空間くうかん)” の例文
ゆっくりした田舎の時間じかん空間くうかんの中に住みれては、東京好しといえど、久恋きゅうれん住家すみかでは無い。だから皆帰りには欣々として帰って来る。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
部屋がなくて、ぽかんと空間くうかんだけがあった。見おろすと一階の部屋の畳が見える。今風呂からここに来た時、通った部屋だ。
幻化 (新字新仮名) / 梅崎春生(著)
ゆうゆう、右にかわして、さッと鉄杖にすんのびをくれて横になぐ。あな——とおもえば佐分利さぶりも一かどの強者つわもの、ぽんとんで空間くうかんをすくわせ
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
「はつ‥‥」と、田中たなかはあわてて路上ろじやう腹這はらばひになつてばした。が、はなかなかとどかなかつた。手先てさき銃身じうしんとが何度なんど空間くうかん交錯かうさくつた。
一兵卒と銃 (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
おどろくべき迅速じんそくあし空間くうかんを一直線ちよくせんに、さうしてわづか障害物しやうがいぶつであるべきこずゑすべてをしつけしつけはやしえて疾驅しつくしてるのはいまもうすぐである。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
あしのあるところは、あおあおうみの、うねりうねるなみうえになっていて、ただ黒坊主くろぼうずのように、三つのかげが、ぼんやりと空間くうかんかんでえたのであります。
黒い人と赤いそり (新字新仮名) / 小川未明(著)
たゞなかふくれた。てんなみつてちゞんだ。地球ちきういとるしたまりごとくにおほきな弧線こせんゑがいて空間くうかんうごいた。すべてがおそろしい支配しはいするゆめであつた。
(旧字旧仮名) / 夏目漱石(著)
お力士さんのように肥ったからだに、紋服のそでが似合った。泉水せんすいのまわりを歩いているのだ。いい天気だ。金いろの水のような日光が空間くうかんを占めて、空は、高く蒼い。
魔像:新版大岡政談 (新字新仮名) / 林不忘(著)
讀者どくしやこゝろみに地震計ぢしんけい原理げんり想像そう/″\してみるがよい。地上ちじよう萬物ばんぶつ地震ぢしんのときみなすのに、自分じぶんだけ空間くうかんもとてんからうごかないといふような方法ほう/\工夫くふうしなければなるまい。
地震の話 (旧字旧仮名) / 今村明恒(著)
何よりもきに眼にったのは村のはずれの河添いの空地に突立っている一つの舞台だ。ぼんやりとした遠くの方の月夜の中で、空間くうかんの諸物がほとんどハッキリ分界していなかった。
村芝居 (新字新仮名) / 魯迅(著)
だれもかれもむやみに空間くうかんをなぐりつけるばかりで、なんのたしにもならなかった。
さらつもりつゝある大粒おほつぶゆききたからなゝめ空間くうかん掻亂かきみだしてんでる。おつぎは少時しばしすくんだ。大粒おほつぶゆきげつゝちる北風きたかぜがごつとさむさをあふつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
このとき、あちらにっている電燈でんとうても、おなじような光景こうけいでありました。そして、はねしろが、周囲しゅうい空間くうかんを、ひかったちりのまかれたようにっているのでした。
公園の花と毒蛾 (新字新仮名) / 小川未明(著)
無数の人間にんげん付着ふちやくした色が、広い空間くうかんで、絶えず各自めい/\に、且つ勝手に、うごくからである。
三四郎 (新字旧仮名) / 夏目漱石(著)
さうしてあながすつかりめられてしまふと、はちしばらあなのまはりをあるきまはつてゐたが、やがてぷうんと翅音はおとてながら、黒黄斑くろきまだら弧線こせん清澄せいちようあき空間くうかんゑがきつつどこともなくつてつた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
けぶりひくのきつて、ぐる/\と空間くうかん廻轉くわいてんするやうにえつゝせはしいゆきためみちさまたげられたやうにひく彷徨さまようてく。おつぎは外側そとがはいた手桶てをけつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
毎夜まいよのように、地球ちきゅうは、うつくしく、紫色むらさきいろ空間くうかんかがやいていました。
海からきた使い (新字新仮名) / 小川未明(著)
そして、雨脚あめあしが、しろぎんせん無数むすう空間くうかんいていました。
新しい町 (新字新仮名) / 小川未明(著)