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天秤
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てんびん
ふりがな文庫
“
天秤
(
てんびん
)” の例文
すると、その中へ、
抛
(
ほう
)
り出すように、
荷担
(
にない
)
の水桶をおいて、肩の
天秤
(
てんびん
)
をはずすやいな、両手をひろげて、一同をさえぎった者がある。
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
お
品
(
しな
)
は
復
(
ま
)
た
天秤
(
てんびん
)
を
卸
(
おろ
)
した。お
品
(
しな
)
は
竹
(
たけ
)
の
短
(
みじか
)
い
天秤
(
てんびん
)
の
先
(
さき
)
へ
木
(
き
)
の
枝
(
えだ
)
で
拵
(
こしら
)
へた
小
(
ちひ
)
さな
鍵
(
かぎ
)
の
手
(
て
)
をぶらさげてそれで
手桶
(
てをけ
)
の
柄
(
え
)
を
引
(
ひ
)
つ
懸
(
か
)
けて
居
(
ゐ
)
た。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
あの可憐で純潔な処女と、このみだりがましき
年増
(
としま
)
女とを、心の
天秤
(
てんびん
)
にかけるとは、お前は何という見下げ果てた堕落男なのだ。
恐怖王
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
彼はむしろ冷やかに胸の
天秤
(
てんびん
)
を働かし始めた。彼はお延に事情を打ち明ける苦痛と、お秀から補助を受ける不愉快とを
商量
(
しょうりょう
)
した。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
婿一人の
小遣
(
こづか
)
い銭にできやしまいし、おつねさんに百俵付けを
括
(
くく
)
りつけたって、
体
(
からだ
)
一つのおとよさんと比べて、とても
天秤
(
てんびん
)
にはならないや。
春の潮
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
▼ もっと見る
もう一ツ小盥を
累
(
かさ
)
ねたのを両方振分にして
天秤
(
てんびん
)
で担いだ、六十ばかりの
親仁
(
おやじ
)
、
瘠
(
やせ
)
さらぼい、枯木に目と鼻とのついた姿で、さもさも寒そう。
註文帳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「白じらしいことを云うな、それじゃあなんだな、おれとこちらの旦那と金の
天秤
(
てんびん
)
にかけて、そろそろ牛を馬に乗替える気になったのだな」
明暗嫁問答
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
老商はひとりごとをいいながら、黄金メダルを
天秤
(
てんびん
)
の皿からおろし、こんどはそれを店の
飾窓
(
かざりまど
)
の中にあるガラス箱の棚の一つの上にのせた。
少年探偵長
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
宝瓶宮
(
ほうべいきゅう
)
、
磨羯宮
(
まげつきゅう
)
、射手座、
天蠍
(
てんけつ
)
宮、
天秤
(
てんびん
)
座、処女座、獅子宮、
巨蟹
(
きょかい
)
宮、両子宮、金牛宮、白羊座、と、この十二の名で呼ばれることになった。
ヤトラカン・サミ博士の椅子
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
木の根や草株の取りのけなど比較的軽いものは
天秤
(
てんびん
)
に、泥運びは中荷を両端で担いあげていた。雨水を除く溝も平行して掘り進められているのだ。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
譬
(
たと
)
えば、いろは四十七文字を習い、手紙の
文言
(
もんごん
)
、帳合いの仕方、
算盤
(
そろばん
)
の稽古、
天秤
(
てんびん
)
の取扱い等を心得、なおまた進んで学ぶべき箇条ははなはだ多し。
学問のすすめ
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
思想の状態はあたかも
天秤
(
てんびん
)
の両方の皿に同じ重さの分銅を載せたときのごとくに互いにつり合うて、よく極端の空論に走ることを防ぐこともできよう。
生物学的の見方
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
女房の手前を
繕
(
つくろ
)
つてまでも!———これは明かに、猫と女房とを
天秤
(
てんびん
)
にかけると猫の方が重い、と云ふことになる。
猫と庄造と二人のをんな
(新字旧仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そしてそうした大きな鯉の場合は、家から出てきた髪をハイカラに
結
(
ゆ
)
った若い細君の手で、
掬
(
すく
)
い網のまま
天秤
(
てんびん
)
にかけられて、すぐまた池の中へ放される。
遁走
(新字新仮名)
/
葛西善蔵
(著)
それと同じようにいかなる科学者でもまだ
天秤
(
てんびん
)
や試験管を「見る」ように原子や電子を見た人はないのである。
化け物の進化
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
その中に
厚硝子張
(
あつガラスばり
)
、
樫材
(
オークざい
)
の固定薬品棚、書類、ビーカー、レトルト、精巧な金工器具、銅板、鉛板、亜鉛板、各種の針金、酸水素
瓦斯
(
ガス
)
筒、電気
鎔接
(
ようせつ
)
機、
天秤
(
てんびん
)
難船小僧
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
逃して宜いものか。——でも、俺は小夜菊の方が餘つ程罪が深いと思ふよ、
閻魔
(
えんま
)
の廳の
天秤
(
てんびん
)
は、ピンとあがるぜ、まあ呑むが宜い。まだ酒は殘つて居るやうだ
銭形平次捕物控:281 用心棒
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
小さい石ころをとって、普通の
棹秤
(
さおばかり
)
で測ると、六四グラムと出る。
天秤
(
てんびん
)
で測ると、六五・二八グラムと出る。精密化学天秤で測ると、六五・二八三五グラムと出る。
科学の限界
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
お
峯
(
みね
)
は三
之
(
の
)
助
(
すけ
)
を
抱
(
だ
)
きしめて、さてもさても
世間
(
せけん
)
に
無類
(
むるい
)
の
孝行
(
かう/\
)
、
大
(
おほ
)
がらとても
八歳
(
やつ
)
は
八歳
(
やつ
)
、
天秤
(
てんびん
)
肩
(
かた
)
にして
痛
(
いた
)
みはせぬか、
足
(
あし
)
に
草鞋
(
わらじ
)
くひは
出來
(
でき
)
ぬかや、
堪忍
(
かんにん
)
して
下
(
くだ
)
され
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
しかし、彼の乗せられている
天秤
(
てんびん
)
の皿は、恭一のそれとは、いつも反対の側についていたのである。
次郎物語:02 第二部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
溜塗
(
ためぬり
)
のお粗末な脇差を
天秤
(
てんびん
)
差しにし、懐から手先を出して、へちまなりの、ばかばかしくながい顎の先を撫でながら、飽きたような顔もしないでのんびりときいている。
顎十郎捕物帳:04 鎌いたち
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
精密な
天秤
(
てんびん
)
をつかって、物質の変化を数量的に測ったことにあるということを、すでにお話ししましたが、この点をよく心にとめて彼の仕事を見てゆかなくてはなりません。
ラヴォアジエ
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
といって
天秤
(
てんびん
)
を肩へ当るも家名の
汚
(
けが
)
れ外聞が見ッとも
宜
(
よ
)
くないというので、足を
擂木
(
すりこぎ
)
に
駈廻
(
かけまわ
)
ッて
辛
(
から
)
くして静岡藩の史生に住込み、ヤレ
嬉
(
うれ
)
しやと言ッたところが腰弁当の
境界
(
きょうがい
)
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
両
天秤
(
てんびん
)
にかけられたような、底のない空虚に浮んでいるような不安がお前を襲って来るのだ。
惜みなく愛は奪う
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
有名なアニのパピルスにオシリス神(冥界の判官)の命により、アスビス神死人の心臓と正識の印たる直な羽とを
天秤
(
てんびん
)
で懸け、その傍に怪物アームメットが居る処の絵あり。
十二支考:01 虎に関する史話と伝説民俗
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
自由意志と宿命とに関らず、神と悪魔、美と醜、勇敢と
怯懦
(
きょうだ
)
、理性と信仰、——その他あらゆる
天秤
(
てんびん
)
の両端にはこう云う態度をとるべきである。古人はこの態度を中庸と呼んだ。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
金と女を両
天秤
(
てんびん
)
にかけて、こんなあくどい狂言をうったんだ。手先に使っておったあの五人の川船頭が、漏らしてならねえ秘密を漏らしそうになったんで、荒療治をやったのよ。
右門捕物帖:34 首つり五人男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
リヤカーに白米を積んだのや、
天秤
(
てんびん
)
でつっかけた
笊
(
ざる
)
に、味噌とか野菜とかを入れた百姓女達、中には赤いネルの腰巻をたらした娘なぞも
雑
(
ま
)
じって、毎朝のように群をなして通る。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
高を雇い入れてから半月ほどの後に、
遼陽
(
りょうよう
)
攻撃戦が始まったので、私たちは自分の身に着けられるだけの荷物を身に着けた。残る荷物はふた包みにして、高が
天秤
(
てんびん
)
棒で肩にかついだ。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
ラートナのふたりの子、白羊と
天秤
(
てんびん
)
とに蔽はれて、
齊
(
ひと
)
しく天涯を帶とする頃 一—三
神曲:03 天堂
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
七八町の距離というのは当時の戦には
天秤
(
てんびん
)
のカネアイというところである。
蒲生氏郷
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
天秤
(
てんびん
)
にかけて、どっちを
採
(
と
)
るとですか? どっちが、可愛いとですか?
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
長卓二台、椅子四脚、香炉と燭台一対ずつ、
天秤
(
てんびん
)
一本。
故郷
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
盤台を
天秤
(
てんびん
)
にして勢いよく河岸へ走る土地の勇み。
大菩薩峠:32 弁信の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
やがて
足駄
(
あしだ
)
の
歯入
(
はいれ
)
、
鋏磨
(
はさみとぎ
)
、紅梅の井戸端に
砥石
(
といし
)
を据ゑ、
木槿
(
むくげ
)
の垣根に
天秤
(
てんびん
)
を下ろす。目黒の
筍売
(
たけのこうり
)
、雨の日に
蓑
(
みの
)
着て若柳の台所を覗くも
床
(
ゆか
)
しや。
草あやめ
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
手桶
(
てをけ
)
一提
(
ひとさげ
)
の
豆腐
(
とうふ
)
ではいつもの
處
(
ところ
)
をぐるりと
廻
(
まは
)
れば
屹度
(
きつと
)
なくなつた。
還
(
かへ
)
りには
豆腐
(
とうふ
)
の
壞
(
こは
)
れで
幾
(
いく
)
らか
白
(
しろ
)
くなつた
水
(
みづ
)
を
棄
(
す
)
てゝ
天秤
(
てんびん
)
は
輕
(
かる
)
くなるのである。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
充分気をつけていたつもりだが、何しろ、二刻もつづくと、腰の骨が持ち耐えられなくなって、また誰かの足元へ、ドサッと、
天秤
(
てんびん
)
を落してしまった。
醤油仏
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
にもかかわらず、お題目とおそっさまに対する祈念が、主として母親の本復を六ちゃんのほうで乞い願っているところに、
天秤
(
てんびん
)
の狂いのようなものがあった。
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
天秤
(
てんびん
)
の先へ
風呂敷
(
ふろしき
)
ようのものをくくしつけ肩へ掛けてくるもの、軽身に
懐手
(
ふところで
)
してくるもの、
声高
(
こわだか
)
に元気な話をして通るもの、いずれも大回転の波動かと思われ
隣の嫁
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
だが、彼はあくまで「やり直し」を主張する勇気もなく、
気拙
(
きまず
)
い顔で沈黙してしまった。屈辱と命と
天秤
(
てんびん
)
にかけて見て、やっぱり命の方が
惜
(
おし
)
かったのであろう。
吸血鬼
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
この種の記事が一般読者の心に与える悪い影響とを
天秤
(
てんびん
)
にかけてみた時に、どちらが重いか軽いかという事は少し考えてみればだれにもわかる事ではあるまいか。
一つの思考実験
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
中身を小さい
匙
(
さじ
)
の上に
掬
(
すく
)
いとってみたり、
天秤
(
てんびん
)
の上に白紙を置いてその上に壜の内容全部をとりだして
測
(
はか
)
ったり、また封の切ってないものは
封緘
(
ふうかん
)
を綿密に検べたり
ゴールデン・バット事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
三分の一失うと
昏睡
(
こんすい
)
するものだと聞いて、それに
吾
(
われ
)
とも知らず
妻
(
さい
)
の肩に吐きかけた
生血
(
なまち
)
の
容積
(
かさ
)
を想像の
天秤
(
てんびん
)
に盛って、命の向う側に
重
(
おも
)
りとして付け加えた時ですら
思い出す事など
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
実験結果の詳しい話は『北極の氷』に書いておいたので、ここでは略するが、アメリカの連中も「グリーンランドの研究も、もうショベルと
天秤
(
てんびん
)
の時代は過ぎたなあ」
白い月の世界
(新字新仮名)
/
中谷宇吉郎
(著)
大がらとても
八歳
(
やつ
)
は八歳、
天秤
(
てんびん
)
肩にして痛みはせぬか、足に草鞋くひは出来ぬかや、
堪忍
(
かんにん
)
して下され、
今日
(
けふ
)
よりは私も
家
(
うち
)
に帰りて伯父様の介抱
活計
(
くらし
)
の助けもしまする
大つごもり
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
「いや、お葉は佐野松と杵太郎の兩
天秤
(
てんびん
)
をかけて、良いほどに扱つてゐたのだ。若い杵太郎は、二人の逢引を知つてゐて、我慢が出來なくなつたんだらう。ありさうなことぢやないか」
銭形平次捕物控:314 美少年国
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
それには
僅
(
わず
)
かの重さの相違をも見分けることのできる精密な
天秤
(
てんびん
)
が必要なのであって、これを実際につくって数量的な研究を進めてゆかなければ、学問の正しい進歩は実現しないのです。
ラヴォアジエ
(新字新仮名)
/
石原純
(著)
十六夜
(
いざよい
)
清心
(
せいしん
)
が身をなげた時にも、
源之丞
(
げんのじょう
)
が
鳥追姿
(
とりおいすがた
)
のおこよを見そめた時にも、あるいはまた、
鋳掛屋
(
いかけや
)
松五郎が
蝙蝠
(
こうもり
)
の飛びかう夏の夕ぐれに、
天秤
(
てんびん
)
をにないながら両国の橋を通った時にも
大川の水
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
前と後ろに
桶
(
おけ
)
に二十五ずついれて、桶半分くらい水を張っておかないと、こんにゃくはちぢかんでしまうから、
天秤
(
てんびん
)
をつっかって肩でにないあげると、ギシギシと天秤がしまるほどだった。
こんにゃく売り
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
天秤
(
てんびん
)
を相手に明かし暮らすよりほかに楽しみがないようになった。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
“天秤”の意味
《名詞》
天 秤(てんびん)
棒の両端に重量のあるものを取り付け、間の一点でつりあうようにしたもの。はかりや物を運搬する際に用いる方法。
語義1の方法を用いたはかりである天秤ばかりの略称。
(出典:Wiktionary)
天
常用漢字
小1
部首:⼤
4画
秤
漢検準1級
部首:⽲
10画
“天秤”で始まる語句
天秤棒
天秤宮
天秤商人
天秤室
天秤星座