トップ
>
除
>
と
ふりがな文庫
“
除
(
と
)” の例文
「あなたが死病の根を植えつけたのを、私がやっと
除
(
と
)
ったじゃありませんか、やかないあの人は、あなたをどうしようというのです」
蓮香
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
平次はそんな事は氣にも留めない樣子で、
膝行
(
ゐざ
)
り寄ると死體に掛けた
晒
(
さらし
)
木綿を
除
(
と
)
り、丁寧に拜んで、暫らくその顏を見詰めて居ります。
銭形平次捕物控:186 御宰籠
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
それは
貴君
(
あなた
)
が下宿屋でなさる事も出来ます。先ず林檎の皮を
剥
(
む
)
いて小さく切って
心
(
しん
)
を
除
(
と
)
って鍋へ入れますが水は少しも
要
(
い
)
りません。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
と
婦人
(
おんな
)
だちも納得した。たちまち雲霧が晴れたように、心持もさっぱりしたろう、急に
眠気
(
ねむけ
)
が
除
(
と
)
れたような気がした、勇気は一倍。
吉原新話
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
鉛丸
(
なまりだま
)
の
除
(
と
)
り方が素人療治であったせいか、左の脚の甲からくるぶしがひどく腫れあがり、今以て十歩とあるくこともできないのだった。
上杉謙信
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
其
遽
(
あわただ
)
しさ、草から見れば涙である。然し油断してうっかり種をこぼされたら、事である。一度落した草の種は中々急に
除
(
と
)
り切れぬ。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
奥田の裏書と云つても、もし俺が親身になつて、どうか頼むとさへ云へば、反感も
除
(
と
)
れるであらうし、承諾を得ることも必ず出来得るんだ。
瘢痕
(新字旧仮名)
/
平出修
(著)
と云ううちに覆面を
除
(
と
)
ると、最前の小女の青褪めた顔を現わしながら銀次の胸にバッタリと
縋
(
すが
)
り付いた。シャクリ上げシャクリ上げ云った。
骸骨の黒穂
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「それが、そうは行きません。僕には……」肩のこりの
除
(
と
)
れるような、遠慮のない会話になり、新子は準之助氏に会ってよかったと思った。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
ほんとに鰯の
鱗
(
うろこ
)
は
除
(
と
)
つてなかつたが、不断
女房
(
かない
)
の
刺
(
とげ
)
のある言葉を食べつけてゐる者にとつては、魚の
鱗
(
うろこ
)
などは何でもなかつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
シェードを
除
(
と
)
った客席では、一人の中年紳士が黒革の鞄を膝の上に乗せて、激しく
揺
(
ゆら
)
れながらもとろとろとまどろみ続ける。
白妖
(新字新仮名)
/
大阪圭吉
(著)
女中の
房
(
ふさ
)
は手早く
燗瓶
(
かんびん
)
を
銅壺
(
どうこ
)
に入れ、食卓の布を
除
(
と
)
つた。そして
更
(
さら
)
に卓上の
食品
(
くひもの
)
を
彼所
(
かしこ
)
此処
(
こゝ
)
と置き直して心配さうに主人の様子をうかがつた。
節操
(新字旧仮名)
/
国木田独歩
(著)
瞼を押へたガーゼを
除
(
と
)
つて私を見た。まだ幾分かは見えるのであらう。私はそこで初めて彼女のただれた眼を見たのである。
外に出た友
(新字旧仮名)
/
北条民雄
(著)
「どうも少し込み入つた症候ですから、」と、院長は何かを警戒させるやうにかう言ひつゝ、右の方のガーゼを
除
(
と
)
つた。
赤い鳥
(旧字旧仮名)
/
鈴木三重吉
(著)
正札だけは人がみてもをかしいから
除
(
と
)
つてしまひませうと、女が六十銭とかいた四角な正札に指さきをつけるのだ。
笛と太鼓
(新字旧仮名)
/
室生犀星
(著)
なぜならこれからちょうど小さな
根
(
ね
)
がでるころなのに西風はまだまだ
吹
(
ふ
)
くから
幹
(
みき
)
がてこになってそれを切るのだ。けれども
菊池
(
きくち
)
先生はみんな
除
(
と
)
らせた。
或る農学生の日誌
(新字新仮名)
/
宮沢賢治
(著)
船が揺れる
度
(
たび
)
に、ローソクの灯が消えそうに細くなり、又それが明るくなったりした。死体の顔の上にかけてある白木綿が
除
(
と
)
れそうに動いた。ずった。
蟹工船
(新字新仮名)
/
小林多喜二
(著)
半日ほど水に浸してから引き上げて、きれいに水の切れたところで、その黒い外皮を
除
(
と
)
るのが「粗皮
除
(
とり
)
」だった。
和紙
(新字新仮名)
/
東野辺薫
(著)
それらが縁側から見える中座敷でお蘭は
帷子
(
かたびら
)
の仕つけ糸を
除
(
と
)
っていた。表の町通りにわあわあいう声がして、それが店の先で
纏
(
まとま
)
ると、四郎が入って来た。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
溢
(
あふ
)
るるばかりの
同情
(
どうじょう
)
を
以
(
もっ
)
て、
何
(
なに
)
くれと
話
(
はな
)
しかけてくださいますので、いつの
間
(
ま
)
にやら
私
(
わたくし
)
の
方
(
ほう
)
でも
心
(
こころ
)
の
遠慮
(
えんりょ
)
が
除
(
と
)
り
去
(
さ
)
られ、
丁度
(
ちょうど
)
現世
(
げんせ
)
で
親
(
した
)
しい
方
(
かた
)
と
膝
(
ひざ
)
を
交
(
まじ
)
えて
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
「少し、早いようだ。やっぱり熱が
除
(
と
)
れない」と額に少し
皺
(
しわ
)
が寄った。先生が熱度を計って、じれったそうに不愉快な顔をするたびに小夜子は悲しくなる。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
まるで何か大きな手が海を撫でて、船をも人をも、拭い
除
(
と
)
ったかのように、ワラタ号は未だに消えたまんまだ、測り知れない海の恐怖と、神秘を残して——。
沈黙の水平線
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
所謂コバの
除
(
と
)
れないといふことは、人間として自由に飛び自由に
翔
(
か
)
けることの出来ないことを意味してゐる。
墓の上に墓
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
眼には
覆
(
おおい
)
を
除
(
と
)
られたすべての醜い事象が
横
(
よこた
)
はつてゐます。それを踏み越えなければならないと解つてはゐますけれどもどう行つていいのか解りませんでした。
S先生に
(新字旧仮名)
/
伊藤野枝
(著)
コンクリートを
除
(
と
)
りたかったのだが一分間に十才ずつ吐き出す、コンクリートミキサーに、間に合わせるためには、とても指を鼻の穴に持って行く間はなかった。
セメント樽の中の手紙
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
滝人の頭は、しだいに
焦躁
(
いらだ
)
たしさで、こんがらがってきた。もしこの機会を逃したなら、あるいは明日にも、十四郎は片眼の繃帯を
除
(
と
)
らぬとも限らないのである。
白蟻
(新字新仮名)
/
小栗虫太郎
(著)
つツと立寄ツて白い布を
除
(
と
)
る……天井の
天窓
(
あかりまど
)
から直射する日光は、
明
(
あきらか
)
に少女の屍體を照らす……ただ見る眞ツ白な肌だ! ふツくりとした乳、むツつりした肩や
股
(
もゝ
)
解剖室
(旧字旧仮名)
/
三島霜川
(著)
つぶやきながら、宗七が手をかけて笠を
除
(
と
)
ると、下には、小石を重しに載せて一枚の紙が置いてある。
煩悩秘文書
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
「田舎ッぺ、宝ッぺ、明神さまの宝ッぺ。」と、よく近所の子供連に
囃
(
はや
)
されていたお庄の
田舎訛
(
いなかなま
)
りが大分
除
(
と
)
れかかるころになっても、父親の職業はまだ決まらなかった。
足迹
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
もはやわたしの草取りをしているのは豆ではなく、豆の草を
除
(
と
)
っているのはわたしではなかった。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
僕はそのそばに行って、いろいろいじって見たが、余り元始的で、故郷の土産にするようなものは極めて
尠
(
すく
)
なかった。小さい木製の牛をいじっていると、耳が突然
除
(
と
)
れたりした。
リギ山上の一夜
(新字新仮名)
/
斎藤茂吉
(著)
何うしても
除
(
と
)
ってやらねえばなりませんが、
此間
(
こねえだ
)
儲
(
もう
)
けもんでござえまして、
蝦夷虫
(
えどむし
)
一疋
(
いっぴき
)
取れば銭い六百ずつくれると云うから、大概の
前栽物
(
せんざいもの
)
を
脊負
(
しょ
)
い出すより其の方が楽だから
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
この熱も
直
(
ぢき
)
に
除
(
と
)
れまするさうでございますから、又改めてお
出
(
いで
)
を願ひたう存じます。
今日
(
こんにち
)
は私御名刺を
戴
(
いただ
)
いて置きまして、お
軽快
(
こころよく
)
なり次第私から
悉
(
くはし
)
くお話を致しますでございます
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
といふても、実際眼前に草の
跋扈
(
ばつこ
)
を見れば、
除
(
と
)
らずには居られぬ。隣の畑が奇麗なのを見れば、此方の畑を草にして草の種を隣に飛ばしても済まぬ。近所の迷惑も思はねばならぬ。
草とり
(新字旧仮名)
/
徳冨蘆花
(著)
悩ましい
肢体
(
したい
)
を惜しげもなく
陽
(
ひ
)
に
晒
(
さら
)
して、海水帽を
除
(
と
)
ってキラキラと
黄金
(
こがね
)
色の髪を振り乱しながら……その二人に囲まれて、ただ私は黙々として上気し切っていたというよりほか
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
それで此方のオブジェクションが除かれた訳でも何んでもなかつたが、当時の私には美事に
除
(
と
)
り去られたもののやうな気がしたと見えて、それぢやといふので、
愈
(
いよい
)
よ会ひに行く事にする。
吉右衛門の第一印象
(新字旧仮名)
/
小宮豊隆
(著)
種々な医者に見せ、種々な薬を服ませたが、どうしても熱は
除
(
と
)
れなかった。時とすると、お房の身体は燃えるように熱かった。で、私も決心して、復た皆川医学士の手を
煩
(
わずら
)
わしたいと思った。
芽生
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
「注射であれが
拭
(
ふ
)
き取ったように
綺麗
(
きれい
)
に
除
(
と
)
れる云うことはないやろ思うわ」
細雪:03 下巻
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
まだよく乾いてはいなかったカンヴァスは、その間に、一めんに草の葉をこびつかせてしまっていた。それを再び画架に立て直し、パレット・ナイフでそんな草の葉を
除
(
と
)
りにくそうにしながら
風立ちぬ
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
瞬
(
またた
)
く間に流行してきた流行感冒に襲われて一時は三十九度から四十度近い発熱で心配するほどであったが、熱は間もなく下り、風邪も一週間くらいで
癒
(
なお
)
るにはなおったが、すっかり熱が
除
(
と
)
れて
狂乱
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
赤島で三晩ほど休んでゐる間に幾らか身體の疲勞も
除
(
と
)
れて來た。
熊野奈智山
(旧字旧仮名)
/
若山牧水
(著)
ルピック氏——明日
除
(
と
)
ればいい。また来よう。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
続いて覆面を
除
(
と
)
ったのは、この薬園の預り主、峠宗寿軒です。
半白
(
はんぱく
)
の中老人で、立居振舞に何となく物々しいところがあります。
銭形平次捕物控:001 金色の処女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
許宣はしかたなしに
鞋
(
くつ
)
を脱ぎ
襪
(
くつした
)
も
除
(
と
)
ってそれをいっしょに縛って腰に
著
(
つ
)
け、
赤脚
(
はだし
)
になって四聖観の簷下を離れて湖縁へと走った。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟
(新字新仮名)
/
田中貢太郎
(著)
お魚のスープを拵えるに少しでも身を入れると味が悪くなります。骨ばかりにして
綺麗
(
きれい
)
に身を
除
(
と
)
らなければ美味しいスープが出来ません。
食道楽:春の巻
(新字新仮名)
/
村井弦斎
(著)
「
埒明
(
らちあ
)
かんで、久しい風邪でな、稼業は出来ず、段々弱るばっかりじゃ。芭蕉の葉を煎じて飲むと、熱が
除
(
と
)
れると云うので、」
婦系図
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
丁度筋肉と骨の間に、煮滾つた熱湯を流し込まれるやうな感じで、ひどい時には痛む腕を
根本
(
ねもと
)
から
断
(
き
)
り
除
(
と
)
つてしまつたらどんなによからうと思ふ。
烙印をおされて
(新字旧仮名)
/
北条民雄
(著)
この大雪を幸いに、部下に命じて、林冲の寝込みを計り、小屋の腐れ柱を一気に
除
(
と
)
らせたというんだから堪りませんや。
新・水滸伝
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
それらが
縁側
(
えんがわ
)
から見える中
座敷
(
ざしき
)
でお蘭は
帷子
(
かたびら
)
の仕つけ糸を
除
(
と
)
っていた。表の町通りにわあわあいう声がして、それが店の先で
纏
(
まとま
)
ると、四郎が入って来た。
みちのく
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
二人とも、やや核心にふれた物云いをしたので、思いがけなく、心の
角
(
かど
)
が
除
(
と
)
れ、新子は急に話しやすくなった。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
除
常用漢字
小6
部首:⾩
10画
“除”を含む語句
取除
掃除
祓除
拭掃除
除夜
除外
庭掃除
蠅除
日除
魔除
厄除
削除
芟除
雷除
風除
除去
刪除
雨除
除目
大掃除
...