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室
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へや
ふりがな文庫
“
室
(
へや
)” の例文
室
(
へや
)
に入つて
洋燈
(
ランプ
)
を點けるのも
懶
(
ものう
)
いので、暫くは
戲談口
(
じやうだんぐち
)
などきき合ひながら、
黄昏
(
たそがれ
)
の微光の漂つて居る室の中に、長々と寢轉んでゐた。
一家
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
まもなく
宅
(
うち
)
から持って来た花瓶にそれをさして、
室
(
へや
)
のすみの洗面台にのせた。同じ日に
甥
(
おい
)
のNが西洋種の
蘭
(
らん
)
の
鉢
(
はち
)
を持って来てくれた。
病室の花
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
広い清らかな
室
(
へや
)
があって酒や肴がかまえてあった。室の隅には四十前後の貴婦人が腰をかけていた。貴婦人は崔を見ると
起
(
た
)
ってきた。
崔書生
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
俊夫君はにこりと笑い、「こちらへ来てください」と言って、小田さんを紫外線装置のある
室
(
へや
)
に導きました。私も続いて入りました。
紫外線
(新字新仮名)
/
小酒井不木
(著)
私はこの
老女
(
ひと
)
の
生母
(
ははおや
)
をたった一度見た覚えがある。
谷中
(
やなか
)
御隠殿
(
ごいんでん
)
の
棗
(
なつめ
)
の木のある家で、
蓮池
(
はすいけ
)
のある庭にむかった
室
(
へや
)
で、お
比丘尼
(
びくに
)
だった。
旧聞日本橋:09 木魚の配偶
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
▼ もっと見る
それまでは、快活に、呑気に構えこんでいたアンガスも緊張を見せて、ガバとばかりに奥の
室
(
へや
)
を飛出して、この新参者に面と向った。
見えざる人
(新字新仮名)
/
ギルバート・キース・チェスタートン
(著)
「よくもこう珍なものを集めたものだ」とつい人がおかしくなるほど
煤
(
すす
)
ぼけた珍品
古什
(
こじゅう
)
の類をところ狭く散らかした六畳の
室
(
へや
)
の中を
青銅の基督:――一名南蛮鋳物師の死――
(新字新仮名)
/
長与善郎
(著)
私はその平穏な叱責を聞くと、もう二の句を次ぐ勇気はなく、逃げるやうにして
室
(
へや
)
を出た。そして母には見えただけの平静を告げた。
父の死
(新字旧仮名)
/
久米正雄
(著)
すると
廊下伝
(
ろうかづたい
)
に
室
(
へや
)
の入口まで来た彼は、
座蒲団
(
ざぶとん
)
の上にきちんと
坐
(
すわ
)
っている私の姿を見るや否や、「いやに澄ましているな」と云った。
硝子戸の中
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
戸の外に出迎えしエリスが母に、馭丁をねぎらいたまえと銀貨をわたして、余は手を取りて引くエリスに伴われ、急ぎて
室
(
へや
)
に
入
(
い
)
りぬ。
舞姫
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
彼は残念に思ったけれど、今は極力佐々の跡を追う方が正しいと思ったので、この
室
(
へや
)
の興味を次の機会にまで預け、ソッと脱出した。
地球盗難
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
と——二人がことばもなく、
寂然
(
じゃくねん
)
と、坐り合って、花世の帰るのを待っていると、二間ほど隔てた奥の
室
(
へや
)
で、人の
咳
(
せき
)
ばらいが聞えた。
牢獄の花嫁
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それから黙ったままおもむろに暖炉から窓へ、窓から暖炉へと、二度
室
(
へや
)
の中を横ぎり、石の像が歩いてるように
床
(
ゆか
)
をぎしぎしさした。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
灯のつくころ、中田に来て、いつもの通り
階段
(
はしご
)
を上がったが、なじみでない
新造
(
しんぞ
)
が来て、まじめな顔をして、二階の別の
室
(
へや
)
に通した。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
夕方銀行の仕事が済むと、給仕は自分の
室
(
へや
)
に入つて、その十二
種
(
いろ
)
の週刊新聞に気も心も吸ひ取られたやうにじつと読み耽つたものだ。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
王宙は伯父の
室
(
へや
)
を出て庭におり、
自個
(
じぶん
)
の住居へ帰るつもりで
植込
(
うえこみ
)
の
竹群
(
たけむら
)
の
陰
(
かげ
)
を歩いていた。夕月がさして竹の葉が
微
(
かすか
)
な風に動いていた。
倩娘
(新字新仮名)
/
陳玄祐
(著)
此の控所は、東京監獄の大玄関の取りつきの右側で、三間ばかりの奥行をもつたそのたゝきの土間にそふてゐる細長い
室
(
へや
)
であつた。
監獄挿話 面会人控所
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
暫く声がしなかったと思うと、次の
室
(
へや
)
の襖の開く音。九郎右衛門一大事と、そろそろと横に歩みつつ廊下へ出て雨戸を開こうとする時
相馬の仇討
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
そして一しきり
室
(
へや
)
の中を見廻わしたが、さすがに過去二年間の楽しい思い出を胸に喚びおこしてか、深くも感慨にうたれた風であった。
ふみたば
(新字新仮名)
/
モーリス・ルヴェル
(著)
姉の
柵
(
しがらみ
)
は返辞をしない。で
室
(
へや
)
の中は静かであった。柵は三十を過ごしていた。とはいえ
艶冶
(
えんや
)
たる
風貌
(
ふうぼう
)
は二十四、五にしか見えなかった。
八ヶ嶽の魔神
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
急に
室
(
へや
)
の中が暗く陰気となった。
暫
(
しばら
)
くして、また窓を開けて見ると、まだ烏が青桐に止っていた。……とうとう日が暮れてしまう。
抜髪
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
けれどもそのこどもはきょろきょろ
室
(
へや
)
の中やみんなの方を見るばかりでやっぱりちゃんとひざに手をおいて
腰掛
(
こしかけ
)
に座っていました。
風野又三郎
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
試合がすむと、私は用事があるからというのでみんなと別れて、タクシーでかけつけて真っすぐにみさをの
室
(
へや
)
へ飛んでゆきました。
アパートの殺人
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
客と家の者とが
繁
(
しげ
)
く出入して、夜もさわがしかった。武は七郎と小さな
室
(
へや
)
へ寝たが、三人の下男はその寝台の下へ来て
藁
(
わら
)
を敷いて寝た。
田七郎
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
「埃を立ててすまないが、もう少し我慢してくれ、一体ボイロフの泊って居た
室
(
へや
)
というのは、お隣とこっちと、どれが本当なんだ」
呪の金剛石
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
室
(
へや
)
のすみに腰かけて、
手携
(
てさ
)
げとパラソルとを
膝
(
ひざ
)
に引きつけながら、たった一人その
部屋
(
へや
)
の中にいるもののように
鷹揚
(
おうよう
)
に構えていた。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
室
(
へや
)
の中をジロジロと見まわしたが、鉄筋コンクリートの頑丈ずくめな構造に気が付くと、やっと安心したらしく妾の顔を見直した。
ココナットの実
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
部屋は洗面台と数冊の書籍とをそなえた飾り気のない小さい
室
(
へや
)
である。壁にかけられた
若干
(
じゃっかん
)
の絵のほかには、ほとんど何の装飾もない。
世界怪談名作集:09 北極星号の船長 医学生ジョン・マリスターレーの奇異なる日記よりの抜萃
(新字新仮名)
/
アーサー・コナン・ドイル
(著)
念誦
(
ねんず
)
の
室
(
へや
)
の飾りつけなどはもとのままであるが、仏像は向かいの山の寺のほうへ近日移されるはずであるということを聞いた薫は
源氏物語:48 椎が本
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
八十一
室
(
へや
)
の中には充分の電燈がある、けれど夜にも昼にも、なす仕事が絶無である、電気を消してしまえば
常闇
(
じょうあん
)
の境となるのだ。
暗黒星
(新字新仮名)
/
シモン・ニューコム
(著)
団長などは外出中に無断で
室
(
へや
)
を取り代えられましたのでね。御機嫌
頗
(
すこぶ
)
る斜めです。我々観光団の面目に関するというので、困りました。
フレップ・トリップ
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
しかし
外面
(
おもて
)
から
見
(
み
)
たのとは
違
(
ちが
)
って、
内部
(
なか
)
はちっとも
暗
(
くら
)
いことはなく、ほんのりといかにも
落付
(
おちつ
)
いた
光
(
ひか
)
りが、
室
(
へや
)
全体
(
ぜんたい
)
に
漲
(
みなぎ
)
って
居
(
お
)
りました。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
ナオミの寝台は、日本間ならば二十畳も敷けるくらいな、広い
室
(
へや
)
の中央に据えてあるのですが、それも普通の安い寝台ではありません。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「いらっしゃいませんですか。じゃ、僕一人行って来ますから。僕は、日の暮方には、どうも
室
(
へや
)
の中にじっとしていられないのです。」
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
赤ちゃんブームの昨今、半年も前からちゃんと予約しておかないと
室
(
へや
)
はとれず、いつでも引き受ける大学病院へころがり込むことになる。
ブイヨン・ドンゾール:――十一時の肉の煮出し――
(新字新仮名)
/
滝沢敬一
(著)
オヤッと思って、見ると、白っぽい、光った小さなものがころころと転げて、
室
(
へや
)
の隅の壁際で停り、電燈の灯を受け、ピカッと眼を射た。
梟の眼
(新字新仮名)
/
大倉燁子
(著)
「
金
(
きん
)
の
猫
(
ねこ
)
の鬼」は、やがて
室
(
へや
)
に
戻
(
もど
)
つてきました。見ると、コノオレの子供がゐません。見まはしてみると、金の猫がありません。
金の猫の鬼
(新字旧仮名)
/
豊島与志雄
(著)
男は外国織物と思わるる
稍
(
やや
)
堅い
茵
(
しとね
)
の上にむんずと坐った。室隅には炭火が顔は見せねど有りしと知られて、
室
(
へや
)
はほんのりと暖かであった。
雪たたき
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
右へ数えて五つ目が現場の
室
(
へや
)
だった。部厚な扉の両面には、古拙な野生的な構図で、
耶蘇
(
イエス
)
が
佝僂
(
せむし
)
を癒やしている聖画が浮彫になっていた。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
一燈園の二階の婦人の
室
(
へや
)
には大小をはさんだりっぱな武士の絵姿を軸物にして懸けてあります。これは勝淳さんの祖父の肖像だそうです。
青春の息の痕
(新字新仮名)
/
倉田百三
(著)
また女が出て來て、
斯
(
か
)
う言つて
勸
(
すゝ
)
めたけれど、二人とも此の
室
(
へや
)
を動きたくはなかつた。女が去つてから、小池は
莞爾々々
(
にこ/\
)
として
東光院
(旧字旧仮名)
/
上司小剣
(著)
稲妻のように、目を射られたのは、
室
(
へや
)
一杯に並んだ書架に、ぎっしりと並んだ、
独逸
(
ドイツ
)
語じゃろうね、原書の背皮の金文字ですわ。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お花姉さんのには
什麽
(
どんな
)
事
(
こと
)
が書いてあるか知ら、一つお手本を拝見してやろうと
好
(
い
)
い所に気がついて、乃公は
窃
(
こっそり
)
と姉さんの
室
(
へや
)
へ上って行った。
いたずら小僧日記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
室
(
へや
)
にかえるとまたもごろりと横になって目を閉じていたが、ふと右の手をあげて指で数を読んで何か考えているようであった。
疲労
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
古い洋風擬ひの建物の、素人下宿を営んでゐる林といふ
寡婦
(
やもめ
)
の家に
室借
(
へやが
)
りをしてゐた。立見君は
其
(
その
)
室
(
へや
)
を「猫箱」と呼んでゐた。
札幌
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
書斎は三間になっているので、彼はその東の
室
(
へや
)
で寝ることにした。
燈火
(
ともしび
)
にむかって独りで坐っていると、西の室から何者か現われて立った。
中国怪奇小説集:17 閲微草堂筆記(清)
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
午後になって、ドーブレクの留守を幸い、彼は二階の
室
(
へや
)
の戸を調べて見た。一見して解った。
扉
(
と
)
の下のはめ板が一枚巧みにはずされている。
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
マリヤ物言わず、イエスも無言、ナルドの香油はイエスの
髯
(
ひげ
)
に流れ、衣の裾にまでしたたり、芳香
馥郁
(
ふくいく
)
として
室
(
へや
)
に満ちました。
イエス伝:マルコ伝による
(新字新仮名)
/
矢内原忠雄
(著)
「じゃあ、ちょっとお
室
(
へや
)
をのぞいてみてくださらない? そして、もしいらしったらすぐごいっしょに空林庵のほうにおいでくださいね。」
次郎物語:05 第五部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
諸大名や諸公役が通行のたびに休泊の
室
(
へや
)
にあててある奥の上段の間には、幕府の大目付で外交奉行を兼ねた人が微行の姿でやって来ていて
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
“室”の意味
《名詞》
(シツ)特に、身分の高い人の妻。内室。
(出典:Wiktionary)
室
常用漢字
小2
部首:⼧
9画
“室”を含む語句
室内
寝室
室中
内室
此室
船室
車室
居室
茶室
御内室
庵室
小室
御室
空室
客室
彼室
舞踏室
氷室
浴室
病室
...