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屡
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しばしば
ふりがな文庫
“
屡
(
しばしば
)” の例文
雑誌記者
屡
(
しばしば
)
来って女子拒婚問題の事を問う。余初め拒婚の字義を解せず、為に婦人雑誌を購読して漸くその意を
審
(
つまびら
)
かにするを得たり。
偏奇館漫録
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
痩容
(
そうよう
)
豈
(
あに
)
詩魔
(
しま
)
の為のみならんや。往昔自然主義新に興り、流俗の之に雷同するや、
塵霧
(
じんむ
)
屡
(
しばしば
)
高鳥を悲しましめ、
泥沙
(
でいさ
)
頻
(
しきり
)
に老龍を困しましむ。
「鏡花全集」目録開口
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
自宅へ帰ってから、又は旅行して平生の常識に立ち帰ってから……ああ、あすこはヒドかったなと気が付くような事が
屡
(
しばしば
)
あります。
東京人の堕落時代
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
諸侯の領内の治外法権地に拠り、百姓・町人を
劫
(
おびや
)
かすばかりか、領主の命をも聴かなかつた。其為、山伏し殺戮が
屡
(
しばしば
)
行はれてゐる。
国文学の発生(第四稿):唱導的方面を中心として
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
こうした二つの物語をテレコに運んでいく手法は南北にも黙阿弥にも
屡
(
しばしば
)
見られる江戸歌舞伎の常套的作劇法であるが、それを話術の上へ
我が円朝研究:「怪談牡丹灯籠」「江島屋騒動」「怪談乳房榎」「文七元結」「真景累ヶ淵」について
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
▼ もっと見る
かれはこの能力の
為
(
ため
)
に、今日まで一図に物に向って突進する勇気を
挫
(
くじ
)
かれた。
即
(
つ
)
かず離れず現状に立ち
竦
(
すく
)
んでいる事が
屡
(
しばしば
)
あった。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかし先生が訳詩の筆はミュッセがリュシイにとりかかられて間もなく事によって
抛
(
なげう
)
たれて以来、再び執り上げられる機も
屡
(
しばしば
)
ないとすれば
「珊瑚集」解説
(新字新仮名)
/
佐藤春夫
(著)
富之助が
屡
(
しばしば
)
夜中に外出することは漸く人の氣付く所となつたが、その
所謂
(
いはゆる
)
膽力養成と云ふ言葉が、凡ての疑問の發生する餘地を與へなかつた。
少年の死
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
知覚ノ能ハ実歴親験ノ重ナルニ
随
(
したが
)
ヒテ長ジ、記憶ノ能ハ同一ノ観像ヲ
屡
(
しばしば
)
反復スルニヨリテ長ジ、弁別ノ能ハ原因結果ノ比較ヲ屡スルニヨリテ長ズ。
呉秀三先生
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
されども妻は
能
(
よ
)
く知れり、彼の微笑を弄するは、必ずしも、人のこれを弄するにあらざる時に於いて
屡
(
しばしば
)
するを。彼は今それか
非
(
あら
)
ぬかを疑へるなり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
渤海
奇毒
(
きどく
)
の書、唐朝官家に達す。
爾
(
なんじ
)
、
高麗
(
こうらい
)
を占領せしより、吾国の近辺に迫り、兵
屡
(
しばしば
)
吾
界
(
さかい
)
を犯す。おもうに官家の意に出でむ。
俺
(
われ
)
如今
(
じょこん
)
耐
(
た
)
うべからず。
岷山の隠士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
それでも
幸
(
さいわい
)
に其人が適材であるならば立派な書物が出来上るであろうが、
左
(
さ
)
もない時には其編纂が
反
(
かえっ
)
て累をなして、取捨に迷うような記事に
屡
(
しばしば
)
遭遇する。
利根川水源地の山々
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
然るに人生の複雑なる、安危交錯して、吾人の家庭と社会とに
屡
(
しばしば
)
不測の惨禍を起して其調和を失うことを免れず。
関牧塲創業記事
(新字新仮名)
/
関寛
(著)
凡太は
屡
(
しばしば
)
孤独に耽つてゐる折、突然人像の出現に脅やかされるとき、現前に転来した事実とはまるで別な一種不可解な無音無色の世界へ踏み迷ふことがあつた。
黒谷村
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
それから、どうした事やら、不思議なほどあの方は
屡
(
しばしば
)
お見えになるようになった。この頃急に
大人寂
(
おとなさ
)
びてきたような道綱があの方のお心をも
惹
(
ひ
)
いたものと見える。
かげろうの日記
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
ために
由
(
よし
)
無き
怨
(
うらみ
)
を負いて、迷惑することもありぬべしと、四辺を見廻わして、身を隠すべき所を
覓
(
もと
)
めしに、この辺には
屡
(
しばしば
)
見る、山腹を横に
穿
(
うが
)
ちたる洞穴を見出したり。
黒壁
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
其の
比
(
ころ
)
雀部
(
ささべ
)
の
曾
(
そう
)
次といふ人、
九
足利
(
あしかが
)
染の絹を交易するために、年々京よりくだりけるが、此の
郷
(
さと
)
に
氏族
(
やから
)
のありけるを
屡
(
しばしば
)
来訪
(
きとぶら
)
ひしかば、かねてより親しかりけるままに
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
こうした作戦計画の下に行われるべき防空演習でなければ、如何にそれが大規模のものであり、また如何に
屡
(
しばしば
)
それが行われても、実戦には、何等の役にも立たないだろう。
関東防空大演習を嗤う
(新字新仮名)
/
桐生悠々
(著)
稽古
(
けいこ
)
する小娘が調子外れの
金切声
(
かなきりごえ
)
今も昔わーワッとお辰のなき立つ事の
屡
(
しばしば
)
なるに胸苦しく
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
然し、それがもし真実だとすれば、感動の伝導法則が根本から
覆
(
くつが
)
えされてしまわねばなりません。勿論、痛みをその部分以外にも覚えると云う事は、日常
屡
(
しばしば
)
経験される事でしょう。
オフェリヤ殺し
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
此の河岸の古本屋で珍書を
漁
(
あさ
)
る人も
鮮
(
すくな
)
くないが、掘出物は滅多にないらしい。僕も
屡
(
しばしば
)
、眼を皿のようにし、片端から漁って歩いたが、ニザールの仏文学史四巻を二十
法
(
フラン
)
で買ったのが関の山だった。
愛書癖
(新字新仮名)
/
辰野隆
(著)
その後、彼女は
屡
(
しばしば
)
彼の姿を気にとめて見かけるようになった。
或る母の話
(新字新仮名)
/
渡辺温
(著)
私はこの琅玕洞で気に入った画家の個展を
屡
(
しばしば
)
開催した。
ヒウザン会とパンの会
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
古人の教えに「朋友に
屡
(
しばしば
)
すれば
疎
(
うとん
)
ぜらるる」とあり。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
氏神の祭礼には町内の若者がたらふく酒に酔い小僧や奉公人が赤飯の馳走にありつく。新しい形式の祭には
屡
(
しばしば
)
政治的策略が潜んでいる。
花火
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
より文字の読める文科大学教授は往々——と言ふよりも寧ろ
屡
(
しばしば
)
、より文字の読めない大学生よりも鑑賞上には明めくらであります。
文芸鑑賞講座
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
尾が裂けてゐたからなのなら、他動にをさきとは言はぬ訣で、
屡
(
しばしば
)
、人の手に尾を裂いて残すなど言ふ考へを、含めてゐるのではあるまいか。
狐の田舎わたらひ
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
さて
暫
(
しばら
)
くまどろんだと思ふ時分に
頸
(
くび
)
の処に焼けるやうな
癢
(
かゆ
)
さを覚えて目を
醒
(
さ
)
ました。私は
維也納
(
ウインナ
)
以来の
屡
(
しばしば
)
の経験で直ぐ
南京
(
ナンキン
)
虫だといふことを知つた。
南京虫日記
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
喜多流宗家
六平太
(
ろっぺいた
)
氏未ダ壮ナラズ、嘱セラレテ之ヲ輔導ス。
屡
(
しばしば
)
雲上高貴ニ
咫尺
(
しせき
)
シ、身ヲ持スルコト謹厳
恬淡
(
てんたん
)
ニシテ、芸道ニ精進シテ米塩ヲカヘリミズ。
梅津只円翁伝
(新字新仮名)
/
夢野久作
、
杉山萠円
(著)
華やかな白熱燈の下を、
石甃
(
いしだたみ
)
の路の上を、疲れ切つた
流浪人
(
るらうにん
)
のやうな足どりで歩いて居る彼の心のなかへ、
切
(
せつ
)
なく込上げて来ることが、まことに
屡
(
しばしば
)
であつた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
彼
(
かれ
)
は
立
(
た
)
て
切
(
き
)
つた
室
(
へや
)
の
中
(
なか
)
で、一二度
頭
(
あたま
)
を抑えて
振
(
ふ
)
り
動
(
うご
)
かして見た。彼は
昔
(
むかし
)
から
今日
(
こんにち
)
迄の思索家の、
屡
(
しばしば
)
繰
(
く
)
り
返
(
かへ
)
した無意義な疑義を、又
脳裏
(
のうり
)
に
拈定
(
ねんてい
)
するに堪えなかつた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
葛西善蔵は
屡
(
しばしば
)
さう言つてゐたさうであるし、又その通り実行した勇者であつたと谷崎精二氏は追憶記に書いてゐるが、この尊敬すべき言葉——私は、汗顔の至であるが
FARCE に就て
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
少憩して用意の朝食を済し、社の前から二町
許
(
ばかり
)
西へ行って、甲府に通ずる広い道を北に向って進んだ。昔武田信玄が海道筋へ出兵する時に、
屡
(
しばしば
)
軍押しをした道であろう。
春の大方山
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
私は教室で、
屡
(
しばしば
)
、教科書の蔭から、彼のほっそりした
頸
(
くび
)
を
偸
(
ぬす
)
み見ているようなことさえあった。
燃ゆる頬
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
余が
屡
(
しばしば
)
赤布を
側
(
かたわら
)
の壁際へ寄せたるに、同人もまたそれに応じて、埋もれんばかりに
身体
(
からだ
)
を片寄せるかと思えば、また銃器に触れると、同時に身体を離し、その儘静止する事もありき。
夢殿殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
景隆は長身にして
眉目疎秀
(
びもくそしゅう
)
、
雍容都雅
(
ようようとが
)
、
顧盻偉然
(
こべんいぜん
)
、
卒爾
(
そつじ
)
に之を望めば大人物の如くなりしかば、
屡
(
しばしば
)
出
(
い
)
でゝ軍を
湖広
(
ここう
)
陝西
(
せんせい
)
河南
(
かなん
)
に練り、
左軍都督府事
(
さぐんととくふじ
)
となりたるほかには、
為
(
な
)
すところも無く
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
此の佐用が家は
頗
(
すこぶ
)
る富みさかえて有りけるが、丈部母子の
賢
(
かしこ
)
きを
慕
(
した
)
ひ、
娘子
(
をとめ
)
を
娶
(
めと
)
りて親族となり、
屡
(
しばしば
)
事に
托
(
よ
)
せて物を
餉
(
おく
)
るといへども、
九
口腹
(
こうふく
)
の為に人を
累
(
わづらは
)
さんやとて、
敢
(
あへ
)
て
承
(
う
)
くることなし。
雨月物語:02 現代語訳 雨月物語
(新字新仮名)
/
上田秋成
(著)
悉達多は
車匿
(
しやのく
)
に
馬轡
(
ばひ
)
を執らしめ、
潜
(
ひそ
)
かに王城を後ろにした。が、彼の思弁癖は
屡
(
しばしば
)
彼をメランコリアに沈ましめたと云ふことである。
侏儒の言葉
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
「殺しの場」のやうな
血腥
(
ちなまぐさ
)
き場面が、
屡
(
しばしば
)
その伴奏音楽として用ひられる独吟と、如何に不思議なる詩的調和を示せるかを聞け。
虫干
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
さうして
屡
(
しばしば
)
、製作時の境遇・作者等について、伝来の誤説や、筆録者の誤解などが交つて居る。年代の古い歌の序文は、大抵此追ひ書きである。
相聞の発達
(新字旧仮名)
/
折口信夫
(著)
後年父は
屡
(
しばしば
)
その話をした。文明開化の学問をした教員を負かしたといふところになかなか得意な気持があつた。けれども単にそれのみではなかつたであらう。
念珠集
(新字旧仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
彼は又夢に得た心臓の鼓動を、覚めた後まで持ち伝える事が
屡
(
しばしば
)
あった。そんな場合には
聖徒
(
セイント
)
の如く、胸に手を当てて、眼を開けたまま、じっと天井を見詰めていた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
一年の
半
(
なかば
)
は雪に鎖され、残りの
半
(
なかば
)
さへ太陽を見ることはさして
屡
(
しばしば
)
でないこの村落では、気候のしみが人間の感情にもはつきり滲み出て来るのだつた。夏も亦
一瞬
(
ひととき
)
である。
黒谷村
(新字旧仮名)
/
坂口安吾
(著)
何かの都合で、隣家の声も、犬の声も、鶏の声も、風の音も、妻の声も、彼自身の声も、その外の何物の声も、音も、ぴつたりと止まつて居る瞬間を、彼は
屡
(
しばしば
)
経験して居た。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
夏
毎
(
ごと
)
にこの高原に来ていた数年前のこと、これと殆どそっくりな
眺望
(
ちょうぼう
)
を楽しむために、私は
屡
(
しばしば
)
、ここからもう少し上方にあるお天狗様まで登りに来たのだけれど、その
度
(
たび
)
毎に
美しい村
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
甚
(
はなは
)
だしいのになると或る
温柔
(
おとな
)
しい軍人が、片足を切断されると間もなく夢中遊行を起すようになって、自分でも知らないうちに、
他所
(
よそ
)
のものを盗んで来る事が
屡
(
しばしば
)
あるようになった。
一足お先に
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
太祖
大
(
おおい
)
に喜び、
此
(
これ
)
より後
屡
(
しばしば
)
諸将を
帥
(
ひき
)
いて出征せしむるに、毎次功ありて、威名
大
(
おおい
)
に
振
(
ふる
)
う。王既に兵を知り
戦
(
たたかい
)
に
慣
(
な
)
る。加うるに
道衍
(
どうえん
)
ありて、機密に参し、
張玉
(
ちょうぎょく
)
、
朱能
(
しゅのう
)
、
丘福
(
きゅうふく
)
ありて
爪牙
(
そうが
)
と
為
(
な
)
る。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
悉達多は
車匿
(
しゃのく
)
に
馬轡
(
ばひ
)
を
執
(
と
)
らせ、
潜
(
ひそ
)
かに王城を後ろにした。が、彼の思弁癖は
屡
(
しばしば
)
彼をメランコリアに沈ましめたと云うことである。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
此輩
屡
(
しばしば
)
隊をなして昼夜を問わず市中の車道を疾走す。然れども警官看て之を咎めず行人亦怪しまず路上の野良犬喜んでその後に尾して走る。
偏奇館漫録
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
年少不良の徒の歌に、私は
屡
(
しばしば
)
、飛びあがる様に新しくて、強い気息を聴いて、
密
(
ひそ
)
かに
羨
(
うらや
)
み喜んだ事も、挙げよとなら若干の例を示す事が出来る。
歌の円寂する時
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
屡
漢検準1級
部首:⼫
12画
“屡”を含む語句
屡々
屡〻
屡叩
屡次
屡瞬
屡ゝ
多摩枳波屡
大変屡々
屡〻見
屡屡