蔵
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
そしておっこって、廊下をがさがさ這い廻るのを、男達が
撈
(
さら
)
って、
手桶
(
ておけ
)
の底に水を入れたのを持って来て、その中へ叩き込んで運んで
行
(
い
)
きますの
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
「ガラッ八、今朝食った物へ、みんな封印をしろ。鍋や皿ばかりでなく、
水甕
(
みずがめ
)
も
手桶
(
ておけ
)
も一つ残らずやるんだ、解ったか」
銭形平次捕物控:011 南蛮秘法箋
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
近所では火事と間違えて
手桶
(
ておけ
)
を持って飛出すもあれば
鳶口
(
とびぐち
)
を
担
(
かつ
)
いで躍り出すもあると云う
一方
(
ひとかた
)
ならぬ騒動でございます。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
黄ばんだ秋の光が葉越しにさしこんだので、深い影は地に落ちておりました。丁度、そこへ
手桶
(
ておけ
)
を提げて、水を汲んで帰って来たのが妻のお隅です。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
手桶
(
ておけ
)
を右の手に
提
(
さ
)
げているので、足の
抜
(
ぬ
)
き
差
(
さし
)
に都合が悪い。
際
(
きわ
)
どく
踏
(
ふ
)
み
応
(
こた
)
える時には、腰から上で調子を取るために、手に持ったものを
放
(
ほう
)
り
出
(
だ
)
したくなる。
永日小品
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
鼠色の
石持
(
こくもち
)
、黒い
袴
(
はかま
)
を
穿
(
は
)
いた
宮奴
(
みやっこ
)
が、
百日紅
(
さるすべり
)
の下に影のごとく
踞
(
うずく
)
まって、びしゃッびしゃッと、
手桶
(
ておけ
)
を片手に、
箒
(
ほうき
)
で水を打つのが見える、と……そこへ——
茸の舞姫
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
私が一銭銅貨をやつた時とは月と
炭団
(
たどん
)
ほどもちがふ顔して、大口にアハヽヽアハヽヽヽと笑い興じ升て、一時間余もたつたあとで
漸
(
やうや
)
く
手桶
(
ておけ
)
下げて家へはいり升た。
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
立ち並ぶ仮屋に売り声やかましくどよんで、
臼
(
うす
)
、
木鉢
(
きばち
)
、
手桶
(
ておけ
)
などの市物が、真新しい白さを見せている。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
例の東北から吹きつける雨は村の家々にはなかなか難儀なもので若い女たちは正面の入口に
手桶
(
ておけ
)
と長柄雑巾とをもって立ちはだかり侵入する水をふせぐのであるが、そういうとき
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
薪
(
まき
)
も割ってもらわなくちゃこまるし、
糠味噌
(
ぬかみそ
)
もよく
掻
(
か
)
きまわして、井戸は遠いからいい気味だ、毎朝
手桶
(
ておけ
)
に五はいくんで来て台所の
水甕
(
みずがめ
)
に、あいたたた、馬鹿な亭主を持ったばかりに
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
しきりに水をかぶっている坊主頭、竹の
手桶
(
ておけ
)
と焼き物の金魚とで、余念なく遊んでいる
虻蜂蜻蛉
(
あぶはちとんぼ
)
、——狭い流しにはそういう種々雑多な人間がいずれも濡れた体を
滑
(
なめ
)
らかに光らせながら
戯作三昧
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
住職は
頷付
(
うなず
)
いて折から
手桶
(
ておけ
)
に
樒
(
しきみ
)
と線香とを持って来た寺男に掃除すべき墓石を教え示して静に立ち去った。わたくしは墓地一面に鳴きしきる
蝉
(
せみ
)
の声を聞きながら
徐
(
おもむろ
)
に六基の古墳を展した。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
落ちた耳を拾って居る奴があるものか、
白痴
(
たわけ
)
め、汲んで来たか、
関
(
かま
)
うことはない、一時に
手桶
(
ておけ
)
の水みんな面へ打つけろ、こんな野郎は脆く生きるものだ、それ占めた、清吉ッ、しっかりしろ
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
その一杯の水で下火になったところへ、私たちも手に手に
手桶
(
ておけ
)
を持って来て、水をかけて火を消しました。母は灰を厚くかけて食事に立ったのですが、炭火がはねて蒲団に燃えついたのです。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
水汲
(
みずく
)
みが
手桶
(
ておけ
)
になり、にない桶になり、また水道になった結果、女の頭の上に物をのせる練習が足りなくなったことは、もう前に話をしてしまったが、これを専門に
魚
(
さかな
)
などを売りあるいた女たちも
母の手毬歌
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
すぐに大
手桶
(
ておけ
)
に水をくんでその洞口へ注ぎ込んだ。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
手
常用漢字
小1
部首:⼿
4画
桶
漢検準1級
部首:⽊
11画
“手”で始まる語句
手
手拭
手前
手巾
手繰
手許
手向
手綱
手際
手燭