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むぎわら
ふりがな文庫
“
麦藁
(
むぎわら
)” の例文
旧字:
麥藁
「ピイピイ笛の
麦藁
(
むぎわら
)
ですかえ、……あんな事を。」と、むら雲一重、
薄衣
(
うすぎぬ
)
の晴れたように、嬉しそうに打微笑む、月の眉の気高さよ。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
火がなくッたって
暖
(
あたた
)
かい、人間の
親方
(
おやかた
)
はあんなに
冷
(
つめ
)
たくッてとげとげしているのに、どうして
枯
(
か
)
れた
麦藁
(
むぎわら
)
がこんなに暖かいものだろう。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
その人は線路工夫の
半纒
(
はんてん
)
を着て、
鍔
(
つば
)
の広い
麦藁
(
むぎわら
)
帽を、上の
棚
(
たな
)
に載せながら、誰に
云
(
い
)
ふとなく大きな声でさう言ってゐたのです。
化物丁場
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
頭には
麦藁
(
むぎわら
)
の端を結んで笠のようにしたものをかぶっていたのが、土器に入れた火に、この麦藁が、銀の針に見えたのである。
現代語訳 平家物語:06 第六巻
(新字新仮名)
/
作者不詳
(著)
あの人は通りに面した
卓
(
テーブル
)
によって
煙草
(
たばこ
)
をふかしていました。のみさしのレモン・スカッシュのコップが
麦藁
(
むぎわら
)
をさしたまま前においてあります。
華やかな罪過
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
▼ もっと見る
その頃は娘達の髪はまだ赤かったが、でも
異母妹
(
いもうと
)
から見ると、
麦藁
(
むぎわら
)
帽子を脱いだお新の方は余程黒かったことを思出した。
船
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
僕は
薄縁
(
うすべり
)
の上に
胡坐
(
あぐら
)
を
掻
(
か
)
いて、
麦藁
(
むぎわら
)
帽子を脱いで、ハンケチを出して額の汗を
拭
(
ふ
)
きながら、舟の中の人の顔を見渡した。
百物語
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
紅いソーダ水の
麦藁
(
むぎわら
)
をぐつとすゝりながら、富岡は、ゆき子の美しい手を見てゐた。柔らかさうな美しい手をしてゐた。
浮雲
(新字旧仮名)
/
林芙美子
(著)
沖縄の方でも近い頃まで、一匹の鼠を捕えて
麦藁
(
むぎわら
)
の舟に載せ、それを代表的に海へ流すという行事、ちょうどこちらの虫送りと似た風習があった。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
チャーリング・クロスに光る白い
麦藁
(
むぎわら
)
帽の色、ロンドンももう夏のシーズンに入ったと云うような記事がみえました。
綺堂むかし語り
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
お前はそれを私の釣針につけてくれるために、私の方へ身をかがめる。お前はよそゆきの、赤いさくらんぼの飾りのついた、
麦藁
(
むぎわら
)
帽子をかぶっている。
麦藁帽子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
銘仙らしい白い
飛白
(
かすり
)
に、
袴
(
はかま
)
を
穿
(
は
)
いて
麦藁
(
むぎわら
)
の帽子を
被
(
かぶ
)
った、スラリとした姿が、何処となく上品な気品を持っていた。
真珠夫人
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
小さい
前栽
(
せんざい
)
と玄関口の方の庭とを仕切った
板塀
(
いたべい
)
の上越しに人の帰るのを見ると、
蝙蝠傘
(
こうもりがさ
)
を
翳
(
かざ
)
して新しい
麦藁
(
むぎわら
)
帽子を
冠
(
かぶ
)
り、薄い
鼠色
(
ねずみいろ
)
のセルの
夏外套
(
なつがいとう
)
を着た後姿が
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
そこに十二三歳の
少年
(
こども
)
が頭から
雫
(
しずく
)
のする
麦藁
(
むぎわら
)
帽子を
被
(
かぶ
)
ってションボリとまだ実の入らぬ生栗を喰べている。
駅夫日記
(新字新仮名)
/
白柳秀湖
(著)
男は、言いあわしたように
麦藁
(
むぎわら
)
帽をかぶりだし、女は、一夜のうちに白い軽装に変わる。アメリカの生活で楽しい年中行事の一つであるいわば
衣更
(
ころもが
)
えの季節だった。
チャアリイは何処にいる
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
通りまで一緒に送って行って、鳥打の代りに
麦藁
(
むぎわら
)
を買って
被
(
かぶ
)
せたり、足袋に麻裏草履などもはかせた。
黴
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
老人はすっかり着古してすり切れてしまった
羅紗
(
らしゃ
)
の
外套
(
がいとう
)
をひきかけ、すばらしく大きな古い
麦藁
(
むぎわら
)
帽子をかぶって身動きもせずにじっと遠く沖のかなたを
見戍
(
みまも
)
っていた
麦藁帽子
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
山の上では、また或る日
拗
(
しつこ
)
く
麦藁
(
むぎわら
)
を
焚
(
た
)
き始めた。彼は暇をみて病室を出るとその火元の畠の方へいってみた。すると、青草の中で、
鎌
(
かま
)
を
研
(
と
)
いでいた若者が彼を仰いだ。
花園の思想
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
長い白ひものついた
麦藁
(
むぎわら
)
編みの小さな帽子を、頭に
被
(
かぶ
)
るよりもむしろ好んで手に持っていた。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
町家
(
まちや
)
では、前の年の寒のうちに寒水でつくった餅を喰べてこの日を祝い、江戸富士詣りといって、
駒込
(
こまごめ
)
の
真光寺
(
しんこうじ
)
の地内に
勧請
(
かんじょう
)
した富士権現に詣り、
麦藁
(
むぎわら
)
でつくった
唐団扇
(
とううちわ
)
や氷餅
顎十郎捕物帳:08 氷献上
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
「引括られるとしても、
薪
(
まき
)
ざっぽうや
麦藁
(
むぎわら
)
とは違うのだから、ただで引括られても詰らねえじゃねえか、ちっとばかり手足をバタバタさせ、それから引括られた方がよかんべえ」
大菩薩峠:17 黒業白業の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「今
時分
(
じぶん
)
が丁度訪問に
好
(
い
)
い刻限だらう。
君
(
きみ
)
、又
昼寐
(
ひるね
)
をしたな。どうも職業のない人間は、惰弱で
不可
(
いか
)
ん。君は一体何の
為
(
ため
)
に
生
(
うま
)
れて
来
(
き
)
たのだつたかね」と云つて、寺尾は
麦藁
(
むぎわら
)
帽で
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
欣之介は或日、——それは麦打のすんだ後で、農家の
周囲
(
まはり
)
には
到
(
いた
)
る
処
(
ところ
)
に
麦藁
(
むぎわら
)
が山のやうに積んである頃のことであつた——庄吉と二人で農園の一つの
隅
(
すみ
)
へ小さな
小舎
(
こや
)
を一つ建てた。
新らしき祖先
(新字旧仮名)
/
相馬泰三
(著)
牝豚
(
めぶた
)
は、紅く
爛
(
ただ
)
れた腹を汚れた床板の上に引きずりながら息苦しそうにのろのろ歩いていた。暫く歩き、餌を食うとさも疲れたように、
麦藁
(
むぎわら
)
を短く切った敷藁の上に行って横たわった。
豚群
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
英米人の夏帽子には
麦藁
(
むぎわら
)
多しと、五、六年前帰朝者の語る所なり今は知らず。
洋服論
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
彼
(
かの
)
岩見は、白の縞ズボンに、黒のアルパカの上衣、
麦藁
(
むぎわら
)
帽に白靴、ネクタイは無論蝶結びのそれで、丁度当時のどの若い会社員もした様な一分の隙もない服装で、揚々としてふくらんだ胸
琥珀のパイプ
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
きょうも妻は
不相変
(
あいかわらず
)
麦藁
(
むぎわら
)
の散らばった
門口
(
かどぐち
)
にじっと
膝
(
ひざ
)
をかかえたまま静かに
午睡
(
ごすい
)
を
貪
(
むさぼ
)
っている。これは僕の家ばかりではない。どの家の門口にも二三人ずつは必ずまた誰か
居睡
(
いねむ
)
りをしている。
第四の夫から
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
かわいげな乙女たちも、母親同様古風な身なりではあったが、
麦藁
(
むぎわら
)
帽子をかぶり、きれいなリボンをつけ、あるいはまた白いドレスを着ているあたりは、都会の最新流行のあらわれであった。
スリーピー・ホローの伝説:故ディードリッヒ・ニッカボッカーの遺稿より
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
その国俗として
麦藁
(
むぎわら
)
を積んだ処を右に
遶
(
めぐ
)
れば飲食をくれる、来年の豊作を祈るためだ。左に遶れば凶作を招くとて不吉とする。摩訶羅不注意にも左へ遶ったので麦畑の主また
忿
(
いか
)
って打ち懲らす。
十二支考:09 犬に関する伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
のぶは丁寧に自分の
腰掛
(
こしかけ
)
た草を
別
(
わ
)
けて老母を腰かけさせ升た、私は
麦藁
(
むぎわら
)
で
螢籠
(
ほたるかご
)
を編んで居り
升
(
まし
)
たから、両人の話しを聞くとはなしに聞いて居り升た。のぶは
好
(
よ
)
い話し合手を見つけたといふ調子で
黄金機会
(新字旧仮名)
/
若松賤子
(著)
そこでオレンジ・エードを注文して、
麦藁
(
むぎわら
)
の
管
(
くだ
)
でチュウチュウ吸った。
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
やれ来た、
五月
(
ごぐわつ
)
、
麦藁
(
むぎわら
)
で
晶子詩篇全集
(新字旧仮名)
/
与謝野晶子
(著)
この男は黒のアルパカ〔薄地の織物〕の上着に、
縞
(
しま
)
セルのズボンをはいて、
麦藁
(
むぎわら
)
帽子をかぶっていた。やはり無言のまま彼は第三の椅子に腰をかけた。
鉄の規律
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
だが、お前がちょっと斜めに
冠
(
かぶ
)
っている、赤いさくらんぼの飾りのついたお前の
麦藁
(
むぎわら
)
帽子は、お前のそんな黒いあどけない顔に、大層よく似合っていた。
麦藁帽子
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
と辰さんは言い置いて、
麦藁
(
むぎわら
)
帽の古いのを冠りながら復た畠へ出た。辰さんの弟も
股引
(
ももひき
)
を
膝
(
ひざ
)
までまくし上げ、素足を顕して、兄と一緒に土を起し始めた。
千曲川のスケッチ
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
……羽織は、まだしも、世の中一般に、頭に
被
(
かぶ
)
るものと
極
(
きま
)
った
麦藁
(
むぎわら
)
の、安値なのではあるが夏帽子を、居かわり立直る客が
蹴散
(
けち
)
らし、
踏挫
(
ふみひし
)
ぎそうにする……
木の子説法
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それで身が冷えているだろうといういたわりから、コスガナシだけには
麦藁
(
むぎわら
)
を
門火
(
かどび
)
に焚いてお迎えをし、新らしい方の
魂祭
(
たままつり
)
には火を焚かないということである。
海上の道
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
麦藁
(
むぎわら
)
の大きいアンヌマリイ帽に、
珠数
(
じゅず
)
飾りをしたのをかぶっている。
鼠色
(
ねずみいろ
)
の長い着物式の上衣の胸から、
刺繍
(
ししゅう
)
をした白いバチストが見えている。ジュポンも同じ鼠色である。
普請中
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
みんな洋服を着た若い人ばかりで、二人は
詰襟
(
つめえり
)
、ひとりは折襟……。帽子もみんな覚えてゐます、一人は
麦藁
(
むぎわら
)
、ひとりは
鳥打
(
とりうち
)
、ひとりは古ぼけた
中折
(
なかお
)
れをかぶつてゐました。
赤い杭
(新字旧仮名)
/
岡本綺堂
(著)
既に金網をもって防戦されたことを知った心臓は、風上から
麦藁
(
むぎわら
)
を
燻
(
くす
)
べて肺臓めがけて吹き流した。煙は道徳に従うよりも、風に従う。花壇の花は終日
濛々
(
もうもう
)
として曇って来た。
花園の思想
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
松造は
麦藁
(
むぎわら
)
で作った兎の玩具を幸太郎に与え、莨入をとりだしながらおせんの顔を見た。
柳橋物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
木蔭
(
こかげ
)
で、
麦藁
(
むぎわら
)
帽をかぶった、年をとった女のひとが油絵を描いている。仲々うまいものだ。しばらく見とれている。芳烈な油の匂いがする。このひとは満足に食べられるのかしら。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
新らしい
麦藁
(
むぎわら
)
帽を
被
(
かぶ
)
つて、閑静な薄い羽織を着て、
暑
(
あつ
)
い/\と云つて赤い
顔
(
かほ
)
を
拭
(
ふ
)
いた。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
……どうりで、ここへ
寝
(
ね
)
ころんだ時、イヤに、
麦藁
(
むぎわら
)
の
寝床
(
ねどこ
)
があたたかであり
過
(
す
)
ぎた。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
麦藁
(
むぎわら
)
や
椰子
(
やし
)
の
実
(
み
)
でちょっとしたおもしろい
玩具
(
おもちゃ
)
をこしらえてくれたからである。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
砂糖の塔、
生菓子
(
なまがし
)
、
麦藁
(
むぎわら
)
のパイプを入れた
曹達水
(
ソオダすい
)
のコップなどの向うに人かげが幾つも動いている。少年はこの飾り窓の前へ通りかかり、飾り窓の左に足を止めてしまう。少年の姿は膝の上まで。
浅草公園:或シナリオ
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
四十そこそこの
麦藁
(
むぎわら
)
帽子をかぶった男が、ふところからビスケットを取り出しては、象にほうってやっている。
動物園の一夜
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
「叔父さん、言って見せようか」と一郎は岸本の前に立って、「銀に、
汐辛
(
しおから
)
に、
麦藁
(
むぎわら
)
に、それから赤蜻蛉にサ」
新生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
青、黄に、朱さえ交った、
麦藁
(
むぎわら
)
細工の朝鮮帽子、唐人笠か、尾の
尖
(
とが
)
った高さ三尺ばかり、
鯰
(
なまず
)
の尾に似て非なるものを頂いて。その癖、
素銅
(
すあか
)
の
矢立
(
やたて
)
、
古草鞋
(
ふるわらじ
)
というのである。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
十八九ばかりの書生風の男で、
浴帷子
(
ゆかた
)
に
小倉袴
(
こくらばかま
)
を穿いて、
麦藁
(
むぎわら
)
帽子を
被
(
かぶ
)
って来たのを、女中達が
覗
(
のぞ
)
いて見て、
高麗蔵
(
こまぞう
)
のした「
魔風
(
まかぜ
)
恋風」の
東吾
(
とうご
)
に似た書生さんだと云って騒いだ。
心中
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
麦
常用漢字
小2
部首:⿆
7画
藁
漢検準1級
部首:⾋
17画
“麦藁”で始まる語句
麦藁帽
麦藁帽子
麦藁屋根
麦藁細工
麦藁手
麦藁籠
麦藁葺
麦藁製
麦藁鯛