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尾花
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おばな
ふりがな文庫
“
尾花
(
おばな
)” の例文
一廻り
斜
(
ななめ
)
に見上げた、
尾花
(
おばな
)
を分けて、稲の
真日南
(
まひなた
)
へ——スッと低く飛んだ、
赤蜻蛉
(
あかとんぼ
)
を、
挿
(
かざし
)
にして、小さな女の
児
(
こ
)
が、——また二人。
若菜のうち
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
すると、すぐ後ろの、
源頼政
(
みなもとのよりまさ
)
の
碑
(
ひ
)
のある中山堂の丘に、白い
尾花
(
おばな
)
を折り敷いて、にこにこ笑っている
稚子髷
(
ちごまげ
)
の顔が、ちらと見えた。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
其処
(
そこ
)
に北太平洋が
潜
(
ひそ
)
んで居るのである。多くの頭が窓から出て眺める。汽車は
尾花
(
おばな
)
の白く光る山腹を、波状を
描
(
か
)
いて蛇の様にのたくる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
訶和郎
(
かわろ
)
は
兵士
(
つわもの
)
たちの間を脱けると、宮殿の
母屋
(
もや
)
の中へ
這入
(
はい
)
っていった。そうして、広間の裏へ廻って
尾花
(
おばな
)
で編んだ
玉簾
(
たますだれ
)
の
隙間
(
すきま
)
から中を
覗
(
のぞ
)
いた。
日輪
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
明和
(
めいわ
)
戌年
(
いぬどし
)
秋
(
あき
)
八
月
(
がつ
)
、そよ
吹
(
ふ
)
きわたるゆうべの
風
(
かぜ
)
に、
静
(
しず
)
かに
揺
(
ゆ
)
れる
尾花
(
おばな
)
の
波路
(
なみじ
)
。
娘
(
むすめ
)
の
手
(
て
)
から、
団扇
(
うちわ
)
が
庭
(
にわ
)
にひらりと
落
(
お
)
ちた。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
▼ もっと見る
いちめんの大平野で、
芒
(
すすき
)
や
尾花
(
おばな
)
の秋草が、白く草むらの中に光つてゐた。そして平野の所所に、風雅な木造の西洋館が、何かの番小屋のやうに建つてゐた。
田舎の時計他十二篇
(新字旧仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
淋
(
さび
)
しい秋の夕方など、赤とんぼは、
尾花
(
おばな
)
の
穂先
(
ほさき
)
にとまって、あのかあいいおじょうちゃんを思い出しています。
赤とんぼ
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
それを
覗
(
のぞ
)
き込もうとすると、墓と墓との間の丈なす
尾花
(
おばな
)
苅萱
(
かるかや
)
の間から、一人の女性が現われて、その覆面の中から、凄い目をして、
吃
(
きっ
)
と兵馬を
睨
(
にら
)
みつけて
大菩薩峠:41 椰子林の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
僕の郷里は九州で、かの
不知火
(
しらぬい
)
の名所に近いところだ。僕の生れた町には川らしい川もないが、町から一里ほど離れた
在
(
ざい
)
に入ると、その村はずれには
尾花
(
おばな
)
川というのがある。
水鬼
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
秋のことだから
尾花
(
おばな
)
萩
(
はぎ
)
女郎花
(
おみなえし
)
のような草花が咲き、露が一杯に下りて居ります。秋の景色は誠に淋しいもので、裏手は碓氷の
根方
(
ねがた
)
でございますから
小山
(
こやま
)
続きになって居ります。
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
こうして
築土
(
ついじ
)
のくずれた小径を、ときどき
尾花
(
おばな
)
などをかき分けるようにして歩いていると、ふいと自分のまえに女を捜している
狩衣
(
かりぎぬ
)
すがたの男が立ちあらわれそうな気がしたり
大和路・信濃路
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
学校からの帰途には、路傍の
尾花
(
おばな
)
に夕日が力弱くさして、
蓼
(
たで
)
の花の白い小川に色ある雲がうつった。かれは
独歩
(
どっぽ
)
の「むさし野」の印象をさらに新しく胸に感ぜざるを得なかった。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
東京市何区何町の真中に
尾花
(
おばな
)
が
戦
(
そよ
)
ぎ
百舌
(
もず
)
が鳴き、狐や狸が散歩する事になったのは愉快である。これで札幌の町の十何条二十何丁の
長閑
(
のどか
)
さを羨まなくてもすむことになったわけである。
札幌まで
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
玄翁
(
げんのう
)
はこの
原
(
はら
)
を
通
(
とお
)
りかかると、
折
(
おり
)
ふし
秋
(
あき
)
の
末
(
すえ
)
のことで、もう
枯
(
か
)
れかけたすすき
尾花
(
おばな
)
が
白
(
しろ
)
い
綿
(
わた
)
をちらしたように一
面
(
めん
)
にのびて、その
間
(
あいだ
)
に
咲
(
さ
)
き
残
(
のこ
)
った
野菊
(
のぎく
)
やおみなえしが
寂
(
さび
)
しそうにのぞいていました。
殺生石
(新字新仮名)
/
楠山正雄
(著)
柿
(
かき
)
、
栗
(
くり
)
、
葡萄
(
ぶどう
)
、
枝豆
(
えだまめ
)
、
里芋
(
さといも
)
なぞと共に、大いさ三寸ぐらいの
大団子
(
おおだんご
)
を
三方
(
さんぼう
)
に盛り、
尾花
(
おばな
)
や
女郎花
(
おみなえし
)
の
類
(
たぐい
)
を生けて、そして一夕を共に送ろうとするこんな風雅な席に招かれながら、どうして彼は
滑稽
(
こっけい
)
な
夜明け前:04 第二部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
此の火に
照
(
てら
)
された、二個の魔神の
状
(
さま
)
を見よ。けたゝましい
人声
(
ひとごえ
)
幽
(
かすか
)
に、鉄砲を肩に、猟師が二人のめりつ、
反
(
そ
)
りつ、
尾花
(
おばな
)
の波に漂うて森の中を
遁
(
に
)
げて行く。
妖魔の辻占
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
其様
(
そん
)
な
騒
(
さわ
)
ぎも何時しか下火になって、暑い/\と云う下から、ある日
秋蝉
(
つくつくぼうし
)
がせわしく鳴きそめる。武蔵野の秋が立つ。早稲が穂を出す。
尾花
(
おばな
)
が出て
覗
(
のぞ
)
く。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
谷中
(
やなか
)
の
感応寺
(
かんおうじ
)
を
北
(
きた
)
へ
離
(
はな
)
れて二
丁
(
ちょう
)
あまり、
茅葺
(
かやぶき
)
の
軒
(
のき
)
に
苔
(
こけ
)
持
(
も
)
つささやかな
住居
(
すまい
)
ながら
垣根
(
かきね
)
に
絡
(
から
)
んだ
夕顔
(
ゆうがお
)
も
白
(
しろ
)
く、四五
坪
(
つぼ
)
ばかりの
庭
(
にわ
)
一
杯
(
ぱい
)
に
伸
(
の
)
びるがままの
秋草
(
あきぐさ
)
が
乱
(
みだ
)
れて、
尾花
(
おばな
)
に
隠
(
かく
)
れた
女郎花
(
おみなえし
)
の
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
べら
棒
(
ぼう
)
め! と、こいつは、あの
仁
(
じん
)
の
癖
(
くせ
)
で、——
西行
(
さいぎょう
)
とか
芭蕉
(
ばしょう
)
とかいう男みてえに、
尾花
(
おばな
)
や
蒲公英
(
たんぽぽ
)
にばかり
野糞
(
のぐそ
)
をしてフラフラ生きているような人間になって、ほんとの、生きた陶器が作れるかい。
増長天王
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それから三十分ほどすると次郎君は西郷隆盛をつれて
約束
(
やくそく
)
の原っぱにきていました。まだ
森川君
(
もりかわくん
)
はきていないので、原の真中あたりの
尾花
(
おばな
)
のくさむらのそばへいって犬といっしょに
腰
(
こし
)
をおろしました。
決闘
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
「君はあの『
尾花
(
おばな
)
』を知ってるね」
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
白茶色になって来た
田圃
(
たんぼ
)
にも、白くなった小川の
堤
(
つつみ
)
の
尾花
(
おばな
)
にも夕日が光って、眼には見る南村北落の夕けぶり。烏啼き、小鳥鳴き、
秋
(
あき
)
静
(
しずか
)
に今日も過ぎて行く。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
向って、外套の黒い
裙
(
すそ
)
と、青い
褄
(
つま
)
で腰を掛けた、むら
尾花
(
おばな
)
の
連
(
つらな
)
って輝く穂は、キラキラと
白銀
(
はくぎん
)
の波である。
若菜のうち
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ひと
抱
(
かか
)
えもあろうと
想
(
おも
)
われる
蓮
(
はす
)
の
葉
(
は
)
に、
置
(
お
)
かれた
露
(
つゆ
)
の
玉
(
たま
)
は、いずれも
朝風
(
あさかぜ
)
に
揺
(
ゆ
)
れて、その
足
(
あし
)
もとに
忍
(
しの
)
び
寄
(
よ
)
るさざ
波
(
なみ
)
を、ながし
目
(
め
)
に
見
(
み
)
ながら
咲
(
さ
)
いた
花
(
はな
)
の
紅
(
べに
)
が
招
(
まね
)
く
尾花
(
おばな
)
のそれとは
変
(
かわ
)
った
清
(
きよ
)
い
姿
(
すがた
)
を
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
落葉散りしき、
尾花
(
おばな
)
むら
生
(
お
)
いたる中に、
道化
(
どうけ
)
の面、おかめ、
般若
(
はんにゃ
)
など、
居
(
い
)
ならび、
立添
(
たちそ
)
い、意味なき身ぶりをしたるを
留
(
とど
)
む。おのおのその面をはずす、年は三十より四十ばかり。
多神教
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
尾
常用漢字
中学
部首:⼫
7画
花
常用漢字
小1
部首:⾋
7画
“尾花”で始まる語句
尾花苅萱
尾花屋
尾花沢
尾花帽子