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かく
ふりがな文庫
“
匿
(
かく
)” の例文
私は俎上の魚となった以上敢て逃げ
匿
(
かく
)
れはしない。内外の学者文士、評論家に由って私の人間味を忌憚なく縦横に評論して戴きたい。
安吾人生案内:06 その六 暗い哉 東洋よ
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
これは上野介が浪士の復讐を恐れて、実子上杉
弾正大弼綱憲
(
だんじょうだいひつつなのり
)
の別邸に
匿
(
かく
)
まわれているというような
風評
(
うわさ
)
があったからにほかならない。
四十八人目
(新字新仮名)
/
森田草平
(著)
「そうよ。なんとか今夜中に、ここの鎧材料をみんな、穴でも掘って、
匿
(
かく
)
してしまわなければ、
奪上
(
とりあ
)
げられる。……いいか、みんな」
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
あけすけな無遠慮な部分は、まだ踊り狂っている残忍な視線からかばい
匿
(
かく
)
すように、許生員はその前に立ちはだからねばならなかった。
蕎麦の花の頃
(新字新仮名)
/
李孝石
(著)
未
(
いま
)
だ
必
(
かなら
)
ずしも
(六四)
其身
(
そのみ
)
之
(
これ
)
を
泄
(
もら
)
さざるも、
而
(
しか
)
も((説者ノ))
語
(
ご
)
((適〻))
其
(
そ
)
の
匿
(
かく
)
す
所
(
ところ
)
の
事
(
こと
)
に
及
(
およ
)
ばんに、
是
(
かく
)
の
如
(
ごと
)
き
者
(
もの
)
は
身
(
み
)
危
(
あやふ
)
し。
国訳史記列伝:03 老荘申韓列伝第三
(旧字旧仮名)
/
司馬遷
(著)
▼ もっと見る
それは新鋳の通用金と、旧鋳の金を換える時、そっと用意した贋金と摺り換え、真物の小判を三千両も貯めて、井戸の底に
匿
(
かく
)
したのだ。
銭形平次捕物控:049 招く骸骨
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
金万
(
かねまん
)
の若旦那実は敏腕家だけれど、差当り親父が頑張っているから、
驥足
(
きそく
)
を
展
(
のば
)
すことが出来ない。猫のようになって、爪を
匿
(
かく
)
している。
勝ち運負け運
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
見てからといふものは私の
羞耻
(
はにかみ
)
に滿ちた幼い心臟は
紅玉
(
ルビイ
)
入の小さな時計でも
懷中
(
ふところ
)
に
匿
(
かく
)
してゐるやうに何時となく幽かに顫へ初めた。
思ひ出:抒情小曲集
(旧字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
右馬
(
うま
)
の
頭
(
かみ
)
の
菟原
(
うばら
)
ノ
薄男
(
すすきお
)
はとある町うらの人の住まない廃家の、はや虫のすだいている冷たい
竈
(
かまど
)
のうしろに
屈
(
こご
)
まって、
匿
(
かく
)
れて坐っていた。
荻吹く歌
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
幕末に際し、実家に
遁入
(
とんにゅう
)
して
匿
(
かく
)
まわれた多くの幕士の中の一人だが、美男なので実家の娘に
想
(
おも
)
われ、結婚して当主に直った人であった。
雛妓
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
私が
余
(
あんま
)
りポチばかり可愛がって勉強をしなかったから、父が
万一
(
ひょっと
)
したら
懲
(
こら
)
しめのため、ポチを何処かへ
匿
(
かく
)
したのじゃないかと思う。
平凡
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
鹿が白髪の翁に化けて来て、明日は天人が川に下りて水を浴びるから、松の樹にかけてある羽衣の一つを
匿
(
かく
)
して、その天人を嫁にせよ。
年中行事覚書
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
此方
(
こちら
)
はおかめ丹治はおえいと丹三郎の死骸を藁屋に
匿
(
かく
)
し火葬に致しましたが、
茅屋
(
かやゝ
)
ゆえ忽ちに燃え広がり母屋へ移り、残らず類焼する。
塩原多助一代記
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
これはお尋ね者が来ても決して
匿
(
かく
)
してはならないとのきびしいお達しだからと言って断わられ、日暮れごろにとぼとぼと帰路についた。
夜明け前:03 第二部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
江戸から、広島へ、広島から、大阪、奈良へと、己の身体を
匿
(
かく
)
すのに忙がしかった又五郎は、すっかり、陽に灼けて、
旅窶
(
たびやつ
)
れがしていた。
寛永武道鑑
(新字新仮名)
/
直木三十五
(著)
七斤ねえさんは七爺の顔を見ると、せい一杯にお世辞笑いをして「天子様がお
匿
(
かく
)
れになったら、いずれ大赦があるのでございましょうね」
風波
(新字新仮名)
/
魯迅
(著)
どこかへ
掠
(
さら
)
ってゆかれたにしても、あとのほうならまず躯に別条はないだろう、人に知れないところに
匿
(
かく
)
まわれて、いかさま賽を
季節のない街
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
けれどもそれはつい二三週間前までのやうな
灼
(
や
)
け
爛
(
ただ
)
れた真赤な空ではなかつた。底には快く快活な黄色を
匿
(
かく
)
してうはべだけが
紅
(
くれなゐ
)
であつた。
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
直ちに
匿
(
かく
)
したまはずば、我はマーレブランケをおそる、彼等既にうしろにせまれり、我わが心に寫しみて既に彼等の近きをさとる —二四
神曲:01 地獄
(旧字旧仮名)
/
アリギエリ・ダンテ
(著)
「われわれが教育読本のために求めるのは、背後になんら正しからぬものを
匿
(
かく
)
しておらぬ率直な物語のもつ
真
(
まこと
)
のうちに
在
(
あ
)
る清浄無垢である」
『グリム童話集』序
(新字新仮名)
/
金田鬼一
(著)
「わたしは貧しいから、立派な邸宅のないのを
慚
(
は
)
じます。ただ
茅廬
(
あばらや
)
があります。しばらく一緒に
匿
(
かく
)
れようではありませんか。」
蓮花公主
(新字新仮名)
/
蒲 松齢
(著)
ことによると自分の
生
(
お
)
い立ちには、何かの秘密が
匿
(
かく
)
されていそうだ位のことは気のつきそうな年頃になっても、私はいっこう疑わなかった。
花を持てる女
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
ジナイーダはすぐさま、わたしが彼女に恋していることを
見抜
(
みぬ
)
いたし、わたしの方でも、別にそれを
匿
(
かく
)
そうとも思わなかった。
はつ恋
(新字新仮名)
/
イワン・ツルゲーネフ
(著)
この真理こそ疑い得ない事実ではないか。史家はあの偉大な茶器が、真に平凡な普通の品に過ぎなかったことをついに
匿
(
かく
)
すことができない。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
けれどもそれはつい二、三週間前までのような
灼
(
や
)
け
爛
(
ただ
)
れた真赤な空ではなかった。底には深く快活な黄色を
匿
(
かく
)
してうわべだけが紅であった。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
婚礼の当夜、盃事がすむと同時に、花嫁は家を
遁
(
に
)
げ出て、森や神山(
御嶽
(
オタケ
)
と言う)や岩窟などに
匿
(
かく
)
れて、夜は姿も見せない。
最古日本の女性生活の根柢
(新字新仮名)
/
折口信夫
(著)
西洋にはシセロ説に
寝牀
(
ねどこ
)
の下に鶏卵一つ
匿
(
かく
)
されあると夢みた人が、判じに往くと、占うて、卵が匿され居ると見た所に財貨あるべしと告げた。
十二支考:08 鶏に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
匿
(
かく
)
せば匿す程余計に見たいというような訳で、もう手を合わさぬばかりにして頼みに来るものですからどうもしようがない。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
細君はますます不思議に思って、そっと
室
(
へや
)
の中に
匿
(
かく
)
れていると、方棟の鼻の内から小さな人が二人出てきたが、その大きさは豆ほどもなかった。
瞳人語
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
何しろ、一生懸命になって秘し
匿
(
かく
)
していた、谷山家の
忌
(
いま
)
わしい血統が、龍代の自殺をキッカケにして、世間に暴露しそうになったのですからね。
キチガイ地獄
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
ところが、決闘の結果同僚の一人を傷つけて、査問されようとするところを、艇長がUR—4号の奥深くに
匿
(
かく
)
したのです。
潜航艇「鷹の城」
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
傘は二人の恋人を
匿
(
かく
)
し、保護し、その
透
(
すか
)
し入りの影で二人を
覆
(
おお
)
っている。というのは、太陽の白い針が、そこかしこ、穴を明けているのである。
ぶどう畑のぶどう作り
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
匿
(
かく
)
まひ
呉
(
くれ
)
よとの頼み故其儘懷中なし夜に入しかば急ぎ歸る河原にや何やら
跌
(
つまづ
)
きしが
死骸
(
しがい
)
とも氣が付ず行過たり彼の安五郎は九助に
分
(
わか
)
れ妻の行方を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
そんなら、
何処
(
どこ
)
で勝つかと言えば、技巧の中に
匿
(
かく
)
された人生観、哲学で、自分を見せて行くより、しようがないと思う。
小説家たらんとする青年に与う
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
……そこで、その金はどうした? 最初のうちならともかく、おいおい金高が多くなれば、ちょっとやそっとの場所へ
匿
(
かく
)
しておけるもんじゃない。
顎十郎捕物帳:07 紙凧
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
溥洽
(
ふこう
)
は建文帝の
主録僧
(
しゅろくそう
)
なり。初め帝の
南京
(
なんきん
)
に入るや、建文帝僧となりて
遁
(
のが
)
れ去り、溥洽
状
(
じょう
)
を知ると言うものあり、
或
(
あるい
)
は溥洽の所に
匿
(
かく
)
すと
云
(
い
)
うあり。
運命
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
彼アンジエロの獲つる金は、むかし人の魔穴を怖れて、敢て近づくことなかりし時、海賊の
匿
(
かく
)
しおきつるものなるべし。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
盗んでこれを
匿
(
かく
)
し、殺して
遁逃
(
とんとう
)
するは何ぞや。他の平安幸福をば害すれども、おのずから害するを好まざるの証なり。
教育の目的
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
「ウム……言われて名乗るも
烏滸
(
おこ
)
がましいが、
練塀小路
(
ねりべいこうじ
)
に
匿
(
かく
)
れのねえ、
河内山宗俊
(
こうちやまそうしゅん
)
たァ俺のことだッ」とでもやられて見ろ、
仮令
(
たとい
)
その扇子が親譲りの
青バスの女
(新字新仮名)
/
辰野九紫
(著)
で、彼女はこの苦しい事実をなるべく
匿
(
かく
)
し
終
(
おお
)
そうとしていました。ですから先生は、セエラに何か問われて、ぼろを出してはならないと思ったのでした。
小公女
(新字新仮名)
/
フランシス・ホジソン・エリザ・バーネット
(著)
だがどれも手足だけに切り離された夢で、大事なところになると彼は急いで菓子を
匿
(
かく
)
す子供の
狡猾
(
こうかつ
)
さを取戻した。
青いポアン
(新字旧仮名)
/
神西清
(著)
誰ひとり、彼が花壇を飛び越え、花を
鷲掴
(
わしづか
)
みにして、いそいで胸の
肌衣
(
はだぎ
)
の下に
匿
(
かく
)
したのを見たものはなかった。
紅い花
(新字新仮名)
/
フセヴォロド・ミハイロヴィチ・ガールシン
(著)
歎
(
なげ
)
きに枝を添うるがいたわしさに包もうとは
力
(
つと
)
めたれど……何を
匿
(
かく
)
そう、
姫御前
(
ひめごぜ
)
は鏁帷子を着けなされたまま
武蔵野
(新字新仮名)
/
山田美妙
(著)
だが、蘭子ちゃんの
親戚
(
しんせき
)
や友だちの家じゃ、すぐあいつに気づかれるだろうし、といって、僕にも君を
匿
(
かく
)
まってくれるような人の心当たりはないのだが……
人間豹
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
お今の姿の
匿
(
かく
)
されたことに心着いた浅井は、その当座深く問い
窮
(
つ
)
めもしなかったが、お今の身のうえを、お増の考えで取り決められたことが不安であった。
爛
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
水に
溺
(
おぼ
)
れた人を、伊太夫殿が湖水から
掬
(
すく
)
い上げて来て、それを一室に
匿
(
かく
)
まい、治療をさせようという次第で、急に僕のことを思い出して使を立てたものらしい
大菩薩峠:39 京の夢おう坂の夢の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
そう云う別世界こそ、身を
匿
(
かく
)
すには
究竟
(
くっきょう
)
であろうと思って、
此処彼処
(
ここかしこ
)
といろいろに捜し求めて見れば見る程、今迄通ったことのない区域が
到
(
いた
)
る
処
(
ところ
)
に発見された。
秘密
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
そこに
秀蓮尼
(
しゅうれんに
)
という
尼
(
あま
)
さんが
棲
(
す
)
んでいるから、その人にわけを言って
匿
(
かく
)
まってもらうといいわ。分って?
鍵から抜け出した女
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
だが裸は埋没され
叮嚀
(
ていねい
)
に
匿
(
かく
)
されているのが常である。善いにせよ、悪いにせよ、それが事実である。いくら理想家でも、人間に即刻裸で歩けとは言えないであろう。
触覚の世界
(新字新仮名)
/
高村光太郎
(著)
もう
斯
(
こ
)
うなっては
匿
(
かく
)
しても隠されないので、お豊は番頭どもを呼びあつめて、その秘密を打ちあけた。
半七捕物帳:26 女行者
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
匿
常用漢字
中学
部首:⼖
10画
“匿”を含む語句
隠匿
蔵匿
隱匿
匿名
御匿
波斯匿
車匿
秘匿
波斯匿王
車匿童子
護匿
身匿
眼匿
逃匿
隠匿場
隠匿所
隠匿物資
隠匿米
隱匿呉
蔵匿物
...