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錆
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さ
ふりがな文庫
“
錆
(
さ
)” の例文
刀は潮水で少し
錆
(
さ
)
びてはいましたが、まだよく光ります。スラリと抜き放つと、兵士どもは、あッと叫んで、みんな驚き恐れました。
ガリバー旅行記
(新字新仮名)
/
ジョナサン・スウィフト
(著)
「大分前から金具が
錆
(
さ
)
びてゐて、開け立てに齒の浮くやうな音を立てましたが、二三日此方不思議にそんな音が聞えなくなりました」
銭形平次捕物控:120 六軒長屋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
勝手口を開けてみると、
錆
(
さ
)
びた
鑵詰
(
かんづめ
)
のかんからがゴロゴロ散らかっていて、座敷の畳が泥で汚れていた。昼間の空家は淋しいものだ。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
枕元には、
薬研台
(
やげんだい
)
の上に、
錆
(
さ
)
びた
鉄
(
かね
)
の
灯皿
(
ひざら
)
がおいてある。その微かな燈心の揺らぎで見返しても——また合点のゆかないふしがある。
宮本武蔵:06 空の巻
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
芳子の美しい力に由って、荒野の
如
(
ごと
)
き胸に花咲き、
錆
(
さ
)
び果てた鐘は再び鳴ろうとした。芳子の為めに、復活の活気は新しく鼓吹された。
蒲団
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
▼ もっと見る
参木は此処を通るたびごとに、いつもこの河下の水面に突き刺さって、泥を
銜
(
くわ
)
えたまま
錆
(
さ
)
びついていた起重機の群れを思い浮べた。
上海
(新字新仮名)
/
横光利一
(著)
と手に取上げて
熟々
(
よく/\
)
見ると、
唐真鍮
(
とうしんちゅう
)
の
金色
(
かねいろ
)
は
錆
(
さ
)
びて見えまする。が、
深彫
(
ふかぼり
)
で、小日向服部坂深見新左衞門二男新吉、と彫付けてある故
真景累ヶ淵
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
こんなに荒廃して、それがそれなりになんとなく
錆
(
さ
)
びて落ち着いてきている、そんなところからそういう一種の味が出ているのだろうね。
雪の上の足跡
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
禁漁中の二月から、釣り人が入り込んで、まだ産卵後の、体力の回復しない黒く
錆
(
さ
)
びた肌の山女魚を五十、百と毎日釣ってきた人もある。
雪代山女魚
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
なぜそんな荷馬車の前車がそこの小路に置かれているかというと、第一には往来をふさぐためで、第二には
錆
(
さ
)
びさせてしまうためだった。
レ・ミゼラブル:04 第一部 ファンテーヌ
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
石のつかえてるあたりだろうか、体の動きにつれてまるで体内の
錆
(
さ
)
びついた歯車が無理やり逆に廻されるような痛みを感ずる。
胆石
(新字新仮名)
/
中勘助
(著)
橋には大きな釘の頭が赤く
錆
(
さ
)
びて、欄干は、人間の自己保存の本能を語って訪問者の記念のナイフのあとを一ぱい見せていた。
踊る地平線:05 白夜幻想曲
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
下には
張物板
(
はりものいた
)
のような細長い庭に、細い竹が
疎
(
まばら
)
に生えて
錆
(
さ
)
びた
鉄灯籠
(
かなどうろう
)
が石の上に置いてあった。その石も竹も
打水
(
うちみず
)
で皆しっとり
濡
(
ぬ
)
れていた。
行人
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
然し耗っても
錆
(
さ
)
びても、心棒は心棒だ。心棒が廻わらぬと家が廻わらぬ。
折角
(
せっかく
)
苅
(
か
)
り入れた麦も早く
扱
(
こ
)
いて
撲
(
ぶ
)
って俵にしなければ
蝶々
(
ちょうちょう
)
になる。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
ただ
燻
(
くす
)
ぼれて、口をいびつに結んで黙りこくってしまったような小さい暗い家が並んでいた。
漆喰壁
(
しっくいかべ
)
には蜘蛛の巣形に
汚点
(
しみ
)
が
錆
(
さ
)
びついていた。
巴里祭
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
再び、か
細
(
ぼそ
)
い手で、重い
閂
(
かんぬき
)
をゆすぶる。閂は
錆
(
さ
)
びついた
鎹
(
かすがい
)
の中で
軋
(
きし
)
む。それから、そいつを溝の奥まで
騒々
(
そうぞう
)
しく押し込む。
にんじん
(新字新仮名)
/
ジュール・ルナール
(著)
万寿丸は同じく
吉竹
(
よしたけ
)
船長——これはやっぱりこの船のブリッジへ
錆
(
さ
)
びついたねじ
釘
(
くぎ
)
以外ではなかった——によって、
搾
(
しぼ
)
ることを監督されていた。
海に生くる人々
(新字新仮名)
/
葉山嘉樹
(著)
かなしい
哉
(
かな
)
、すでに
錆
(
さ
)
びていたという話がある。十年一日の
如
(
ごと
)
き、不変の政治思想などは迷夢に過ぎないという意味だ。
パンドラの匣
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
するとこの時教会の入口の
扉
(
ドア
)
をノックする音が聞えた。そうしてどこかで聞いたような
錆
(
さ
)
びのある声が洩れ込んで来た。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
この家にふさわしいものの一つは、今のおばあさん(寿平次
兄妹
(
きょうだい
)
の祖母)が嫁に来る前からあったというほど古めかしく
錆
(
さ
)
び黒ずんだ
機
(
はた
)
の道具だ。
夜明け前:01 第一部上
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
私の心はもうたつた一つの場所にばかり住んでゐて、
磨
(
す
)
り
毮
(
へ
)
らされてゐます——
錆
(
さ
)
びた釘のやうに腐蝕してゐるのです。
ジエィン・エア:02 ジエィン・エア
(旧字旧仮名)
/
シャーロット・ブロンテ
(著)
すると知らない
間
(
ま
)
に電鈴の針金が
錆
(
さ
)
びたせゐか、誰かの
悪戯
(
いたづら
)
か、二つに途中から切れてゐる。おれの心は重くなつた。
窓
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
錆
(
さ
)
びた針金のように立ち枯れた、
薊
(
あざみ
)
や灌木の棘が、冷たい脛をさいなむ。大井川の椹島に下る道も荒れるにまかせて、ところどころ形を失っている。
ある偃松の独白
(新字新仮名)
/
中村清太郎
(著)
が、そういう品々は、十数年間人の手によって、手入れをされたことがないと見え、
錆
(
さ
)
び、よごれ、千切れ、こわれ、
塵埃
(
ちりぼこり
)
にさえも積もられていた。
十二神貝十郎手柄話
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
斜
(
なな
)
めに冬木立の
連
(
つら
)
なりてその上に鳥居ばかりの少しく見えたる、冬田の水はかれがれに
錆
(
さ
)
びて
刈株
(
かりかぶ
)
に
穭穂
(
ひつじぼ
)
を見せたる
俳諧大要
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
元和
(
げんな
)
偃武
(
えんぶ
)
以来、
蔵
(
おさ
)
めて
鞘
(
さや
)
にありし宝刀も、今はその心胆と共に
錆
(
さ
)
びて、用に立つべきもあらず。和といい、戦という、共にこれ俳優的所作に過ぎず。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
それでも往来に面したところには、赤く
錆
(
さ
)
びてはいるが鉄柵づくりの門があり、それをとおして石段の上に、重い鉄の
扉
(
ドア
)
のはまった玄関が見えていた。
蠅男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
老人の年はわからない、痩せたひょろ長い躯に、両前ボタンの古ぼけた制服を着、かぶっている帽子には
錆
(
さ
)
びて黒ずんだモールと、
徽章
(
きしょう
)
が付いていた。
青べか物語
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
『だって先生はあの文鎮が
錆
(
さ
)
びるのが心配で始終拭いてらしったし、あたしも毎朝一度はきっと拭くんですもの』
ニッケルの文鎮
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
「その後妻とは、二度添とは誰れ、そこに居る人。」と肩を斜め、手を、
錆
(
さ
)
びたが
楯
(
たて
)
のごとく、
行燈
(
あんどん
)
に
確
(
しか
)
と置く。
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
しかも雨に打たれ風に
晒
(
さら
)
されて、
鉄柱
(
ビーム
)
も鉄筋も赤く
錆
(
さ
)
びて、掘り上げられた土が向うに、山をなしています。
墓が呼んでいる
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
上では
其
(
そ
)
んなこととも知らないのであろう。大勢が声を揃えて市郎の名を呼んでいた。
其中
(
そのなか
)
には塚田巡査の
錆
(
さ
)
びた声も、七兵衛
老翁
(
じじい
)
の
破鐘声
(
われがねごえ
)
も
混
(
まじ
)
って聞えた。
飛騨の怪談
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
船に乗っている間にも時々出してきては
藪
(
やぶ
)
入りの子供のような気持で手入れをしていたそれらの諸道具は、皆
錆
(
さ
)
びもせずに貞節な妻のように重吉を待っていた。
暦
(新字新仮名)
/
壺井栄
(著)
校長は父親を
宥
(
なだ
)
めて自分でいろいろと訊いてみたのだったが、房枝の口は
錆
(
さ
)
びついたドアのように動かなかった。固い決心の表情で
噛
(
か
)
み締められているのだった。
錯覚の拷問室
(新字新仮名)
/
佐左木俊郎
(著)
百年ほど前にその豊後の木が枯れたので、伐って見ますと、太い幹からたくさんの
錆
(
さ
)
びた
鏃
(
やじり
)
が出ました。
日本の伝説
(新字新仮名)
/
柳田国男
(著)
これはたしかに間違ひで、一疋しか
居
(
をり
)
ませんでしたし、それも決してのどが壊れたのではなく、あんまり永い間、空で号令したために、すつかり声が
錆
(
さ
)
びたのです。
烏の北斗七星
(新字旧仮名)
/
宮沢賢治
(著)
「
行
(
い
)
けりや行つてもいゝけど……。」辰男は低い
錆
(
さ
)
びた聲で不明瞭な返事をして、口端を
舐
(
な
)
めづつた。
入江のほとり
(旧字旧仮名)
/
正宗白鳥
(著)
「どうしたんですの」と妾は
訊
(
たず
)
ねてみました。「今日は
貴方
(
あなた
)
の顔はまるで墓穴から抜け出してきた人のようにまっさおよ、すっかり
錆
(
さ
)
びて、つやがなくなってるわ」
華やかな罪過
(新字新仮名)
/
平林初之輔
(著)
古
(
ふる
)
び
錆
(
さ
)
びついたる
戟共
(
ほこども
)
を
同
(
おな
)
じく
年老
(
としお
)
いたる
手々
(
てんで
)
に
把
(
と
)
り、
汝等
(
なんぢら
)
が
心
(
こゝろ
)
に
錆
(
さ
)
びつきし
意趣
(
いしゅ
)
の
中裁
(
ちゅうさい
)
に
力
(
ちから
)
を
費
(
つひや
)
す。
ロミオとヂュリエット:03 ロミオとヂュリエット
(旧字旧仮名)
/
ウィリアム・シェークスピア
(著)
五
厘
(
りん
)
をくれる人もあった。中には、青く
錆
(
さ
)
びた穴あき銭を惜しそうにくれる人もあった。二銭銅貨をうけとったときには木之助は、それが馬鹿に重いような気がした。
最後の胡弓弾き
(新字新仮名)
/
新美南吉
(著)
時のたつのは何と早いものだろう! オーレンカの家は
煤
(
すす
)
ぼけて、屋根は
錆
(
さ
)
び、納屋はかしぎ、庭には丈の高い雑草や
刺
(
とげ
)
のある
蕁麻
(
いらくさ
)
がいっぱいにはびこってしまった。
可愛い女
(新字新仮名)
/
アントン・チェーホフ
(著)
それから壊滅後一カ月あまりして、はじめてこの辺にやって来てみると、一めんの燃えがらのなかに、赤く
錆
(
さ
)
びた金庫が突立っていて、その
脇
(
わき
)
に木の立札が立っていた。
永遠のみどり
(新字新仮名)
/
原民喜
(著)
道が
爪先
(
つまさ
)
き上りになった。見れば鉄道線路の土手を越すのである。鉄道線路は二筋とも
錆
(
さ
)
びているので、滅多に車の通ることもないらしい。また踏切の板も渡してはない。
元八まん
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「古い型だわね、二十年も、もっと以前の流行らしいのね、下げ
紐
(
ひも
)
がついてないし、口金がみんな
錆
(
さ
)
びついている。こんな古風なバッグ提げるの極りわるくないかしら。」
蜜のあわれ
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
前面の壇、即ち廊下には
錆
(
さ
)
びた銭若干があり、絶頂近くには槍の穂や折れた刀身が散っていたが、いずれも何世紀間かそこにあったことを思わせる程錆びて腐蝕していた。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
そして
空
(
か
)
らッぽの電車をやりすごし、やりすごし、赤
錆
(
さ
)
びた枕木の上を百姓達が歩いていた。
冬枯れ
(新字新仮名)
/
徳永直
(著)
教区の会堂で十一時が鳴ると、その響きに合わして、他の会堂で澄んだ響きや
錆
(
さ
)
びた響きがくり返され、また家の中で、掛時計の重い音や鳴時計の
嗄
(
しゃが
)
れた声がくり返された。
ジャン・クリストフ:05 第三巻 青年
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
彼は、自分に口返事ばかりして、拍車を
錆
(
さ
)
びさしたりしたことを思い出して、むっとした。
橇
(新字新仮名)
/
黒島伝治
(著)
南湖の手前で少しく川に沿うて堤の上をゆく。咲き残りの月見草が
侘
(
わび
)
しげに風に動いている。柳は
錆
(
さ
)
びた色をしてこれも風に
靡
(
なび
)
いている。ちょっと景色のよいところだと思うた。
白峰の麓
(新字新仮名)
/
大下藤次郎
(著)
感傷に
耽
(
ふけ
)
ってはいられない。忙しい
蜂
(
はち
)
は悲しむ暇がないと云われる。
廃頽
(
はいたい
)
に溺れてもいられない。用いる鍵は
錆
(
さ
)
びないではないか。今の器が美に病むのは用を忘れたからである。
工芸の道
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
“錆”の解説
錆(さび、銹、鏽)とは、金属の表面の不安定な金属原子が環境中の酸素や水分などと酸化還元反応(いわゆる「腐食」)を起こして生成される腐食物(酸化物や水酸化物や炭酸塩など)kb。英語では "rust(日本語音写形:ラスト)"。日本語の第2義その他については「#転義」以下を参照のこと。
鉄の赤錆・黒錆kb、銅の緑青kb、錫(すず)、アルミニウムの白錆など。
(出典:Wikipedia)
錆
漢検準1級
部首:⾦
16画
“錆”を含む語句
水錆
青錆
赤錆
鉄錆
錆色
金錆
錆槍
錆刀
錆釘
錆声
錆着
水錆沼
錆腐
錆附
不錆鋼
錆聲
錆脇差
錆絵
錆竹
錆茶
...