これがまた、白あばたの、年に似合わず水々しい、大がらな婆さんでございましてな、何さま、あの容子じゃ、狐どころか男でも……
そして夜中に目をさました。もう全くの深更であつた。そつと頭を上げて女の容子をうかがつた。すやすやと女の微かな寐息がする。
夫人は頻りにページを繰って何か探し求めている容子だったが、軈て見つかったものと見えて、自分の手帖を出して書き留めていた。
山田八蔵はその容子を見て、急に気が変った。やはり彼がふいに辞去したのは、体の加減で、ほんとに悪酔いしたものにちがいない。