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尊
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たっと
ふりがな文庫
“
尊
(
たっと
)” の例文
ただ、用心をすることや、旦那方はこれから出世する
尊
(
たっと
)
い身体や。こんな離れ島の老人に構って、危い目を見ぬ様に、用心が肝腎やな
孤島の鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
その王様も
尊
(
たっと
)
いが、しかし、その上にまだ、「神様」というたった一人の王様のあることを、お前達の世界の人は忘れて居るのだ」
トシオの見たもの
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
かくして常に生よりも死を
尊
(
たっと
)
いと信じている私の希望と助言は、ついにこの不愉快に
充
(
み
)
ちた生というものを超越する事ができなかった。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
また一方では小学教員を
尊
(
たっと
)
い神聖なものにして、少年少女の無邪気な
伴侶
(
はんりょ
)
として一生を送るほうが理想的な生活だとも思った。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
私
(
わし
)
は、よろよろとなったで。あの晩、
国手
(
せんせい
)
が、私のために、よろよろとなられたごとくじゃ。何と、俗に云う餅屋は餅屋じゃ、職務は
尊
(
たっと
)
い。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
▼ もっと見る
いつも申す通り、
業
(
わざ
)
も一代、人も一代、いかにその方が、わしの流儀を
尊
(
たっと
)
んでくれたればとて、わしとて、剣の神ではない。
雪之丞変化
(新字新仮名)
/
三上於菟吉
(著)
ところが私が身分などを言うてはならぬと
戒
(
いまし
)
めて置いたに
拘
(
かか
)
わらず、主人が「このお方はセラのアムチーでなかなか
尊
(
たっと
)
い方、法王の侍従医です」
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
しかしまた一面には当時の最高有力者たる秀吉が利休を用い利休を
尊
(
たっと
)
み利休を殆んど神聖なるものとしたのが利休背後の
大光燄
(
だいこうえん
)
だった事も争えない。
骨董
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
あれほどがんばりやだった青江三空曹も、鬼神ではなかったので、力も
根
(
こん
)
もつきはて、ついに
尊
(
たっと
)
い
犠牲
(
ぎせい
)
となりました。
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
僕達は公明正大を
尊
(
たっと
)
ぶ。親に内証で活動写真を見に行ったりしない。僕は級長で片山君は副級長だから、自然同級生の模範になろうと思って自重する。
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
あくまでも探査の機密を
尊
(
たっと
)
んでおいて、ただそれとなくその存意をたぐり出すために過ぎなかったのだが——。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
それと同じように、芸術をいろ/\な人間の仕事の中で、一番
尊
(
たっと
)
いものだと思っている、兄の心も悲しかった。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
所が和尚はその日もまた、
蓮華夫人
(
れんげふじん
)
が五百人の子とめぐり遇った話を引いて、親子の恩愛が
尊
(
たっと
)
い事を親切に説いて聞かせました。蓮華夫人が五百の卵を生む。
捨児
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それに、酒は人間が作りあげたいちばん
尊
(
たっと
)
い宝物だ、
毛物
(
けもの
)
にも鳥にも魚にも作れやあしなかった、酒が人間の害になるなんてえのは、えせ医者のたわごとよ。
枡落し
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
忍術
(
しのび
)
を加味したこと、三、気合を
尊
(
たっと
)
んだこと! 剣禅を打して一丸とし、無刀、わずかに十手と縄もて、悪魔を擒縛するがごとく、悪人を縛し挫くにあった。
血煙天明陣
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
芸術は遂に国家と相容れざるに至って初めて
尊
(
たっと
)
く、食物は衛生と
背戻
(
はいれい
)
するに及んで真の
味
(
あじわい
)
を生ずるのだ。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
婆 (人の好いおしゃべりの口調で)それにの、お天とう様の、のぼらしゃった頃からつめてござらした衆が一刻も早くお
尊
(
たっと
)
い法王様をおがみたいと云うてでござりましての。
胚胎
(新字新仮名)
/
宮本百合子
(著)
穀
(
ごく
)
つぶしという名称は、穀物の極端に
尊
(
たっと
)
ばれている時勢にあって、最大な侮辱であった。
鬼
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
親の石塔料の為奉公していると聞き、其の頃は武士を
尊
(
たっと
)
ぶから母は感心して、
然
(
そ
)
ういう者なれば金を出して、当人が気に
適
(
い
)
ったならどうせ嫁を貰わんではならんから貰い
度
(
た
)
いと
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
田地田畑
(
でんちでんぱた
)
、貯金や証文。古い
褌
(
ふんどし
)
お金に換えても。やっと半分そこらのものだよ。あとは政府のお助け仰いで。それにも一つ皆様方の。清い
尊
(
たっと
)
いお志を。たより
縋
(
すが
)
りに
遣
(
や
)
りたい考え。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
見識も
高尚
(
こうしょう
)
で気韻も高く、
洒々落々
(
しゃしゃらくらく
)
として愛すべく
尊
(
たっと
)
ぶべき少女であって見れば、
仮令
(
よし
)
道徳を飾物にする
偽君子
(
ぎくんし
)
、
磊落
(
らいらく
)
を
粧
(
よそお
)
う
似而非
(
えせ
)
豪傑には、或は
欺
(
あざむ
)
かれもしよう迷いもしようが
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
美術家としてはまことに
尊
(
たっと
)
い名義を下し置かれたもので、既にこの名称だけを得られただけでも光栄至極の義であるが、その上になおこの御手当として年金を給されたということは
幕末維新懐古談:67 帝室技芸員の事
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
ゆえに実業を重んずる、
否
(
いな
)
重んずるどころではない、実業によって成立する米国においては、むろん金銭を
尊
(
たっと
)
び金力を尊重する結果として、不正なる方法によって
富
(
とみ
)
を
為
(
な
)
す者も
許多
(
あまた
)
ある。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
般若とは
六波羅蜜
(
ろくはらみつ
)
の最後の知恵と申すことで、この上もなく
尊
(
たっと
)
い言葉でございますそうですが、それが、どうして恐怖と嫉妬を現わす
鬼女
(
きじょ
)
の面の名となりましたか、不思議な因縁でございます
大菩薩峠:23 他生の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
一身の
尊
(
たっと
)
きこと
玉璧
(
ぎょくへき
)
もただならず、これを犯さるるは、あたかも夜光の
璧
(
たま
)
に
瑕瑾
(
きず
)
を生ずるが如き心地して、片時も注意を
怠
(
おこた
)
ることなく、
穎敏
(
えいびん
)
に自ら
衛
(
まも
)
りて、始めて私権を全うするの場合に至るべし。
日本男子論
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
それであなたは法則というものを
尊
(
たっと
)
んでいらっしゃるのですね。
家常茶飯 附・現代思想
(新字新仮名)
/
ライネル・マリア・リルケ
(著)
彼には投げ出す事のできないほど
尊
(
たっと
)
い過去があったからです。彼はそのために
今日
(
こんにち
)
まで生きて来たといってもいいくらいなのです。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
俗に銀線に触るるなどと言うのは、こうした
心持
(
こころもち
)
かも知れない。
尊
(
たっと
)
い文字は、
掌
(
て
)
に一字ずつ
幽
(
かすか
)
に響いた。私は
一拝
(
いっぱい
)
した。
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
すると大いに悦んで、何をお礼したらよいか、こんな
尊
(
たっと
)
いお方からこういうように結構な目に
遇
(
あ
)
うということは願うてもない幸いだから何かお礼したい。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
ああかかるもの取らんとて可愛き弟を悩ませしか、
尊
(
たっと
)
き兄を
溺
(
おぼ
)
らせしかと兄弟ともに
慚
(
は
)
じ悲しみて、弟の
袂
(
たもと
)
を兄は絞り兄の
衣裾
(
もすそ
)
を弟は絞りて互いにいたわり慰めけるが
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
連綿
(
れんめん
)
として二千幾百年、不純の物を一
毫
(
ごう
)
もまじえず、今日に及んだものでござって、かくのごときは世界万国、いずこにも見られざる国の姿でござって、
尊
(
たっと
)
むべく
崇
(
あが
)
むべく誇るべき
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
江戸の武士はその邸宅に花ある木を植えず、
常磐木
(
ときわぎ
)
の中にても殊に松を
尊
(
たっと
)
び愛した故に、
元
(
もと
)
武家の屋敷のあった処には今もなお緑の色かえぬ松の姿にそぞろ昔を思わせる処が少くない。
日和下駄:一名 東京散策記
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
信濃
(
しなの
)
をこえて、
飛騨
(
ひだ
)
を越えて、クロを尋ねつ冬にはいって、この大雪にゆきくれた竹童、腰に名刀
般若丸
(
はんにゃまる
)
のほこりはあるも、お
師匠
(
ししょう
)
さまは
尊
(
たっと
)
いもの、クロはおいらのかわいいものとしている
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
しかし最後に感じたものはそれらの感情よりも遥かに大きい、何とも云われぬ気の毒さである。
尊
(
たっと
)
い人間の心の奥へ知らず
識
(
し
)
らず
泥足
(
どろあし
)
を踏み入れた、あやまるにもあやまれない気の毒さである。
文章
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
それも道理、アジア艦隊との一戦に、残念にも
妙高
(
みょうこう
)
と
金剛
(
こんごう
)
とを喪い、外に駆逐艦と飛行機を少々、
尊
(
たっと
)
い犠牲とすることによって、どうやら、アジア艦隊の始末をつけることが出来たのであった。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
薬も無ければ手術も出来ない。キチガイ病気の正体調べて。診察治療が出来るとなったら。トテモ評判大したものだよ。世界に人種が数ある中で。日本人種は見上げたものだよ。正義人道
尊
(
たっと
)
ぶ国だよ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
強烈な
好
(
い
)
い印象のない代りに、少しも不快の記憶に濁されていないその人の
面影
(
おもかげ
)
は、島田や御常のそれよりも、今の彼に取って遥かに
尊
(
たっと
)
かった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
これらのチベット人は欧米人を
誑
(
たぶら
)
かしてひたすら
己
(
おの
)
れの便宜と利益とを
謀
(
はか
)
る為に、耶蘇教の
尊
(
たっと
)
い聖書を道具に使って居るので実に驚いたものであります。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
追分をお好き遊ばした、弁天様のお話は聞きましたが、ここらに高尾の塚もなし、
誰方
(
どなた
)
が草刈になっておいで遊ばしたんでしょうと、ただ、もう
尊
(
たっと
)
くなりましてね。
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
噫
(
ああ
)
無心こそ
尊
(
たっと
)
けれ、昔は我も何しら糸の清きばかりの一筋なりしに、
果敢
(
はか
)
なくも嬉しいと云う事身に
染初
(
しみそめ
)
しより、やがて辛苦の結ぼれ
解
(
とけ
)
ぬ
濡苧
(
ぬれお
)
の
縺
(
もつれ
)
の物思い、
其色
(
そのいろ
)
嫌よと
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
地上の最も楽しく最も
好
(
よ
)
いものとして敬い
尊
(
たっと
)
び愛さねばならぬものだ。
夏の町
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
祭りのあいだは、微罪の者があっても、
徒
(
いたず
)
らに
縛
(
しば
)
るな。喧嘩があったら
宥
(
なだ
)
めてやれ。盗人を追うよりも、盗み心を起さぬよう、和気を
尊
(
たっと
)
んで窮民には施しをせい。——祭日中
無礼講
(
ぶれいこう
)
の札を建てよ。
新書太閤記:02 第二分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
この御横行の三字が非常に面白いじゃないですか。
尊
(
たっと
)
んで
御
(
おん
)
の字をつけてるがその裏に立派な反抗心がある。気概がある。君も綱引御横行と日記にかくさ
野分
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
それだけにまた
儕輩
(
せいはい
)
に群を抜いて、上流の貴婦人に、師のごとく、姉のごとく、敬い
尊
(
たっと
)
ばれている名誉を思え、
七歳
(
ななつ
)
の
年紀
(
とし
)
から
仏蘭西
(
フランス
)
へ行って
先方
(
むこう
)
の学校で育ったんだ。
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
有馬、金森、いずれも中々立派に一
ト
器量ある人々であり、他の人々も利家が其席を
尊
(
たっと
)
くして
吾子
(
わがこ
)
の利長利政をも同坐させなかった程だから、皆相応の人々だったに疑無い。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
ですから、薬研もまた、
尊
(
たっと
)
い辞書だといえましょうか
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
本当に嬉しかった、本当にありがたかった、本当に
尊
(
たっと
)
かったと、
生涯
(
しょうがい
)
に何度思えるか、
勘定
(
かんじょう
)
すれば
幾何
(
いくばく
)
もない。
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
ただただ
鑿
(
のみ
)
をもってはよく
穿
(
ほ
)
らんことを思い、
鉋
(
かんな
)
を持ってはよく削らんことを思う心の
尊
(
たっと
)
さは金にも銀にも
比
(
たぐ
)
えがたきを、わずかに残す
便宜
(
よすが
)
もなくていたずらに
北邙
(
ほくぼう
)
の土に
没
(
うず
)
め
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
今考えるとその時の私の態度は、私の生活のうちでむしろ
尊
(
たっと
)
むべきものの一つであった。私は全くそのために先生と人間らしい温かい
交際
(
つきあい
)
ができたのだと思う。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
尊
(
たっと
)
い上人様のお慈悲は充分わかっていて露ばかりもありがとうなくは思わぬが、ああどうにもこうにもならぬことじゃ、相手は恩のある源太親方、それに恨みの向けようもなし
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
“尊”の意味
《名詞》
(ソン)中国古代の酒器。
(みこと)神や神格化された人物に付ける敬称。
(出典:Wiktionary)
尊
常用漢字
小6
部首:⼨
12画
“尊”を含む語句
尊敬
尊重
尊者
日本武尊
素盞嗚尊
尊澄
天真宗豊祖父尊様
尊体
足利尊氏
本尊
尊氏
武尊
尊崇
尊王攘夷
唯我独尊
地蔵尊
素戔嗚尊
自尊心
伊弉諾尊
尊公
...