)” の例文
しかし、そこには前田弥平氏の専制的な独裁がかれていた。彼の一存で、その工場の待遇制度はどんなにでも変えることができた。
仮装観桜会 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
嫡男信忠(年十九)は河尻秀隆を従えて、矢部村勅養寺附近の天神山に、次男北畠信雄は稲葉一徹属して御堂山に、夫々陣をいた。
長篠合戦 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
と、対峙たいじの陣をいた上、こう外交折衝に努めたので、呉もついに、火事泥的な手を出し得ずに、やがて一応、国境から兵を退いた。
三国志:12 篇外余録 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
土佐長岡郡の奥に本山もとやまと云う処がある。今は町制をいて町と云うことになっているが、昔は本山郷と云って一地方をなしていた。
山の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その頃は江戸が東京に変り、廃刀令がかれ、丁髷ちょんまげが無くなり始めて、物皆新時代の歯車の上に、活溌に回転し始めた時分のことです。
岩ぶすまという地衣こけいているばかり、この方面から常念を望むと、前の婉容えんようはなくなって、見上げるように急峻に尖っている。
奥常念岳の絶巓に立つ記 (新字新仮名) / 小島烏水(著)
この際は断然武政をいて国家の独立をまっとうするためには外国と一戦するの覚悟を取る、それが国を興すの早道だというのである。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
五月といへど、かういふどんよりとした日には、老いたはだへがほろゝ寒いと見えて、汽車でいた膝掛に脊中を包んでつくねんとしてゐる。
胡瓜の種 (旧字旧仮名) / 鈴木三重吉(著)
あるいはまた名高い給孤独長者きゅうこどくちょうじゃ祇園精舎ぎおんしょうじゃを造るために祇陀童子ぎだどうじ園苑えんえんを買った時には黄金おうごんを地にいたと言うことだけである。
尼提 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
迂濶うかつな根性にも慈悲の浸み透れば感涙とどめあえぬ十兵衛、だんだんと赤土のしっとりとしたるところ、飛石の画趣えごころかれあるところ
五重塔 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
腐りかけた門のあたりは、二、三本しげったきりの枝葉が暗かったが、門内には鋪石しきいしなどかって、建物は往来からはかなり奥の方にあった。
(新字新仮名) / 徳田秋声(著)
然るに各藩の執政者にして杞憂きいうある者は法を厳にし、戒をきて、以て風俗の狂瀾をさへぎり止めんと試みけれども、遂に如何いかんともする能はず。
……かくてその日のれがたには外廓がいかくの諸塁がことごとく陥落し、まったくはだか城となった高天神をとり囲んで武田軍は包囲の陣をいた。
石ころ (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
の横井小楠が、「堯舜孔子の道を明らかにし、西洋器械の術を尽す、何ぞ富国に止まらん、何ぞ強兵に止まらん、大義を四海にかんのみ」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
家のまわりには油をいた傘のまだかわかないのが幾本となくしつらねてある。清三は車をとどめて、役場のあるところをこの中爺にたずねた。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
まだ縁の下の鳥屋とやの出来ない内に寝かしたことのある、台所の土間の上の棚がわらいたままになっていた。白い牝鶏はその上に上がっている。
(新字新仮名) / 森鴎外(著)
永い漂泊の旅にもかかわらず、彼はついに大道をくべき一人の名君をも見出さなかった。五十年の労苦を共にした夫人上官氏にも先立たれた。
論語物語 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
川が生意気だって橋をかける、山が気に喰わんと云って隧道トンネルを堀る。交通が面倒だと云って鉄道をく。それで永久満足が出来るものじゃない。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
今まで居住者のあった村は古くからの字・小字も多かったろうに、それをドシドシと改めて行って、地押じおしの結果について新たに条里の制をいた。
地名の研究 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
彼らは一列に、放陣をく形で歩いていた。明滅する先方の光りはイシカリ河口に起伏する砂ッ原にかかったらしい。その灯も一つではなかった。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
たとえ池上は解放令をわたくしの上にいたにもせよ、まだ/\長い時間や遠出の外出をわたくしに許しませんでした。
生々流転 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
新しい法律をいては、その行為によって、従来世人から神聖視されてきた父祖伝来の古い法令を破棄した、その一事だけでも立派な犯罪人です。
栗の下には葵の葉が二三枚いてあつた。その日のいくさは無事に徳川家の勝となつたので、清康は記念に葵の葉を紋所に使ふやうになつたといふのだ。
一刻も自分を忘るゝ事の出來ぬ自己主義の、いて其處から出た現實主義物質主義に凝り固まつてゐる阿米利加に禁酒令のかれたは故ある哉である。
一国の門閥もんばつ、先代があまねく徳をいた上に、経済の道よろしきを得たので、今も内福の聞えの高い、子爵千破矢ちはや家の当主、すなわち若君滝太郎たきたろうである。
黒百合 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「お言葉じゃございますが、この馬琴は、戯作を、楽しみ半分ということではなしに、背水の陣をいて、やって見たいと思って居りますんで。……」
曲亭馬琴 (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
過ぎた事は何ともならぬ、これから古法通りにしましょうとび入りて、厩に赤銅板をき太子に蓋、王の長女に払子、大夫人に食物を奉ぜしめると
先づ其の細君の尻にかれるといふ奴だね。此奴は大分當つてるよ。僕は平生、平氣で尻に布かれてるよ。全くだよ。尤も餘り重いお尻でも無いがね。
我等の一団と彼 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
遊廓は浅草田圃たんぼへ移され、新吉原となり、芝居だけ元の土地に残っていたが、ずっとくだって天保てんぽう十三年に、勤倹令をいた幕府の老中、水野越前守えちぜんのかみ
朱絃舎浜子 (新字新仮名) / 長谷川時雨(著)
これ実に仏陀及び祖師に対し我々が黙視もくしするにしのびないことである。どうかインドの国へ仏教をきたいものである
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
爆発物取締規則とともに華族令がかれ、公侯伯子男と雛壇づけられた中へ、成上り官僚の重信朝臣や博文ひろぶみ朝臣が頑丈な肩幅を割りこんできたかわりには
武鑑譜 (新字新仮名) / 服部之総(著)
明治中興大学少助教ニぬきンデラレ、山梨県徽典館ニ掌教タリ。旧ヲ改メ新ヲクヤ群議沸騰ス。鞠躬きっきゅう緒ニ就ク。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
もっとも徴兵令はその以前に発布されて新しい規則がかれていたのであろうが、新聞といっても『読売よみうり』が半紙位のものであるかないかというような時代
およそまつりごとを行いおしえく、まず信を人に得るにあり。信ぜられてしかるのちに令おこなわれ、教立つ。いまだ信ぜられずんば、令して行れず、いましめ守られざるなり。
教門論疑問 (新字新仮名) / 柏原孝章(著)
日本にも幾人かのドイツ人をまねいて、ドイツ風の憲法行政法を、日本にくことを準備していたのである。
配り方はそれそれ違つてゐて、二十ヱルストを隔てていてあつたり、五十ヱルストを隔てて布いてあつたりするから、いつ出食はすか分からないのですね。
柳さくらをこきまぜて、都は花のやよい空、錦繍きんしゅうき、らんまん馥郁ふくいくとして莽蒼ぼうそう四野も香国こうこく芳塘ほうとうならずというところなし。燕子えんし風にひるがえり蜂蝶ほうちょう花にねんす。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
サガレン徒刑の制がかれてから十五年になっていたが、その実状についてはお役所の文書のほかには一片の報告も現われず、社会の関心は皆無にひとしかった。
小舞こまいかきの竹は勝手を知っていますから、明店あきだな上総戸かずさどを明けて中へ這入はいり、こもき、睾丸火鉢きんたまひばちを入れ、坐蒲団ざぶとんを布きましたから、其の上に清次は胡座あぐらをかき。
くだんのさむらいは、やはり道場の真中にむしろいて坐り込み、その前には与八の運んだお膳と、それから、いつのまに、どうして持ち込んだか一升徳利を押据えて
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
その道路の美しく甃石しきいしいてあるかたちや、建築物の高大な状などは言語に絶する。市全体は北と西の方へ広く伸び、端から端まで行くのに一日を費やさねばならぬ。
暗黒星 (新字新仮名) / シモン・ニューコム(著)
ここははやくより、磁器の製造をもて、その名世にく。いはゆる有田焼の名産を出すところなり。
松浦あがた (新字旧仮名) / 蒲原有明(著)
首都には戒厳令がかれたが、恐しいなにごとかのきざしが、この事件によって、国民を不安にした。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
周到な智嚢陣ちのうじんいて内外呼応して探偵するのでは、どんな至難な問題とてもこれで解決できぬことはよもあるまいと、したたかに感じ入らざるを得なかったのであった。
陰獣トリステサ (新字新仮名) / 橘外男(著)
さのみしげくもないかばのほそぼそとしたみきは思いがけずも白絹めく、やさしい光沢こうたくび、地上に散りいた、細かな落ち葉はにわかに日に映じてまばゆきまでに金色を放ち
武蔵野 (新字新仮名) / 国木田独歩(著)
何もかも素直に投げだして、背水はいすいじんいたらしく見える彼女を思うと、渡瀬はふと奇怪な涙ぐましさをさえ感じた。渡瀬はもとよりおぬいさんを憎んでいるのではない。
星座 (新字新仮名) / 有島武郎(著)
午後九時になると、とうとう非常管制がかれた。サイレンのうなり、ラジオの拡声器から流れてくるアナウンサーの声。「空襲、空襲!」と叫びながら走ってゆく防護団の少年。
空襲警報 (新字新仮名) / 海野十三(著)
大正十二年九月一日の大震火災後一二ヶ月の間、東京市中に婦人の戒厳令がかれた事を。
東京人の堕落時代 (新字新仮名) / 夢野久作杉山萠円(著)
人のわたくしをもて奪ふともべからぬことわりなるを、たとへ重仁王しげひとぎみ即位みくらゐは民の仰ぎ望む所なりとも、徳をくわほどこし給はで、道ならぬみわざをもてを乱し給ふとき
それに連なって裾野の方へ、緑に広くいてみえるのは、黒松の林ではないであろうか。
酒徒漂泊 (新字新仮名) / 佐藤垢石(著)