“素朴:そぼく” の例文
“素朴:そぼく”を含む作品の著者(上位)作品数
野村胡堂7
ロマン・ロラン5
吉川英治4
寺田寅彦3
下村湖人3
“素朴:そぼく”を含む作品のジャンル比率
芸術・美術 > 芸術・美術 > 芸術史 美術史40.0%
芸術・美術 > 音楽 > 音楽史 各国の音楽20.0%
文学 > フランス文学 > 小説 物語15.4%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
そうして僕は、この道場にいて六箇月間、何事も思わず、素朴そぼくに生きて遊ぶ資格を尊いお方からいただいているのだ。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
彼女は普通の生活においては利己的で平凡で不誠実であったが、愛のために、素朴そぼくに真実にほとんど善良にさえなっていた。
お民は默つて襟に顏を埋めました。正月元日の晴れ着でせう、木綿物ですが清潔で可愛らしくて、赤い帶も素朴そぼくな魅力です。
こいというには、あまりに素朴そぼくな愛情、ろくろく話さえしなかった仲でしたから、あなたはもう忘れているかもしれない。
オリンポスの果実 (新字新仮名) / 田中英光(著)
かなり日にやけた頬に、例の大きなえくぼが柔かいかげを作っているのが、先生夫妻の眼には、いかにも素朴そぼくにうつった。
次郎物語:04 第四部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
素朴そぼくな村人たちは、博士が自分たちを友だちのように、したしげに話しかけてくれることにたいへん満足をおぼえた。
超人間X号 (新字新仮名) / 海野十三(著)
素朴そぼくに、天真爛漫てんしんらんまんに、おのおのの素質そしつに依つて、見たり、感じたり、考へたりしたことが書いてあれば
解嘲 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
民衆の中には、ユダヤ人にたいする執拗しつような偏見と、素朴そぼくではあるがしかし不当な内密の敵意とが、いつも存在していた。
その素朴そぼくな願いが、彼のうちにやさしくみ通った。彼は涙をふいて、微笑ほほえもうとつとめながら言った。
それは、素朴そぼくそのままの、何ら飾り気のない文章で、七年ぶりに帰還した、土人ナガウライの談話と銘打たれてある。
紅毛傾城 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
その名に比して、何と素朴そぼくな男だろうと、兄弟は、しげしげ彼の風采を見直していたが、疑うらしい眼ではなかった。
源頼朝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
わたくし良人おっと素朴そぼく物語ものがたりたいへんな興味きょうみもってききました。
明石の山荘は川に面した所で、大木の松の多い中へ素朴そぼくに寝殿の建てられてあるのも、山荘らしい寂しい趣が出ているように見えた。
源氏物語:18 松風 (新字新仮名) / 紫式部(著)
銀子も少し心配になり、躊躇ちゅうちょしたが、歩けないだけに、西の方よりも、人気が素朴そぼくなだけでも、やりいいような気がした。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
和服姿で肱掛椅子ひじかけいすにかけたところは、博士はいかにもどっちりした素朴そぼくな中年の紳士であった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
私はただ現代に生まれた一人の科学の修業者として偶然ルクレチウスを読んだ、その読後の素朴そぼくな感想を幼稚な言葉で述べるに過ぎない。
ルクレチウスと科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
また一方相対性理論の発展によって、いわゆる空間に属する考えもまたこの素朴そぼくな状態を離れて来たのである。
ルクレチウスと科学 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
講堂には、素朴そぼくな信者が、二十名ばかりもおこもりをして、冷い板敷に坐りこんで祈祷きたうをあげてゐる。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
素朴そぼくで、やや紅味あかみを帯びた枝の素生すばえに堅くつけた梅の花のつぼみこそはこの少女のものだ。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
とさえ云いたかった。素朴そぼくな感動は、すぐ動揺どよめきを起した。夜の明けたばかりの街々は、そのどよめきに、日頃にない光景を作った。
新編忠臣蔵 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
素朴そぼくで単純な性格を、今もって失わない銀子は、取越し苦労などしたことは、かつてないように見えた。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
ああ、なんでも単純たんじゅんかぎる。単純たんじゅんで、素朴そぼくなものは、きよらかだ。
金歯 (新字新仮名) / 小川未明(著)
かれのにうつった中佐の顔には、多くの隊付き将校に見られるような素朴そぼくさが少しもなかった。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
都会の人種とはまるきり違ふ、素朴そぼくな眼色をした中年の男が、番傘をゆき子の上へ差しかけてくれた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
非常に子どもらしい素朴そぼく過ぎたうらないかただけれども、前にはこうして右か左かの疑いをきめるという信仰もあったのではないかと思われる。
こども風土記 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
青や朱や黄の顔料の色の美しいあざやかさと、古雅な素朴そぼくな筆致とは思いのほかのものであった。
旅日記から (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
その素朴そぼくうたを聞くと、しみじみとした気持になって、祖国を離れていかに不幸だったか、いかに祖国を愛していたかを、感ぜさせられた……。
私がこれから書こうとしているきわめて奇怪な、またきわめて素朴そぼくな物語については、自分はそれを信じてもらえるとも思わないし、そう願いもしない。
黒猫 (新字新仮名) / エドガー・アラン・ポー(著)
街道にならぶ人家の様子は、あの橋の上から想像した通り、いかにも素朴そぼくで古風である。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
大きな自然のふところにいだかれて、原始人げんしじんのような素朴そぼくな生活がつづいた。
恐竜島 (新字新仮名) / 海野十三(著)
がしだいに、自分の話を聞いてもらう素朴そぼくな喜びに駆られて、会話の中にはいってきた。
一連皆素朴そぼくなる山家人やまがびと装束しょうぞくをつけず、めんのみなり。
多神教 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
彼女らのうちには、狡猾こうかつさと率直さとがあり、快楽にたいする厚かましい素朴そぼくな欲求があり、そして底には、正直勤勉な善良な小さい魂があるのだった。
家康もぜひなく立った。しかしなお恋々れんれんとその素朴そぼくなうしろ姿へ向けて、
新書太閤記:05 第五分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
なんとなく次郎の求めているような素朴そぼくさは、私自身の求めているものでもある。
(新字新仮名) / 島崎藤村(著)
こうして、背後から彼女の台所姿を見ていると、ねずみのような気がしてならない。だが、彼女は素朴そぼくな心から時に、僕にこう云ううたをつくって見せる事があった。
魚の序文 (新字新仮名) / 林芙美子(著)
あの小さな素朴そぼくな頭が無辺大の夢でさかまいてゃないか。
ぼろぼろな駝鳥 (新字旧仮名) / 高村光太郎(著)
素朴そぼくな語で言うならば、ここに人間生殖の必要なる機会があったのである。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
この歌も民謡的だが、素朴そぼくでいかにも当時の風俗が分かっておもしろい。
万葉秀歌 (新字新仮名) / 斎藤茂吉(著)
素朴そぼく野薔薇のばらの花をまじえた、実りの豊かな麦畠である。
おぎん (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
まあ、ここにいる間だけでも、うるさい思念の洪水こうずいからのがれて、ただ新しい船出という一事をのみ確信して素朴そぼくに生きて遊んでいるのも、わるくないと思っている。
パンドラの匣 (新字新仮名) / 太宰治(著)
服織はとりという二、三十山村さんそん、みな素朴そぼく山家者やまがものらしいので、その一けん伊勢いせ郷士ごうしといつわって宿やどをかりた。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
私はこの素朴そぼくな日常経験を基として唐招提寺の円柱に対するのである。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
それはいずれも見慣れない、素朴そぼくな男女の一群ひとむれだった。
神神の微笑 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
十八九、——どうかすると二十歳以上にも見える頑丈な娘で、横肥りの赤ら顏の、申分なくみにくいくせに、何處かに娘らしさがあり、その素朴そぼくさが、妙に人の好感を誘ひます。
銭形平次捕物控:315 毒矢 (旧字旧仮名) / 野村胡堂(著)
右大臣の別荘も田舎いなからしくはしてあったが、宮のおやしきはそれ以上に素朴そぼくな土地の色が取り入れられてあって、網代屏風あじろびょうぶなどというものも立っていた。
源氏物語:48 椎が本 (新字新仮名) / 紫式部(著)
素朴そぼくなひとりの旅人であればそれでいいと思うようになった。
大和古寺風物誌 (新字新仮名) / 亀井勝一郎(著)
素朴そぼくといえば素朴、すごいといえばすごい山荘である。
源氏物語:47 橋姫 (新字新仮名) / 紫式部(著)
去年の夏、子供たちについて、葉子の郷里から上京して来たお八重は顔容かおかたちもよく調ととのって、ふくよかな肉体もほどよく均齊きんせいの取れた、まだ十八の素朴そぼくな娘だったので
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
……「素朴そぼくな」人間の心を喪失そうしつしている。
なよたけ (新字新仮名) / 加藤道夫(著)
牝鹿めじかのように敏感な岡さえがいっこう注意しない葉子の健康状態を、鈍重らしい古藤がいち早く見て取って案じてくれるのを見ると、葉子はこの素朴そぼくな青年になつかし味を感ずるのだった。
或る女:2(後編) (新字新仮名) / 有島武郎(著)
また音楽におけると同じように——フランスにおいてはまだ年若い比較的素朴そぼくな芸術である音楽におけるよりも、さらにはなはだしく——彼らは「すでに言われたこと」にたいして恐怖をいだいていた。
八五郎はこんな事を言ひ乍ら、何んとかして娘を逃してやり度い心持になつてゐるのでした。お秀ののしかゝつて來る年増美の鬱陶うつたうしさに比べて、この娘はまた何んといふ素朴そぼくな存在でせう。
ところで前にいうように、共同生活の統制秩序ということこそ国家の本質なのであるから、国家の萌芽ほうがそのものは、どんなに素朴そぼくな形であっても、人間とともに発生したものだと考えざるを得ぬ。
政治学入門 (新字新仮名) / 矢部貞治(著)
溌剌はつらつとして美しい彼女という人間のなかには、ずるさと暢気のんきさ、技巧ぎこう素朴そぼく、おとなしさとやんちゃさ、といったようなものが、一種特別な魅力みりょくある混り合いをしていた。
はつ恋 (新字新仮名) / イワン・ツルゲーネフ(著)
至って素朴そぼくに記述してあった。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
しかし、彼は弱る心を奮い立たせ、いったん真佐子の影響に降伏して蘭鋳の素朴そぼくかえろうとも、も一度彼女の現在同様の美感の程度にまで一匹の金魚を仕立て上げてしまえば、それを親魚にして、に仔を産ませ
金魚撩乱 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
ここでは旧套きゅうとうの良心過敏かびん性にかかっている都会娘の小初の意地も悲哀ひあい執着しゅうちゃくも性を抜かれ、代って魚介ぎょかいすっぽんが持つ素朴そぼく不逞ふていの自由さがよみがえった。
渾沌未分 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
素朴そぼくな生活への復帰を願うドヴォルシャークの心が、この郷愁となって、幾多いくた傑作をのこし、ともすれば虚偽と繁雑とにき込まれて、人間本来の美しき姿を失わんとするものへのよき警告となったのであろう。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
多くの人がブラームスを愛するのは、その端麗素朴そぼくな音楽のせいには違いないが、この音楽を生んだ人間ブラームスの伝記を調べていくに従って、彼の芸術そのままと言ってもよい——優しく美しい——性格に傾倒せざるを得ない。
楽聖物語 (新字新仮名) / 野村胡堂野村あらえびす(著)
素朴そぼくこと
貧しき信徒 (新字新仮名) / 八木重吉(著)
地藏樣の臺石の上で、一夜のうちに寛永通寶くわんえいつうはうが、ピカ/\する一分金になる——そんなことは、今の人では信じ兼ねるでせうが、その頃の人は、極めて素朴そぼくに、暢氣のんきに、この奇蹟を受け容れて了ひました。
彼等の素朴そぼくな心盡しを受け、また、それに心を籠めて報いることが——彼等の心持を細かく察して——私には一つの樂しみであつたが、恐らくさうした心遣こゝろづかひには、彼等は常に慣れてはゐなかつたし、彼等を惹きつけ利益を與へた。
そして上流の左の岸に上市かみいちの町が、うしろに山を背負い、前に水をひかえたひとすじみちの街道かいどうに、屋根の低い、まだらに白壁しらかべ点綴てんてつする素朴そぼく田舎家いなかやの集団を成しているのが見える。
吉野葛 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
大概は勇ましくまた殺伐な戦闘や簒奪さんだつ顛末てんまつであるが、それがただの歴史とはちがって、中にいろいろな対話が簡潔な含蓄のある筆で写されていたり、繊細な心理が素朴そぼくな態度でうがたれていたりするのをおもしろいと思った。
春寒 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
すっかり頭巾ずきんをかぶって、十二分に身じたくをしてから出かけたらいいだろうとみんなが寄って勧めたけれども、君は素朴そぼくなはばかりから帽子もかぶらずに、重々しい口調で別れの挨拶あいさつをすますと、ガラス戸を引きあけて戸外に出た。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
もし、彼を里子として育ててくれた乳母のお浜の、ほとんど盲目的だとも思われるほどの芳醇ほうじゅんな愛や、彼の父俊亮の、聰明そうめいで、しかも素朴そぼくさを失わない奥深い愛が、いつも彼の背後から彼を支えていてくれなかったならば、そして
次郎物語:03 第三部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
隣は浪人の居留木ゐるぎ角左衞門、四十前後の恰幅かつぷくの良い武家で、少し怖い顏をして居りますが、それがむしろ人の好い證據と言つてよく、話の調子もなめらかで、何方かと言へば、素朴そぼくなうちに、人を外らさないところがあります。
何となく貧しげな木綿物ですが、折目の入つた單衣ひとへを着て、十九、二十歳はたちが精々と思はれる若さを、紅も白粉も拔きの、痛々しいほど無造作な髮形、——それから發散される素朴そぼくな美しさは、妙にうら悲しさを感じさせる種類のものでした。
髪は最早もう白いほどの年頃ながら眼には青年のような輝きを見せた教授、素朴そぼくでそして男らしく好ましい感じのする書記、彼は眠りにこうとして壁の側の寝台に上ってからも、それらの人達から受けた最初の好い印象を考えて、この温かい親切は長く忘れられまいと思った。
新生 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
一——自由な明晰めいせき真摯しんしな眼、ヴォルテールや百科全書派アンシクロペジストらが、当時の社会の滑稽こっけいと罪悪とを素朴そぼくな視力によって諷刺ふうしさせんがために、パリーにやって来さした、あの自然人たち——あの「ヒューロン人」たち——のような眼。
初めは誰でもそんなふうにするものだ、精勤を見せかけるために、あるいは新しい仕事に対する興味に駆られて、——しかし彼はそのどちらでもなく、もっと素朴そぼくな、それが自分の仕事であるという、ごくあたりまえな態度であり、半年ち、一年ちかく経っても、その仕事ぶりに変りはなかった。
青べか物語 (新字新仮名) / 山本周五郎(著)
耳の病を祈るしるしとして幾本かの鋭いきりを編み合わせたもの、女の乳しぼるさまを小額の絵馬えまに描いたもの、あるいは長い女の髪を切って麻のに結びささげてあるもの、その境内の小さなほこらの前に見いださるる幾多の奉納物は、百姓らの信仰のいかに素朴そぼくであるかを語っている。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
僕は、ただ正確なところを知っているだけだ。オフィリヤ、少しは、わかったか。君まで、おとなの仲間入りをして、僕に何やら忠告めいた事を言うとは、情ないぞ。孤独を知りたかったら恋愛せよ、と言った哲学者があったけど、本当だなあ。ああ、僕は、愛情に飢えている。素朴そぼくな愛の言葉が欲しい。ハムレット、お前を好きだ! と大声で、きっぱり言ってくれる人がないものか。
新ハムレット (新字新仮名) / 太宰治(著)