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憧憬
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あこが
ふりがな文庫
“
憧憬
(
あこが
)” の例文
乱闘の場の
剣戟
(
けんげき
)
叫喚、そういうものに関わりなく、狂女特有の締りのない、
洞然
(
ぽかん
)
としたうつろの声で、しかし何かに
憧憬
(
あこが
)
れるように
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
都会の空気に
憧憬
(
あこが
)
れる彼女等はスマートな都会青年の代表のように復一に魅着の眼を向けた。それは極めて実感的な刺戟を彼に与えた。
金魚撩乱
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
かねて写真で見たやうな片眼鏡は掛けて居ない。コイヅミヤクモやロテイの書いた物を読まない前から自分も東洋に
憧憬
(
あこが
)
れて居た。
巴里より
(新字旧仮名)
/
与謝野寛
、
与謝野晶子
(著)
私が登りたいと
憧憬
(
あこが
)
れてゐたのはこれであつた。岩やヒースの境界線のこちらはどこもみな、牢獄の庭に、流謫の地に見えた。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
「鳥が鳴く
東
(
あづま
)
の空に
僥倖
(
ふさへ
)
しに、行かんと思へど
便宜
(
よし
)
も
旅費
(
さね
)
もなし」との述懐は、当時の都人士の
憧憬
(
あこが
)
れるところを露骨に歌ったものであった。
炭焼長者譚:系図の仮托と民族の改良
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
▼ もっと見る
兎角理想というものは遠方から眺めて
憧憬
(
あこが
)
れていると、結構な物だが、直ぐ実行しようとすると、
種々
(
いろいろ
)
都合の悪い事がある。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
健康な
血統
(
ちすじ
)
の子孫を設けたいものと、一心に
憧憬
(
あこが
)
れ願っていた心情がハッキリと
首肯
(
うなず
)
かれる訳で、T子が家出をした当時に
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「三面の仙境には、江戸にいる頃から
憧憬
(
あこが
)
れておりました。そこをぜひ画道修業の為に、
視
(
み
)
ておきとう御座りまする」
壁の眼の怪
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
私はまた雑草をわけ木立の中を犬のように
潜
(
くぐ
)
って崖端へ出て見はるかす町々の賑わいにはかなく
憧憬
(
あこが
)
れる子となった。
山の手の子
(新字新仮名)
/
水上滝太郎
(著)
修道院へ——それは、私が北海道へ旅立つ以前から樂しみ
憧憬
(
あこが
)
れてゐた、深く
心惹
(
こゝろひ
)
かれる一つの眼あてであつた。
処女作の思い出
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
例えば、私は幼い時から、日本へ渡って来たいと
憧憬
(
あこが
)
れた。然し、その願いが果たされたのは、横浜で病いにかゝった叔父を看護する目的からであった。
ラ氏の笛
(新字新仮名)
/
松永延造
(著)
そして、日が
経
(
た
)
つに従うて、見もせず聞きもせぬけれど、
浮名
(
うきな
)
が立って
濡衣
(
ぬれぎぬ
)
着た、その明さんが何となく、慕わしく、懐かしく、
果
(
はて
)
は恋しく、
憧憬
(
あこが
)
れる。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
昔の夢に
憧憬
(
あこが
)
れるやうな顏をして、こればかりが昔の
記念
(
かたみ
)
だといつてゐる金の吸口の煙管でタバコを喫んだ。
父の婚礼
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
山に
憧憬
(
あこが
)
れながらもうつらうつらとして、遠く身辺を離れ得なかった魂は夜の寂寥を破って山々に反響する鋭い汽笛の音に、
吃驚
(
びっくり
)
してわれに
還
(
かえ
)
ったものらしい。
奥秩父の山旅日記
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
唐土
(
もろこし
)
の山のかなたに立つ
烟
(
けむり
)
のごとく、ほとんどわれわれと没交渉のように心得、理想に
憧憬
(
あこが
)
れているという青年男女などは、日々学課をそっち
退
(
の
)
けとし、月や星を
眺
(
なが
)
め
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
……ボクさんが
憧憬
(
あこが
)
れているのは、実は、ほんとうの『星の世界』のことなのかも知れない。
キャラコさん:08 月光曲
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
自ら落着くべき故郷も無く、息ふべき宿も無く、徒らに我慾の姿に
憧憬
(
あこが
)
れて、あえぎ疲れて居る。旅の恥はかき棄てと唱へて、些かも省みる処なく、平気で不義、破廉恥を行ふ。
土民生活
(新字旧仮名)
/
石川三四郎
(著)
そして、そこの多くの女性のうちでも最も
羨望
(
せんぼう
)
される
寵妃
(
ちょうひ
)
となって、上皇の愛を賜うほどな身になった今日になってみれば、昔の
憧憬
(
あこが
)
れは、まことに幼稚な少女の夢にすぎなかった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
欧米文学の絢爛荘重なるを教えられて
憧憬
(
あこが
)
れていた時であったから
四十年前:――新文学の曙光――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
自分が卑しい側女などになったのも、蝙也という男がいたからである、——世に優れた
良人
(
おっと
)
の妻として、正しい女の道を生きよう、そう考え
憧憬
(
あこが
)
れていた乙女の夢を、
無慙
(
むざん
)
に
蹂躪
(
ふみにじ
)
ったのは蝙也である。
松林蝙也
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
あんなに
憧憬
(
あこが
)
れていた裏日本の秋は見る事が出来なかったけれども、この外房州は裏日本よりも豪快な景色である。市振から
親不知
(
おやしらず
)
へかけての民家の屋根には、沢庵石のようなのが沢山置いてあった。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
何んなにこの遠い土地に向つて
憧憬
(
あこが
)
れたらう。
時子
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
その上、母に似て恋の美しい幻影には人一倍
憧憬
(
あこが
)
れる性質の若者だ。(沈思)それに、若も明晩の音楽の競技には出場すると云うではないか。
レモンの花の咲く丘へ
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
むろん無理な註文も多いに違いないが、それでも自分の註文に
嵌
(
は
)
まった本格探偵小説を
憧憬
(
あこが
)
れ望んでいる事は決して人後に落ちないつもりである。
探偵小説漫想
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
樹々
(
きゞ
)
の
枝
(
えだ
)
に
殘
(
のこ
)
ンの
雪
(
ゆき
)
も、ちら/\と
指
(
ゆび
)
の
影
(
かげ
)
して、
大
(
おほい
)
なる
紅日
(
こうじつ
)
に、
雪
(
ゆき
)
は
薄
(
うす
)
く
紫
(
むらさき
)
の
袂
(
たもと
)
を
曳
(
ひ
)
く。
何
(
なん
)
に
憧憬
(
あこが
)
るゝ
人
(
ひと
)
ぞ。
歌
(
うた
)
をよみて
其
(
そ
)
の
枝
(
えだ
)
の
紅梅
(
こうばい
)
の
莟
(
つぼみ
)
を
解
(
と
)
かんとするにあらず。
婦人十一題
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
生活の向上に
憧憬
(
あこが
)
れる事を知らぬ桃源場裏の村落へ行ってみると、一・二室しかない粗末なる家に荒蓆を敷いて一家族が団欒し、所謂父はててらに
婦
(
め
)
はふたのした気軽な暮らしに
特殊部落と細民部落・密集部落
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
かつてゲーテを
賞
(
ほ
)
めたなかに、青年はとかくシラーに
憧憬
(
あこが
)
れて、ゲーテを
疎
(
うと
)
んずるの傾向があるが、三十歳に至れば、
思慮
(
しりょ
)
もやや
熟
(
じゅく
)
し、人生のなにものたるかもいくぶんか判明し
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
「杉右衛門の娘の俺の
許婚
(
いいなずけ
)
、あの美しい山吹が、部落を捨て俺を見限り下界の虚栄に
憧憬
(
あこが
)
れて多四郎めと駈け落ちした」
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
骨の髄までシャブリ上げられたら、どんなにかいい心持ちであろう……というような、たまらない慾望に
憧憬
(
あこが
)
れつつある……そうして伊奈子のスゴ腕にかかって
鉄鎚
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
其の白妙が、めされて都に
上
(
のぼ
)
ると言ふ、都鳥の
白粉
(
おしろい
)
の胸に、ふつくりと
心魂
(
こころだましい
)
を
籠
(
こ
)
めて、肩も身も翼に入れて
憧憬
(
あこが
)
れる……其の都鳥ぢや。何と、
遁
(
に
)
げる
処
(
どころ
)
ではあるまい。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
憧憬
(
あこが
)
れるように呟いた。山を越したらいい国があろう! 山国に育った少年の、おおかた起こす空想であった。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それは彼が永いこと飢え、
憧憬
(
あこが
)
れて来たチャブ屋の赤い光りとは全然違った赤さであった。又、彼が時々刻々に警戒して来た駐在所や、鉄道線路の赤ラムプの色とも違っていた。
白菊
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
些
(
ち
)
と荒唐無稽に過ぎるようですが、
真実
(
まったく
)
で、母
可懐
(
なつかし
)
く、妹恋しく、唯心も
空
(
そら
)
に
憧憬
(
あこが
)
れて、ゆかりある女と言えば、日とも月とも思う年頃では、全く
遣
(
や
)
りかねなかったのでございます。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
虚栄虚飾に
憧憬
(
あこが
)
れている山の乙女山吹の心をその本来の質朴の心へ返そうとしているのは確からしいが、はたして山吹は彼の言を聞き元の乙女に立ち返るか
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
諸君は常識の世界に住んでいながら、非常識の世界に
憧憬
(
あこが
)
れている人々である。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
藤
(
ふぢ
)
の
花
(
はな
)
の
紫
(
むらさき
)
は、
眞晝
(
まひる
)
の
色香
(
いろか
)
朧
(
おぼろ
)
にして、
白日
(
はくじつ
)
、
夢
(
ゆめ
)
に
見
(
まみ
)
ゆる
麗人
(
れいじん
)
の
面影
(
おもかげ
)
あり。
憧憬
(
あこが
)
れつゝも
仰
(
あふ
)
ぐものに、
其
(
そ
)
の
君
(
きみ
)
の
通
(
かよ
)
ふらむ、
高樓
(
たかどの
)
を
渡
(
わた
)
す
廻廊
(
くわいらう
)
は、
燃立
(
もえた
)
つ
躑躅
(
つゝじ
)
の
空
(
そら
)
に
架
(
かゝ
)
りて、
宛然
(
さながら
)
虹
(
にじ
)
の
醉
(
ゑ
)
へるが
如
(
ごと
)
し。
月令十二態
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
こう如何にも
憧憬
(
あこが
)
れるように、陣十郎が云いだしたのは、かなり間を経た後のことであった。
剣侠
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
珠
(
たま
)
か、
黄金
(
こがね
)
か、
世
(
よ
)
にも
貴
(
たうと
)
い
宝什
(
たから
)
が
潜
(
ひそ
)
んで、
気
(
き
)
の
群立
(
むらだ
)
つよ、と
憧憬
(
あこが
)
れながら、
風
(
かぜ
)
に
木
(
き
)
の
葉
(
は
)
の
音信
(
たより
)
もなければ、もみぢを
分入
(
わけい
)
る
道
(
みち
)
も
知
(
し
)
らず……
恰
(
あたか
)
も
燦爛
(
さんらん
)
として
五彩
(
ごさい
)
に
煌
(
きら
)
めく、
天上
(
てんじやう
)
の
星
(
ほし
)
を
指
(
ゆびさ
)
しても
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
同窓の少女たちは、めいめいに好き勝手な雑誌や、書物や、活動のビラみたようなものを持ちまわって、美しい化粧法や、編物や、又はいろいろなローマンチックな夢なんぞに
憧憬
(
あこが
)
れておられます。
少女地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
それはもう決して無邪気な童心な、小娘などの声ではなく、肉体も感情も成熟し、異性に
憧憬
(
あこが
)
れ恋の苦しみに、さいなまれている女の苦しみ——それを現わした声であった。
あさひの鎧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
恍惚
(
うっとり
)
となるような、まあ例えて言えば、
芳
(
かんば
)
しい清らかな乳を含みながら、生れない
前
(
さき
)
に腹の中で、美しい母の胸を見るような心持の——唄なんですが、その文句を忘れたので、命にかけて、
憧憬
(
あこが
)
れて
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
将しく彼女には審美眼がある。だが
以前
(
むかし
)
の彼女には、すくなくともマチスに
憧憬
(
あこが
)
れるような、そんな繊細な審美眼は、なかったように思われる。長足の進歩をしたものさなあ。
銀三十枚
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
わざと途中、
余所
(
よそ
)
で聞いて、虎杖村に
憧憬
(
あこが
)
れ
行
(
ゆ
)
く。……
雪霊記事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
暖かい人情に
憧憬
(
あこが
)
れながら、産れ故郷の甲府を差して、仮面の城主は歩いて行った。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
故
(
わざ
)
と
途中
(
とちう
)
、
餘所
(
よそ
)
で
聞
(
き
)
いて、
虎杖村
(
いたどりむら
)
に
憧憬
(
あこが
)
れ
行
(
ゆ
)
く。……
雪霊記事
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
「これをお前から越中へ——定信の手へ渡してくれ。……
妾
(
わたし
)
から渡すのでござりますのね」という、若い女の情熱的の、しかしあどけない
憧憬
(
あこが
)
れるような、涙を誘うような声であった。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
何とこうした時は、見ぬ恋にも
憧憬
(
あこが
)
れよう。
雛がたり
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と城主は
憧憬
(
あこが
)
れるように云った。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
“憧憬”の意味
《名詞》
憧 憬(しょうけい、どうけい)
憧れること。
(出典:Wiktionary)
憧
常用漢字
中学
部首:⼼
15画
憬
常用漢字
中学
部首:⼼
15画
“憧憬”で始まる語句
憧憬家
憧憬心
憧憬者
憧憬讃美