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世辞
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せじ
ふりがな文庫
“
世辞
(
せじ
)” の例文
旧字:
世辭
彼は病院を出る時、新調の縕袍に対してお延に使ったお
世辞
(
せじ
)
をたちまち思い出した。同時にお延の返事も記憶の舞台に呼び起された。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
此家
(
こゝ
)
へ
世辞
(
せじ
)
を
買
(
かひ
)
に
来
(
く
)
る者は
何
(
いづ
)
れも
無人相
(
ぶにんさう
)
なイヤアな顔の
奴
(
やつ
)
ばかり
這入
(
はい
)
つて
来
(
き
)
ます。
是
(
これ
)
は
其訳
(
そのわけ
)
で
無人相
(
ぶにんさう
)
だから
世辞
(
せじ
)
を
買
(
かひ
)
に来るので婦人
世辞屋
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
……権門へ頭をさげて通うくらい気のわるい思いはない。やれやれ、さむらいにも、
世辞
(
せじ
)
やら
世故
(
せこ
)
やら、世渡りの
要
(
い
)
る世になったの
大岡越前
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
百
姓
(
しょう
)
は、お
世辞
(
せじ
)
のないかわりに、まことにしんせつでありました。
殿
(
との
)
さまはどんなにそれを
心
(
こころ
)
からお
喜
(
よろこ
)
びなされたかしれません。
殿さまの茶わん
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
X大使は、お
世辞
(
せじ
)
のつもりか、クロクロ島のことをほめあげた。私は、いいがたい
口惜
(
くや
)
しさに黙りこくってただ唇を噛んだ。
地球要塞
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
▼ もっと見る
お
世辞
(
せじ
)
を言う
中婆
(
ちゅうばあ
)
さん。まだどこやらに水々しいところもあって、まんざら
裏店
(
うらだな
)
のかみさんとも見えないようでした。
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
きっと
惚
(
ほ
)
れ
惚
(
ぼ
)
れするように
美
(
うつく
)
しくなるであろうと、お
世辞
(
せじ
)
にほめて
頂
(
いただ
)
いた、あの
夢
(
ゆめ
)
のような
日
(
ひ
)
のことが、いまだにはっきり
眼
(
め
)
に
残
(
のこ
)
って……
吉
(
きち
)
ちゃん。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
皮肉なお
世辞
(
せじ
)
をいわれても、
真面目
(
まじめ
)
に感心したようなふうをされても、彼は、等しく我れ関せずで聞き流していた。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
「船河原町の朝吉の野郎は
世辞
(
せじ
)
が良いし、あの
配偶
(
つれあい
)
のお森は馬鹿な
愛嬌
(
あいきょう
)
だ、八さん八さんと下にも置きませんよ」
銭形平次捕物控:349 笛吹兵二郎
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
「おや、今日は御一人で御座いますか。この夏には余分にお茶代を頂きまして……」と嬶さんは
世辞
(
せじ
)
が好い。
悪因縁の怨
(新字新仮名)
/
江見水蔭
(著)
相手の人にお
世辞
(
せじ
)
を述べるか、あるいは
妄
(
みだ
)
りに自分を
卑下
(
ひげ
)
して、なさずともよいお
辞儀
(
じぎ
)
をなし、みずから五
尺
(
しゃく
)
四
寸
(
すん
)
の
体躯
(
からだ
)
を四尺三尺に
縮
(
ちぢ
)
め、それでも不足すれば
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
彼自身肥桶でも
担
(
かつ
)
いで居る時、正銘の百姓が通りかゝれば、彼は得意である。農家のおかみに「お上手ですねえ」とお
世辞
(
せじ
)
でも云われると、彼は頗る得意である。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
ある日、誰かしら、私には初めての女の人が来て、私を見て、多分お
世辞
(
せじ
)
のつもりだったのだろう?
何が私をこうさせたか:――獄中手記――
(新字新仮名)
/
金子ふみ子
(著)
決して心にもない
世辞
(
せじ
)
追従
(
ついしょう
)
をいうて他を
傲慢
(
ごうまん
)
ならしめる必要を感ぜぬごとく、両方が一致して対等の位地を保ちながら、ともに国のために力をつくしているように見受ける。
理想的団体生活
(新字新仮名)
/
丘浅次郎
(著)
その眉のかかり、目つき、
愛嬌
(
あいきょう
)
があると申すではない。
口許
(
くちもと
)
なども
凛
(
りん
)
として、
世辞
(
せじ
)
を一つ言うようには思われぬが、
唯
(
ただ
)
何んとなく賢げに、恋も無常も知り抜いた
風
(
ふう
)
に見える。
春昼
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
青木がお
世辞
(
せじ
)
を云うと、彼に従って上って来た主婦は愛想よく微笑しながら、
囁
(
ささや
)
き声で
猟奇の果
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
要するに二人の客に対して、等分に
世辞
(
せじ
)
愛嬌
(
あいきょう
)
を
振蒔
(
ふりま
)
いたと云うに過ぎまい。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
と笑って
世辞
(
せじ
)
をいってくれた。その言葉を背中に聴かせながら
蘆声
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
小町 あら、お
世辞
(
せじ
)
などはおよしなさい。
二人小町
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
お
世辞
(
せじ
)
も言われ、咀われもします。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
いちご売る
世辞
(
せじ
)
よき美女や峠茶屋
墨汁一滴
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
箱胴乱に仕入物を詰めこむと、それを肩にかけて四ツ目屋の新助、
旅商人
(
たびあきんど
)
らしい
世辞
(
せじ
)
を投げて、
秦野屋
(
はたのや
)
の店から姿を消しました。
江戸三国志
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
帯
(
おび
)
の
間
(
あひだ
)
から
紙幣入
(
さついれ
)
を出して
幾許
(
いくら
)
か
払
(
はらひ
)
をして
帰
(
かへ
)
る時に、重い口からちよいと
世辞
(
せじ
)
を
云
(
い
)
つて
往
(
ゆ
)
きましたから、
大
(
おほ
)
きに
様子
(
やうす
)
が
宜
(
よろ
)
しうございました。
世辞屋
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
あたしも
会
(
あ
)
いたかった。——こういったら、お
前
(
まえ
)
さんはさだめし、
心
(
こころ
)
にもないことをいうと、お
想
(
おも
)
いだろうが、決して
嘘
(
うそ
)
でもなけりゃ、お
世辞
(
せじ
)
でもない。
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
それでもお延はお秀の手料理になるこのお
世辞
(
せじ
)
の返礼をさも
旨
(
うま
)
そうに
鵜呑
(
うのみ
)
にしなければならなかった。
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
伯母のお滝は例の如く
空
(
から
)
お
世辞
(
せじ
)
を言っては金を借りて行き、その金を亭主の
小遣銭
(
こづかいせん
)
にやったり自分らの口へ
奢
(
おご
)
ったりしてしまったので、お松の病気の
癒
(
なお
)
った時分には
大菩薩峠:02 鈴鹿山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
殿
(
との
)
さまは、百
姓
(
しょう
)
の
生活
(
せいかつ
)
がいかにも
簡単
(
かんたん
)
で、のんきで、お
世辞
(
せじ
)
こそいわないが、しんせつであったのが
身
(
み
)
にしみておられまして、それをお
忘
(
わす
)
れになることがありませんでした。
殿さまの茶わん
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
本来なら、こりゃお前さんがたが、客へお
世辞
(
せじ
)
に云う事だったね。誰かに
肖
(
に
)
ていらっしゃるなぞと思わせぶりを……ちと
反対
(
あちこち
)
だったね。言いました。ああ、肖ている、肖ているッて。
縁結び
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それと、
妬
(
ねた
)
んでる
奴
(
やつ
)
にお
世辞
(
せじ
)
を使うのさ。だけど、僕たちは、金持ちだってことは、ちゃんとわかってるんだ。
毎月
(
まいげつ
)
一
日
(
じつ
)
には、父さんが一人っきりでしばらく自分の部屋へひっこんでる。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
芸妓
(
げいぎ
)
はお
世辞
(
せじ
)
を
売品
(
ばいひん
)
とし、
彼方此方
(
あなたこなた
)
に振りまき、
柔
(
やさ
)
しいことをいうて、その
報酬
(
ほうしゅう
)
にポチを
貰
(
もら
)
おうとするが、彼らは
明
(
あから
)
さまにこれをその職業に表していることゆえ、さらに驚くに足りません。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
彼は、天井から、塩びきの
鮭
(
さけ
)
のように、さかさまになってぶら下って気絶している。一方の足が操縦席にはさまり、そのまま、ぶら下っているのだ。お
世辞
(
せじ
)
にも、勇しい
恰好
(
かっこう
)
だとはいえない。
地底戦車の怪人
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「
主人
(
あるじ
)
は顔を見せません。番頭は四十がらみの、
世辞
(
せじ
)
のいい男で」
銭形平次捕物控:071 平次屠蘇機嫌
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
好
(
よ
)
いのがあつたら二つばかり
買
(
かつ
)
て
来
(
こ
)
いツて、
姐
(
ねえ
)
さんが
小遣
(
こづけえ
)
を
呉
(
く
)
れやしたから、
何卒
(
どうぞ
)
私
(
わつし
)
に
丁度
(
ちやうど
)
宜
(
よ
)
さそうな
世辞
(
せじ
)
があつたら
売
(
うつ
)
てお
呉
(
く
)
んなせえな。
世辞屋
(新字旧仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「なアにお前、将軍家なんぞに、この久米一の仕事が分って
堪
(
たま
)
るものか。ばかな、そりゃ大名の頭を
撫
(
な
)
でそやしておく、お
世辞
(
せじ
)
というものだ」
増長天王
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「どうなすったの。なんだか急にお
世辞
(
せじ
)
が
旨
(
うま
)
くおなりね。だけど、違ってるのよ、あなたの鑑定は」
明暗
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
橘屋
(
たちばなや
)
の
若旦那
(
わかだんな
)
は、八百
蔵
(
ぞう
)
に
生
(
い
)
き
写
(
うつ
)
しだなんて、つまらねえお
世辞
(
せじ
)
をいわれるもんだから、
当人
(
とうにん
)
もすっかりいい
気
(
き
)
ンなってるんだろうが、八百
蔵
(
ぞう
)
はおろか、八百
屋
(
や
)
の
丁稚
(
でっち
)
にだって
おせん
(新字新仮名)
/
邦枝完二
(著)
亭主
(
ていしゆ
)
は
法然天窓
(
はふねんあたま
)
、
木綿
(
もめん
)
の
筒袖
(
つゝそで
)
の
中
(
なか
)
へ
両手
(
りやうて
)
の
先
(
さき
)
を
窘
(
すく
)
まして、
火鉢
(
ひばち
)
の
前
(
まへ
)
でも
手
(
て
)
を
出
(
だ
)
さぬ、ぬうとした
親仁
(
おやぢ
)
、
女房
(
にようばう
)
の
方
(
はう
)
は
愛嬌
(
あいけう
)
のある、
一寸
(
ちよいと
)
世辞
(
せじ
)
の
可
(
い
)
い
婆
(
ばあ
)
さん、
件
(
くだん
)
の
人参
(
にんじん
)
と
干瓢
(
かんぺう
)
の
話
(
はなし
)
を
旅僧
(
たびそう
)
が
打出
(
うちだ
)
すと
高野聖
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
と、
女房
(
にょうぼう
)
は、お
世辞
(
せじ
)
を
残
(
のこ
)
して
帰
(
かえ
)
っていきました。
奥さまと女乞食
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
これは、間もなく、秀吉が、蘭丸とともに席を立って別れる際にいった
世辞
(
せじ
)
である。これこそは、ほんとの世辞であった。
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
傳「ないので、伯父さんの厄介になって
機
(
はた
)
を織ったり糸を
繰
(
と
)
ったり、
彼
(
あ
)
のくらい稼ぐ者は有りませんが、
柔
(
やさ
)
しくって人柄が
宜
(
い
)
い、いやに
生
(
なま
)
っ
世辞
(
せじ
)
を云うのではないから、あれが
宜
(
よ
)
うございます」
敵討札所の霊験
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
世辞
(
せじ
)
ではございませぬ。このことは、
市
(
いち
)
に集まってくるあの賑いを
御覧
(
ごろう
)
じましても、おわかりでございましょうが
新書太閤記:07 第七分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
世間なみにある軽薄な
世辞
(
せじ
)
とか社交というものを超越して、自他の地位階級も、主客のけじめも打ち忘れて
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「羽柴どのの家風というか、ここへ来ると、家中の誰もが、まことに気軽で、
容態
(
ようたい
)
ぶらずに、
世辞
(
せじ
)
ぶらず、至ってみな明るい感じがする。——一家中というものは、こうありたいものだが、さてなかなかこう参らんものでな」
新書太閤記:06 第六分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
かえって、城主の使者が
世辞
(
せじ
)
をいう。
増長天王
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
世
常用漢字
小3
部首:⼀
5画
辞
常用漢字
小4
部首:⾟
13画
“世辞”で始まる語句
世辞屋
世辞湯
世辞追従