かた)” の例文
しかし日暮しの時には、先生は少し首をかたむけて、いやあれは以太利じゃない、どうも以太利では聞いた事がないように思うと云われた。
ケーベル先生 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
得ず然らば途中の御用心こそ專要せんえうなれど心付るを平兵衞は承知しようちせりといとまつげて立出れば早日は山のかたぶきやゝくれなんとするに道を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
兒玉こだま言々句々げん/\くゝ肺腑はいふよりで、其顏そのかほには熱誠ねつせいいろうごいてるのをて、人々ひと/″\流石さすがみゝかたむけて謹聽きんちやうするやうになつた。
日の出 (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ちよつと横にかたげてゐる所が好いです。好い女です。おとつひもアンドレイ・オシピツチユがあの女の噂をしましたよ。
いとを調べ、を問いながら、小首をかたげて、細い眼すじをなお細くしていたが、やがて一だん二弾、序ノばちかろく。
私本太平記:02 婆娑羅帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「そんなに積まれん、網取るのに三人一所に集まると船がかたがつて危ない。」と磯二は相手にならなかつた。
厄年 (新字旧仮名) / 加能作次郎(著)
「う、うふふ、うふふ、」とかたがって、戸をゆすって笑うと、バチャリと柄杓を水に投げて、赤目のおうな
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
路のほとりに軒のかたむいた小さな百姓家があって、壁にはすきくわや古いみのなどがかけてある。
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
祖母の声掛りだから、母も不承々々って、雨降あめふりでも私の口のお使に番傘かたげて出懸けようとする。斯うなると、流石さすがの父も最う笑ってばかりは居られなくなって、小言をいう。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
「そんなはずはねえがな」と若衆は小首をかたげたが、思い出したように盤台をゴシゴシ。
深川女房 (新字新仮名) / 小栗風葉(著)
大きな穀物問屋の白壁に「売家」の貼紙はりがみが雨風にさらされて黄色くなっていたり、鷲尾がまだ土地にいた頃はさかんだった時計屋の看板が、かたむいて軒と一緒に倒れかかっていたりした。
冬枯れ (新字新仮名) / 徳永直(著)
こう言って竹の笠をかたげて、金助のかおをジロリと見上げたのは、珍らしや宇治山田の米友でありました。しかしながら、金助は酔っていたせいかどうか、米友たることを知りません。
大菩薩峠:18 安房の国の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
やぶれて、毎日まいにちちつける疾風しつぷうめにかたむけられたさゝ垣根かきねには、せま往來わうらいえてくぬぎ落葉おちば熊手くまでいたやうにあつまつてつらなつてる。およくぬぎほど頑健ぐわんけんるまい。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
めえ実に感心な人だ、泥坊に意見をするのをわし傍で聞いて居やしたが、おめえが此の泥坊の馬鹿野郎と云うから、手向いでもするかと心配しんぺいしていると、泥坊がくびいかたげて、変な事をいう奴だアと云って
塩原多助一代記 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
赤き硝子がらすのいんきびんかたむけそそぐ
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
かたむいて矢のごとく下る船は、どどどときざみ足に、船底に据えた尻に響く。われるなと気がついた時は、もう走る瀬を抜けだしていた。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
怖い物から逃げるように、万吉は、道中笠を西日へかたげて、禅定寺峠ぜんじょうじとうげから江戸へ心を急がせて行った——。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
背後うしろに残って、砂地に独り峡の婆、くだんの手を腰にめて、かたがりながら、片手を前へ、斜めに一煽ひとあおり、ハタと煽ると、雨戸はおのずからキリキリと動いてしまった。
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かたぶけ居らるゝ折柄をりからなほも吉兵衞はこゑふるはし只今も申上奉つりし通り二男千太郎儀は全く持病ぢびやう癲癇てんかん
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
与八は馬の背中を見上げて、首をかたげることしばし
と云われ、源次郎はしばし小首をかたげて居りましたが
みなぎるや、おほき水、あめかたぶけぬ。
新頌 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
すこかたむきかけた初秋はつあきが、じり/\二人ふたりけたのを記憶きおくしてゐた。御米およねかさしたまゝ、それほどすゞしくもないやなぎしたつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
そして、二挺の山駕も、邪魔にならない所へ片づけさせた後に、天堂一角は陽よけの笠をかたげ、弥助と啓之助は、道ばたの岩に腰を下ろして、何気ない風にたばこをくゆらしている……。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
若い武士は歩みをとどめて笠をかたげてこちらを見る。
大菩薩峠:06 間の山の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
みなぎるや、おほき水、あめかたぶけぬ。
新頌 (旧字旧仮名) / 北原白秋(著)
懊惱あうなう困憊こんぱいうちかたむいた。障子しやうじうつときかげ次第しだいとほくへ退くにつれて、てら空氣くうきゆかしたからした。かぜあさからえだかなかつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「でもおかしいわ」と首をかたげて愛らしく笑っている。要領を得ぬ甲野さんも何となく笑いたくなる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
眼にる低い軒、近頃砂利じゃりを敷いたらしい狭い道路、貧しい電灯の影、かたむきかかった藁屋根わらやね、黄色いほろおろした一頭立いっとうだての馬車、——新とも旧とも片のつけられないこの一塊ひとかたまりの配合を
明暗 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「ちょっと覚えませんね」と小野さんは首をかたげる。
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)