“貴郎:あなた” の例文
“貴郎:あなた”を含む作品の著者(上位)作品数
国枝史郎22
田中貢太郎14
海野十三9
泉鏡花5
松本泰4
“貴郎:あなた”を含む作品のジャンル比率
文学 > 中国文学 > 小説 物語4.7%
文学 > 日本文学 > 小説 物語2.1%
文学 > 日本文学 > 評論 エッセイ 随筆0.1%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
「一條君昨日は何うしました?」太田君ニタリと重く笑う。「貴郎あなたが西署へ来なかったので、僕お蔭様で素破抜きましたよ」
人を呪わば (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「だって、貴郎あなたは柄にないわ、主公様だんなさまは大人しく鯛魚たいとととおっしゃるもんです、ねえ、めのさん。」
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「変なことおうかがいするようですけど……貴郎あなたは兄と北川さんとのことで、何か思っていらっしゃることはなくって?」
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
『ほんとにわたしは、こんなことが貴郎あなたに言はれた義理ぢアないんですけれど、手紙で申し上げたやうなわけで……』
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
貴郎あなた呉々くれ/″\も言つておきますが、日曜日には忘れないやうに屹度教会へ往らつしやいよ、ね、よくつて。」
「人違いだって? 私はグヰンと永い間一緒に住んでいたのですよ。私は貴郎あなたが思う程、頭脳あたまが悪くはない積りです」
緑衣の女 (新字新仮名) / 松本泰(著)
貴郎あなたもお立ちなさいまし、狂人きちがいですわ。」と、さも侮り軽んじたごとき調子で落しめて言うのにして、
三枚続 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
私はこのことを洞庭の方へ言ってやりたいと思いますが、路が遠いので困っております、貴郎あなたは呉にお帰りのようでございますが
柳毅伝 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「アラいやアね。また始まった。一体貴郎あなたは幾度疑って、幾度信じ直せば気がすむんでしょ。……すこし気の毒になってきたわ」
(新字新仮名) / 海野十三(著)
貴郎あなたわたしのおねがひかなへて下すつて。』と言はれて気がき、銀之助は停止たちどまつた。
節操 (新字旧仮名) / 国木田独歩(著)
それはそれとして唐寺の謎は、半分解くことは出来ましたが、後の半分は解けませぬ。そこで貴郎あなた様にお願い致します。
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「では菊弥様、わたしもう一度貴郎あなた様にお目にかかることでしょうよ。……そうして一度は、その愛くるしい……」
鸚鵡蔵代首伝説 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
大きな家庭を作ることに覚悟致しました、そして此世を神様の教会と致します、——篠田さん、貴郎あなたは私の此の決心を
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
「さあそいつは……そいつはどうも……それより一体貴郎あなた様は、どうして何のために彼女を訪ねて、わざわざおいでなすったんで?」
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
……それはそうと、今日が日にも、やはり貴郎あなた様は松平様へ帰参がきっと叶うものと信じておいでなさいますかえ?
村井長庵記名の傘 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「なるほど、これはごもっとも。そうあるならば貴郎あなた様と私、力を集めて探し出そうと覚し召し、参られたので?」
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
愚図々々ぐずぐずすれば、貴郎あなたいつもに似合わない、きりきりなさいなね……とお蔦が歯痒はがゆがる。
婦系図 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「エ」と梅子はかしらもたげつ「貴郎あなた、篠田さんにお逢ひになつて——」其顔はあかくなれり、
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
うも貴郎あなたわたしにかくしだてあそばして、そとことといふとすこしもかせてくださらぬ
この子 (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
「ええ。——でも、新聞に貴郎あなたのことが出ていたわ。ほんとに今度は、お気の毒な目にお遭いになったのネ」
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
なんでもうござんすから、銑さん、貴郎あなた、どうにかして下さい。私はもう帰途かえりにあの店の前を通りたくないんです。」
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
思召おぼしめしは有難う存じますが……わたしのような小屋者が……貴郎あなたのような御大家様の……」
大捕物仙人壺 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ねえ、貴郎あなた、そうして、小松原さんのおっしゃる通りになさいよ。何だか可恐こわいんですもの。」
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
今日まで彼の要望のぞみを延ばし、切刃詰まった今日になって、貴郎あなた様に討っていただきましたことも
弓道中祖伝 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「いいでしょう、めしあがれ、貴郎あなたは、私をあまり御存じないでしょうが、私はよく存じておりますわ」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「ああ左様で、それはそれは。……お梅さんお梅さん向うへ行っておいで。……さあさあ貴郎あなた遠慮はいらない。おかけなすって、おかけなすって」
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ほうら。ありましたがな、こんな処に。矢つ張り貴郎あなたが御自分でおしまひになつたんですわ。」
「私、貴郎あなたにお願いいたします。娘のうちへ行って下さい。初枝さんの家へ。私の恋人の家へ」
「妾は参ります。……貴郎あなた様はお嫌いなさいましても、妾は、あなた様が好きでございますから。……それがお力という女のしょうでございます」
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
貴郎あなた、そんな身装みなりをしてお隣家となりへ往つてらしたんですか。襟飾ネクタイもつけないで、何てまあ礼儀を知らない方なんでせう。」
或時その片鱗を私にも洩らされ「いよいよその時には貴郎あなたにも是非」とこのように云われました。
小酒井さんのことども (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「まア、今日はお小言こごとデーなのね、おじいさん。ちとほかのことでも言いなすったらどう? 貴郎あなたの五十回目のお誕生日じゃありませんか」
空襲葬送曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
もっとも、小松原とも立二りゅうじとも、我が姓、我がめいを呼ばれたのでもなければ、聞馴ききなれた声で、貴郎あなた、と言われた次第でもない。
沼夫人 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
とはいえさすがのこの私も、貴郎あなたから差し紙を戴いた時には、思わず呼吸いきを呑みました。
正雪の遺書 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
貴郎あなたが来たらよく言ってくれッてな——それにこれを渡してくれッておいて行きましたから
田舎教師 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「ねえ番頭さん番頭さん、ビクビクなさるには及びませんよ。貴郎あなたが人殺しをしたんじゃアなし、お咎めを受けるはずはない。だが」と云うときつくなった。
前記天満焼 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
女子 (高殿の下よりFなる魔法使いの方に歩み寄り、その肩にすがり)貴郎あなたは誰れなの?
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
貴郎あなたが、この間、水仙廟の所でお逢いになりました、公主からのお迎えでございます」
荷花公主 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
(犬のようにそっと入って来るなんて、貴郎あなたはよっぽど卑怯者ひきょうものですわね)
雨夜草紙 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
——貴郎あなた、青ちやんは、百日咳に取りつかれたんぢやなくつて。どうもさうらしいわ。
小熊秀雄全集-15:小説 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
——貴郎あなた、青ちやんは、百日咳に取りつかれたんぢやなくつて。どうもさうらしいわ。
泥鰌 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
「この方、貴郎あなたを待っていらしったのよ。ええもう今から二時間も前から……貴郎この方知っていらっしゃるでしょう。往来でちょいちょいお逢いした筈ですよ」
温室の恋 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「わたくしは、永い間、貴郎あなたのような方のいらっしゃるのをお待ちしておりました」
藤の瓔珞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
貴郎あなた、そんなものを私に見せて一体如何しろとおっしゃるんですの」と唸いた。
頸飾り (新字新仮名) / ギ・ド・モーパッサン(著)
妻君が勝手より出で来り「アラ貴郎あなた、軽焼がげてしまうではありませんか」
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
貴郎あなた、貴郎、酔っぱらってはいやですよ。そこは手水場ちょうずばですよ」
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
「マンドリンを弾くのが聞えたなんて、それは貴郎あなたのお気のせいよ。衣川さんはいつもマンドリンを弾いていらっしゃるけれども、昨夜はお不在るすのようでしたわ」
秘められたる挿話 (新字新仮名) / 松本泰(著)
「何故私をそんなに嫌います、いくら嫌われても、私は貴郎あなたを離れませんよ」
山姑の怪 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「これでも一子相伝ですが、貴郎あなたにですから伝授しましょう。併し昼間はどんな事が有っても授けられぬと、ちゃんと禁じて有りますから、真夜中に教えて上げましょう」
死剣と生縄 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
と云うと貴郎あなたは私という人間が、何者であるかお知りになりたいでしょうね。
「……貴郎あなたの御存知ないことを、どうしてあたしが知っているものですか」
人造人間事件 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「これ迄に、二百人もお斬りになったというお噂のある貴郎あなた様が臆病……」
甲州鎮撫隊 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
貴郎あなた彼処あすこへ腰をおかけなさい、食べる物とお酒をあげます」
蕎麦餅 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「——ああ貴郎あなたア、こんなところにいたんだネ。ウーム、この虫けら奴」
空気男 (新字新仮名) / 海野十三丘丘十郎(著)
「御国の人? 御国の人ですって? ……では貴郎あなたは外人なのですか?」
鴉片を喫む美少年 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「まア、貴郎あなたまでとんだ目においなすってお気の毒なことです」
崩れる鬼影 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「もう大丈夫よ。その綱の端を、貴郎あなたの前にある切株に結んで頂戴な」
棺桶の花嫁 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「山西さん、貴郎あなたよ」と、給仕女が延びあがるようにして山西を見た。
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「あら、もう帰ってだすの。まあ、気の早い人だんな。いま貴郎あなたのお好きな宇治羊羹を松が切っとりまんがな。拝みまっさかい、どうぞもう一遍だけ、お蒲団の上へ坐って頂戴な」
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「あの大変失礼ですが、貴郎あなたは美術家ではいらっしゃいませんか?」
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ああ貴郎あなた。雪子ですよ、雪子が今、ここへ入ってきたでしょう」
四次元漂流 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「もうどうやら貴郎あなた様には、怨みも憎しみもなくなられたようで」
血ぬられた懐刀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
貴郎あなたも助太刀などなされずに、最後まで見ていておくんなせえ」
剣侠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
はい、おっしゃる通り、貴郎あなたに逢いに来たのではござりませぬが、(間)そのように御親切に云われて見ますれば、私もどうやら、貴郎のものになるのではあるまいかと思われます。
レモンの花の咲く丘へ (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「ではお願いいたします。貴郎あなたは福岡市の××町を御存じですか」
指環 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
真女児は貴郎あなたが時どきここへ来ていっしょにいてくれるならいいと云って、金銀こがねしろがねを餝った太刀を出して来て、これはさきの夫の帯びていたものだと云ってくれた。
蛇性の婬 :雷峰怪蹟 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
貴郎あなた今日こんちは大層遅かつたぢやございませんか?』
天鵞絨 (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
高尚ノーブルにね。高尚にね。貴郎あなたもどうぞ高尚にね」
銀三十枚 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「大丈夫でございますが、私も貴郎あなた方に、伯父おじと兄の悪いことを知らしたからには、もう伯父や兄と顔をわせることができません、どうかその時は、私を助けてくださいませ」
参宮がえり (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「続けてめしあがれ、そうしないと、堅っくるしくて面白い話もできないじゃないの、私いつからか、貴郎あなたにゆっくりお眼にかかりたいと思ってたのよ、今日はやっと見つかったものだから」
春心 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「それに限るの。貴郎あなたは気が弱いから可厭いやさ。」
日本橋 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「——貴郎あなた、なんで書斎へ入ってやったン、ええ?」
蠅男 (新字新仮名) / 海野十三(著)
「だって、余り飲んでは毒ですよ、もう好い加減になさい、また手水場ちょうずばにでも入って寝ると、貴郎あなたは大きいから、私と、お鶴(下女)の手ぐらいではどうにもなりやしませんからさ」
蒲団 (新字新仮名) / 田山花袋(著)
貴郎あなた、今日は大層遲かつたぢやございませんか?』
天鵞絨 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
そうして私は貴郎あなた宛のこの遺書を認めて居るのです。
正雪の遺書 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「毒蛇を投げたのは貴郎あなたを殺したい為で御座んした」
壁の眼の怪 (新字新仮名) / 江見水蔭(著)
妻女も夫の堅い決心を知っては強いて引き止めることも出来ず、では行っておでなさいまし、貴郎あなたのお留守中は確かにお引き受けしました、どうか、にしきを着て故郷へお帰りなさるよう
貴郎あなたは私と結婚なさるはずじゃありませんか」
赤い花 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「私にとってはご主人様、貴郎あなた様にとりましてはお父上様が、磔柱へ付けられる前に、そっと私めに手渡した大事な書面でござります。是非とも貴郎様へ差し上げるようにと、仰せられましてござります」
郷介法師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「どうぞご安心下さいまし。お杉は貴郎あなたを忘れはしません。妾は喜こんで貴郎のために、かつえ死にするつもりでございます。思う心を貫いて、自分で死ぬという事は、何という嬉しいことでしょう。……」
柳営秘録かつえ蔵 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
貴郎あなた!」とあやめは怯えた声で云った。
仇討姉妹笠 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
「私の伯父おじと兄は恐ろしい盗人で、今晩貴郎あなた方を殺して、金を目論見もくろみをしておりますが、決して指一本も差させませんから、静に寝ておってくださいませ、私に考えがございます」
参宮がえり (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「お怒りなすっては困ります。私達は幸福なのでございます。どうぞ貴郎あなた方ご夫婦にも、祝っていただきたいと存じます。粗末な物ではござりますが、私達の志でござります。お受け取りなすって下さいまし」
血ぬられた懐刀 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
当然あたりまえですわ、貴郎あなた。」
悪獣篇 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「ああ貴郎あなた様はオルガンチノ僧正!」
南蛮秘話森右近丸 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
貴郎あなた、ご注意遊ばさねば……」
柳営秘録かつえ蔵 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
大原さん、貴郎あなたは今まで下宿屋の御飯を召上っていらしって急にこんな御飯をおあがりですからなおお驚きでしょう。下宿屋の御飯は大釜で沢山きますからお米が少し悪くっても美味おいしく出来ます。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「私は貴郎あなたとお別れしては」
藤の瓔珞 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
貴郎あなたは福岡の方でしょう」
指環 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
「おお貴郎あなたは老子様で?」
岷山の隠士 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
貴郎あなたはひどい方ね」
虎媛 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
すると妻君箪笥たんす抽斗ひきだしから料理屋の受取書を出して、これは先日貴郎あなたのお召物めしものたたんだ時たもとから落ちましたが料理代の外に芸者の玉代ぎょくだいと祝儀立替二円と書いてあります。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
「磔柱の郷介となのる凄じい強盗のあることはわし以前まえから聞いては居たが、貴郎あなたまでを襲おうとは思い設けぬことでござった。打ち捨て置くことは出来ませぬ。早速殿下に申し上げ詮議することに致しましょう」
郷介法師 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
博士が封を切って中を読んでみると、巻紙の上には情緒纏綿じょうちょてんめんたる美辞びじつらなって居り、せつ貴郎あなたのおでを待つと結んで、最後に大博士王水険じょうと初めて差出人の名が出て来た。
「あの女を助けてやったのは貴郎あなたですってね。本統にお若いのに感心です。怪我はしていないようですが、あの女は大分お酒を飲過ぎて苦しんでいますから、ちっと休ませてやりましょう」エリスは同情おもいやり深い調子でいった。
P丘の殺人事件 (新字新仮名) / 松本泰(著)
本人は遠方へっていてとても返金の見込はなし、自分が何処どこまでも責任を負わねばならんとしきりに思案をしております。私はその時済まない事ですがまだ良人を疑いました。友達の借金なら貴郎あなたかぶる訳もありますまい。
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
私はねえ、もう愛だの恋だの、貴郎あなたに惚れました、一生捨てないでねなんて馬鹿らしい事は真平だよ。こんな世の中でお前さん、そんな約束なんて何もなりはしないよ。私をこんなにした男はねえ、代議士なんてやってるけれど、私に子供を生ませるとぷいさ。
新版 放浪記 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
「そこに常春藤が植わつててよ。往つての小さいのを捜してらつしやいよ。常春藤の葉つ葉は、小さければ小さい程愛情おもひが深いんですつて。貴郎あなた方も成るだけ小さいのを摘んで来て、お国に待つてらつしやる方に送つて上げるといゝわ。」
「どう致しまして……ホホホ……貴郎あなたが失礼をなすったのは、たった今でしょう。貴郎は銀行の前から、わざわざ私共を尾行けていらっしてね。何という物好きな方でしょうと、お嬢様と二人でお噂をしていたのですよ」老婦人は相変らず片頬に微笑を浮べながらいった。
日蔭の街 (新字新仮名) / 松本泰(著)
お登和や、和女によく言っておく事がある。人の家庭ではほかの人に疑問を起さしめてその疑問の解釈を与えないほど家庭の和気を破る事はない。たとえば一家の主人が黙って物を考えて何か浮かない顔をしていたら妻君が心配して貴郎あなたどうかなさいましたかと尋ねるだろう。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)