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鉋
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かんな
ふりがな文庫
“
鉋
(
かんな
)” の例文
もっともこの長南家は、この地方でも旧家であって、現在の住宅のごときも、まだ今の
鉋
(
かんな
)
を用いなかった古い時代の建物が遺っている。
オシラ神に関する二三の臆説
(新字新仮名)
/
喜田貞吉
(著)
木枯
(
こがらし
)
凄
(
すさ
)
まじく鐘の
音
(
ね
)
氷るようなって来る辛き冬をば
愉快
(
こころよ
)
いものかなんぞに心得らるれど、その茶室の
床板
(
とこいた
)
削りに
鉋
(
かんな
)
礪
(
と
)
ぐ手の冷えわたり
五重塔
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
賢造の言葉が終らない内に、洋一はもう茶の
間
(
ま
)
から、台所の板の
間
(
ま
)
へ飛び出していた。台所には
襷
(
たすき
)
がけの松が
鰹節
(
かつおぶし
)
の
鉋
(
かんな
)
を鳴らしている。
お律と子等と
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
ところで、みなさんのご家庭では
鉋
(
かんな
)
をもっておられましょうか。切れ味のよい鉋でなければ、完全にかつおぶしを削ることはできません。
日本料理の基礎観念
(新字新仮名)
/
北大路魯山人
(著)
その板は丸太の外側を削ったものでできた不完全な
生々
(
なまなま
)
した板で、わたしはそのはじを
鉋
(
かんな
)
で真っすぐにしなければならなかった。
森の生活――ウォールデン――:02 森の生活――ウォールデン――
(新字新仮名)
/
ヘンリー・デイビッド・ソロー
(著)
▼ もっと見る
そのころは一切
鉋
(
かんな
)
を用いず、チョウナを使って削ったのだという、荒削りのあとに、古い時代のおのずからなる
持味
(
もちあじ
)
がうかがわれただけだ。
不尽の高根
(新字新仮名)
/
小島烏水
(著)
「いまお前がはいって来たあの木戸から左へ廻るんだ——いいか、
鑿
(
のみ
)
の音や、
鉋
(
かんな
)
の音がしているだろう、あっちへ行くんだよ」
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
鉋
(
かんな
)
のない時代のことで、斧でけずるのであるから、中間はふくらみのあるようなものになるのも自然のことでもあったろう。
芸術と数学及び科学
(新字新仮名)
/
三上義夫
(著)
河岸には氷を売る小さな小舎がけが立ち並び、我々も床几に坐って数回氷を飲んだ。氷は
鉋
(
かんな
)
で削るので、鉋はひっくりかえしに固定してある。
日本その日その日:03 日本その日その日
(新字新仮名)
/
エドワード・シルヴェスター・モース
(著)
額には悲しみの皺を畳み、頬は痛苦の
鉋
(
かんな
)
で
削取
(
けずりと
)
られ、薄くなッた白髪の鬢をほうけ立たせ、眼は真ッ赤に泣き腫れている。
平賀源内捕物帳:長崎ものがたり
(新字新仮名)
/
久生十蘭
(著)
鋸
(
のこぎり
)
や、
鉋
(
かんな
)
や斧や槌などで、木を伐ったり板を削ったり、釘を打ったりして建築をしている、ノンキな物音が聞こえて来た。
猫の蚤とり武士
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
ときたま
鉋
(
かんな
)
か
鑿
(
のみ
)
を持つと、棟上げの済んだ柱へ穴をあけたり、紙のように薄くなるまで四分板を削るというような、とんでもないことをやりだす。
赤ひげ診療譚:04 三度目の正直
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
削るの
鉋
(
かんな
)
かんなとをんなと
音
(
おん
)
近きもこれまた自然の道理なり
緋威
(
ひをどし
)
の鎧とめかし込み艶福がるといづれ
仕舞
(
しまひ
)
は深田へ馬を
木曽道中記
(旧字旧仮名)
/
饗庭篁村
(著)
それに無地はもとより、
流描
(
ながしがき
)
、
櫛描
(
くしがき
)
、
指描
(
ゆびがき
)
、
飛
(
と
)
ばし
鉋
(
かんな
)
など様々なやり方を用います。絵ものは一つもありませんが、その代り極めて多彩であります。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
風邪
(
かぜ
)
気味と、かろく自分でも考えていた数日のあいだに、彼女の若さも、肌も、病魔の
鉋
(
かんな
)
に削られて、眼にも驚かれるばかり、痩せ細ってしまった。
親鸞
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
「いやな野郎だな、敷居が高かつたら、
鉋
(
かんな
)
でも持つて來るが宜い、土臺ごと掘り捨てたつて、文句は言はねえよ」
銭形平次捕物控:294 井戸端の逢引
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
同樣にして
鉋
(
かんな
)
の如くに
運動
(
うんどう
)
さする仕方も有り一片の木切れに
細
(
ほそ
)
き
棒
(
ぼう
)
の先を當てて
錐
(
きり
)
の如くに
揉
(
も
)
む
仕方
(
しかた
)
も有るなり。
コロボックル風俗考
(旧字旧仮名)
/
坪井正五郎
(著)
工匠
(
こうしょう
)
の家を建つるは労働なり。然りといへども
鑿
(
のみ
)
鉋
(
かんな
)
を手にするもの
欣然
(
きんぜん
)
としてその業を楽しみ時に覚えず
清元
(
きよもと
)
でも口ずさむほどなればその術必ず
拙
(
つたな
)
からず。
一夕
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
釜の周りを取巻いている峭壁は、
鉋
(
かんな
)
をかけたように滑かで、襞もなければ皺もない、全く一続きの岩である。
釜沢行
(新字新仮名)
/
木暮理太郎
(著)
何か
鉋
(
かんな
)
をかけていましたが、あのときもひどくあわてて、その
鉋屑
(
かんなくず
)
や木片を押入れへ投げこんだように、今も、この泰軒の言葉に大いに
狼狽
(
ろうばい
)
した作爺さんは
丹下左膳:02 こけ猿の巻
(新字新仮名)
/
林不忘
(著)
大工がしきりに
鉋
(
かんな
)
や
手斧
(
ておの
)
の音を立てているが、清三は気分のいい夕方などには、てくてく出かけて行って、ぽつねんとして立ってそれを見ていることがある。
田舎教師
(新字新仮名)
/
田山花袋
(著)
其等の木は
悉
(
ことごと
)
く自分の山から
伐出
(
きりだ
)
され自分の眼の前で
鉋
(
かんな
)
を掛けられたものであり、其等の食物の出所も
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
隣りの室には、老人の足音が
往
(
い
)
ったり来たりしていた。
鉋
(
かんな
)
で削ったり釘を打ったりする音が聞えていた。
ジャン・クリストフ:03 第一巻 曙
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
此の場合、ボール紙の三方に
鉋
(
かんな
)
をかけて斜に落とす所謂面をとるのが普通であって、その仕上りは一つの稜を増すわけであるから、重厚であり複雑な味を附加される。
書籍の風俗
(新字新仮名)
/
恩地孝四郎
(著)
それでもつて
撲
(
ぶ
)
ち殺してある、
鉋
(
かんな
)
や
鑿
(
のみ
)
や鋸や、または
手斧
(
ておの
)
や
曲尺
(
まがりかね
)
や
凖
(
すみ
)
縄や、すべての
職業道具
(
しようばいどうぐ
)
受け出して、明日からでも立派に仕事場へ出て、一人の母にも安心させ
もつれ糸
(新字旧仮名)
/
清水紫琴
(著)
そんなに非常識に丈夫であることを必要としないし、何と言っても、石油箱の大きなののような、
碌
(
ろく
)
に
鉋
(
かんな
)
もかけてないぶっつけ箱が一
磅
(
ポンド
)
もするとは驚くのほかはない。
踊る地平線:12 海のモザイク
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
綻
(
ほころ
)
びを
繕
(
つくろ
)
ったり、そうかと思うと、工作室から
鉋
(
かんな
)
や
鋸
(
のこぎり
)
を借りてきて、手製の額を壁にかけたりした。
宇宙尖兵
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
胴びろの鋸が木口から
噛
(
か
)
みついて行って、ざっくん、ざっくんと、眠いような音を立てた。近くでは
鉋
(
かんな
)
のすべる音が交錯していた。たんたん、のみを打ちこむ
槌
(
つち
)
の音。
石狩川
(新字新仮名)
/
本庄陸男
(著)
十八の歳に下寺町の坂道で氷饅頭を売ったことがあるが、資本がまるきり無かった故大工の使う
鉋
(
かんな
)
の古いので氷をかいて欠けた茶碗に入れ、氷饅頭を作ったこともある。
世相
(新字新仮名)
/
織田作之助
(著)
少年の時から読書の
外
(
ほか
)
は俗な事ばかりして俗な事ばかり考えて居て、年を
取
(
とっ
)
ても
兎角
(
とかく
)
手先
(
てさ
)
きの
細工事
(
さいくごと
)
が面白くて、
動
(
やや
)
もすれば
鉋
(
かんな
)
だの
鑿
(
のみ
)
だの
買集
(
かいあつ
)
めて、何か作って見よう
福翁自伝:02 福翁自伝
(新字新仮名)
/
福沢諭吉
(著)
といふのは、もとより、全國的代表移民の都會であるから、そのころの負けじ魂が、利かぬ氣のきつぷになつて殘つてゐるので、すべてが
鉋
(
かんな
)
ツ
屑
(
くづ
)
のやうなものばかりではない。
凡愚姐御考
(旧字旧仮名)
/
長谷川時雨
(著)
斯の小父さんは手細工が好きで、銀座の夜店から
鋸
(
のこぎり
)
、
鉋
(
かんな
)
の類を買つて來まして
閑暇
(
ひま
)
な時には種々な物を手造りにしました。大工の用ひるやうな道具箱までも具へて有りました。
幼き日:(ある婦人に与ふる手紙)
(旧字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
鉋
(
かんな
)
をかけては削り、
鑿
(
のみ
)
を使って繊細なる技巧をもって
角々
(
かどかど
)
の組み合せをなし、懸命なる努力を続けておりましたが、今回は、いわんや木函は前回の七倍八倍に達する容量を要し
ウニデス潮流の彼方
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
ほっそりと顔全体が毎日
鉋
(
かんな
)
をかけたように
剥
(
そ
)
がれてゆくのや、病的に沈みきって蒼みをもった皮膚が、きみの悪いほど艶を失って、喉のあたりまで白く冷たく流れこんでいるのや
香爐を盗む
(新字新仮名)
/
室生犀星
(著)
が、わたくしは、お富士さまといえば、いまでも
鉋
(
かんな
)
っ
屑
(
くず
)
細工の、絵の具を塗り、中にひょうそくのあかりをともすあの燈籠をおもい出す。……そのあかりのいろの、赤あるいは青。
浅草風土記
(新字新仮名)
/
久保田万太郎
(著)
すると男衆は、すばやくその鉢を抱えて、予め水を打ってある他の鉢に、その中身をうつす。蝋はそこで徐々に固まっていって、
鉋
(
かんな
)
をかけられ、干場に出されるのを待つのである。
次郎物語:01 第一部
(新字新仮名)
/
下村湖人
(著)
浴衣
(
ゆかた
)
の裾を膝までまくりあげて、だらしなく腰掛けながら、その前に
鉋
(
かんな
)
を
砥
(
と
)
いで居る、若い大工と笑ひながら話して居たのを見たが、もしかしたらその大工ではないかと思ひもした。
世の中へ
(新字旧仮名)
/
加能作次郎
(著)
納屋の角には六三郎が来ない昔から一本の桜が植えてあって、今はかなりの大木になっていた。六三郎はこの桜の下で
鉋
(
かんな
)
や
鋸
(
のこ
)
をつかって、春が来るごとに花の白い梢を仰ぐのであった。
心中浪華の春雨
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
きれいに掃いた道に青竹の削りくずや
鉋
(
かんな
)
くずが散らばって
楝
(
おうち
)
の花がこぼれている。
花物語
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
僕等はあまり多い
粗削
(
あらけづ
)
りの藝術に倦きて居る。もつと仕上
鉋
(
かんな
)
のかかつたものが欲しいのである。予が所謂自然派の作品のうちで徳田秋聲氏を尤も好むのも此純藝術家的の見地からである。
京阪聞見録
(旧字旧仮名)
/
木下杢太郎
(著)
謂
(
い
)
うまでもなく四人の口を過ごしかねるようになったので、大根畠に借家して半歳ばかり
居食
(
いぐい
)
をしたが、見す見す体に
鉋
(
かんな
)
を懸けて削り
失
(
な
)
くすようなものであるから、近所では人目がある
黒百合
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
古い
達磨
(
だるま
)
の軸物、銀
鍍金
(
メッキ
)
の時計の鎖、
襟垢
(
えりあか
)
の着いた女の
半纏
(
はんてん
)
、玩具の汽車、
蚊帳
(
かや
)
、ペンキ絵、碁石、
鉋
(
かんな
)
、子供の
産衣
(
うぶぎ
)
まで、十七銭だ、二十銭だと言って笑いもせずに売り買いするのでした。
老ハイデルベルヒ
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
滑らかに
鉋
(
かんな
)
をかけた松板の壁、急須や茶碗を入れて隅っこに置いてある三角戸棚、聖像の前に、赤や青のリボンでぶらさげてある、
鍍金
(
めっき
)
をした瀬戸物の卵、つい近ごろ仔を生んだばかりの猫
死せる魂:01 または チチコフの遍歴 第一部 第一分冊
(新字新仮名)
/
ニコライ・ゴーゴリ
(著)
「
俺
(
お
)
ら、
鉋
(
かんな
)
の
持
(
も
)
たねえ
大工
(
でえく
)
だ、
鑿
(
のみ
)
一
方
(
ぽう
)
つちんだから」といつて
勘次
(
かんじ
)
は
相手
(
あひて
)
もないのに
態
(
わざ
)
とらしい
笑
(
わら
)
ひやうをして
女房等
(
にようばうら
)
の
居
(
ゐ
)
る
方
(
はう
)
を
見
(
み
)
た。
彼
(
かれ
)
は
俛
(
た
)
れ
相
(
さう
)
に
成
(
な
)
る
首
(
くび
)
を
起
(
おこ
)
して
數々
(
しば/\
)
見
(
み
)
ることを
反覆
(
くりかへ
)
した。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
他の友達は、
下駄
(
げた
)
の
歯
(
は
)
になって、
泥濘
(
どろ
)
の路石ころ路を歩いて居る。他の一人は
鉋
(
かんな
)
の台になって、大工の
手脂
(
てあぶら
)
に光って居る。他の友達は
薪
(
まき
)
になって、とうに灰になった。ドブ板になったのもある。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
深川の
田安前
(
たやすまえ
)
の
政鍜冶
(
まさかじ
)
の打った二挺の
鉋
(
かんな
)
の
研上
(
とぎあ
)
げたのを
検
(
み
)
て居ります。
名人長二
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
職人たちのなかに定さんは気だてのやさしい人で、削りものをしてるそばに立つて
鉋
(
かんな
)
の凹みからくるくると巻きあがつて地に落ちる鉋屑に見とれてるといつもきれいさうなのをよつて拾つてくれた。
銀の匙
(新字旧仮名)
/
中勘助
(著)
今一つ妙な癖は
指物
(
さしもの
)
が好きで、
閑
(
ひま
)
さへあれば何かこつ/\指物師の真似事をしてゐたが、手際はから
下手
(
べた
)
な癖に講釈だけは
他
(
ひと
)
一
倍
(
ばい
)
やかましく、
鉋
(
かんな
)
、
鋸
(
のこぎり
)
などは名人の使つたのでないと手にしなかつた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「それじゃ
預
(
あず
)
けておこう。これは
叔父様
(
おじさま
)
が西洋からおみやげに持って来てくだすったのだ。まだ
鋸
(
のこぎり
)
だの
鉋
(
かんな
)
だのがあったけれど、なくしてしまった。こんなものがそんなにこわいならきみにあずけるよ」
苦心の学友
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
なに削る冬の夜寒ぞ
鉋
(
かんな
)
の音
隣合
(
となりあは
)
せにまだかすかなり
雀の卵
(新字旧仮名)
/
北原白秋
(著)
“鉋”の解説
鉋(かんな、かな)は、木工用の工具の一種。主として材木の表面を削って加工する目的で使われ、一般には台鉋を指す。通常は材木の表面を平滑にするために使われるが、材木に溝を作るなど特殊な目的用の鉋も存在する。
(出典:Wikipedia)
鉋
漢検1級
部首:⾦
13画
“鉋”を含む語句
鉋屑
平鉋盤
清鉋
漆鉋
轆轤鉋
鉋丁
鉋台
鉋太郎
鉋板
鉋目
鉋迄
鉋音
鉋飴