仕切しき)” の例文
ついでだとおもつてたが、此處こゝからぢやあつちのはうのそれつてべえ仕切しきつてすつちんだから、其處そこれてえとおもつて
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
それへと云う席を見ると、布団ふとんの代りに花毯かたんが敷いてある。無論支那製だろう。真中を六角に仕切しきって、妙な家と、妙な柳が織り出してある。
草枕 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
すると忽ちにして惡魔のやうなユダの顏が仕切しきりの外にはみして來ると、だん/\と生きてゐるやうになり
なんだか此池このいけ仕切しきつた屋根やねのあたりでしきりつぶてつやうなおとがしたが、ぐる/\うづいちやあ屋根やねうへ何十なんじふともないつぶてがひよい/\けて歩行あるやうだつた。
怪談女の輪 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
ふと、顔をあげて見ると、貨車かしゃとの仕切しきりにはまったガラスまどに、人間の顔がぼんやりとうつっている。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
座元ざもとをはじめ、あらゆる芝居道しばいどう人達ひとたちはいうまでもなく、贔屓ひいき人々ひとびと出入でいりのたれかれと、百をえる人数にんずうは、仕切しきりなしにせて、さしも豪奢ごうしゃほこ住居すまいところせまきまでの混雑こんざつていたが
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
ずんほどなをそろえている野原を、血汐ちしおだらけな武者むしゃわらじがズカズカと踏ンづけてひとところへかたまったかと思うと、すきを持ったものが、サク、サク、サク、と四角い仕切しきりをつけてゆく。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
安孫子屋は元繁昌していたが、流れの三太郎という親分が仕切しきって買取ってから流行はやらねえつづきで、半年か一年かで止めてしまった。だからこの男なぞ色気づいた頃にゃもう無え、知らねえ筈だよう。
一本刀土俵入 二幕五場 (新字新仮名) / 長谷川伸(著)
ちゝ正月しやうぐわつになると、屹度きつとこの屏風びやうぶ薄暗うすぐらくらなかからして、玄關げんくわん仕切しきりにてて、其前そのまへ紫檀したんかく名刺入めいしいれいて、年賀ねんがけたものである。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
よこれて田畝道たんぼみちを、むかふへ、一方いつぱうやますそ片傍かたはら一叢ひとむらもり仕切しきつた真中まんなかが、ぼうひらけて、くさはへ朧月おぼろづきに、くもむらがるやうなおくに、ほこら狐格子きつねがうしれる
神鑿 (新字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
その季節きせつにはよくあることなので、自分は、さけどろぼうが貨車かしゃの中まであらしたのかと思うと、思わず、むッとして、手荒てあら仕切しきりの車戸くるまどをひきあけて、足をふみこんだ。
くまと車掌 (新字新仮名) / 木内高音(著)
代助はいまこの親爺おやぢと対坐してゐる。ひさしの長いちいさな部屋なので、ながらにはを見ると、ひさしさきには仕切しきられた様な感がある。すくなくともそらひろく見えない。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
たゞさきのものがえる、すぐあとからつぎのものがあらはれた。さうして仕切しきりなしにそれからそれへとつゞいた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
それから又競走があつて、長飛ながとびがあつて、其次にはつち抛げが始まつた。三四郎は此槌抛つちなげに至つて、とう/\辛抱が仕切しきれなくなつた。運動会は各自めい/\勝手にひらくべきものである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
私も冷たい手を早く赤い炭の上にかざそうと思って、急いで自分の室の仕切しきりを開けました。すると私の火鉢には冷たい灰が白く残っているだけで、火種ひだねさえ尽きているのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
そうして死ぬだろう。——自分は火のない囲炉裏のはたに坐って、夜明まで考えつづけていた。その考えはあとから、あとから、仕切しきりなしに出て来たが、いずれも干枯ひからびていた。
坑夫 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
障子しやうじそと野中のなかさん、野中のなかさんとこゑ二度にどほどきこえた。宗助そうすけ半睡はんすゐうちにはいとこたへたつもりであつたが、返事へんじ仕切しきらないさきに、はや知覺ちかくうしなつて、また正體しやうたいなく寐入ねいつてしまつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
窓に対する壁は漆喰しっくいも塗らぬ丸裸まるはだかの石で隣りの室とは世界滅却せかいめっきゃくの日に至るまで動かぬ仕切しきりが設けられている。ただその真中まんなかの六畳ばかりの場所はえぬ色のタペストリでおおわれている。
倫敦塔 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
もっとも迫害などを恐れるようではそんな事は出来ないでしょう。そんな小さい事を心配するようでは、こんな事は仕切しきれないでしょう。其所そこにその人の自信なり、確乎かくこたる精神なりがある。
模倣と独立 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
その往来の中を馬車が幾輛いくりょうとなく通る。いずれも屋根に人を載せている。その馬車の色が赤であったり黄であったり、青や茶やこんであったり、仕切しきりなしに自分の横を追い越して向うへ行く。
永日小品 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
私はKが再び仕切しきりのふすまけて向うから突進してきてくれればいと思いました。私にいわせれば、先刻はまるで不意撃ふいうちに会ったも同じでした。私にはKに応ずる準備も何もなかったのです。
こころ (新字新仮名) / 夏目漱石(著)