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先途
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せんど
ふりがな文庫
“
先途
(
せんど
)” の例文
「駄目だよ今日は。
観念
(
あきら
)
めるさ。とても
抗
(
かな
)
わぬ事だから、僕は此処を
先途
(
せんど
)
と喋り散らして花々しく討死する覚悟だ。ワッハヽヽヽ」
The Affair of Two Watches
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
大きな五つ紋の
黒羽織
(
くろばおり
)
に白っぽい
鰹魚縞
(
かつおじま
)
の
袴
(
はかま
)
をはいて、桟橋の板を
朴
(
ほお
)
の
木下駄
(
きげた
)
で踏み鳴らしながら、ここを
先途
(
せんど
)
とわめいていた。
或る女:1(前編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
その寒さを何とも思わず、群衆はこね返している。商売人の方はなおさら、
此所
(
ここ
)
を
先途
(
せんど
)
と職を張って景気を附けているのです。
幕末維新懐古談:42 熊手を拵えて売ったはなし
(新字新仮名)
/
高村光雲
(著)
さればコン吉は、
手鍋
(
キャスロオル
)
の中で
炒
(
い
)
られる腸詰のごとく、座席の上で転げ廻りながら、ここを
先途
(
せんど
)
と蝙蝠傘に
獅噛
(
しがみ
)
ついている様子。
ノンシャラン道中記:02 合乗り乳母車 ――仏蘭西縦断の巻――
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
反対者の冷笑
熱罵
(
ねつば
)
もコヽを
先途
(
せんど
)
と
沸
(
わ
)
き上れり、「露探」「露探」「山木の婿の成りぞこね
奴
(
め
)
」「花吉さんへ
宜
(
よろ
)
しく願ひますよ」
火の柱
(新字旧仮名)
/
木下尚江
(著)
▼ もっと見る
六角の南、
錦小路
(
にしきこうじ
)
の北、
洞院
(
とういん
)
の西、油小路の東、本能寺の四面両門はもう明智勢の
甲冑
(
かっちゅう
)
と、
先途
(
せんど
)
を争う寄せ声で埋まっていた。
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大根の輪切りを
蒲鉾
(
かまぼこ
)
のつもりにした御馳走を持って、お花見に繰り出してゆく、そのおかしさを、ここを
先途
(
せんど
)
と圓太郎は熱演しているのだった。
円太郎馬車
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
人に頭をさげられつづけて、生まれてからこの自分の頭をさげたことのない対馬守、ここを
先途
(
せんど
)
と、平蜘蛛のようにペコペコお辞儀をしている。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
もぎとるようにしてお雪をつれて行くと、
無理矢理
(
むりやり
)
有朋のそばへ坐らせて、お女将は、ここを
先途
(
せんど
)
と
愛嬌
(
あいきょう
)
をふりまいた。
山県有朋の靴
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
それが縁で、今はその女をも何とか
先途
(
せんど
)
を見届けてやらないことには、自分の良心にやましいような事態となりました。
大菩薩峠:27 鈴慕の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
それに応じて、わが空中部隊も、ここを
先途
(
せんど
)
といさましい急降下爆撃をくりかえします。地上は
硝煙
(
しょうえん
)
につつまれ、あたりはまっくらになりました。
怪塔王
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
こゝを
先途
(
せんど
)
とまづ
貯
(
たくは
)
へたまひけるが、何れの武官にやそゝくさ此方へ来らるゝ
拍子
(
ひやうし
)
に清人の手にせし皿を
斜
(
なゝめ
)
めにし、鳥飛んで空にあり、魚
床
(
ゆか
)
に躍り
燕尾服着初めの記
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
姐さんの
奢
(
おご
)
りというので、みんながここを
先途
(
せんど
)
と色気なしに、むしゃむしゃ食っているのを、お絹は箱に倚りかかりながら黙って離れて眺めていた。
両国の秋
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
席上は入乱れて、ここを
先途
(
せんど
)
と
激
(
はげし
)
き勝負の最中なれば、彼等の
来
(
きた
)
れるに心着きしは
稀
(
まれ
)
なりけれど、片隅に物語れる二人は
逸早
(
いちはや
)
く目を
側
(
そば
)
めて紳士の
風采
(
ふうさい
)
を
視
(
み
)
たり。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
ここを
先途
(
せんど
)
と
漕
(
こ
)
げども、
盪
(
お
)
せども、ますます
暴
(
あ
)
るる
浪
(
なみ
)
の
勢
(
いきおい
)
に、人の力は
限
(
かぎり
)
有
(
あ
)
りて、
渠
(
かれ
)
は
身神
(
しんしん
)
全く疲労して、
将
(
まさ
)
に
昏倒
(
こんとう
)
せんとしたりければ、船は再び
危
(
あやう
)
く見えたり。
取舵
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
叔母の
先途
(
せんど
)
を見届けてもし難儀をしているなら、救い出してやろうといった気になったのでしょう。
銭形平次捕物控:088 不死の霊薬
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
其れから明治廿九年乃木中将が
台湾
(
たいわん
)
総督
(
そうとく
)
となる時、母堂が渡台の御暇乞に
参内
(
さんだい
)
して、皇后陛下の御問に対し、
姥
(
ばば
)
は台湾の土にならん為、
忰
(
せがれ
)
の
先途
(
せんど
)
を見届けん為に台湾に
参
(
まい
)
ります
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
歴史小説というものが、この頃おそろしく流行して来たようだが、こころみにその二、三の内容をちらと拝見したら、驚くべし、れいの羽左、阪妻が、ここを
先途
(
せんど
)
と活躍していた。
鉄面皮
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
あらゆる若い娘たちの
先途
(
せんど
)
すなわち到達点、もっと
大袈裟
(
おおげさ
)
な語でいえば女の修養の目的が是にあったとこは、あらゆる若者が家長の地位を
獲
(
う
)
るのを目標に、努力したのも同じである。
木綿以前の事
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
千代子と僕に高木を加えて
三
(
み
)
つ
巴
(
ともえ
)
を描いた一種の関係が、それぎり発展しないで、そのうちの劣敗者に当る僕が、あたかも運命の
先途
(
せんど
)
を予知したごとき態度で、中途から
渦巻
(
うずまき
)
の外に
逃
(
のが
)
れたのは
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
金眸も常に
念頭
(
こころ
)
に
懸
(
か
)
けゐて、後日の憂ひを気遣ひし、彼の黄金丸を失ひし事なれば、その
喜悦
(
よろこび
)
に心
弛
(
ゆる
)
みて、常よりは酒を過ごし、いと興づきて見えけるに。聴水も黒衣も、
茲
(
ここ
)
を
先途
(
せんど
)
と
機嫌
(
きげん
)
を取り。
こがね丸
(新字旧仮名)
/
巌谷小波
(著)
が、何だか地体は更に解らぬ。依てさらに又勇気を振起して唯この一点に注意を集め、
傍目
(
わきめ
)
も触らさず一心不乱に
茲処
(
ここ
)
を
先途
(
せんど
)
と解剖して見るが、歌人の
所謂
(
いわゆる
)
箒木
(
ははきぎ
)
で有りとは見えて、どうも解らぬ。
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
熊蝉が、あちらこちらの樹に止って、ここを
先途
(
せんど
)
と鳴いていた。
桜島
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
「どうせのことだ。長野あたりまで、妹の行った
先途
(
せんど
)
を見とどけ、その
後
(
ご
)
に、水分へ帰ろうよ。さしたる廻り道ではない」
私本太平記:03 みなかみ帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
と、ベラントは
此所
(
ここ
)
を
先途
(
せんど
)
と商才のありったけをぶちまけて、遂に鉛華を完全に手に入れてしまったのである。
共軛回転弾:――金博士シリーズ・11――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
新町では木の花踊り、北と南とでは浪花踊り、負けない気になって物言う花も、ここを
先途
(
せんど
)
と
艶
(
えん
)
を競った。
寄席
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
何がどうしてなんとやら——自分でもいっさい夢中で、ただもうここを
先途
(
せんど
)
とべらべらしゃべりたてている与吉を大膳亮は、いささかあきれてのぞきこみながら
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
しかしそれが失敗の
因
(
もと
)
だった。そんなことをやったおかげで子供の姿勢はみじめにも
崩
(
くず
)
れて、扉はたちまち半分がた開いてしまった。牛乳瓶はここを
先途
(
せんど
)
とこぼれ出た。
卑怯者
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
ついに決心して、自分はそのあとを追わねばならぬ、追いかけて、二人の手からあの女を取り戻して……取り戻さないまでも、あの女の
先途
(
せんど
)
を見届けてやらねばならぬ。
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
と
突然
(
いきなり
)
どんつくの
諸膚
(
もろはだ
)
を
脱
(
ぬ
)
いだ
勢
(
いきほひ
)
で、
引込
(
ひつこ
)
んだと
思
(
おも
)
ふと、
髯
(
ひげ
)
がうめ
方
(
かた
)
の
面當
(
つらあて
)
なり、
腕
(
うで
)
の
扱
(
しご
)
きに
機關
(
ぜんまい
)
を
掛
(
か
)
けて、
爰
(
こゝ
)
を
先途
(
せんど
)
と
熱湯
(
ねつたう
)
を
注
(
つ
)
ぎ
込
(
こ
)
む、
揉込
(
もみこ
)
む、
三助
(
さんすけ
)
が
意氣
(
いき
)
湯煙
(
ゆげむり
)
を
立
(
た
)
てて
銭湯
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
秘書の本田大助は、大手を拡げないばかりに、
此処
(
ここ
)
を
先途
(
せんど
)
と玄関に関を据えます。
笑う悪魔
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
そこまでたどりつくことを
先途
(
せんど
)
とするような者ばかりが多かったのである。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
ここを
先途
(
せんど
)
と必死のお道化を言って来たものですが、いまこの堀木の馬鹿が、意識せずに、そのお道化役をみずからすすんでやってくれているので、自分は、返事もろくにせずに、ただ聞き流し
人間失格
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
「利用出来るうちは
先途
(
せんど
)
利用しといて、もう利用価値ないようになった云うて、低能の
坊々
(
ぼんぼん
)
に好え口があるやたら、一人で満洲へ行ってしまえやたら、ようそんなことが云えたもんや思うわ。………」
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「そこもとたちふたりは、若君の
右翼
(
うよく
)
左翼
(
さよく
)
となり、おのおの二十名ずつの兵を
具
(
ぐ
)
して、おそばをはなれず、ご
先途
(
せんど
)
を見とどけられよ、早く早く」
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「はい。壮烈なる空中戦の結果、墜落したようであります。われわれも、戦闘中でありましたため、はっきり、その
先途
(
せんど
)
を見届けることが、できませんでした」
地底戦車の怪人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ここを
先途
(
せんど
)
と、引換え立替え、レコードを取換え、針をさし換える
隙
(
ひま
)
がもどかしいように、西洋から、南洋から、支那朝鮮の音楽にまで、自分の持てる芸術の総ざらいをはじめて終り
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
汪克児
(
オングル
)
はここを
先途
(
せんど
)
とおかし味たっぷりに、踊ったり跳ねたりする。
若き日の成吉思汗:――市川猿之助氏のために――
(新字新仮名)
/
林不忘
、
牧逸馬
(著)
いつか石の稽古なんかそっちのけに、ここを
先途
(
せんど
)
と暁闇の川中島さして上杉謙信入道を、堂々と進軍させていた。声ももう小声ではなく、いつしか仕事場の低い天井へ破れるような大音になっていた。
小説 円朝
(新字新仮名)
/
正岡容
(著)
と、ここを
先途
(
せんど
)
と必死のお世辞。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
徳川軍
(
とくがわぐん
)
にかこまれた
伊那丸
(
いなまる
)
さまが、勝ったか負けたか、生きたか死んだか、その
先途
(
せんど
)
も
見
(
み
)
とどけないのがいけないというのかしら、そういえば
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
博士の命令によって、新田先生は、ここを
先途
(
せんど
)
と、ガス弾を、あとからあとへと撃ちつづける。
火星兵団
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
ここを
先途
(
せんど
)
と主水正は
口説
(
くど
)
きにかかる。
丹下左膳:03 日光の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
第二には、主君の妻子一族を託されながら、その
先途
(
せんど
)
をも見とどけず、ひとり勇潔にはやること、これ短慮不信なりといわれても、ぜひあるまい。
三国志:05 臣道の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
丁坊は、ここを
先途
(
せんど
)
と、チンセイの心をうごかすことにつとめた。
大空魔艦
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
殿様連、ここを
先途
(
せんど
)
と貧乏くらべだ。
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
ここを
先途
(
せんど
)
としのぎを削ったので、さしも乱れた大勢を、ふたたび盛り返して、四囲の敵を追い、さらに勢いに乗って、
公孫瓚
(
こうそんさん
)
の本陣まで迫って行った。
三国志:03 群星の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
味方の声に、思わず振り向くと、張郃の
先途
(
せんど
)
を案じて、慕ってきた百余騎の将が、一斉に山を指さして叫んだ。
三国志:11 五丈原の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
楊志
(
ようし
)
の落ちつき先は、ひとまず二龍山宝珠寺と、ここに
先途
(
せんど
)
を見とどけることはできたが、なおまだ、
黄泥岡
(
こうでいこう
)
事件の後始末は、なにも目鼻はついていない。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
落ちてゆく、宮やわが子の
先途
(
せんど
)
を、義光の眼がさがしていた。同時に自分の死所に安心したふうでもあった。
私本太平記:07 千早帖
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
“先途”の意味
《名詞》
先途(せんど)
(context、dated)行き着く先。成り行き。前途。
(context、dated)とどのつまり。最期。
勝負などが決する大事な場合。また、あたかもそのように見えるほど猛り狂うさま。
(出典:Wiktionary)
先
常用漢字
小1
部首:⼉
6画
途
常用漢字
中学
部首:⾡
10画
“先”で始まる語句
先
先刻
先方
先生
先達
先鋒
先日
先祖
先手
先登