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細
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ほっそ
ふりがな文庫
“
細
(
ほっそ
)” の例文
……ふと心附いて、
蟇
(
ひき
)
のごとく
跼
(
しゃが
)
んで、手もて取って引く、女の黒髪が一筋、糸底を巻いて、耳から額へ
細
(
ほっそ
)
りと、頬にさえ
掛
(
かか
)
っている。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
お倉は摺れ違いざま、平次の耳に
囁
(
ささや
)
きました。
細
(
ほっそ
)
りした身体が、後ろ手に縛られると一倍
萎
(
しお
)
れて、消えも入りそうなのが、何とも言えない痛々しさです。
銭形平次捕物控:028 歎きの菩薩
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
橋をわたって、裏の
庫
(
くら
)
の方へゆく、主人の
筒袖
(
つつそで
)
を着た物腰の
細
(
ほっそ
)
りした姿が、硝子戸ごしにちらと見られた。お島は今朝から、まだ一度もこの主人の顔を見なかった。
あらくれ
(新字新仮名)
/
徳田秋声
(著)
私は探偵に注意しようと思って、そっと彼の方を見ると、彼は相変らず頭を
後
(
うしろ
)
の板に押つけていたが、眼を
細
(
ほっそ
)
り開けて、老人の方を
覗
(
ねら
)
っていた。彼も気がついているのだ!
急行十三時間
(新字新仮名)
/
甲賀三郎
(著)
頸
(
うなじ
)
からかけて、肩の辺まで、月の光に照らされた。
細
(
ほっそ
)
りとした頸の形が、弱々しく美しい。乱れた髪の毛が渦を巻き、左の肩へ垂れているのが、微風に
嬲
(
なぶ
)
られて顫えている。
神州纐纈城
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
▼ もっと見る
髪多く余る光を椽にこぼすこなたの影に、有るか無きかの
細
(
ほっそ
)
りした顔のなかを、濃く引き残したる眉の尾のみがたしかである。眉の下なる切長の黒い眼は何を語るか分らない。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
黒く長い三日月眉。
細
(
ほっそ
)
りと締まった顎。小さい
珊瑚
(
さんご
)
色の唇。両耳にブラ下げた巨大な真珠……それが頬をポッと染めながら大きな瞬きをした。何となく悲しく憂鬱な、又は恥かし気な白い歯の光りだ。
冥土行進曲
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
あの、夕顔の竹の木戸に、長い袂も触れないで、
細
(
ほっそ
)
りと出たでしょう。……松の樹の下を通る時は、遠い路を行くようでした。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
腹中の声が終えると同時に老人の口から十七ぐらいの一人の娘が出て来ましたが
細
(
ほっそ
)
りとした色の白い髪毛の黒い美貌の娘で、四郎を見るとニッコリ笑い、其側へ行って坐わりました。
天草四郎の妖術
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
額に加えた五本の指は、節長に
細
(
ほっそ
)
りして、爪の形さえ女のように
華奢
(
きゃしゃ
)
に出来ている。
虞美人草
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
観念しきった様子で、眉も動かさずにその
細
(
ほっそ
)
りした肩を
聳
(
そび
)
やかすばかりでした。
銭形平次捕物控:002 振袖源太
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
と思うと、袖を斜めに、ちょっと隠れた
状
(
さま
)
に、一帆の方へ蛇目傘ながら
細
(
ほっそ
)
りした
背
(
せな
)
を見せて、そこの絵草紙屋の店を
覗
(
なが
)
めた。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
眉の跡青々と妙に淋しく
細
(
ほっそ
)
りしておりますが、水際立った元禄姿で、敷居の上に桜貝のような素足の爪を並べて立つと、腰から上へ真珠色の
霞
(
かすみ
)
が棚びいて、雲の上から美妙な声が聞えるといった心持
銭形平次捕物控:008 鈴を慕う女
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
空色地に雪間の花を染模様の帯のお太鼓と、梅が香も床しい
細
(
ほっそ
)
りした襟脚の中へ、やたらに顔を押込んで、ぐたりとなった。
卵塔場の天女
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
腰衣
(
こしごろも
)
の素足で立って、すっと、経堂を出て、
朴歯
(
ほおば
)
の
高足駄
(
たかあしだ
)
で、
巻袖
(
まきそで
)
で、寒く
細
(
ほっそ
)
りと草を
行
(
ゆ
)
く。清らかな僧であった。
七宝の柱
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……友染の夜具に、裾は消えるように
細
(
ほっそ
)
りしても——寝乱れよ、おじさん、家業で
芸妓衆
(
げいしゃしゅ
)
のなんか
馴
(
な
)
れていても、女中だって堅い素人なんでしょう。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と柳の眉の、
面
(
おもて
)
正しく、見迎えてちょっと立直る。片手も
細
(
ほっそ
)
り、色傘を重そうに
支
(
つ
)
いて、片手に
白塩瀬
(
しろしおぜ
)
に
翁格子
(
おきなごうし
)
、薄紫の裏の着いた、銀貨入を持っていた。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
緊
(
し
)
められるように胸を
圧
(
おさ
)
えた、肩が
細
(
ほっそ
)
りとして重そうなので、俊吉が傘を取る、と忘れたように黙って放す。
第二菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
……
撫肩
(
なでがた
)
に重荷に背負って加賀笠を片手に、うなだれて行く
細
(
ほっそ
)
り白い
頸脚
(
えりあし
)
も、
歴然
(
ありあり
)
目に見えて、
可傷
(
いた
)
々々しい。
河伯令嬢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
黒繻子
(
くろじゅす
)
の襟のかかった
縞
(
しま
)
の小袖に、ちっとすき切れのあるばかり、空色の絹のおなじ襟のかかった
筒袖
(
こいぐち
)
を、帯も見えないくらい引合せて、
細
(
ほっそ
)
りと着ていました。
雪霊記事
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
細
(
ほっそ
)
りした姿で、薄い色の
褄
(
つま
)
を引上げ、腰紐を直し、伊達巻をしめながら、襟を
掻合
(
かきあ
)
わせ掻合わせするのが、茂りの
彼方
(
かなた
)
に枝透いて、
簾
(
すだれ
)
越に
薬玉
(
くすだま
)
が消えんとする。
神鷺之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
細
(
ほっそ
)
りした頬に
靨
(
えくぼ
)
を見せる、笑顔のそれさえ、おっとりして品が
可
(
い
)
い。この姉さんは、
渾名
(
あだな
)
を令夫人と云う……十六七、
二十
(
はたち
)
の頃までは、同じ心で、令嬢と云った。
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
両膝を
細
(
ほっそ
)
りと
内端
(
うちわ
)
に
屈
(
かが
)
めながら、忘れたらしく投げてた
裾
(
すそ
)
を、すっと
掻込
(
かいこ
)
んで、草へ横坐りになると、今までの様子とは、がらりと変って、
活々
(
いきいき
)
した、
清
(
すずし
)
い調子で
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
撫子 この
細
(
ほっそ
)
りした、(一輪を
指
(
ゆびさ
)
す)絹糸のような白いのは、これは、何と云う名の菊なんですえ。
錦染滝白糸:――其一幕――
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と手を
支
(
つ
)
いて、壁に着いたなりで
細
(
ほっそ
)
りした
頤
(
おとがい
)
を横にするまで下から
覗
(
のぞ
)
いた、が、そこからは窮屈で水は見えず、
忽然
(
こつぜん
)
として
舳
(
へさき
)
ばかり
顕
(
あら
)
われたのが、いっそ風情であった。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
呼吸
(
いき
)
を詰めて見透すと、白い、
細
(
ほっそ
)
りした、女の手ばかりが水の中から舳に
縋
(
すが
)
っているのであります。「さながら白き布かと見えて、雪のごとし」と、写本には書いてある。
雪柳
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
娘がね、仕切に手を
支
(
つ
)
くと、向直って、抜いた
花簪
(
はなかんざし
)
を載せている、涙に濡れた、
細
(
ほっそ
)
り畳んだ
手拭
(
てぬぐい
)
を置いた、友染の前垂れの膝を浮かして、ちょっと考えるようにしたっけ。
南地心中
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
寂しい、美しい女が、花の雲から下りたように、すっと
翳
(
かげ
)
って、おなじ堀を
垂々
(
だらだら
)
下
(
お
)
りに、町へ続く長い坂を、胸を
柔
(
やわらか
)
に袖を合せ、肩を
細
(
ほっそ
)
りと
裙
(
すそ
)
を浮かせて、宙に
漾
(
ただよ
)
うばかり。
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
実は、コトコトとその駒下駄の音を立てて
店前
(
みせさき
)
へ近づくのに、
細
(
ほっそ
)
り
捌
(
さば
)
いた褄から、
山茶花
(
さざんか
)
の模様のちらちらと咲くのが、早く茶の間口から若い女房の目には映ったのであった。
薄紅梅
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
羅
(
うすもの
)
は風よりも軽い……姉の明石が、竹を
辷
(
すべ
)
ると、さらりと落ちたが、畳まれもしないで、
煽
(
あお
)
った襟をしめ加減に、
細
(
ほっそ
)
りとなって、脇あけも
採
(
と
)
れながら、フッと宙を浮いて行く。
甲乙
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
この羽織が、黒塗の華頭窓に
掛
(
かか
)
っていて、その窓際の机に向って、お米は
細
(
ほっそ
)
りと坐っていた。冬の日は
釣瓶
(
つるべ
)
おとしというより、
梢
(
こずえ
)
の
熟柿
(
じゅくし
)
を
礫
(
つぶて
)
に打って、もう暮れて、客殿の広い畳が皆暗い。
縷紅新草
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ともう、相合傘の支度らしい、片袖を胸に当てる、柄よりも姿が
細
(
ほっそ
)
りする。
妖術
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ここらは
甲斐絹裏
(
かいきうら
)
を正札附、ずらりと並べて、正面左右の棚には
袖裏
(
そでうら
)
の
細
(
ほっそ
)
り赤く見えるのから、
浅葱
(
あさぎ
)
の
附紐
(
つけひも
)
の着いたのまで、ぎっしりと積上げて、小さな
円髷
(
まげ
)
に結った、顔の四角な、肩の
肥
(
ふと
)
った
露肆
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「色が白くて、髪が黒い処へ、
細
(
ほっそ
)
りしてるから、よく似合うねえ。
年紀
(
とし
)
よりは派手なんだけれど、娘らしく色気が有って、まことに可い。葛木さん、ちょいと、あすこへ惚れたんじゃないこと。」
日本橋
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
で、親まさりの
別嬪
(
べっぴん
)
が
冴返
(
さえかえ
)
って冬空に
麗
(
うらら
)
かである。それでも、どこかひけめのある身の、
縞
(
しま
)
のおめしも、一層なよやかに、羽織の肩も
細
(
ほっそ
)
りとして、
抱込
(
かかえこ
)
んでやりたいほど、いとしらしい
風俗
(
ふう
)
である。
古狢
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と云って
莞爾
(
にっこり
)
した。が、撥を挙げて
靨
(
えくぼ
)
を隠すと、向うむきに格子を離れ、
細
(
ほっそ
)
りした襟の白さ、
撫肩
(
なでがた
)
の
媚
(
なまめ
)
かしさ。浴衣の千鳥が宙に浮いて、ふっと消える、とカチリと鳴る……何処かに撥を置いた音。
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「はい、両手を下げて、白いその両方の
掌
(
てのひら
)
を合わせて、がっくりとなった嘉吉の首を、四五本目の
輻
(
やぼね
)
の
辺
(
あたり
)
で、上へ
支
(
ささ
)
げて持たっせえた。おもみが
掛
(
かか
)
ったか、姿を絞って、肩が
細
(
ほっそ
)
りしましたげなよ。」
草迷宮
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
帯の色も、その立姿の、肩と裾を横に、胸高に、
細
(
ほっそ
)
りと
劃
(
くぎ
)
って濃い。
星女郎
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
ト
無慙
(
むざん
)
や、行燈の前に、
仰向
(
あおむ
)
けに、
一個
(
ひとつ
)
が
頭
(
つむり
)
を、
一個
(
ひとつ
)
が
白脛
(
しらはぎ
)
を取って、宙に釣ると、
綰
(
わが
)
ねの緩んだ
扱帯
(
しごき
)
が抜けて、
紅裏
(
もみうら
)
が肩を
辷
(
すべ
)
った……雪女は
細
(
ほっそ
)
りとあからさまになったと思うと、すらりと落した
陽炎座
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と肩を
細
(
ほっそ
)
り……
廂
(
ひさし
)
はづれに空を仰いで、山の
端
(
は
)
の月と
顔
(
かんばせ
)
を合せた。
貴婦人
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
荷のある
類
(
たぐい
)
はあらかじめこの
一条
(
ひとすじ
)
の横町は使わぬことになってるけれども、人一人、別けて肩幅の
細
(
ほっそ
)
りした女、車の歯を抜けても入られそうに見えるけれども、
逞
(
たくま
)
しい鼠色の馬の
面
(
つら
)
が、小鼻を動かし
三枚続
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
が、外套が外へ出た、あとを、しめざまに
細
(
ほっそ
)
りと見送る処を、外套が振返って、頬ずりをしようとすると、あれ人が見る、島田を
揺
(
ふ
)
って、おくれ毛とともに背いたけれども、弱々となって顔を寄せた。
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
「コヤコヤ、いつかも蝶吉がお
花札
(
はな
)
を引いた時のように警察の帳面につけておく。住所、姓名をちゃんと申せ、偽るとためにならぬぞ。コヤ、」と一生懸命に
笑
(
わらい
)
を忍んで、
細
(
ほっそ
)
りした頬を膨らしながら
湯島詣
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
と
熟
(
じっ
)
と
瞻
(
みまも
)
る、とここの蝋燭が
真直
(
まっすぐ
)
に、
細
(
ほっそ
)
りと灯が
据
(
すわ
)
った。
菎蒻本
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
片手を
細
(
ほっそ
)
りと懐にした姿。
伊勢之巻
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
細
常用漢字
小2
部首:⽷
11画
“細”を含む語句
仔細
細君
詳細
繊細
細々
心細
細流
委細
細作
細部
細螺
目細
細語
細工
細面
巨細
細目
細胞
細腰
細竹
...