すべか)” の例文
それには、真に児童を知ることなくして、愛の生じようはずがない。作家は、先ずすべからく児童の実生活を認識しなければならぬのです。
若しちよくにしてなく、はんにしてれいならずんば、又是病なり。故に質を存せんと欲する者は先づすべからく理径明透して識量宏遠なるべし。
文芸鑑賞講座 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
第十五条 うらみを構へあだを報ずるは、野蛮の陋習にして卑劣の行為なり。恥辱をそそぎ名誉を全うするには、すべからく公明の手段をえらむべし。
修身要領 (新字旧仮名) / 福沢諭吉慶應義塾(著)
竜樹がいうには、「仏性を見ようと思うならば、先須我慢」[先ずすべからく我慢を除くべし]。問者、「仏性は大か小か」。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
すべからく先ずドイツ諸国に通ずる民法法典を制定し、全民族をして同一法律の下に棲息せしめ、同一の権利を享有せしめなければならない。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
すべからく心の奥の秘宮を重んずべし、之を照らかにすべし、之を直うすべし、之を白からしむべし、之を公けならしむべし。
各人心宮内の秘宮 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
突如いきなり噛着かみつき兼ねない剣幕だったのが、ひるがえってこの慇懃いんぎんな態度に出たのは、人はすべからく渠等かれらに対して洋服を着るべきである。
革鞄の怪 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
太陽は有難い! 剛健強勇を生命とする快男子は、すべからく太陽に向かって突貫し、その力ある光勢を渾身こんしんに吸込む位の元気が無ければ駄目じゃ。
本州横断 癇癪徒歩旅行 (新字新仮名) / 押川春浪(著)
今日の青年はすべからく奮闘一番して不生産的な閑事業や、さなくば投機的の暴利をむさぼり望むが如き悪弊を脱して盛んに新方面に活動してもらいたい。
青年の新活動方面 (新字新仮名) / 大隈重信(著)
アレはすべからく偽善琵琶会と書くべしだと思つてるんだが、それでも君、釧路みたいな田舎へ来てると、怎も退屈で退屈で仕様がないもんだからね。
菊池君 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
ケダシ士君子しくんし万巻ばんかんヲ読破スルモマタすべかラク廟堂ニ登リ山川さんせんまじわり海内かいだい名流ニ結ブベシ。然ル後気局ききょく見解自然ニ濶大かつだいス、良友ノ琢磨たくまハ自然ニ精進せいしんス。
小説作法 (新字旧仮名) / 永井荷風(著)
しかし、それ故破獄して浮世の風に当ろうと云うのは大丈夫としてすべからざることじゃ。男子すべからく天命に安んずし。何んとそうではあるまいかな
すべからく「日本の眼」でその内容を整理すべきである。これを成せば「世界の眼」が瞠目どうもくしてこれを眺めるであろう。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
軒冕けんべん(高貴の人の乗る馬車)の中におれば、山林の気味なかるべからず。林泉りんせん田舎いなかの意)の下にりては、すべからく廊廟ろうびょう朝廷ちょうてい)の経綸けいりんいだくを要すべし」
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
我には子汝には曾祖父そうそふなりき、汝すべからく彼の爲にその長き勞苦をば汝のわざによりて短うすべし 九四—九六
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
みずから曰く、「格物の天地造化におけるはかえってやすく、人情世故せこにおけるはかえってかたし。吾人ごじんすべからくその易き所にれて、その難き所にむべからず」
吉田松陰 (新字新仮名) / 徳富蘇峰(著)
東は事に処し物に接するすべからく精確詳密にすべきを云ひ、西は機に投じ縁に応ぜざれば金珠も土礫に等しきを云へるなるが、東の方の諺は詩趣無く、西のは佳意無し。
東西伊呂波短歌評釈 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
〔譯〕凡そ事をすには、すべからく天につかふるの心あるをえうすべし。人に示すのねんあるを要せず。
現出す 死後の座は金菡萏きんかんたんを分ち 生前の手は紫鴛鴦しえんおう月沉げつちん秋水珠を留める涙 花は落ちて春山土また香ばし 非命すべからく薄命に非ざるを知るべし 夜台長く有情郎に伴ふ
八犬伝談余 (新字新仮名) / 内田魯庵(著)
カキツバタでは決して無いぞとすべからく断定すべき燕子花の名は、元来宋の時代の朱輔(桐郷の人で字は季公)という人の著わした『渓蛮叢笑』と題する書物に出ていてその文は
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)
ややもすれば身を政治界に投ぜんとする風ありと雖も、是れ以ての外の心得違なり、青年はすべからく客気を抑えて先ずおおいに修養すべし、おおいに修養してしかしてのちおおいに為す所あるべし
平凡 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
医学者たるものはすべからく、ペストやコレラの病原菌穿鑿せんさくに力をそそぐよりも心臓を鉄の如く強くすること、否、一歩進んで鋼鉄製の人工心臓の製作に工夫をこらすべきであります。
人工心臓 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
友よ、しも我等の仕事を容易ならしめ、最良最上の成績を挙げんとならば、すべからく交霊会には肉体が健全円満で、感覚が敏活で、その上心が受動的である理想的な一人物を連れ来れ。
編述の躰裁を整へんとせば、すべからく筆を明治の初年に起し、福沢、西、中村等諸先生より論じ起すべきなり。しかもかくの如くせんには材料未だそなはらざる也。比較、簡撰かんせん多少の時日を要するなり。
明治文学史 (新字旧仮名) / 山路愛山(著)
ちんが位を、蔭子いんし将門に授く。左大臣正二位菅原朝臣すがわらのあそんの霊魂に托して表せん。それ、八幡大菩薩は、八万の軍をもって、新皇将門を、助成あらん。……すべからく三十二相の音楽を以て、これを迎え奉れ
平の将門 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
欧詩に云ふ、「雪裏花開いて人未だ知らず、摘み来り相顧みて共に驚起す。便すなはすべからく酒を索めて花前に酔ふべし、初めて見る今年の第一枝」と。初めただ桃花に一種早く開く者あるのみとおもひき。
吾人ごじんすべからく現代を超越せざるべからず……か。仁丹じんたんの広告見たいだね。樗牛ちょぎゅうという人は自家広告が上手だった丈けに景色の好いところへ持って来たよ。何だか物欲しそうで一向超越していない」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
男子が筆を取つて天下にまみへるのならばすべからく堂々とやるべしだ。
もって測るべからずである。すべからく再起の計をなしたまえ
渡良瀬川 (新字新仮名) / 大鹿卓(著)
すべからくすべし。2540
すべからく聴取すべし
愛卿伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
曰く「各国の法律には、内史・外史の別がある。歴史法学はすべからく法学中特別の一科たるべきものである」と。また曰く
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
左れば文人の恋愛に対するや、すべからく厳粛なる思想をて其美妙を発揮するをつとむべく、苟くも卑野なる、軽佻けいてうなる、浮薄なる心情を以て写描することなかるべし。
「歌念仏」を読みて (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
もし樺張かばばりの下駄を続けようとするなら、すべからく不用な皮を継いで用いるか、または三番手、四番手の皮を選ぶべきで、上等の飴皮あめかわの如きものを乱費してはならない。
樺細工の道 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
すべからく汝の自負に傲慢なれ、不遜なれ、大水の声をあげて汝みづからの為に讃美し、謳歌して可也かなり
閑天地 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
くだんの貞盛は、追捕を免れて跼蹐きよくせきとして道に上れる者也、公家はすべからく捕へて其の由をたゞさるべきに、而もかへつて理を得るの官符を給はるとは、是尤も矯飾けうしよくせらるゝ也。
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
けだし社会は個々の家よりなるものにして、良家の集合すなわち良社会なれば、徳教究竟の目的、はたして良社会を得んとするにあるか、すべからくもとに返りて良家を作るべし。
読倫理教科書 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
これには苟くもわが日本に存するその方言を残らず採集してそれを網羅整頓し、ここにこれを一書にまとめて僉載せんさいし、すべからく植物方言全集を完成して刊行すべき事を私は強調する。
男子はすべからく強かるべし、しかし強がるべからず。そと弱きがごとくしてうち強かるべし。
自警録 (新字新仮名) / 新渡戸稲造(著)
即ち物の占有はよろしくない、すべからく世事を解放しなくてはならぬという考えから、少数政治を非認し、幕府を倒し、廃藩置県となり、階級制度をめ、市民平等という事になった。
琴書きんしょすべかラクみずかしたがウベシ、禄位ろくいッテ何カセン——こういう境遇でございます」
任侠二刀流 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
すべからく原文の音調を呑み込んで、それを移すようにせねばならぬと、こう自分は信じたので、コンマ、ピリオドの一つをもみだりに棄てず、原文にコンマが三つ、ピリオドが一つあれば
余が翻訳の標準 (新字新仮名) / 二葉亭四迷(著)
人はすべからく死を畏れざるの理を死を畏るゝの中に自得じとくすべし、性にかへるにちかし。
犯罪者はすべからく悪の影響から隔離され、高潔なる空気に浴しつつ、善霊の感化を充分に受け得られるように、工夫してやるべきである。しかるに地上の獄舎制度は、その正反対をやっている。
そうして、また医師としては、そういう心はすべからく撤回してしまいなさいと、立ち入って忠告することも出来かねます。又たとえ、忠告したところが、すなおにきいてもらえる筈がありません。
印象 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
故に我民族の法律的統一をなさんと欲せば、すべからく先ずゼルマン民族の権利確信を統一しなければならない。
法窓夜話:02 法窓夜話 (新字新仮名) / 穂積陳重(著)
仕事はすべからくその団結の上に安全な保証を置くべきなのです。協力は一人よりも、もっと大きな結果をもたらすでしょう。それは将来の人類の理想にも適う事なのです。
民芸四十年 (新字新仮名) / 柳宗悦(著)
すべからく男児の如く運命を迎ふべし、然り、須らく男児の如く死すべし、国民も亦た其の天職あるなり、其の威厳あるなり、其の死後の名あるなり、其の生前の気節あるなり。
国民と思想 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
その法はすべからく全国人民に及ぼして、政府の内と外とに差別するところあるべからざるなり。
学問の独立 (新字新仮名) / 福沢諭吉(著)
そしてこの垂糸海棠の通名としてすべからくハナカイドウを用うべきものである。
植物記 (新字新仮名) / 牧野富太郎(著)