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覗
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ねら
ふりがな文庫
“
覗
(
ねら
)” の例文
ヘルマン・バアルが旧い文芸の
覗
(
ねら
)
い処としている、急劇で、豊富で、変化のある行為の緊張なんというものと、差別はないではないか。
あそび
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
此の選み出す辞句には
見当違
(
けんたうちが
)
ひもないと同時に、亦まぐれ当りもない。
覗
(
ねら
)
ひを定めて幻影の金的の只中を射通す名手の矢先きにも等しい。
谷崎潤一郎氏の作品
(新字旧仮名)
/
永井荷風
(著)
我軍のタンクを草むらの中から
覗
(
ねら
)
っている野砲があったので、一人の勇士がタンクを乗り捨てて
手擲弾
(
しゅてきだん
)
でその野砲を退治してみたところが
兵士と女優
(新字新仮名)
/
渡辺温
、
オン・ワタナベ
(著)
ある夏の事、御多分に洩れぬ
幸堂得知
(
かうだうとくち
)
氏が夫人の
不在
(
るす
)
を
覗
(
ねら
)
つて無駄話に尻を腐らせてゐると、表を鰯売が通つた。幸堂氏は急に話を
止
(
や
)
めた。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
「偶然だなんて皆嘘なんです。私が停車場で省線電車を降りた時から、私の後を
跟
(
つ
)
け
覗
(
ねら
)
って来たんです。そして探偵だの刑事などと云って……」
偽刑事
(新字新仮名)
/
川田功
(著)
▼ もっと見る
じりツと
棹
(
さを
)
をのばして、
覗
(
ねら
)
つてるのに、
頬白
(
ほゝじろ
)
は
何
(
なん
)
にも
知
(
し
)
らないで、チ、チ、チツチツてツて、おもしろさうに、
何
(
なに
)
かいつてしやべつて
居
(
ゐ
)
ました。
化鳥
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
家内
(
うち
)
に
居
(
ゐ
)
れば
私
(
わたし
)
の
傍
(
そば
)
ばつかり
覗
(
ねら
)
ふて、ほんに/\
手
(
て
)
が
懸
(
かゝ
)
つて
成
(
なり
)
ませぬ、
何故
(
なぜ
)
彼樣
(
あんな
)
で
御座
(
ござ
)
りませうと
言
(
い
)
ひかけて
思
(
おも
)
ひ
出
(
だ
)
しの
涙
(
なみだ
)
むねの
中
(
なか
)
に
漲
(
みなぎ
)
るやうに
十三夜
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
彼は私を探偵だと思わず、彼と同じく金包を
覗
(
ねら
)
っているものと思込んでいたのでした。そこで彼は私を車外へ誘い出し山分けの相談を持ちかけました。
急行十三時間
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
幸徳秋水の家の前と後に巡査が二三人ずつ昼夜張番をしている。一時は
天幕
(
テント
)
を張って、その中から
覗
(
ねら
)
っていた。秋水が外出すると、巡査が後を付ける。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
唯
(
ただ
)
、戸波博士の研究所が
覗
(
ねら
)
われていること、研究所襲撃の手段として、坑道を掘り、地下から、爆破しようという計画のあるのを、知ることが出来たのです。
空襲葬送曲
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
勘次
(
かんじ
)
の
監督
(
かんとく
)
の
手
(
て
)
は
蕾
(
つぼみ
)
の
成長
(
せいちやう
)
を
止
(
とゞ
)
める
冷
(
ひやゝ
)
かな
空氣
(
くうき
)
で、さうして
之
(
これ
)
を
覗
(
ねら
)
ふものを
防遏
(
ばうあつ
)
する
堅固
(
けんご
)
な
牆壁
(
しやうへき
)
である。
土
(旧字旧仮名)
/
長塚節
(著)
と突掛けて来ますると、
覗
(
ねら
)
い
違
(
たが
)
わず奧州屋新助の脇腹へ合口を突き通すという
一時
(
いちじ
)
に手違いになりますお話でございます、
一寸
(
ちょっと
)
一息継ぎまして
後
(
あと
)
を申上げましょう。
松と藤芸妓の替紋
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
二人はさながら猫の鼠を
覗
(
ねら
)
うように、息を凝らし、足音を忍ばせてその音のする方に這い寄った。
月世界競争探検
(新字新仮名)
/
押川春浪
(著)
ついでに加えて述べたきことは、
与一
(
よいち
)
の場合にも彼が
扇
(
おうぎ
)
を
覗
(
ねら
)
うあいだには、必ず彼の失敗を祈ったものがあったであろう。しかもそれは
平家方
(
へいけがた
)
のみでなかったであろう。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
「見られよ、向こうの林の中に、あるいは
傀儡師
(
かいらいし
)
、
売茶郎
(
ばいさろう
)
、念仏僧などに身をやつして、十数人の人影が
此方
(
こなた
)
を眺めておろうがの。あれこそすなわち山賊ども、拙者を
覗
(
ねら
)
う敵なのじゃ」
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
そうして空気銃を肩にあてがって、何にもいやしないのに、そこに小鳥でも見つけたかのように、一本の木の
梢
(
こずえ
)
を
覗
(
ねら
)
って、引金を引いた。乾いた銃声があたりのしっとりとした沈黙を破った。
三つの挿話
(新字新仮名)
/
堀辰雄
(著)
「清水の坂のぼり行く日傘哉か。
子規
(
しき
)
はやっぱり巧いところを
覗
(
ねら
)
ったよ」
ぐうたら道中記
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
自己を
覗
(
ねら
)
う九人目の男がある事を知りつつ、その悠然落ち付き払っておる剛胆、傲岸、沈着、普通人の出来ない芸当で、すべてこれ歴々たる勝算あるもののごとき態度は、
強力
(
ごうりき
)
、不屈、剛気、闊達
水晶の栓
(新字新仮名)
/
モーリス・ルブラン
(著)
椽の下から
顕
(
あらわ
)
れ
出
(
いで
)
たる
八百八狐
(
はっぴゃくやぎつね
)
付添
(
つきそい
)
て
己
(
おれ
)
の
踵
(
かかと
)
を
覗
(
ねら
)
うから、
此奴
(
こやつ
)
たまらぬと
迯出
(
にげだ
)
す
後
(
うしろ
)
から
諏訪法性
(
すわほっしょう
)
の
冑
(
かぶと
)
だか、
粟
(
あわ
)
八升も入る
紙袋
(
かんぶくろ
)
だかをスポリと
被
(
かぶ
)
せられ、方角さらに分らねば
頻
(
しきり
)
と眼玉を
溌々
(
ぱちぱち
)
したらば
風流仏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
なんでもアメリカの森の中でジヤグアルが物を
覗
(
ねら
)
つてゐるのはこんな按排だらうと、わたしは思ひました。その時刻には散歩に出る人なんぞは殆無いのです。わたしは震えながら腰を掛けてゐました。
尼
(新字旧仮名)
/
グスターフ・ウィード
(著)
劫盜は旅人を
覗
(
ねら
)
ふのみにて、牧者の家
抔
(
など
)
へは來ることなしとぞ。食は葱、
麺包
(
パン
)
などなり。皆
旨
(
うま
)
し。されど一間にのみ籠り居らんこと物憂きに堪へねば、媼は我を慰めんとて、戸の前に小溝を掘りたり。
即興詩人
(旧字旧仮名)
/
ハンス・クリスチャン・アンデルセン
(著)
ここなんぞはあいつ等の
覗
(
ねら
)
って来そうな所だ。
ファウスト
(新字新仮名)
/
ヨハン・ヴォルフガング・フォン・ゲーテ
(著)
「姉の命は、誰かに
覗
(
ねら
)
われて居るんです」
踊る美人像
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
小鳥を
覗
(
ねら
)
ふ蛇の子の
枯草
(新字旧仮名)
/
野口雨情
(著)
明るく
灯
(
ひ
)
の入つた
市街
(
まち
)
には、自分の頭を
庇
(
かば
)
ひ立てるやうにして、尻目に
他人
(
ひと
)
の帽子を
覗
(
ねら
)
つてゐる人達がうようよしてゐた。
茶話:04 大正七(一九一八)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
覗
(
ねら
)
ってるのに、頬白は何にも知らないで、チ、チ、チッチッてッて、おもしろそうに、何かいってしゃべっていました。
化鳥
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
家内
(
うち
)
に居れば私の傍ばつかり
覗
(
ねら
)
ふて、ほんにほんに手が懸つて成ませぬ、
何故
(
なぜ
)
あんなで御座りませうと言ひかけて思ひ出しの涙むねの中に
漲
(
みなぎ
)
るやうに
十三夜
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
いや。夏が好くもないね。今時分は
靄
(
もや
)
が一ぱい立ち
籠
(
こ
)
めて、明りを
覗
(
ねら
)
って虫が飛んで来て
為様
(
しよう
)
がないからね。
青年
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
彼の仲間に私の探偵をどこかへ
誘
(
おび
)
き出させ、私に不安を感じさせて金包を改めさそうと云うのだ。そうしてその隙を
覗
(
ねら
)
って奪おうと云うのだろう。その
術
(
て
)
に乗るものか。
急行十三時間
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
これから新たに文壇に顔を出そうと機を
覗
(
ねら
)
っている人、もしくはすでに打って出た人のうちで、今までのものとは径路を同じゅうする事を好まない事がないとも限らない。
文壇の趨勢
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
と
彼
(
か
)
の頭巾をズタ/\に突き破り、國俊の小脇差を持ち直して
我
(
わが
)
腹へ突立てようとする処へ、何時か忍び込んだ山田藤六が障子越しに、小三郎を突殺そうと
覗
(
ねら
)
っておりまするが
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
つけつ
覗
(
ねら
)
いつしていましたが姿は一向見当りません。
あぢさゐ
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
私は探偵に注意しようと思って、そっと彼の方を見ると、彼は相変らず頭を
後
(
うしろ
)
の板に押つけていたが、眼を
細
(
ほっそ
)
り開けて、老人の方を
覗
(
ねら
)
っていた。彼も気がついているのだ!
急行十三時間
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
想像は忽ち
翻
(
ひるがへ
)
つて、医学博士磯貝
皭
(
きよし
)
君の目が心に浮ぶ。若いやうな年寄つたやうな、
蒼白
(
あをじろ
)
い
皺
(
しわ
)
のある顔から、細い鋭い目が、何か物を
覗
(
ねら
)
ふやうな表情を以て、
爛々
(
らんらん
)
としてかゞやく。
魔睡
(新字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
ある日
近侍
(
きんじ
)
の小姓が
餌
(
ゑさ
)
を呉れようとする時、隙を
覗
(
ねら
)
つて鸚哥は籠の外へ飛び出した。
茶話:03 大正六(一九一七)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
惣兵衞は一歩
退
(
しりぞ
)
いてチャリ/\と受け止め、チャ/\/\と二三
合
(
ごう
)
合せ、少しの隙を
覗
(
ねら
)
って惣兵衞が庭へ飛び下り、パタ/\/\と駈けてまいり、生垣を飛び越えて土手の方へ逃げ出す。
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
無き余りの無分別に人の
懐
(
ふところ
)
でも
覗
(
ねら
)
うやうにならば、恥は我が一代にとどまらず、重しといふとも身代は二の次、親兄弟に恥を見するな、貴様にいふとも
甲斐
(
かひ
)
は無けれど
尋常
(
なみなみ
)
ならば山村の若旦那とて
大つごもり
(新字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
幸徳秋水の
家
(
いへ
)
の
前
(
まへ
)
と
後
(
うしろ
)
に巡査が二三人
宛
(
づゝ
)
昼夜
張番
(
はりばん
)
をしてゐる。一時は
天幕
(
てんと
)
を張つて、其
中
(
なか
)
から
覗
(
ねら
)
つてゐた。秋水が外出すると、巡査が
後
(
あと
)
を付ける。万一見失ひでもしやうものなら非常な事件になる。
それから
(新字旧仮名)
/
夏目漱石
(著)
南無三、同時に轟然一発、
頭
(
こうべ
)
を
覗
(
ねら
)
って打出す
短銃
(
ピストル
)
。
活人形
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
変なところを
覗
(
ねら
)
ってる様子は全く盲目に違いありませんから、お手討は余りお情ない……コレ謝まれ、全体手前が宜しくない、盲目滅法界に人さまのお身柄も分らんから無闇なことを申して
粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分):02 粟田口霑笛竹(澤紫ゆかりの咲分)
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
頭も
尻尾
(
しっぽ
)
もないような物だった。その頃は新聞に雑録というものがあった。
朝野
(
ちょうや
)
新聞は
成島柳北
(
なるしまりゅうほく
)
先生の雑録で売れたものだ。真面目な考証に
洒落
(
しゃれ
)
が交る。論の奇抜を心掛ける。句の警束を
覗
(
ねら
)
う。
ヰタ・セクスアリス
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
無
(
な
)
き
餘
(
あま
)
りの
無分別
(
むふんべつ
)
に
人
(
ひと
)
の
懷
(
ふところ
)
でも
覗
(
ねら
)
うやうにならば、
恥
(
はぢ
)
は
我
(
わ
)
が一
代
(
だい
)
にとゞまらず、
重
(
おも
)
しといふとも
身代
(
しんだい
)
は二の
次
(
つぎ
)
、
親兄弟
(
おやけうだい
)
に
恥
(
はぢ
)
を
見
(
み
)
するな、
貴樣
(
きさま
)
にいふとも
甲斐
(
かひ
)
は
無
(
な
)
けれど
尋常
(
なみ/\
)
ならば
山村
(
やまむら
)
の
若旦那
(
わかだんな
)
とて
大つごもり
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
▲「私だって
覗
(
ねら
)
っているのさ、本当にあの座敷は
延喜
(
えんぎ
)
がいゝからねえ、瀬川さんだってあの座敷から身請されたのだし、今度の花里さんだって矢ッ張りなのだから、それに二人とも海軍の方だものねえ」
根岸お行の松 因果塚の由来
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
覗
漢検準1級
部首:⾒
12画
“覗”を含む語句
覗見
差覗
覗込
垣覗
覗眼鏡
覗機関
明巣覗
股覗
覗窓戸
覗目鏡
覗得
覗口
覗出
覗入
見覗
藪覗
付覗
窺覗
盲目覗
盗人覗
...