“修羅:しゅら” の例文
“修羅:しゅら”を含む作品の著者(上位)作品数
吉川英治22
岡本綺堂3
中里介山3
国枝史郎3
幸田露伴2
“修羅:しゅら”を含む作品のジャンル比率
哲学 > 心理学 > 超心理学・心霊研究9.1%
文学 > 日本文学 > 小説 物語1.3%
文学 > 日本文学 > 小説 物語(児童)0.2%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
勝つと見えれば崩れ、敗れたかと見れば突出し、いずれの旗色がよいのやら、ややしばらくは晦冥かいめい修羅しゅらだった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かくてうるわしい夜は夜だが、お綱は苦しい、修羅しゅらの刻々だ! 万吉も深い血の池へ溺れこんでいるようにもがいた。
鳴門秘帖:03 木曾の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
修羅しゅらの中にも、真空に似たじゃくがある。それは、勇者の姿にのみある。仏陀の背光はいこうにも似たものといえよう。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
当時とうじわたくしどものむねにはまさ修羅しゅら業火ごうか炎々えんえんえてりました。
それよりも、広海屋、長崎屋、お互に同業、胸の中に、修羅しゅらのほむらを燃やしているに相違あるまいが、それをつこうて一狂言
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
つひには共に修羅しゅらに入り闘諍とうさうしばらくもひまはないぢゃ。必らずともにさやうのたくみはならぬぞや。
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
ついには共に修羅しゅらに入り闘諍とうそうしばらくもひまはないじゃ。必らずともにさようのたくみはならぬぞや。
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
そして、彼女は母らしく、あとやさきの子達に心をひかれながら、修羅しゅらのなかを、半ば、狂気したように急いでいた。
新書太閤記:04 第四分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
いや、かえって禅の生死超脱ちょうだつの工夫を、修羅しゅらの中で、闘争のために用うる者の方がえてしまった。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
雪之丞は、さも、こころよげな、亡き父、亡き母の、乾いた笑いが、修羅しゅらの炎の中から聴えて来るような気がして、涙が流れて来た。
雪之丞変化 (新字新仮名) / 三上於菟吉(著)
寺内は、本堂ほんどうといわず、廻廊かいろうといわずうろたえさわぐ人々の声でたちまち修羅しゅらとなった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが六十年前の私は、一度は二頭立ての馬車にのって、芸妓買いをしてやろうと、修羅しゅらの妄執に燃えていた。
胡堂百話 (新字新仮名) / 野村胡堂(著)
これがつい、いましがた、今宮いまみや境内けいだい修羅しゅらにしてあばれまわった男とは、思えぬような、弱音よわねである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
思うに欧州の天地は今や大乱爆発して修羅しゅらのちまたと化しつつあるが、何人もこの大戦の真の当局者が英独二国なることを疑う者はあるまい。
貧乏物語 (新字新仮名) / 河上肇(著)
雨月 繋念けねん五百しょう、一念無量劫とは申しながら、罪ふかいは修羅しゅらの妄念でござりまする。
平家蟹 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
高時は驚きの目をみはった。こんな修羅しゅらの戦場を、若い尼がどうしてただ一人で来られたかと、その姿へ、
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
だが、雲のじるとともに、それもまたたく元の闇——、修羅しゅら叫喚きょうかん、吹きすさぶ嵐。
鳴門秘帖:01 上方の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
二人が、押問答をしているとき、新宿の大通りでは、突如として、修羅しゅらちまたが、演出された。
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
さしもの修羅しゅら狼藉ろうぜきのあとも掻き消され、そこに見えるのは寂とした中の蔦紅葉つたもみじと杉木立の青い仄暗ほのぐらさだけであった。
上杉謙信 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
この生地獄の修羅しゅらの場で、たった一つだけ餓鬼どもから、仏とも阿弥陀とも思われて、その来迎らいごうを待ちわびられる一人の不思議な老人があった。
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
かくも、怖ろしい葛藤かっとうと、果て知れぬ修羅しゅらを現じてきてしまった。この禍いの元が、おのれの罪と知った日に、見返りお綱は、どう変るだろう?
鳴門秘帖:02 江戸の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「うん。もっともぢゃ。なれども他人は恨むものではないぞよ。みなみづからがもとなのぢゃ。恨みの心は修羅しゅらとなる。かけても他人は恨むでない。」
二十六夜 (新字旧仮名) / 宮沢賢治(著)
なんでも下駄を間違えたやつを、一人がなぐり飛ばしたのが原因もとで、芋をむような下足場が、たちま修羅しゅらちまたとなってしまいました。
大菩薩峠:22 白骨の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
と、すでに彼のほうにも、充分な備えがあったので、両軍、ちまたを挟んで、翌日もその翌日も、修羅しゅらの巷を作って、血みどろな戦闘を繰返すばかりだった。
三国志:03 群星の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
——だから生まれながら修羅しゅらたけびの中におびえ、母乳も出ぬほどだったし、はたして人なみにこの子が育つか否かさえもあやぶまれたことであった。
私本太平記:13 黒白帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「うん。もっともじゃ。なれども他人はうらむものではないぞよ。みなみずからがもとなのじゃ。恨みの心は修羅しゅらとなる。かけても他人は恨むでない。」
二十六夜 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
またその陥穽おとしあなは雪山の谷間よりもひどいものがあるであろうけれども、そういう修羅しゅらちまたへ仏法修行に行くと思えばよいと決心致しました。
チベット旅行記 (新字新仮名) / 河口慧海(著)
でなきゃ、文壇の噂で人の全盛に修羅しゅらもやし、何かしらケチを附けたがって、君、何某なにがしのと、近頃評判の作家の名を言って、姦通一件を聞いたかという。
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
こうして日夜父の魂は修羅しゅらちまたを駈け巡り、お前の夢に現われたり
蔦葛木曽棧 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
いわんや、かの戦争の如き、その最中には実に修羅しゅら苦界くがいなれども、事、平和に帰すれば禍をまぬかるるのみならず、あるいは禍を転じて福となしたるの例も少なからず。
政事と教育と分離すべし (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
規律が僅かでも保たれているのは本隊付近ばかりで、それを一寸はずれると此の漠々たる密林の中には、支柱を失った兵たちが修羅しゅらのように青ざめてさまよい歩くらしかった。
日の果て (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
この国の闇が二年、三年と続くものを、一日もはやく、修羅しゅらから救い、同時に御主人の悪逆無道の狂乱をも、苦患くげんの底からお助けしたい——と念じるしか考えていないのである。
茶漬三略 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戈鋋剣戟くわえんけんげきを降らすこと電光の如くなり、盤石ばんじゃく岩をとばすこと春の雨に相同じ、然りとはいへども天帝の身には近づかで、修羅しゅらかれがために破らると……」
大菩薩峠:05 龍神の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
「拙者は竹腰藤九郎たけのこしとうくろうでござる、おしるし頂戴ちょうだいして、先君せんくん道三入道殿にゅうどうどの修羅しゅら妄執もうしゅうを晴らす存念でござる」
赤い土の壺 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
それが偶然にもこの修羅しゅら場に落ちあったものであろう。
丹下左膳:01 乾雲坤竜の巻 (新字新仮名) / 林不忘(著)
この心で妬くのは一番毒で、むや/\修羅しゅらもやして胸に燃火たくひの絶えるがございませんから、逆上のぼせて頭痛がするとか、血の道がおこるとか云う事のみでございます。
真景累ヶ淵 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
それらの者はこの六月の末という暑気に重い甲冑を着て、矢叫やさけび太刀音たちおと陣鐘じんがね、太鼓の修羅しゅらちまたに汗を流し血を流して、追いつ返しつしているのであった。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
人を呪い世を呪う、あの怖ろしい心の修羅しゅらから
大岡越前 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なぜならば、京近畿きょうきんきの諸民は、明智氏の滅亡を知っても、なお明日の世がどう向いてゆくか、地上の修羅しゅらがいつむか、大きくそれを見とおすことはできないのみか、むしろふたたび
新書太閤記:08 第八分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
自分は恐ろしい修羅しゅらに身を燃やしながら
狂乱 (新字新仮名) / 近松秋江(著)
『戦がない? ……何を寝ぼけているんだ、深谷、本庄、秩父の鉢形、このひと月余りは、修羅しゅらちまただ。——そして今は、武田方と北条勢が、一手になって、安中城を遠巻きにしてるじゃねえか』
篝火の女 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
戦場でのすさまじい砲声、修羅しゅらちまた、残忍な死骸、そういうものを見てきた私には、ことにそうした静かな自然の景色がしみじみとみ通った。その対照が私に非常に深く人生と自然とを思わせた。
『田舎教師』について (新字新仮名) / 田山花袋(著)
しかし内心は修羅しゅらを燃やしている。
(新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
この時浦賀その外海岸諸家の陣屋より昼夜を分たず注進の汗馬、海陸飛脚の往来櫛歯くしのはくよりもいそがわしく、江戸の大都繁華のちまたにわか修羅しゅらちまたに変じ、万の武器
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
修羅しゅらちまたが想像される。
一兵卒 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
……と言ふとたちまち、天に可恐おそろしき入道雲にゅうどうぐもき、地に水論すいろん修羅しゅらちまたの流れたやうに聞えるけれど、決して、そんな、物騒ぶっそう沙汰さたではない。
伯爵の釵 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
修羅しゅらまた修羅だぞ、行く先は」
私本太平記:10 風花帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ても耳の底に残るようになつかしい声、目の奥にとどまるほどにしたしい顔をば「さようならば」の一言で聞き捨て、見捨て、さて陣鉦じんがねや太鼓にき立てられて修羅しゅらちまたへ出かければ
武蔵野 (新字新仮名) / 山田美妙(著)
合戦は今、どこにもなく見えるが、関ヶ原の役はんでも、平和の裏の人生の戦はあんなものどころか、いよいよ修羅しゅらと術策のちまたを作っているのだぞ。その中で、ちきる道は、自分をみがくことしかない。
宮本武蔵:05 風の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
渇しては敵の血を飲まんとするまで修羅しゅらちまた阿修羅あしゅらとなって働けば、功名トつあらわれ二ツあらわれて総督の御覚おんおぼえめでたく追々おいおいの出世、一方の指揮となれば其任いよいよ重く
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
さても方様かたさまの憎い程な気強さ、ここなり丈夫おとこの志をぐるはとむれ同志どうしを率いて官軍に加わらんとし玉うをとどむるにはあらねど生死しょうじ争う修羅しゅらちまたふみりて
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
「戌の下刻までに、弥平治どのが、鷺山さぎやまからこれへ見えるはずだが——もし約束の時刻までにお見えなければ、万事は休すだ。御城下は修羅しゅらちまた……どうなるか、人間の智慧では臆測おくそくもつかぬことになるであろうが」
新書太閤記:01 第一分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
とう修羅しゅら西さいは都に近ければ横川よかわの奥ぞ住みよかりけると云う歌がある通り、横川が一番さびしい、学問でもするに好い所となっている。——今話した相輪橖そうりんとうから五十丁も這入はいらなければ行かれない」
虞美人草 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
「え、万々そんなことはないとは思っておりますが、それでも、あちらの道が修羅しゅらちまたで通りにくうございますから、道をまげてこちらへまいる途中でございます。もしや、お雪ちゃんらしい人を、この池の中でお見かけにはなりませんでしたか」
大菩薩峠:32 弁信の巻 (新字新仮名) / 中里介山(著)
冷遇ふッて冷遇て冷遇ふり抜いている客がすぐ前のうちあがッても、他の花魁に見立て替えをされても、冷遇ふッていれば結局けッく喜ぶべきであるのに、外聞の意地ばかりでなく、真心しんしん修羅しゅらもやすのは遊女の常情つねである。
今戸心中 (新字新仮名) / 広津柳浪(著)
——人間と人間との関係の複雑さ、結びつきや、つながりの深さ、浅さ、その溝や谷、食いちがう歯車、敵と味方という危険な想念、理解と誤解との生む修羅しゅら——そして、こういうものが、時間の流れを背景にして、死と生とを交錯させながら、織りなして行く運命の劇。
花と龍 (新字新仮名) / 火野葦平(著)
いや、わし達の行く道とは、まるで西と東ほどちがうが、広い衆生しゅじょうにとって、世の一方に、ああいう人が出てくれるのは、何か、他人事ひとごとながら有難い。——文覚のごときは、なくもがなだ。われわれ武士でさえ、好んで修羅しゅらを求めているのじゃない。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
ここの領下とて、いつ修羅しゅらちまたとなろうも知れぬが、ならばなおさらぞ。およそ人間の生命力とは子を生む。喰う。闘う。沙門しゃもんのいう、愛慾即是道。飲食おんじき即是道。闘争即是道。の三つに尽きると聞く。しかもみな菩提ぼだいへ通じる業とある。
新書太閤記:09 第九分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
かつて、北越、倶利伽羅くりからを汽車で通った時、峠の駅の屋根に、車のとどろくにも驚かず、雀の日光に浴しつつ、屋根を自在に、といの宿に出入ではいりするのを見て、谷にさきのこった撫子なでしこにも、火牛かぎゅう修羅しゅらちまたを忘れた。
二、三羽――十二、三羽 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
振り返ッて見ると、四十ばかりの商人体あきんどていの男が、『彼方あなた其様そんな刀の様な物を担いで通ッたら、飛んだ目に逢ひませう』と注意された。『何か有るのですか』と聞いたら、『今しも、内務大臣官邸はこれ/\で、』と、官民斬りつ斬られつの修羅しゅらを話された。
東京市騒擾中の釣 (新字旧仮名) / 石井研堂(著)
火事の光は深度を加えて、今は地上は昼よりも明るく、地を這っている小虫をさえも、数え取ることができそうであり、そういう明るい地面を埋ずめて、逃げ迷っている無数の男女が、そういう乱闘の修羅しゅらの場をめぐって、うねり、波立ち、崩れ、集まり、また押し寄せたり退いたりしていた。
娘煙術師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
修羅しゅらの矢たけびを、くりやの外に聞き、六人の育児、一族の融和、それから着る物、く物の欠乏などとも、年月長く闘って、内助にかくれきりながら、しかも強く、敵の矢風の中に立つよりも強く、生きて生きて生きぬいて来るまでには、世の常の菩提ぼだいのねがいとはちがうものがあった。
日本名婦伝:大楠公夫人 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……とうとう本望をとげました。先生のお蔭でございます。一生忘れはいたしません。兄もどんなにか草葉の蔭で、喜んでいることでございましょう。おそらく修羅しゅら妄執もうしゅうも、これで晴れたことでございましょう。……では、どうして敵と出会い、どんな具合に討ち止めたか、お話しすることに致します。
名人地獄 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
下賤げせんな下劣な、三文の値打ちもない男! 人間の皮をかぶった犬畜生にも劣る男! 先王の血を引きながら自分のみが王族たり得なかったことが、この男にとっては寝てもめても忘れ得ぬ無念さ、残念さ、嫉視しっしねたましさ! すべての悪の根源をなす修羅しゅら妄執もうしゅうであったろう。
グリュックスブルグ王室異聞 (新字新仮名) / 橘外男(著)
「……お通さん、おまえの今の姿は、平和そのものだよ。人間は誰でも、こうして、万華まんげ浄土じょうどに生を楽しんでいられるものを、好んで泣き、好んで悩み、愛慾と修羅しゅら坩堝るつぼへ、われからちて行って、八寒十熱の炎に身をかなければ気がすまない。……お通さんだけは、そうさせたくないものだな」
宮本武蔵:02 地の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
芸妓げいこの酌で置炬燵おきごたつも遊びの味なら、みぞれ雲に撥のえを響かせて、名利みょうりや殺刃や術策や、修羅しゅら風雲の流相るそうをよそに、こうして磧の夜霜から、およそ人間のすること、いたされることを、その圏外から冷静に見ているという身分も、ちょっと贅沢ぜいたくでおつな生きている身の味ではあるまいか。
松のや露八 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
又その娘のお由というのが気の勝った女で、関口屋の娘とは従妹いとこ同士でありながら、表向きは奉公人同様に働かされているのが口惜くやしくてならない。そんなわけで、関口屋の方ではやがて相当の婿をさがして、行く末の面倒を見てやろうと思っているのに、次右衛門親子は内心修羅しゅらを燃やして、なにか事あれかしと狙っているという始末、それでは無事に納まる筈がありません。
半七捕物帳:55 かむろ蛇 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)