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些細
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ささい
ふりがな文庫
“
些細
(
ささい
)” の例文
彼らの宗教的
畏怖
(
いふ
)
の念はわれわれの想像以上に強烈であったであろうが、彼らの受けた物質的損害は
些細
(
ささい
)
なものであったに相違ない。
天災と国防
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
どんな
些細
(
ささい
)
なことでも見逃さないで、例えば、兄は
手拭
(
てぬぐい
)
を絞る時、右に
捩
(
ねじ
)
るか左に捩るかという様なことまで、
洩
(
も
)
れなく調べました。
双生児:――ある死刑囚が教誨師にうちあけた話――
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
平次が氣の付いたのは、斯う言つた極めて
些細
(
ささい
)
なことでした。が、その些細なことがやがて娘の死因を解く大きな
鍵
(
キー
)
になつたのです。
銭形平次捕物控:187 二人娘
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
ところへ、河東の太守
王邑
(
おうゆう
)
から、
些細
(
ささい
)
な食物と衣服が届けられた。——帝と皇后は、その施しでようやく、飢えと寒さから救われた。
三国志:04 草莽の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
第三者が見れば
君寵
(
くんちょう
)
に変わりはないと見えることもその人自身にとっては
些細
(
ささい
)
な差が生じるだけでも恨めしくなるものらしいですよ。
源氏物語:46 竹河
(新字新仮名)
/
紫式部
(著)
▼ もっと見る
肩から胸まで切り下げられ、そのままお
逝
(
な
)
くなりなされたし、
一昨々日
(
さきおととい
)
も
些細
(
ささい
)
な
咎
(
とが
)
で、お
納戸役
(
なんどやく
)
の金吾様が命をお取られなされました
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
些細
(
ささい
)
のことで
燥
(
はしゃ
)
いだり、又逆に
直
(
す
)
ぐ
不貞腐
(
ふてく
)
された。こういう
性質
(
たち
)
のものは、とうてい我々のような仕事をやって行くことは出来ない。
党生活者
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
私が奥さんを
疑
(
うたぐ
)
り始めたのは、ごく
些細
(
ささい
)
な事からでした。しかしその些細な事を重ねて行くうちに、疑惑は段々と根を張って来ます。
こころ
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
しかもまったく
容赦
(
ようしゃ
)
しない。役所に勤めだすとすぐから、どんな
些細
(
ささい
)
な誤りをもみのがさず、子供でも叱るようにびしびし小言を云う。
霜柱
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
前に言ったとおり、眼前に起こった事物も、彼には遠方のもののように思えた。全体はよく見て取れたが、
些細
(
ささい
)
な点はわからなかった。
レ・ミゼラブル:08 第五部 ジャン・ヴァルジャン
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
それらの
些細
(
ささい
)
な不和を、その後二人は、細やかな愛情で直そうと考えついたので、そのためにたがいにますます親愛の度を加えた。
ジャン・クリストフ:09 第七巻 家の中
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
もちろんそれは
些細
(
ささい
)
な事がらの上に起る。気がつかねばそれなりにすんでゆく。それというのもかれには執拗な観念が一つあった。
夢は呼び交す:――黙子覚書――
(新字新仮名)
/
蒲原有明
(著)
外に
出
(
い
)
でて物を買うを
賤
(
いや
)
しむがごとく、物を持つもまた
不外聞
(
ふがいぶん
)
と思い、剣術道具釣竿の外は、
些細
(
ささい
)
の
風呂敷包
(
ふろしきづつみ
)
にても手に携うることなし。
旧藩情
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
些細
(
ささい
)
な事にはこだはつてはゐられない、荒波のしぶきに
鍛
(
きた
)
へられて、ゆき子は大胆ににじり寄つて行つて、富岡の膝小僧にあごをすゑた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
こんな事はよくあることであるが、世の中に虐遇されて、失望に慣れている一茶には、その
些細
(
ささい
)
なことも深く頭にしみ込んだのであろう。
俳句はかく解しかく味う
(新字新仮名)
/
高浜虚子
(著)
それから
又
(
また
)
いくら信念の上に立った親愛同志の同棲者に対してでも、やはり
些細
(
ささい
)
な観察や評価の眼はにぶらしてはなりません。
家庭愛増進術:――型でなしに
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
病
(
や
)
んでゐる
胸
(
むね
)
には、どんな
些細
(
ささい
)
な
慄
(
ふる
)
えも
傳
(
つた
)
はり
響
(
ひゞ
)
く。そして
死
(
し
)
を
凝視
(
みつめ
)
れば
凝視
(
みつめ
)
る
程
(
ほど
)
、
何
(
なん
)
といふすべてが
私
(
わたし
)
に
慕
(
した
)
はしく
懷
(
なつか
)
しまれる
事
(
こと
)
であらう。
日の光を浴びて
(旧字旧仮名)
/
水野仙子
(著)
一家の平穏のためにはどんな
些細
(
ささい
)
な邪魔でも
嫌悪
(
けんを
)
したい本能から気の引き
緊
(
しま
)
るのを感じながら、彼女は玄関の厚い
硝子戸
(
ガラスど
)
をゆつくり開けた。
朧夜
(新字旧仮名)
/
犬養健
(著)
佐助は何という意気地なしぞ男の
癖
(
くせ
)
に
些細
(
ささい
)
なことに
怺
(
こら
)
え
性
(
しょう
)
もなく声を立てて泣く
故
(
ゆえ
)
にさも
仰山
(
ぎょうさん
)
らしく聞えお
蔭
(
かげ
)
で私が叱られた
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
が、心から捌けて
洒落
(
しゃらく
)
であったかというと実は余り洒落でなかった。
些細
(
ささい
)
な事を
執念
(
しゅうね
)
く気に掛けて
何時
(
いつ
)
までも根に葉に持つ神経質であった。
硯友社の勃興と道程:――尾崎紅葉――
(新字新仮名)
/
内田魯庵
(著)
而もフェアファックス・ロチスターの氣丈な精神を屈せしめ、その力強い體を顫へさせることが出來るのは、輕い
些細
(
ささい
)
な事件ではないのだ。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
日によって、
頬
(
ほお
)
が火照ったり、そうして、その後ではきっと熱が高かったが、
些細
(
ささい
)
なことがらがひどく気に
懸
(
かか
)
ることがある。
冬日記
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
そんな
些細
(
ささい
)
なことにいちいちびくびくして振り向いているのも馬鹿らしいので、そのままにして探し物をつづけていました。
世界怪談名作集:15 幽霊
(新字新仮名)
/
ギ・ド・モーパッサン
(著)
そうして私は相変らずの、のほほん顔で、ただ世話に成りっ放し、身のまわりの
些細
(
ささい
)
の事さえ、自分で仕様とはしないのだ。
帰去来
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
けれどもかう云ふ
些細
(
ささい
)
の変化は格別人目を引かなかつた。少くとも隣のばあさんなどにはいつも「
後生
(
ごしやう
)
よし」のお住だつた。
一塊の土
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
こういう勤めが禅修行の一部をなしたものであって、いかなる
些細
(
ささい
)
な行動も絶対完全に行なわなければならないのであった。
茶の本:04 茶の本
(新字新仮名)
/
岡倉天心
、
岡倉覚三
(著)
何故といつて、この世の中には、帝王の事だつたら、どんな
些細
(
ささい
)
な事でも、きつと記録に書き残す歴史家といふ筆まめな
輩
(
てあひ
)
が住んでゐるから。
茶話:05 大正八(一九一九)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
そこでそのお家へ、大切な品はよく
梱
(
くく
)
って幾つか預け、
手廻
(
てまわり
)
の品だけ持って引移りましたが、どんな
些細
(
ささい
)
な物にも名残が惜しまれるのでした。
鴎外の思い出
(新字新仮名)
/
小金井喜美子
(著)
だんだん親密になるに従って家内の事、その家来の気風はどんなであるということから、仕舞にはごく
些細
(
ささい
)
の事までもよく私には分って来た。
チベット旅行記
(新字新仮名)
/
河口慧海
(著)
心に
傳
(
つた
)
はつた
些細
(
ささい
)
な見聞のあらゆるものまでが、私にとつては深い感激であり、驚異であり、讚美であり、
欽仰
(
きんかう
)
であつた。
処女作の思い出
(旧字旧仮名)
/
南部修太郎
(著)
些細
(
ささい
)
なことにも胸を動かし、つまらぬことにも心を痛める。恋でもない、恋でなくも無いというようなやさしい態度、時雄は絶えず思い惑った。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
小さなからだのくせに、大がらな茂緒の着物を
上手
(
じょうず
)
に着こなして、彼女は、彼女の
些細
(
ささい
)
な原稿を売りに出かけるのだった。
風
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
そして尚も、飢えた野良犬のように、その垣の低い家の周りを、
些細
(
ささい
)
な物音をも聴きのがすまいと耳を
欹
(
そばだ
)
てて、ぐるぐるぐるぐると
廻
(
まわ
)
っていた。
腐った蜉蝣
(新字新仮名)
/
蘭郁二郎
(著)
正否
(
せいひ
)
のほどは
保證
(
ほしよう
)
し
難
(
がた
)
いが、それはとに
角
(
かく
)
こんな
些細
(
ささい
)
な
事物
(
じぶつ
)
まで
科學的
(
かがくてき
)
に
整理
(
せいり
)
せられてゐることは
歎賞
(
たんしよう
)
に
價
(
あたひ
)
するであらう。
火山の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
それ等幼年時代の
些細
(
ささい
)
な出来事が、昨日の事よりももつとありありと(その時の彼には昨日のことはただ
茫漠
(
ばうばく
)
としてゐた)
田園の憂欝:或は病める薔薇
(新字旧仮名)
/
佐藤春夫
(著)
太抵は労働を避けて
些細
(
ささい
)
な物質的
贅沢
(
ぜいたく
)
の中に
遊惰
(
ゆうだ
)
な日送りをしようとすることが動機であるから、政府は世の社会改良家、教育者、慈善家と共に
私娼の撲滅について
(新字新仮名)
/
与謝野晶子
(著)
しかし最後へ来て、この
些細
(
ささい
)
らしくみえるのが、事件解決の一つの鍵となろうとは二人もこの時は
夢想
(
むそう
)
だもしなかった。
爬虫館事件
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
第二に、案外片意地で高慢なところがあって、
些細
(
ささい
)
な事に腹を立てすぐ衝突して職業から離れてしまう。第三に、妙に遠慮深いところがあること。
二老人
(新字新仮名)
/
国木田独歩
(著)
「
些細
(
ささい
)
な誤りを訂正して下さる利益と、親の云うことにも間違いがあるという観念を植えつける害悪と、差し引きが付くものでしょうかしら……」
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
たかがそれほどのことで、死相が現れるなんて意気地のない話かも知れないが、けれどもまた、もっと
些細
(
ささい
)
なことでも、人は
躓
(
つまず
)
くかも知れないのだ。
早春
(新字新仮名)
/
小山清
(著)
固
(
もと
)
より
些細
(
ささい
)
のことながら
萬事
(
ばんじ
)
は
推
(
お
)
して
斯
(
か
)
くの
如
(
ごと
)
けむ、
向後
(
かうご
)
我身
(
わがみ
)
の
愼
(
つゝし
)
みのため、
此上
(
このうへ
)
も
無
(
な
)
き
記念
(
きねん
)
として、
彼
(
か
)
の
鳥籠
(
とりかご
)
は
床
(
とこ
)
に
据
(
す
)
ゑ、
見
(
み
)
て
慰
(
なぐさ
)
みとなすべきぞ。
十万石
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
私たちはお互いに
些細
(
ささい
)
なことに口をとがらし、目をいからす必要はないのです。おだやかに話をすればわかるのです。
般若心経講義
(新字新仮名)
/
高神覚昇
(著)
どんな
些細
(
ささい
)
なことでも、丹念にメモして置くことを忘れなかった。後になって、それがどれだけ役立ったか知れない。
花と龍
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
ああいう
大袈裟
(
おおげさ
)
な電気計器や記録計などを持ち出したところで、恐らく冷血性の犯罪者には、
些細
(
ささい
)
の効果もあるまい。
黒死館殺人事件
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
ごく
些細
(
ささい
)
なごく一時的の変化はあっても今日まで常にそうであった、というまことに驚くべき事実をも知っていた。
アッシャー家の崩壊
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
かくのごとく
些細
(
ささい
)
なことの内に、先生の大詩人たる性格が躍如として顕われている、われ自ら深く興に入って製作これに従うという順序になっている
竹乃里人
(新字新仮名)
/
伊藤左千夫
(著)
自然と
備
(
そなわ
)
る貴族的なる形の端麗、古典的なる線の明晰を望む先生一流の芸術的主張が、知らず知らず
些細
(
ささい
)
なる
常住坐臥
(
じょうじゅうざが
)
の
間
(
あいだ
)
に現われるためであろうか。
妾宅
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
しかし倉地の顔を見ると、そんな事は思うも恥ずかしいような
些細
(
ささい
)
な事に思われた。葉子は倉地の中にすっかりとけ込んだ自分を見いだすのみだった。
或る女:2(後編)
(新字新仮名)
/
有島武郎
(著)
浮いて来る
埃塵
(
ごみ
)
の
塊
(
かたまり
)
や、
西瓜
(
すいか
)
の皮や、腐った猫の
死骸
(
しがい
)
や、
板片
(
いたきれ
)
と同じように、気に掛るこの世の中の
些細
(
ささい
)
な事は皆ずんずん流れて行くように思われた。
桜の実の熟する時
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
はて、
其前
(
そのぜん
)
には、もそっと
些細
(
ささい
)
な
事
(
こと
)
で、
幾
(
いく
)
たびも
夜明
(
よあか
)
しをしたものぢゃが、
曾
(
つひ
)
ぞ
病氣
(
びゃうき
)
なぞになったことは
無
(
な
)
いわい。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
些
漢検準1級
部首:⼆
7画
細
常用漢字
小2
部首:⽷
11画
“些細”で始まる語句
些細事