)” の例文
猿は殺されることかと思って、苦叫絶叫して悶掻もがいたけれど、米友はらしめるだけで、事実殺す気はなかったものらしくあります。
大菩薩峠:15 慢心和尚の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と、蟄居ちっきょを命じられたという。前の辻斬をらしたはなしにも、秀忠の不興に会って、閉門を命じられたということが附随している。
剣の四君子:05 小野忠明 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくしをらして逃げられてはと自粛したためもありましょうか、わたくしに殆どその事を忘れさせるほど何事もなく済みました。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
いい捨てて、先にりたものか、今度は板戸に錠をおろして立ち去って行った。きょうまで娘のいた部屋に、その母を幽閉して——。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
平中の腹の底には矢張やはりそう云う風な己惚うぬぼれがあるので、あれ程にされてもなおりず、まだほんとうにはあきらめていなかったのであった。
少将滋幹の母 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
「間違ひありませんよ。この前の千兩箱でりて居るから、主人の徳右衞門は、直ぐ樣チュウチュウタコカイと勘定したんださうです」
うい傷じゃ、その傷もって天上御政道をみだやからあらば心行くまで打ちらせ、とまでは仰せないが、上将軍家御声がかりの直参傷じきさんきずじゃ。
だからもう戦争にはりて、どの国でも戦争を起すことはやめたと宣言しているのです。これで地球には万世の太平が来たのです。
火星探険 (新字新仮名) / 海野十三(著)
翌日も翌々日もその翌日も、寄せ手はりずまに攻めよせたが、そのつど正成の奇計によって、退却させられる憂目うきめばかりを見た。
あさひの鎧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
後にはこれにりて、いよいよという時の少し前に、眼は望遠鏡に押付けたまま、片手は鉛筆片手は観測簿で塞がっているから
喫煙四十年 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
で、長者は奴隷の体に傷をつけないで、らしめになる苦しい刑罰はないかと考えました。そして、長者の頭に一つの考えがうかみました。
宇賀長者物語 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
義輔 「あいつにはい見せしめだよ。あいつは女御更衣によごかういでなければ、どんな女にでも手を出す男だ。ちつとはらしてやる方が好い。」
好色 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
そうして、私があなたをすっかり癒してあげたら、もうこれにりて、一生婦人を遠ざけて不消化な食物をとらないようになさるのですな
外國人がいこくじん命懸いのちがけでないと旅行りよこう出來できないくにである。國民こくみんはあゝ度々たび/\地震ぢしん火災かさいなやまされてもすこしもりないものゝようである。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
これにりてその後は鏡に照したる事もなけれど、三年の間には幾多の変遷を経たれば定めて荒れまさりたらんを、贔屓目ひいきめは妙なものにて
明治卅三年十月十五日記事 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
「おれだって、好きでやっとるわけじゃないよ。一ぺん出ただけでりたけ、めようと思うけんど、そうもいかん義理あいが出来てなあ」
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
その下駄の音を聞き付けたとみえて、女は待ち兼ねたように内からぬけ出して来た。前にりたのであろう。今度は傘をすぼめて差していた。
半七捕物帳:09 春の雪解 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
⦅大抵な人は一度斯ういふ目に會ふとりるものだが、梅龍は一向平氣なものである。これからかへつて水が好きになつたと言ふのだから驚く。
梅龍の話 (旧字旧仮名) / 小山内薫(著)
みちに一騎の驕将をらすといふ一段を五行或は四行の大字にものしぬるに字行じのかたちもシドロモドロにてかつ墨のかぬ処ありて読み難しと云へば
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
雲雀の国でりていたのでさっきからだまって我慢をしていたオシャベリ姫は、もう我慢し切れなくなって吹き出しました。
オシャベリ姫 (新字新仮名) / 夢野久作かぐつちみどり(著)
日頃ならばかうなると頑固ぐわんこを云ひ張るたちであるのに、この夜は余程りたと見えて、子供は泣きじやくりをしながら、なよ/\と頭を下げた。
An Incident (新字旧仮名) / 有島武郎(著)
しこうしてこれがために教徒を殺すもの前後三十万人。それあつものるものはなますを吹く。この時において鎖国令を布く、また実にむを得ざるなり。
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
「正しい? なるほど相手が悪いことをしたんだから、これをらすのは正しいともいえる。だが、お前は誰に頼まれてそれをやったんだ。」
次郎物語:02 第二部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
もうこんどこそりたって云うでしょ、こんどこそがさめたって、——それからタバコも人の吸いがらを拾うようにして溜めるんだけれど
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
浜じゅうのお嬢さんたちは、四人の青年隊ユーゲントに手ひどく沈めにかけられ、すっかりりて誰も寄りつかなくなってしまった。
キャラコさん:07 海の刷画 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
むしろしばしば人間の慢心をらし戒めたという実例さえあって、自慢を天狗という昔からのことわざも、もはや根拠のないものになろうとしている。
山の人生 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
利き目のないのにりて、さうした交渉は作らないことに決めてゐたのであつたが、ふいと虚につけ込んで小股をすくはれたのが、腹立しかつた。
風呂桶 (新字旧仮名) / 徳田秋声(著)
りてしまって、長く敬遠していたが、その後しばらくして吉原を廻っていた朋輩が購読の申込みを受けてきて、それから配達するようになった。
安い頭 (新字新仮名) / 小山清(著)
気の毒の至りだ。おれは一ぴきりたから、胴の間へ仰向あおむけになって、さっきから大空を眺めていた。釣をするよりこの方がよっぽど洒落しゃれている。
坊っちゃん (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「でも僕は新太郎さんにはもうりました。僕を利用して置きながら肝心のことを黙っているんですもの。昨夜の興信所こうしんじょの一件なんかその手です」
脱線息子 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
らしめのために自殺してやったら? 彼奴あいつらはどんなに後悔するだろう! 自分が階段から落ちる音が耳に響いた! 上の扉が急いで開かれた。
あれにりて謹慎していなければならない倭文子さんが、半月たつかたたぬに、若い男友達をこしらえて、毎日の様に逢っているということです。
吸血鬼 (新字新仮名) / 江戸川乱歩(著)
これは静が人並外れた美人だつたので、多くの男にも苦労をさせ、女自身にも悲しい事ばかり見て来たのを思ふと、もう美人はり/\だとあつて
はじめは人皆ひとみな懊惱うるさゝへずして、渠等かれらのゝしらせしに、あらそはずして一旦いつたんれども、翌日よくじつおどろ報怨しかへしかうむりてよりのちは、す/\米錢べいせんうばはれけり。
蛇くひ (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
とくに旧幕吏の圧制にりまた欧米各国が言論の自由を貴ぶことを聞き深くこの点について自ら戒めたるがごとし。
近時政論考 (新字新仮名) / 陸羯南(著)
勧懲主義(善を勧め悪をらすべしといふ論)、及び目的主義(何か目的を置きて之に対して云々すべしといふ論)
大尉もまたさっきでりていたから、もういてこちらから各国の言葉をもって話し掛けてみようともしなかった。
ウニデス潮流の彼方 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「そればかりではありません。青木君を弄んで間接に殺しながらまだそれにもりないで、青木君の弟である……」
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
そして自ら朝鮮を侵略して行つた此猿英雄は一度でそれがらし得るつもりで、先づ廿六人の「侵略者」を長崎の立山で磔刑はりつけにし、虐殺の先鞭をつけた。
『なんといふ不心得者だらう、勘弁はならない。支那人の料理人コックの言つたやうにして、らしてやらなければ。』
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
それでもどうしても云うことを聴かない奴は、らしめる為め何千年とか何万年とかいう間、何にも食わせずに壁の中や巌の中へ魔法で封じ込めて置く——
子をつれて (新字新仮名) / 葛西善蔵(著)
君は信じてくれるだろうか? ——彼は先日、大きな棒を用意して、そいつで、僕が彼をまいて一人で本土の山中にその日を過したのをらそうとするのだ。
黄金虫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
下女はやがてスープ皿を持出して客の前に置けり。大原以前にりてや手も出さず、主人の中川が笑いながら
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
それに関口せきぐちさんと肥田ひださんは鉄道てつだうにはりたとつて、何日いつでもお馬車ばしやで。岩「なにしろ奇態きたいなもので……。 ...
明治の地獄 (新字旧仮名) / 三遊亭円朝(著)
その言ひ草がどうだらう——『さあ、そこにおとなしく坐つとるんだ。これからはフェルヂナンド王だなんて名乘ると、らしめのためにちのめされるぞ。』
狂人日記 (旧字旧仮名) / ニコライ・ゴーゴリ(著)
私はこの忍耐にんたいの教義を理解することが出來なかつた。まして彼女が自分をらしめる者に對して示した忍從には、理解することも同情することも出來なかつた。
「アア、今行く」と言って、お倉は弟の方を見て、「今度という今度は、それでも吾夫やどりましたよ。 ...
家:02 (下) (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
諸君は、わたしをしょうのない夢想家だと笑うかもしれないが、ともかくもその靄が消えるとともに、彼女の顔も玲瓏れいろうたる鏡のなかへ消え失せてしまったのである。
「ええ、もうりしましたわ。それよりか人様のおうちに働いている方が気楽でう御在ます。」
ひかげの花 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
らえゝところなもんぢやねえ、やつとのことでげるやうにしてたんだ、あんなところへなんざあけつしてくもんぢやねえ、とつても駄目だめなこつた、おらりつちやつたよ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)