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悴
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せがれ
ふりがな文庫
“
悴
(
せがれ
)” の例文
一にも二にも
悴
(
せがれ
)
のおかげだと言って喜んでいるのが江戸では評判で、それを見聞きするほどのものが、ゆかしがらぬ者はないという。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
農林学校
出身
(
で
)
の、地主の
悴
(
せがれ
)
の
欣之介
(
きんのすけ
)
は毎日朝早くから日の暮れるまで、作男の庄吉を相手に彼の
整頓
(
せいとん
)
した農園の中で余念なく労働した。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
さて、その次に来た弟子は日本橋馬喰町の裏町に玉村という餅菓子屋がありましたが、その直ぐ隣りの
煎餅屋
(
せんべいや
)
の
悴
(
せがれ
)
長次郎という若者でした。
幕末維新懐古談:77 西町時代の弟子のこと
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「じつは、
悴
(
せがれ
)
のいっている
戦地
(
せんち
)
から、ラジオでむこうのようすがわかるというので、ぜひききたいと
思
(
おも
)
ってやってきました。」
夜の進軍らっぱ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
心の闇に迷いまして一通りの間違いではない、原丹治と密通をいたし、現在の娘を
唆
(
そゝの
)
かして
己
(
おのれ
)
の
密夫
(
みっぷ
)
の
悴
(
せがれ
)
丹三郎と密通させ
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
▼ もっと見る
「子供だと思って私をなぶるのはよして下さい。私は百姓の
悴
(
せがれ
)
で、こんな長者の内の婿になるような者ではありません。」
三人兄弟
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
「
麹町
(
こうじまち
)
に
住居
(
すまい
)
いたす法月一学の
悴
(
せがれ
)
。江戸ではかねて御高名を承っておりましたが、お目にかかるのは初めてにござります」
鳴門秘帖:01 上方の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
藤崎道十郎と更めて居たりしが妻お光は當年三歳に成し
悴
(
せがれ
)
の道之助を
懷
(
ふとこ
)
ろにして店請人赤坂傳馬町治郎兵衞店に
小切商
(
こぎれあきな
)
ひを
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
房氏銀三十両を結納金に貰うて衛氏に改嫁し、更にその金を結納として
悴
(
せがれ
)
可立のために呂月娥てふ十八歳の
婦
(
よめ
)
を迎えた。
十二支考:11 鼠に関する民俗と信念
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
「実は御国の
御母
(
おつか
)
さんがね、
悴
(
せがれ
)
が色々御世話になるからと云つて、結構なものを送つて
下
(
くだ
)
さつたから、
一寸
(
ちよつと
)
あなたにも御礼を云はうと思つて……」
三四郎
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
悴
(
せがれ
)
と嫁の絶えない
争論
(
いさかい
)
の
為
(
た
)
めか
新
(
あらた
)
に幾本目かの皺が
面
(
おもて
)
にはっきり刻まれていたが、でも彼女は
未
(
ま
)
だまんざら捨てたものではないと独りで決めていた。
目撃者
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
が、母は私を信じている上に、
悴
(
せがれ
)
の大事な嫁としてナオミに対しても慈愛を持っていたことは、二三日してから
手許
(
てもと
)
に届いた返辞を見ても分りました。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「あんな不孝な
悴
(
せがれ
)
や、わがままの嫁は、惜しくはない。それよりかお前は早く家へ帰って、早く金をこしらえて、わしの大事な財産を買いもどしてくれ。」
珊瑚
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
ちょうど
幸
(
さいわ
)
い小山さん御夫婦が
悴
(
せがれ
)
の事を御心配下さるから小山さん御夫婦にお願い申したらよかろうとこういう
発議
(
ほつぎ
)
で外の人もそれまで打破る事が出来ず
食道楽:秋の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
左衞門は
然
(
さ
)
さもありなんと
打點頭
(
うちうなづ
)
き、『それでこそ茂頼が
悴
(
せがれ
)
、早速の分別、父も安堵したるぞ、此上の願とは何事ぞ』。『今日より永のおん
暇
(
いとま
)
を給はりたし』
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
彼女
(
あい
)
の事じゃ、わたしも実に困いましたよ。銭はつかう、
悴
(
せがれ
)
とけんかまでする、そのあげくにゃ
鬼婆
(
おにばば
)
のごと言わるる、得のいかン
媳御
(
よめご
)
じゃってな、山木さん——。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
それを他人の家の猫を借りて来たような変哲もない芸妓を貰い込んでしまったので、わたしに対する熱意は薄らいだが、なお
悴
(
せがれ
)
に日本一になって貰う事には未練がある。
生々流転
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
そんな金持ちであるからこそ様様に服装をかえたりなんかしてみることもできるわけで、これも謂わば地主の
悴
(
せがれ
)
の
贅沢
(
ぜいたく
)
の一種類にすぎないのだし、——そう考えてみれば
ダス・ゲマイネ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
今年は
悴
(
せがれ
)
に任しときましたから、
彼奴
(
あいつ
)
はまたどんな風にするか……私の時には昔からそうでした
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
ウィンパーの一行は登る時には、クロス、それから次に年を取った方のペーテル、それからその
悴
(
せがれ
)
が二人、それからフランシス・ダグラス
卿
(
きょう
)
というこれは身分のある人です。
幻談
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
これは
本當
(
ほんたう
)
です、
現
(
げん
)
に
私
(
わたくし
)
の
一人
(
ひとり
)
の
悴
(
せがれ
)
も、七八
年
(
ねん
)
以前
(
いぜん
)
の
事
(
こと
)
、
私
(
わたくし
)
が
切
(
せつ
)
に
止
(
と
)
めるのも
聽
(
き
)
かで、十
月
(
ぐわつ
)
の
祟
(
たゝり
)
の
日
(
ひ
)
に
家出
(
いへで
)
をしたばかりに、
終
(
つひ
)
に
世
(
よ
)
に
恐
(
おそ
)
ろしい
海蛇
(
うみへび
)
に
捕
(
と
)
られてしまいました。
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
「出るかの。直ぐ出るかの。
悴
(
せがれ
)
が死にかけておるのじゃが、間に合わせておくれかの?」
蠅
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
渠
(
かれ
)
のいふ所によると、これでも
舊
(
もと
)
は「
大政
(
たいまさ
)
」ともいはれた名たたる棟梁の
悴
(
せがれ
)
である。
もつれ糸
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
一ヶ月程たって、東野南次の収入の総計は、
何
(
な
)
んと金一円五十銭也と、干し
藷
(
いも
)
が三
片
(
きれ
)
也、これはビルディングの
小母
(
おば
)
さんに頼まれて、北海道にいる
悴
(
せがれ
)
へ書いた手紙のお礼だったのです。
奇談クラブ〔戦後版〕:05 代作恋文
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
折々老人などが
悴
(
せがれ
)
の教育のために何千円
費
(
ついや
)
したというを聞くことがある。かく何事も金で計算する。人の働きはいうまでもなく、人格さえも金額で計るようになりはせぬかと思われる。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
馬車から行李を運ばせたりしているうちに、頼んで置いた嘉代吉(老猟師嘉門次の
悴
(
せがれ
)
)も、仕度が出来て待っているというので、
単衣
(
ひとえ
)
を洋服に着換えるやら、
草鞋
(
わらじ
)
を引きずり出すやらで
谷より峰へ峰より谷へ
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
親がその名であったから
悴
(
せがれ
)
も差支えないことと思い、隣村の地主がそれであったから自分もそれにしようくらいに、だんだん自分で勝手につける事になってしまって、三万の太郎左衛門
名字の話
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
「……
悴
(
せがれ
)
あ監獄さ行くだし婆あと来ちゃ気い違うだ」老人は深く溜息をついた。
土城廊
(新字新仮名)
/
金史良
(著)
母は
悴
(
せがれ
)
の心尽くしですから、魚もきらいな人がこれだけは喜んで食べ、
味噌
(
みそ
)
や
醤油
(
しょうゆ
)
につけなどして
貯
(
たくわ
)
えて食べたりしました。
幕末維新懐古談:23 家内を貰った頃のはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
「
吹雪
(
ふぶき
)
がやんでしあわせです。
悴
(
せがれ
)
も
出征
(
しゅっせい
)
していますので、
私
(
わたし
)
も、お
見送
(
みおく
)
りさせてもらいます。」と、おじいさんは、みんなの
中
(
なか
)
へ
加
(
くわ
)
わりました。
夜の進軍らっぱ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
彼
(
か
)
の春見は清水助右衞門の
悴
(
せがれ
)
重二郎がいう通り、利子まで添えて三千円の金を返したのは、
横着者
(
おうちゃくもの
)
ながら、どうか此の事を
内聞
(
ないぶん
)
にして貰いたいと
西洋人情話 英国孝子ジョージスミス之伝
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
ばた/\と
馳來
(
はせくる
)
人音
(
ひとおと
)
に越前守
悴
(
せがれ
)
暫
(
しば
)
しと
押止
(
おしとゞ
)
め何者なるやと尋ぬれば紀州よりの
先觸
(
さきぶれ
)
と呼はりける越前守是を聞き
先觸
(
さきぶれ
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
二十四の盛りで、三ツの
悴
(
せがれ
)
に家督を譲りたい、それは悪い了簡以上の図々しさだと、主膳が呆れて次を読むと
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
といって優しく
訊
(
き
)
いても黙って返事をしなかった。そこへ呉が遊びに来た。母親は呉に
悴
(
せがれ
)
の秘密をそっと聞いてくれと頼んだ。そこで呉は王の室へ入っていった。
嬰寧
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
然
(
さ
)
れば小松殿も時頼を
末
(
すゑ
)
頼母
(
たのも
)
しきものに思ひ、行末には御子維盛卿の
附人
(
つきびと
)
になさばやと常々目を懸けられ、左衞門が
伺候
(
しこう
)
の折々に『茂頼、
其方
(
そち
)
は善き
悴
(
せがれ
)
を持ちて
仕合者
(
しあはせもの
)
ぞ』
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
悴
(
せがれ
)
がモー学校を卒業しましたから安心だというが学校を卒業したのは社会に対する
初声
(
うぶごえ
)
を
挙
(
あ
)
げたので、まだ
匍
(
は
)
う事も立つ事も出来ない人間を野放しに置かれて
溜
(
た
)
まるものでない。
食道楽:冬の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
悴
(
せがれ
)
=六つでした=がこう
寝
(
やす
)
んでいます
枕
(
まくら
)
もとで書き置きを書いていますと、悴が夢でも見たのですか、眠ったまま右の手を伸ばして「
母
(
かあ
)
さま、行っちゃいやよ」と申すのですよ。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
その時弥勒仏生まれて
成道
(
じょうどう
)
し、
件
(
くだん
)
の聖王その
悴
(
せがれ
)
九百九十九人と弟子となって出家し一子のみ出家せずに王位を
嗣
(
つ
)
ぐ。弥勒世尊、
翅頭末
(
しとうまつ
)
城外
(
じょうがい
)
の
金剛荘厳道場
(
こんごうしょうごんどうじょう
)
竜華菩提樹下
(
りゅうげぼだいじゅげ
)
で成道する。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
また父が達者でいる間に
悴
(
せがれ
)
の太郎が成人して、世間の
交際
(
つきあい
)
を初めるようになると、仕方がないから家柄の家でも、区別するために太郎太郎ともいえぬから小太郎、新太郎などといっております。
名字の話
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
母親
(
おふくろ
)
は源を休ませて置いて、炉辺で握飯をこしらえました。父親も不幸な
悴
(
せがれ
)
の為に明日履く
草鞋
(
わらじ
)
を作りながら、
深更
(
おそく
)
まで二人で起きていたのです。度を過した疲労の為に、源もおちおち寝られません。
藁草履
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
以て
紀州表
(
きしうおもて
)
へ調方に
遣
(
つか
)
はし候ひしが今朝
漸
(
やうや
)
く
歸府
(
きふ
)
仕つり逐一
相糺
(
あひたゞ
)
し候處當時八山に
旅宿
(
りよしゆく
)
致し居天一坊といふは
元
(
もと
)
九州
浪人
(
らうにん
)
原田嘉傳次と申者の
悴
(
せがれ
)
にて
幼名
(
えうみやう
)
を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
本多西雲君は
深川
(
ふかがわ
)
木場
(
きば
)
の人。鹿島岩蔵氏の番頭さんの
悴
(
せがれ
)
で、鹿島氏の援助で私の
許
(
もと
)
へ来て稽古し一家を
為
(
な
)
した。
幕末維新懐古談:79 その後の弟子の事
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
私
(
わたくし
)
は文治郎の母でございますが、生憎今日は他出致しましたが、誠に年を取って居りますから
悴
(
せがれ
)
が
余所
(
よそ
)
様でお
交際
(
つきあい
)
を致しましたお方は一向存じませんから
業平文治漂流奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
やよ
悴
(
せがれ
)
、今言ひしは慥に齋藤時頼が眞の言葉か、幼少より
筋骨
(
きんこつ
)
人に勝れて逞しく、膽力さへ
座
(
すわ
)
りたる其方、行末の出世の程も頼母しく、我が
白髮首
(
しらがくび
)
の
生甲斐
(
いきがひ
)
あらん日をば
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
「
悴
(
せがれ
)
よ、おまえのために、
私
(
わたし
)
までが
鼻
(
はな
)
が
高
(
たか
)
いぞ。」と、
老人
(
ろうじん
)
は、
心
(
こころ
)
の
中
(
なか
)
でいうのでした。
夜の進軍らっぱ
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
小翠は美しいうえにまたひどく
慧
(
りこう
)
であった。能く
翁
(
しゅうと
)
姑
(
しゅうとめ
)
の顔色を
窺
(
み
)
て
事
(
つか
)
えた。王夫妻もなみはずれて小翠を可愛がった。それでも二人は嫁が馬鹿な
悴
(
せがれ
)
を嫌いはしないかと思って恐れた。
小翠
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
「こういわれてみると
悴
(
せがれ
)
の言う所も無理はない」と両眼を閉じ腕を
拱
(
こまぬ
)
きて黙然たり。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
死んだ親父もこいつのためにはどのくらい苦労をしたか、死んで、
悴
(
せがれ
)
の方ではガッカリシタの一句で片づけているが、相当に無常を感じたことは、何モイヤニナッタの
自暴
(
やけ
)
半分の言葉つきでもわかる。
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
日本橋通り一丁目の
須原屋茂兵衛
(
すはらやもへえ
)
の出版した『江戸名所
図会
(
ずえ
)
』を専門に
摺
(
す
)
った人で、奥村藤兵衛さんの
悴
(
せがれ
)
の藤次郎さん、……これがその東雲という方なんで
幕末維新懐古談:03 安床の「安さん」の事
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
自然の移り変りを数えて
三年
(
みとせ
)
の月日を数えてきたが、今年六歳になったと思っていた幼い
悴
(
せがれ
)
が、わしが家を出る時、「いっしょに行く」といってきかないのを
現代語訳 平家物語:03 第三巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
悴
漢検1級
部首:⼼
11画
“悴”を含む語句
憔悴
尽悴
御憔悴
悄悴
悴儀
悴夫婦
悴槁
悴然
惟悴
焦悴