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蹴飛
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けと
ふりがな文庫
“
蹴飛
(
けと
)” の例文
私はいきなり立ち上って二人を
蹴飛
(
けと
)
ばしてやろうかと、むらむらとなったが、また手紙のことを思い出してじっと胸をさすって
耐
(
こら
)
えた。
うつり香
(新字新仮名)
/
近松秋江
(著)
と
直
(
す
)
ぐ脱ぎ捨てて、
紙屑
(
かみくず
)
のように足で
皺
(
しわ
)
くちゃに
蹴飛
(
けと
)
ばして、又次の奴を引っかけて見ます。が、あの着物もいや、この着物もいやで
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
それで
巨人
(
きよじん
)
を
載
(
の
)
せた
西風
(
にしかぜ
)
が
其
(
その
)
爪先
(
つまさき
)
にそれを
蹴飛
(
けと
)
ばさうとしても、
恐
(
おそ
)
ろしく
執念深
(
しふねんぶか
)
い
枯葉
(
かれは
)
は
泣
(
な
)
いてさうして
其
(
そ
)
の
力
(
ちから
)
を
保
(
たも
)
たうとする。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
「そいつは面白いや、あっしが負けたら、打つなり
蹴飛
(
けと
)
ばすなり、どうともしておくんなさい。どうせ親分なんかに負けっこがないんだから」
銭形平次捕物控:022 名馬罪あり
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
家来たちがなだめると
尚更
(
なおさら
)
、図に乗って
駄々
(
だだ
)
をこね、蝦夷を見ぬうちはめしを食わぬと言ってお
膳
(
ぜん
)
を
蹴飛
(
けと
)
ばす仕末であった。
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
▼ もっと見る
嬉しく走りつきて石をあわせ、ひたと
打
(
うち
)
ひしぎて
蹴飛
(
けと
)
ばしたる、石は躑躅のなかをくぐりて小砂利をさそい、ばらばらと谷深くおちゆく音しき。
竜潭譚
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それから、台所に飛んで出て、火を焚いていたおさんどんを
蹴飛
(
けと
)
ばして、その火を取って投げ散らした——その火は障子についてめらめらと燃え上る。
大菩薩峠:05 龍神の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
やはり
陸
(
おか
)
へ上がっているあひるは
蹴飛
(
けと
)
ばしなぐりつけて池の中へ追い込んでやるのが正当であるかもしれない。
沓掛より
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
ことにそのためにつむじを曲げて、芝居を
蹴飛
(
けと
)
ばすようなことがあっちゃあ大痛手だ。そこで、一座の反対を退けた支配人は、しずかに舞台の横へ出て行った。
踊る地平線:07 血と砂の接吻
(新字新仮名)
/
谷譲次
(著)
かれはふと、そこへ
蹴飛
(
けと
)
ばされてきた
地蔵菩薩
(
じぞうぼさつ
)
のお
像
(
すがた
)
に目をとめた。
蹴
(
け
)
られても、足にかけられても、みじん、つねの
柔和
(
にゅうわ
)
なニコやかさとかわりのない愛のお顔。
神州天馬侠
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
彼は敬太郎に当った
拍子
(
ひょうし
)
に、敬太郎の持っていた
洋杖
(
ステッキ
)
を
蹴飛
(
けと
)
ばして、それを持主の手から地面の上へ振り落さしたのである。敬太郎は
直
(
すぐ
)
曲
(
こご
)
んで洋杖を拾い上げようとした。
彼岸過迄
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
こんなことを
思
(
おも
)
っていましたとき、
彼
(
かれ
)
は、
力
(
ちから
)
まかせに
蹴飛
(
けと
)
ばされました。そして、やぶの
中
(
なか
)
へ
飛
(
と
)
び
込
(
こ
)
んでしまいました。まりは、しげった
木枝
(
こえだ
)
の
蔭
(
かげ
)
に
隠
(
かく
)
れてしまったのです。
あるまりの一生
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
やがて医者が来て私は
吻
(
ほ
)
っとしたが、この医者がまた
粗忽
(
そそっか
)
しい野郎でノックもせずにはいって来ると、いきなり入口に置いた洗面器を
蹴飛
(
けと
)
ばしてそこら一面水浸しにした。そして
葛根湯
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
イタリーの
地形
(
ちけい
)
は
長靴
(
ながぐつ
)
のようだとよくいはれてゐることであるが、その
爪先
(
つまさき
)
に
石
(
いし
)
ころのようにシシリー
島
(
とう
)
が
横
(
よこ
)
たはつてをり、
爪先
(
つまさき
)
から
砂
(
すな
)
を
蹴飛
(
けと
)
ばしたようにリパリ
火山群島
(
かざんぐんとう
)
がある。
火山の話
(旧字旧仮名)
/
今村明恒
(著)
のれん越しにすがすがしい
三和土
(
たたき
)
の上の盛塩を見ていると、女学生の群に
蹴飛
(
けと
)
ばされて、さっと散っては山がずるずるとひくくなって行っている。私がこの家に来て丁度二週間になる。
新版 放浪記
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
花時の向島、敵討があると云うので土手の上は浪を打ちますよう、どや/\押掛けてまいりまして、蟠龍軒の死骸を見ては
唾
(
つば
)
を吐くやら
蹴飛
(
けと
)
ばすやら弥次馬連が大騒ぎをして居ります。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
「なんだって! そんな奴らをベートーヴェンは
蹴飛
(
けと
)
ばしてやるに違いない。」
ジャン・クリストフ:10 第八巻 女友達
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
其処
(
そこ
)
は塗料の腐る匂いで息が詰りそうである——然し伊藤次郎は、懐中電灯を差しつけながら、散らばっている船具や
板片
(
いたきれ
)
を
掻退
(
かきの
)
け
蹴飛
(
けと
)
ばし、塵も見逃すまじと船底の鉄板を
検
(
しら
)
べ廻った。
流血船西へ行く
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
おまけに靴の
踵
(
かかと
)
で顔を
蹴飛
(
けと
)
ばすなんかということは、法律上ゆるされておらん。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
二十日ばかりの長い間、己は待たない、待ちたくないと思いながら、意志に背いて
便
(
たより
)
を待っていた。そしてそれが
徒
(
いたず
)
ら事であったではないか。純一は足元にあった小石を下駄で
蹴飛
(
けと
)
ばした。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
すると車夫は十二銭の
賃銭
(
ちんせん
)
をどうしても二十銭よこせと言う。おまけに俺をつかまえたなり、会社の門内へはいらせまいとする。俺は大いに腹が立ったから、いきなり車夫を
蹴飛
(
けと
)
ばしてやった。
馬の脚
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
元来
(
がんらい
)
経済難のZ大学なので、助手案は一も二もなく
蹴飛
(
けと
)
ばされたが、その代り大学部三年の学生で、
是非
(
ぜひ
)
赤外線研究をやりたいというひとがいるから、助手がわりにそれを廻そう、当分我慢して
赤外線男
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
「かがんでいなかったら、
蹴飛
(
けと
)
ばしてやるところだったに。」
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
交通巡査も安全地帯も
蹴飛
(
けと
)
ばしてしまえ。
ドグラ・マグラ
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
「そいつは面白いや、あつしが負けたら、打つなり
蹴飛
(
けと
)
ばすなり、何うともしておくんなさい。何うせ親分なんかに負けつこがないんだから」
銭形平次捕物控:022 名馬罪あり
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
嬉
(
うれ
)
しく走りつきて石をあはせ、ひたと
打
(
うち
)
ひしぎて
蹴飛
(
けと
)
ばしたる、石は
躑躅
(
つつじ
)
のなかをくぐりて
小砂利
(
こじやり
)
をさそひ、ばらばらと谷深くおちゆく音しき。
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
すると再びヒステリーの発作が起って、
椅子
(
いす
)
を
蹴飛
(
けと
)
ばしたり、カーテンを引きちぎったり、花瓶を
打
(
ぶ
)
っ
壊
(
こわ
)
したりします。
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
うらみます、とうわごとを言い、その後さまざま養生してもはかどらず、看護の者を足で
蹴飛
(
けと
)
ばしたりするので、次第にお見舞いをする者もなくなり、ついには
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
其處
(
そこ
)
には
毎日
(
まいにち
)
必
(
かなら
)
ず
喧嚚
(
けんがう
)
な
跫音
(
あしおと
)
が
人
(
ひと
)
の
鼓膜
(
こまく
)
を
騷
(
さわ
)
がしつゝある
其
(
そ
)
の
巨人
(
きよじん
)
の
群集
(
ぐんじゆ
)
が、
其
(
そ
)
の
目
(
め
)
からは
悲慘
(
みじめ
)
な
地上
(
ちじやう
)
の
凡
(
すべ
)
てを
苛
(
いぢ
)
めて
爪先
(
つまさき
)
に
蹴飛
(
けと
)
ばさうとして、
山々
(
やま/\
)
の
彼方
(
かなた
)
から
出立
(
しゆつたつ
)
したのだ。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
何事か知らんと一同足を止めて見ますると、向うから罪人が四五十人、
獲物
(
えもの
)
々々を
携
(
たずさ
)
え、見るも恐ろしい姿で、
四辺
(
あたり
)
に逃げ
惑
(
まど
)
う
老若男女
(
ろうにゃくなんにょ
)
を
打敲
(
うちたゝ
)
くやら
蹴飛
(
けと
)
ばすやら、容易ならぬ様子であります。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
彼は子供が母に
強請
(
せび
)
って買ってもらった草花の鉢などを、無意味に縁側から下へ
蹴飛
(
けと
)
ばして見たりした。赤ちゃけた
素焼
(
すやき
)
の鉢が彼の思い通りにがらがらと
破
(
われ
)
るのさえ彼には多少の満足になった。
道草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
いやというほど頭を
蹴飛
(
けと
)
ばされてしまったものです。
大菩薩峠:06 間の山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
旅店
(
りよてん
)
の
若
(
わか
)
い
衆
(
しう
)
も
押返
(
おしかへ
)
すやうにお
留
(
と
)
め
申
(
まを
)
しては
居
(
を
)
りますが、
手足
(
てあし
)
を
掉
(
ふ
)
つてお
肯入
(
きゝい
)
れなく、
靴
(
くつ
)
で
蹴飛
(
けと
)
ばしていらツしやいます。
人参
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
八五郎は飛んで出ましたが、其の邊にはもう小僧の姿の見える筈もなく、野良犬を
蹴飛
(
けと
)
ばして、張板を二三枚倒して、八五郎はぼんやり戻つて來ました。
銭形平次捕物控:150 槍の折れ
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
私がお茶を持って客間へ行ったら、誰やらのポケットから、小さい林檎が一つころころところげ出て、私の足もとへ来て止り、私はその林檎を
蹴飛
(
けと
)
ばしてやりたく思いました。たった一つ。
饗応夫人
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
もうそうなると、気の
上
(
あが
)
った
各自
(
てんで
)
が、自分の手足で、茶碗を
蹴飛
(
けと
)
ばす、
徳利
(
とっくり
)
を踏倒す、
海嘯
(
つなみ
)
だ、と
喚
(
わめ
)
きましょう。
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
佐吉はそれでも、
漸
(
ようや
)
く気を取直して、女房の身体を縁側へ抱き上げましたが、いつの間にやら、
行灯
(
あんどん
)
を
蹴飛
(
けと
)
ばして、
灯
(
あかり
)
を消してしまった事に気が付きました。
銭形平次捕物控:021 雪の精
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と言えば、また大笑いになり、職人仲間の情愛はまた格別、それより持参の酒肴にて年忘れの宴、徳兵衛はうれしく、意味も無く部屋中をうろうろ歩きまわり重箱を
蹴飛
(
けと
)
ばし、いよいよ恐縮して
新釈諸国噺
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
何時までもさうしてゐるわけに行かないから、お比奈さんと二人で押入の戸を
蹴飛
(
けと
)
ばして轉げ出ると、御近所の衆を起して兎も角も繩を解いてもらひました。
銭形平次捕物控:239 群盗
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
皆
(
みな
)
が、
車
(
くるま
)
に
轢
(
ひ
)
かれやしないか、
馬
(
うま
)
に
蹴飛
(
けと
)
ばされやしないかと
案
(
あん
)
じて
居
(
ゐ
)
るんだ。
春着
(旧字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
蹴飛
(
けと
)
ばしやらむ、
掻
(
かき
)
むしらむ、
透
(
すき
)
あらばとびいでて、
九
(
ここの
)
ツ
谺
(
こだま
)
とをしへたる、たうときうつくしきかのひとの
許
(
もと
)
に
遁
(
に
)
げ去らむと、胸の
湧
(
わ
)
きたつほどこそあれ、ふたたび暗室にいましめられぬ。
竜潭譚
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
女房のお百と
掴
(
つか
)
み合ひの大喧嘩だ、ウヌが盜つたに違ひない、なにを此野郎と、打つ引つ掻く、
蹴飛
(
けと
)
ばす、噛みつく騷ぎ、——尤もケチ兵衞の留守に、女房のお百が町内の湯へ行つたのが惡かつた。
銭形平次捕物控:302 三軒長屋
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
拳ぐらいで騒ぎが静まりゃ
可
(
い
)
いんですが、酔が廻ると火の玉め、どうだ一番相撲を取るか、と
瘠
(
やせ
)
ッぽちじゃありますがね、
狂水
(
きちがいみず
)
が
総身
(
そうみ
)
へ廻ると、小力が出ますんで、いきなりその
箒
(
ほうき
)
の柄を
蹴飛
(
けと
)
ばして
式部小路
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
蹴
常用漢字
中学
部首:⾜
19画
飛
常用漢字
小4
部首:⾶
9画
“蹴”で始まる語句
蹴
蹴出
蹴落
蹴上
蹴鞠
蹴散
蹴込
蹴立
蹴倒
蹴返