)” の例文
と、白玉喬はくぎょくきょうは片手を腰に、また、片方のンがり靴をぴょんと前へ投げ出し、手にしていた薄手な盆をかざすなり見物席を眺め渡して
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
赤い光りは、その大邸宅の右の端にタッタ一つ建っている、屋根のんがった、奇妙な恰好の二階の窓から洩れて来るのであった。
白菊 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
技法ぎはふ尖鋭せんえい慧敏けいびんさは如何いかほどまでもたふとばれていいはずだが、やたらに相手あひて技法ぎはふ神經しんけいがらして、惡打あくだいかのゝしり、不覺ふかくあやまちをとが
麻雀を語る (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
新次郎! 今日は随分おめえの言葉はげ尖げしいのう。わしはまるでお前から、詰問されとるような気がするな。あまり愉快では、なえのう。
仁王門 (新字新仮名) / 橘外男(著)
同じ檳榔樹びんろうじゅの葉を壁代りに、椰子やしの葉骨で屋根をいた土民の家であっても、巫女のそれは屹立するように破風が高く、がっているのである。
蒐集 (新字新仮名) / 山川方夫(著)
成はいきなりそれを捉えようとした。虫は石の穴の中へ入った。成はんがった草をむしってつッついたが出なかった。
促織 (新字新仮名) / 蒲 松齢(著)
愛吉が、手負ておいそばで、口をがらかして呼吸いきを切りながらせいせいいって饒舌った時には、居合わせた梅岡薬剤。神田の兄いだが、目を円くして驚いた。
式部小路 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それは蝸牛性的思想病革命的神経衰弱とでも名をつくべき性質のものであって、仕事は運ばず、神経だけぎって、何かしら革命的に行きたい病気である。
空中征服 (新字新仮名) / 賀川豊彦(著)
柿のやうに頭のがんだ掛員は私に椅子いすをすゝめて置いて、質素な鉄縁眼鏡に英字新聞をりつけたまゝ、発禁の理由は風俗紊乱びんらんのかどであることを告げて
途上 (新字旧仮名) / 嘉村礒多(著)
と、云って渓の下の方に見えている左側のんがった峰に指をさした。その指が大きく光って見えた。
神仙河野久 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「ケチケチすんねえ、何んだ、飯の一杯、二杯! なぐってしまえ!」唇をんがらした声だった。
蟹工船 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
その結果、明治以降の大学の俗学たちの日本芸術の血統上の意見の悉皆しっかいを否定すべき見解にたどりつきつつあります。君はいつも筆の先をがらせてものかくでしょう。
虚構の春 (新字新仮名) / 太宰治(著)
一人は怒つてんがつた骨立つた肩を見せ、一人はまんまるくつていさうな肩を動かしてゐた。
神のない子 (旧字旧仮名) / 室生犀星(著)
細君が「へえ」と驚くもなく、このたびは拳骨を裏側へ入れてうんと突ッ張るとかまの頭がぽかりとんがる。次には帽子を取ってつばと鍔とを両側からつぶして見せる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
禿頭の先端さきンがった、あから顔の五十男が、恐ろしく憂鬱な表情かおをしながら、盛んに木の葉を乾かした奴を薬研やげんでゴリゴリこなしていましたが、助役の註文を受けると
とむらい機関車 (新字新仮名) / 大阪圭吉(著)
まんは口をげるようにしてげだらけの炉縁ろぶちへ、煙管きせるたたきつけるようにしていった。
手品 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
ですから丸いをいよ/\丸くし、とがつたくちばしをいよ/\んがらかして呶鳴どなり返しました。
孝行鶉の話 (新字旧仮名) / 宮原晃一郎(著)
その頭上へ、立ちはだかったままの将軍家のげ尖げしい声がふたたび落ちかかりました。
茶瓶に湯が注がれて、名茶『一の森』の上﨟じょうろうびのやうな淡いいろ気のある香気が立ちのぼつた。彼は茶瓶をむづとつかんだ。茶瓶の口へ彼のがつた内曲りの鼻を突込んだ。
上田秋成の晩年 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
子は口をがらせて母の手の指をんだ。母は「痛ッ」といって手を引っこめた、そしてちょっと指頭ゆびさきを眺めてから「まアこの子ったら。」といった。子は黙って母をにらんでいた。
(新字新仮名) / 横光利一(著)
年齢よりもけていて、気の毒なほど頭の頂が禿げ、眼が落ちくぼみ、ほおがこけ、太いり返った鼻ががり、知恵のありそうな口つきをし、耳朶みみたぶのこわれた無格好な耳をしていて
太い赤いくびすじに金茶色の毛がモジャモジャしている、眼鏡をかけた男と、キチキチした、黒っぽく光る上衣うわぎに、腰の方だけ沢山ひだを重ねて広がった服をきている、意地のわるそうにがった
んがり岩に波がぶつかる
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
老婆は口をがらせた。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
するとこのとき、待ッてましたというように、ンがり靴の白玉喬はくぎょくきょうは、秀英のそばへ来て、お約束の肩を一つぽんと叩いた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
万平が材木の間から耳をんがらして聞いているとも知らずに、頬をスリ寄せて何かヒソヒソと話し初めた。
芝居狂冒険 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
と、見ると、黒いわたのような煙の中に怪物の姿があって、それがんがった牙のようなくちと長い爪を見せて、穴から一人の者をさらって煙に乗って空にのぼろうとした。
嬌娜 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
その枝があつまって、中がふくれ、上ががって欄干の擬宝珠ぎぼうしゅか、筆の穂の水を含んだ形状をする。
幻影の盾 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
金剛砥グラインダーに金物をあてゝいた斉藤が、その直ぐ横の旋盤についていた職工から、何か紙片を受取って、それをポケットに入れた。それをひょッと見たからだった。神経ががっていた。
工場細胞 (新字新仮名) / 小林多喜二(著)
一人ははかま穿いた官女の、目の黒い、耳のがったすさまじき女房の、薄雲うすぐもりの月に袖を重ねて、木戸口にたたずんだ姿を見たし、一人は朱のつらした大猿にして、尾の九ツに裂けた姿に見た
草迷宮 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あれ以来私を見るアランの眼が、妙に嫉妬しっとらしいげ尖げしいものに見えた。
令嬢エミーラの日記 (新字新仮名) / 橘外男(著)
爺さんは、ますます口をがらした。
駈落 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
この朝、死刑囚二人は、かたのごとく、白い死衣を着し、油でないにかわの水で、ンがり髪にわせられ、赤い造花が、髪の根元に一本された。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……鼻がんがって……眼が落ちくぼんで……頭髪あたま蓬々ぼうぼうと乱れて……顎鬚あごひげがモジャモジャと延びて……。
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
「鼻の事ばかり気にして、どうしたんだい。好いじゃないか鼻なんか丸くてもんがってても」
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
よく進化論や遺伝学の書物の挿し絵に出て来るつんとんがった動物耳で、見るからに無鉄砲な、冷血な性格をあらわしていたが、その恐ろしく高い鼻の左右から
暗黒公使 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
その時はもう相手の影はどこかに逸し去ッて、すじ向うの納屋なやの屋根に、背骨をがらしている子猫の黒い影が、血のにおいを知っておびえた啼き声をあげているのみです。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
がれる爪の先をもって堅き壁の上に一と書いた。一をかけるのちも真理はいにしえのごとく生きよとささやく、飽くまでも生きよと囁く。彼らはがれたる爪のゆるを待って再び二とかいた。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ひとみがギョロギョロして、鼻がんがって、腮鬚あごひげや胸毛を真黒くモジャモジャとやしているのだから、ちょうどアラビアン・ナイトに出て来る強盗の親分みたいなスバラシサで
ココナットの実 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
人に指点す指の、ほっそりと爪先つまさきに肉を落すとき、明かなる感じは次第に爪先に集まって焼点しょうてん構成かたちづくる。藤尾ふじおの指は爪先のべにを抜け出でて縫針のがれるに終る。見るものの眼は一度に痛い。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、口をンがらして、次郎がこの年寄にいって聞かすことには
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分の告白の神聖さを侮辱されたように眼の色を変えて、口をんがらした。
衝突心理 (新字新仮名) / 夢野久作(著)
しばらくは、筆の先のがった所を、どうにか運動させたいばかりで、ごうも運動させるわけに行かなかった。急に朋友ほうゆうの名を失念して、咽喉のどまで出かかっているのに、出てくれないような気がする。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
と、対手あいての声は急に冷たくがって
鳴門秘帖:06 鳴門の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)