いひ)” の例文
よろこばるゝといへどもおや因果いんぐわむく片輪かたわむすめ見世物みせものの如くよろこばるゝのいひにあらねば、決して/\心配しんぱいすべきにあらす。
為文学者経 (新字旧仮名) / 内田魯庵三文字屋金平(著)
前の世話は客を欵待するいひ、後の世話は善く主人を視る謂である。「さしつかひ候」は耳にうとい感がある。或は当時の語か。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
もしあらびとは、ひらるゝ人いさゝかも強ふる人にくみせざる時生ずるものゝいひならば、これらの魂はこれによりて罪をのがるゝことをえじ 七三—七五
神曲:03 天堂 (旧字旧仮名) / アリギエリ・ダンテ(著)
「真熊野の舟」は、熊野舟で、熊野の海で多く乗ったものであろう。攷證に、「紀州熊野は良材多かる所なれば、その材もて作りたるよしのいひか。 ...
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
せいする事出來ずかへつて取持しは人外といひつべし是より家内の男女なんによ色欲しきよくふけりおつねは何時も本夫をつとしやう三郎には少しの小遣こづかひを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
(六九)いはく『其美そのび(七〇)將順しやうじゆんし、其惡そのあく(七一)匡救きやうきうす、ゆゑ上下しやうか相親あひしたしむ』と。管仲くわんちういひ
人間の獣慾を惟一ゆゐいつの目的として描出するのいひにあらず、人間に不完全の認識あるよりして、何物かを得て之をつぐなはんとの慾望は天地間自然の理なれば
「歌念仏」を読みて (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
以上は餘り不謹愼な比較では有るが、然し若しも此樣な相違が有るとするならば、無政府主義者とは畢竟「最も性急せつかちなる理想家」のいひでなければならぬ。
所謂今度の事:林中の鳥 (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
かははぎは皮剥ぎのいひで、形の可笑しな魚だが、肉がしまつてゐておいしい。私の好物の一つである。
梅雨紀行 (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
されば悟れるとは己れが迷を知ることにして、そをだつせるのいひにはあらず。哀れ、戀の鴆毒ちんどくかすも殘さず飮みせる瀧口は、只〻坐して致命の時を待つの外なからん。
滝口入道 (旧字旧仮名) / 高山樗牛(著)
禍福の二門をくゞるのいひに過ぎず、たゞ其謂に過ぎずと観ずれば、遭逢さうほう百端ひやくたん千差万別、十人に十人の生活あり、百人に百人の生活あり、千百万人またおの/\千百万人の生涯を有す
人生 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
「だが、君、今夜の最大奇観ともいひつべきは、篠田長二の出て来たことだ、幹事の野郎も随分ずいぶん人が悪いよ、餅月と夏本の両ハイカラの真中まんなかへ、筒袖つゝツぽを安置したなどは」
火の柱 (新字旧仮名) / 木下尚江(著)
顕にしてくわい、肯定にして否定とは正に『それだけだ』のいひでありませう。
侏儒の言葉 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
此男このをとこちゝしんあと市街外まちはづれにちひさな莊園しやうゑん承嗣うけついだので、この莊園しやうゑんこそ怠惰屋なまけやみせともいひつべく、そのしろかべ年古としふりくづち、つたかづらおもふがまゝに這纏はひまとふたもん年中ねんぢゆうあけぱなしでとぢたことなく
怠惰屋の弟子入り (旧字旧仮名) / 国木田独歩(著)
ひゆのやうに紫ばんだ薔薇ばらの花、賢明はフロンド黨の姫君の如く、優雅いうがはプレシウズれんの女王ともいひつべきひゆのやうに紫ばんだ薔薇ばらの花、うつくしい歌を好む姫君、姫が寢室ねべやとばりの上に、即興そくきよう戀歌こひか
牧羊神 (旧字旧仮名) / 上田敏(著)
ト僕ガ言つてはヤツパリ広目屋臭ひろめやくさい、おい悪言あくげんていするこれは前駆ぜんくさ、齷齪あくせくするばかりが平民へいみんの能でもないから、今一段の風流ふうりう加味かみしたまへたゞ風流ふうりうとは墨斗やたて短冊たんざく瓢箪へうたんいひにあらず(十五日)
もゝはがき (新字旧仮名) / 斎藤緑雨(著)
つ雌蟾蜍のいひだと。
人を主とすとは、人の性情を活寫するを主とするいひにて、事を先にするは、事によりて性情を寫さむとすればなり。此派にては人物は主觀なり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
世にも無作法極まる乱暴な手紙と云つぱ、蓋し斯くの如きもののいひであらう。然も之は普通の消息ではない。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
獨活うどの野生の若いのをもまたさうしてたべる。これは然し、ほんの一つか二つ、初物として見出でた時に用ゐらるゝ料理法でもある。つまり非常に珍重してたぶるいひである。
家のめぐり (旧字旧仮名) / 若山牧水(著)
いだし五六日預かり給はれといひしに桐屋の亭主其御金は御宿おやどへ御預けなされては如何に候やと云ふに彼の客然れば宿は懇意こんいの者ゆゑ金銀をつかふ事を異見いけん致せば預ける事かなひ難し其譯そのわけは金を
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
「マクベス」の眼前にあらはるゝ幽霊にあらず、「ホーソーン」の文「コルリツヂ」の詩中に入るべき人物のいひにあらず、われ手を振り目をうごかして、而も其の何の故に手を振り目を揺かすかを知らず
人生 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
その「多情多恨」の如き、「伽羅枕からまくら」の如き、「二人女房」の如き、今日なほ之を翻読するも宛然えんぜんたる一朶いちだ鼈甲牡丹べつかうぼたん、光彩更に磨滅すべからざるが如し。人亡んで業あらはるとは誠にこの人のいひなるかな。
芋蟲一疋を解剖するにも、人間を解剖するにおなじく、其間に上下優劣をおかぬ動物學者の心こそ頼もしけれ。批評とはもと褒貶はうへんいひにあらず。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
行先は死、然らずんば戰鬪たたかひ。戰つて生きるのだ。死ぬのは……否、死と雖ども新たに生きるのいひだ。戰の門出に泣くのは兒女じぢよの事ぢやないか。別れよう。いさぎよく元氣よく別れよう。ネ、石本君。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)
はなし御家中内に相應さうおうの口も有らば御世話下されよ娘の年は十八にして容顏きりやう沈魚ちんぎよ落鴈らくがん羞月しうげつ閉花へいくわともいひつべき美人なりと申ければ幸之進も獨身どくしん者故大きにこのもしく思ひ我等最早もはや四十歳に近けれどもさきにて構ひなくば母子ともに引取妻に致さんと云ふを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
夫れ造化に納れらるとは何のいひぞ。答へていはく。造化より小なるなり。未だ造化を掩ふに足らずとは何の謂ぞ。答へていはく。これも造化より小なるなり。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
行先は死、然らずんば戦闘たたかひ。戦つて生きるのだ。死ぬのは……いや、死と雖ども新たに生きるのいひだ。戦の門出に泣くのは児女の事ぢやないか。別れよう。潔く元気よく別れよう。ネ、石本君。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「廿一日。晴。青森御薬用行、夕帰寓。」御薬用は薬物を補充するいひであらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
昔さる自然生じねんじよの三吉が書いた馬代請求の付状つけじやうが、果して大儒新井白石の言の如く千古の名文であるならば、簡にしてよく其要を得た我が畏友朱雲の紹介状も亦、正に千古の名文といひつべしである。
雲は天才である (新字旧仮名) / 石川啄木(著)
「十四日。朝くもる。午後晴。昨日当藩医師芳賀玄仲来。御旗向地むかひちへ御廻しに相成、江木軽部等近日渡海之事。」当藩は津軽である。旗を向地に廻すとは岡田総督の彼岸に航するいひであらう。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
昔さる自然生じねんじよの三吉が書いた馬代の請求の附状つけじやうが、果して大儒たいじゆ新井白石の言の如く千古の名文であるならば、簡にしてよく其要を得た我が畏友朱雲の紹介状も亦、正に千古の名文といひつべしである。
雲は天才である (旧字旧仮名) / 石川啄木(著)