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帛
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きぬ
ふりがな文庫
“
帛
(
きぬ
)” の例文
私は、家の前の戸口に立って、青白い薄い
帛
(
きぬ
)
をこの世の上にかけたような、草木の葉の、色艶も失せて凋れている景色を眺めた。
夜の喜び
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
三人の登って行くところから十四五間も右手に、雪まみれになって倒れている者があった……汗止めの白い
帛
(
きぬ
)
が鮮かに三人の眼にしみた。
夜明けの辻
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
道義の力、習俗の力、機会一度至ればこれを破るのは
帛
(
きぬ
)
を裂くよりも容易だ。
唯
(
ただ
)
、容易に
来
(
きた
)
らぬはこれを破るに至る機会である。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
明智がここまで喋った時、邸内のどこかで
帛
(
きぬ
)
を裂く様な女の悲鳴が聞えた。伯爵も明智も座に居合わせた波越警部も、ハッと聞き耳を立てた。
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
たちまちレールは
山角
(
さんかく
)
をめぐりぬ。両窓のほか青葉の山あるのみ。後ろに聞こゆる
帛
(
きぬ
)
を裂くごとき一声は、今しもかの列車が西に走れるならん。
小説 不如帰
(新字新仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
▼ もっと見る
馬車に乗っていたのは若い外国婦人で、これも
帛
(
きぬ
)
を裂くような声をあげた。私を
轢
(
ひ
)
いたと思ったからである。私も無論に轢かれるものと覚悟した。
御堀端三題
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
われは
眦
(
まなじり
)
を決して東のかたヱネチアを望みたるに、一群の飛鳥ありて、列を成してかなたへ飛び行くさま、一片の
帛
(
きぬ
)
の風に翻弄せらるゝに似たり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
心當
(
こゝろあて
)
にかなたと思はるる方をぢつと見てゐると眞白な霧の中に薄々と、薄青い
帛
(
きぬ
)
を下げたやうにそれとうなづかるゝものがかすかに透かして見えた。
華厳滝
(旧字旧仮名)
/
幸田露伴
(著)
さう思つてゐると、又カンバスを引き裂いてゐるらしい、
帛
(
きぬ
)
を裂く激しい音が聞えた。瑠璃子は、思はず両手で、顔を掩うたまゝかすかに顫へてゐた。
真珠夫人
(新字旧仮名)
/
菊池寛
(著)
雲雀
(
ひばり
)
の唄う声をまねているくらいで、あの彼女が持ち前のキキという
帛
(
きぬ
)
を裂くようなはげしい声はあげないのだ。
探巣遅日
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
説教の坊さんの声が、
俄
(
にはか
)
におろおろして変りました。穂吉のお母さんの
梟
(
ふくろふ
)
はまるで
帛
(
きぬ
)
を裂くやうに泣き出し、一座の女の梟は、たちまちそれに
従
(
つ
)
いて泣きました。
二十六夜
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
常にキヌの襟と袖とに花やかな
帛
(
きぬ
)
を付けるのを、元来が襦袢だから身ごろだけには倹約をしたためと見る人は、いわば自分のあたじけなさをもって他を推すもので
雪国の春
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
余りの犠牲に、佐久間勢のうちの一部将が、
帛
(
きぬ
)
を
裂
(
さ
)
くような声で叫んでいた。——が、それにしても、多数の行動を変じるにも自然、
遅鈍
(
ちどん
)
ならざるを得ないのである。
新書太閤記:09 第九分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
恭一は、
帛
(
きぬ
)
をさくような声で、そう叫ぶと、敷蒲団の上につっぷして、はげしく息ずすりをした。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
とたんに「ヒェーッ」と
帛
(
きぬ
)
を裂くような凄じい掛け声が掛かったかと思うとピューッと空を抜く矢走りの音に続いて聞こえる
弦返
(
つるがえ
)
りの響き! しかしそれより驚いたのは
日置流系図
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
玉は
帛
(
きぬ
)
を引き裂いてそれをくるんでやった。女は気がまわって来て始めて
呻
(
うめ
)
きながらいった。
阿英
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
さうして朱塗のやうな袖格子が、ばら/\と焼け落ちる中に、のけ
反
(
ぞ
)
つた娘の肩を抱いて、
帛
(
きぬ
)
を裂くやうな鋭い声を、何とも云へず苦しさうに、長く煙の外へ飛ばせました。
地獄変
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
晏平仲嬰
(
あんぺいちうえい
)
は、
(三六)
莱
(
らい
)
の
夷維
(
いゐ
)
の
人
(
ひと
)
也
(
なり
)
。
齊
(
せい
)
の
靈公
(
れいこう
)
・
莊公
(
さうこう
)
・
景公
(
けいこう
)
に
事
(
つか
)
へ、
節儉力行
(
せつけんりよくかう
)
を
以
(
もつ
)
て
齊
(
せい
)
に
重
(
おも
)
んぜらる。
既
(
すで
)
に
齊
(
せい
)
に
相
(
しやう
)
として、
(三七)
食
(
しよく
)
は
肉
(
にく
)
を
重
(
かさ
)
ねず、
妾
(
せふ
)
は
(三八)
帛
(
きぬ
)
を
衣
(
き
)
ず。
国訳史記列伝:02 管晏列伝第二
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
彼がこう云う途端に、女の
帛
(
きぬ
)
を裂くような
悲叫
(
さけび
)
! 恐怖のために狂乱してしまった咽喉から絞り出た、血も吐くような女の
悲叫
(
さけび
)
が、私たちの前方の籔のかげから聞こえて来た。
自転車嬢の危難
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
帛
(
きぬ
)
をさくやうな、さしせまつた、異常な恐怖を訴へる、誰れにともない救急の呼びごゑのやうな節も感ぜられたし、かと思ふと、そこの入江にのぞんで建つてゐる料亭の広間で
海辺の窓
(新字旧仮名)
/
三好達治
(著)
馬を
度
(
はか
)
ると一匹長かった故とか、馬死んで売ると
帛
(
きぬ
)
一匹得たからとか種々の説を列べた中に、〈あるいはいわく、馬は夜行くに目明るく前四丈を照らす、故に一匹という〉とある。
十二支考:05 馬に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
さと
帛
(
きぬ
)
を裂くが如き四絃一撥の琴の音に
連
(
つ
)
れて、繁絃急管のしらべ洋々として響き亙れば、堂上堂下
俄
(
にはか
)
に
動搖
(
どよ
)
めきて、『あれこそは隱れもなき四位の少將殿よ』、『して
此方
(
こなた
)
なる
壯年
(
わかうど
)
は』
滝口入道
(旧字旧仮名)
/
高山樗牛
(著)
弱い
帛
(
きぬ
)
を長く裂いてゆくように泣き続けて、やがて
咽
(
むせ
)
び
入
(
い
)
るようになって消えたかと思うと、また物悲しそうに泣く
音
(
ね
)
を立てて
欷歔
(
しゃく
)
り上げる泣き声が、いじらしくてたまらなく聞えます。
大菩薩峠:14 お銀様の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
といった葉子の声は低いながら
帛
(
きぬ
)
を裂くように
疳癖
(
かんぺき
)
らしい調子になっていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
玉をまろがすと言つては明るきに過ぎ、
帛
(
きぬ
)
を裂くと言つては鋭きに過ぐる。
梅雨紀行
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
「怖くないように
帛
(
きぬ
)
で眼隠しをしてやる。なあに、すぐすんでしまうから」
無月物語
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
どんな
帛
(
きぬ
)
を、どんな形に裁ち縫ひしたものか知らないが、この不思議な
嚢
(
ふくろ
)
を腰に下げて高山に登り、白雲のたよたよと揺れ動いてゐるなかを渉り歩くと、別に嚢の口を開かうともしないのに
独楽園
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
すると、
傍
(
かたわ
)
らにごろ寝していた小屋係りの一人がぎりぎりと歯を
軋
(
きし
)
らせた。
帛
(
きぬ
)
をさくような険しい音が闇を貫いた。高倉祐吉は
片膝
(
かたひざ
)
ついた中途はんぱな
恰好
(
かっこう
)
で歯ぎしりする男をのぞき込んだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
空には數知れぬ人の顏の、羽搏の響きと、
帛
(
きぬ
)
裂く如く異樣な泣聲。……
散文詩
(旧字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
下界
(
げかい
)
を
見
(
み
)
ると
眼
(
まなこ
)
も
眩
(
くら
)
むばかりで、
限
(
かぎ
)
りなき
大洋
(
たいやう
)
の
面
(
めん
)
には、
波瀾
(
はらん
)
激浪
(
げきらう
)
立騷
(
たちさわ
)
ぎ、
數萬
(
すまん
)
の
白龍
(
はくりよう
)
の
一時
(
いちじ
)
に
跳
(
をど
)
るがやうで、ヒユー、ヒユーと
帛
(
きぬ
)
を
裂
(
さ
)
くが
如
(
ごと
)
き
風
(
かぜ
)
の
聲
(
こゑ
)
と
共
(
とも
)
に、
千切
(
ちぎ
)
つた
樣
(
やう
)
な
白雲
(
はくうん
)
は
眼前
(
がんぜん
)
を
掠
(
かす
)
めて
飛
(
と
)
ぶ
海島冒険奇譚 海底軍艦:05 海島冒険奇譚 海底軍艦
(旧字旧仮名)
/
押川春浪
(著)
数へおよばぬ
帛
(
きぬ
)
うはだたみ
晶子詩篇全集拾遺
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
馬車に乗っていたのは若い外国婦人で、これも
帛
(
きぬ
)
を裂くような声をあげた。私を
轢
(
ひ
)
いたと思ったからである。私も無論に轢かれるものと覚悟した。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
そう思っていると、又カンバスを引き裂いているらしい、
帛
(
きぬ
)
を裂く激しい音が聞えた。瑠璃子は、思わず両手で、顔を
掩
(
おお
)
うたまゝかすかに
顫
(
ふる
)
えていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
説教の坊さんの声が、
俄
(
にわか
)
におろおろして変りました。穂吉のお母さんの梟はまるで
帛
(
きぬ
)
を
裂
(
さ
)
くように泣き出し、一座の女の梟は、たちまちそれに
従
(
つ
)
いて泣きました。
二十六夜
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
そこで始めて皆が疑いだしたが、周は成の心の異っていたことを知っているので、人をやって成のいそうな寺や山を
偏
(
あまね
)
く
物色
(
ぶっしょく
)
さすと共に、時どき金や
帛
(
きぬ
)
をその子に
恤
(
めぐ
)
んでやった。
成仙
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
逃げ
損
(
そこ
)
ねた者が二、三人、異様な声をあげて横たわった。折も折、彼らが二町も後ろに置き捨ててきた
輦
(
くるま
)
のあたりから、姫の声にまちがいない
帛
(
きぬ
)
を
裂
(
さ
)
くような悲鳴が流れてきた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大きい文字を書く折には
態
(
わざ
)
と筆を用ゐないで、
帛
(
きぬ
)
をぐるぐる巻にして、その先に
墨汁
(
すみ
)
を含ませて、べたべた
塗
(
なす
)
くるのを
甚
(
ひど
)
く自慢にしてゐたといふ事だが、これなどもまあ一寸した
思
(
おも
)
ひ
付
(
つき
)
の
戯
(
いたづら
)
だ。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
ひらき戸から奥へ消える時、店にいる正吉をみつけたかして娘が
帛
(
きぬ
)
を裂くように叫んだ。——正吉は亭主の方へ振返った、亭主はそ知らぬ顔で
小鍋
(
こなべ
)
の下を
煽
(
あお
)
いでいる、正吉はすっと立って行った。
お美津簪
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
『漢書』に漢武
守宮
(
やもり
)
を盆で匿し、
東方朔
(
とうぼうさく
)
に
射
(
あ
)
てしめると、竜にしては角なく蛇にしては足あり、守宮か蜥蜴だろうと
中
(
あ
)
てたので、
帛
(
きぬ
)
十疋を賜うたとある。蜥蜴を竜に似て角なきものと見立てたのだ。
十二支考:03 田原藤太竜宮入りの話
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
宋の紹興二十八年の夏、
帛
(
きぬ
)
のたぐいを売りながら、妻と共に
濰
(
い
)
州を廻って、これから
昌楽
(
しょうらく
)
へ行こうとする途中、日が暮れて路ばたの古い廟に宿った。
中国怪奇小説集:10 夷堅志(宋)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
その響きに応ずるように、荘田も木下も
子爵
(
ししゃく
)
も「アッ」と、叫んだ。それと同時に、どうと誰かが崩れるように倒れる音がした。
帛
(
きぬ
)
を裂くような悲鳴が、それに続いて起った。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
帛
(
きぬ
)
の
裂
(
さ
)
ける音がぴっと鳴った。警吏は
法衣
(
ころも
)
の片袖だけをつかんで前へのめっている。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
するとまた一と声、
帛
(
きぬ
)
を裂くような声が聞えた。
やぶからし
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
撫
(
ぶ
)
州の南門、
黄柏路
(
こうはくろ
)
というところに
詹
(
たん
)
六、詹七という兄弟があって、
帛
(
きぬ
)
を売るのを渡世としていた。
中国怪奇小説集:11 異聞総録・其他(宋)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「——誰か来てえッ……」ふた声めが、
帛
(
きぬ
)
を裂くように、二人の耳を打った。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
もし金や
帛
(
きぬ
)
が欲しいというのならば、どんなことでも
肯
(
き
)
いてあげる。しかし明君が世を治めている今の時代に、人殺しの罪を
赦
(
ゆる
)
すなどということは出来るものでない。
中国怪奇小説集:05 酉陽雑爼(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
「めでたい者達だ」と、曹操は、酒を飲ませたり、
帛
(
きぬ
)
を与えたりした。
三国志:06 孔明の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし三本の糸をまき付けると、力が不足で切ることが出来ません。それですから、
帛
(
きぬ
)
のなかに麻を隠して置いて縛ったらば、おそらく切ることは出来まいと思われます。
中国怪奇小説集:07 白猿伝・其他(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
呂布は、耳元に、
帛
(
きぬ
)
を裂くような悲鳴を聞いた。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
町の
小児
(
しょうに
)
らが河に泳いでいると、或る物が中流をながれ下って来たので、かれらは争ってそれを拾い取ると、それは一つの瓦の
瓶
(
かめ
)
で、厚い
帛
(
きぬ
)
をもって
幾重
(
いくえ
)
にも包んであった。
中国怪奇小説集:05 酉陽雑爼(唐)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
帛
漢検1級
部首:⼱
8画
“帛”を含む語句
手帛
布帛
裂帛
幣帛
垂帛
金帛
上帛
帛紗包
巻帛
薄帛
帛紗
竹帛
小帛
半帛
被帛
卷帛
余帛
裂帛的
財帛
袱帛
...