肌着はだぎ)” の例文
第六 毎日まいにち一度いちど冷水ひやみづあるひ微温湯ぬるゆにて身體からだ清潔きれいぬぐひとり、肌着はだぎ着替きかへべし。入浴ふろは六七日目にちめごとなるたけあつからざるるべきこと
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
あらまあオウ・マイと鼻の穴から発声する亜米利加アメリカ女が、肌着はだぎ洗濯せんたくしたことのない猶太ユダヤ人が、しかし、仏蘭西フランス人だけは長い航海を軽蔑けいべつして
ヤトラカン・サミ博士の椅子 (新字新仮名) / 牧逸馬(著)
わたしは、お神さんが下の肌着はだぎを脱ぐかどうか怪しいと思う。そんなにいろんなものを脱いだところで別段役にも立つまいではないか。
そのうち、女の子はある森にたどりきました。もうくらくなっていましたが、また、もうひとりこどもが出て来て、肌着はだぎをねだりました。
乳人のお沢は、かすかに手元だけを照らしている灯皿ほざらのそばで、夜なべ仕事に、たれの肌着はだぎか、男物のぼろに針を運んでいた。
新書太閤記:10 第十分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
絲を捲きながら、彼女は時々私に話しかけて、前に學校にゐたことがあるかとか、肌着はだぎなんぞに名印なまへをつけたり、編物や縫物が出來るかなどゝたづねた。
紀昌は再び家にもどり、肌着はだぎ縫目ぬいめからしらみを一匹探し出して、これをおのかみの毛をもってつないだ。そうして、それを南向きの窓にけ、終日にららすことにした。
名人伝 (新字新仮名) / 中島敦(著)
春琴居常潔癖けっぺきにしていささかにてもあか着きたる物をまとわず、肌着はだぎ類は毎日取換とりかえて洗濯せんたくを命じたりき。
春琴抄 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
クリストフは時々、彼女が長い肌着はだぎをつけ素足のままで室の中をうろうろしたり、長い間鏡の前にすわっていたりするのを、窓ガラス越しに見かけることがあった。
をりからはじ眞紅しんくなるが、のまゝの肌着はだぎうつりて、竹堰たけせきはぎしもく、あゝ、つめたからん。
婦人十一題 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
菅笠すげがさは街道のほこりに赤うなって肌着はだぎ風呂場ふろばしらみを避け得ず、春の日永きなわてに疲れてはちょううら/\と飛ぶに翼うらやましく、秋の夜はさびしき床に寝覚ねざめて、隣りの歯ぎしみに魂を驚かす。
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
麻布は肌着はだぎに冷たく当って、防寒の用には適せぬように思われるが、細かい雪の降る土地では、水気のみやすい木綿を着るのはなお不便だから、いわば我々の雨外套のかわりに
木綿以前の事 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
そこでお隅は無地の羽織を選び、藍微塵あいみじんの綿入れ、襦袢じゅばん、それにさらし肌着はだぎまでもそろえて手ばしこく風呂敷ふろしきに包んだ。彼女は新しい紺足袋こんたびをも添えてやることを忘れていなかった。
夜明け前:04 第二部下 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
手ぬぐい地の肌着はだぎから黒い胸毛を現わしてたくましい腕に木槌こづちをふるうている。
花物語 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
わしが重役と中の悪い処から此の様に浪人致し、お前は何も知らない身分で、住み馴れぬ裏家住居、わし内証ないしょう肌着はだぎまでも売ったようだが、腹のった顔も見せず、孝行を尽して呉れるに
業平文治漂流奇談 (新字新仮名) / 三遊亭円朝(著)
小股こまたの切れあがった美人で、それが片膝立ちに構えると、下の肌着はだぎ肉躰にくたいの一部がちらちらし、そのため博奕を打つ手許てもとが狂うというのであるが、あさ子の場合は成功しなかったばかりか
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
うす肌着はだぎがぴったりくっつき、あなたの肉体の線があらわにみえていました。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
代助はいへまへに、昨夕ゆふべ肌着はだぎ単衣ひとへも悉くあらためてあらたにした。そとは寒暖計の度盛どもりの日をふてあがころであつた。あるいてゐると、湿しめつぽい梅雨つゆが却つて待ちとほしい程さかんにつた。
それから (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
隊員の中には、国民学校の男生徒女生徒もまじっていて、みな寒そうな泣きべその顔をしていた。雨は私のレインコートをとおして、上衣うわぎにしみて来て、やがて肌着はだぎまでぬらしたほどであった。
斜陽 (新字新仮名) / 太宰治(著)
お妃はというと、いつもにかわらず、じっとすわって、肌着はだぎをぬいつづけていて、ほかになにごとがおころうと心にとまらないふうでした。
よれよれな布直垂ぬのひたたれに、あかじみた肌着はだぎひとえ。——羅生門に巣くう浮浪児でも、これほどは汚くあるまい。もし、腰なる太刀たちを除いたら、一体何に間違われるか——だ。
キャラコの肌着はだぎにはちやうど適當な品です。針も糸に合つたのをりました。縫針ぬひばりの方は、おぼえをけておくのを忘れたと、あなたからスミス先生に云つて下さらんか。
第八 衣服いふく精粗美惡よしあしひと分限ぶんげんるといへども、肌着はだぎ木綿もめんフラン子ルをよしとす。蒲團ふとん中心なかわたあたらしくかはきたるものをたつとゆゑに、綿花わたかぎらずかま穗苗藁ほわら其外そのほかやわらかかはきたるものをえらぶべし。
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
肌着はだぎ
当世女装一斑 (新字旧仮名) / 泉鏡花(著)
一刻後の彼は、縄目の死地からにわかにそのの客院の客としてあがめられていた。浴室で負傷の箇所には手当をうけ、また肌着はだぎ衣帯いたいなども、すべて新しいのとかえられていた。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
おだまきが手にはいると、さっそく、この女は、白いきぬでちいさな肌着はだぎをつくりました。
すべ肌着はだぎ日々ひゞあらひ、夜着よぎは六七にちごとすべきこと
養生心得草 (旧字旧仮名) / 関寛(著)
これだけの言葉をはくうちに、秀吉ひでよしは、肌着はだぎ小手こて脛当すねあてをピチンとけて、皆朱碁石かいしゅごいしおどしのよろいをザクリと着こみ、唐織銀文地からおりぎんもんじ日月じつげつを織りうかした具足羽織ぐそくばおりまで着てしまった。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なにしろ、きょうは聖母せいぼさまの日だろう、聖母さまが幼子おさなごキリストさまの肌着はだぎをせんたくして、かわかそうという日だからね。ところが、あしたの日曜にちようには、おきゃくさんがおおぜいくる。
そうして、かぶっている白鳥のかわが、肌着はだぎをぬぐようにぬげました。ひいさまがみると、それがおにいさまたちだとわかりましたから、大よろこびで、ベッドの下からはいだしました。
彼らは山野を走りまわって、東国勢のかばねから、その持物をぎ、肌着はだぎまで奪って、一夜のうちに、どの死骸もみな、まる裸にしてしまった。その景気が飢餓の町を、近年になくさんざめかせた。
私本太平記:08 新田帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)