“烏賊:いか” の例文
“烏賊:いか”を含む作品の著者(上位)作品数
泉鏡花9
吉川英治5
太宰治4
久生十蘭3
海野十三3
“烏賊:いか”を含む作品のジャンル比率
社会科学 > 風俗習慣・民俗学・民族学 > 伝説・民話[昔話]8.8%
歴史 > 地理・地誌・紀行 > 日本3.4%
文学 > 日本文学 > 戯曲1.4%
(注)比率=対象の語句にふりがなが振られている作品数÷各ジャンルの合計の作品数
○胃潰瘍には刺撃性の食物を禁ず。肉漿は最も良き滋養品なり。烏賊いか章魚たこ、海老、かには総ての胃病に禁ずべし。
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
村の人達が、夜になつて、それぞれ元気に艪拍子ろびようしをあはせて、えつさ/\と沖の方に烏賊いかつりにでかけました。
小熊秀雄全集-14:童話集 (新字旧仮名) / 小熊秀雄(著)
大身の子は御目見おめみえ以下の以下をもじって「烏賊いか」と罵ると、小身の方では負けずに「章魚たこ」と云いかえす。
半七捕物帳:11 朝顔屋敷 (新字新仮名) / 岡本綺堂(著)
烏賊いか」ホテルの酒場のガラス窓越しに、話す男女の口の動きだけを見せるところは、「パリの屋根の下」の一場面を思いだす。
映画雑感(Ⅰ) (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
からすみを食はず、いはん烏賊いか黒作くろづくり(これは僕も四五日ぜんに始めて食ひしものなれども)を食はず。
田端人 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
やがて書生たちも、烏賊いかの刺身や丸ごと盆に盛ったかになどをさかなにビールを二三杯もんで、引き揚げていった。
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
烏賊いか椎茸しいたけ牛蒡ごぼう、凍り豆腐ぐらいを煮〆にしめにしておひらに盛るぐらいのもの。
夜明け前:03 第二部上 (新字新仮名) / 島崎藤村(著)
短檠たんけいの光は時折、烏賊いかのような墨を吐き、風の間に、どこかで片言かたこと初蛙はつかわずが鳴く。
宮本武蔵:03 水の巻 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
食卓には、つくだ煮と、白菜のおしんこと、烏賊いか煮附につけと、それだけである。私はただ矢鱈に褒めるのだ。
新郎 (新字新仮名) / 太宰治(著)
それとも、彼はオーストラリヤで戦車にのし烏賊いかられて絶命し、魂魄こんぱくなおもこの地球にとどまって大蜘蛛と化したのであるか。
村の一軒の小さな家の屋根が、あわびの大きな完全な介殻や、烏賊いかの甲で被われていたことを覚えている。
受験生の母親 えー、頭足類とうそくるいはたこに、いいだこに、ま烏賊いか、するめ烏賊、やり烏賊の五つ。
新学期行進曲 (新字新仮名) / 海野十三(著)
自然、語気に陰性なふくみがあった。言いすてると、すみを吐いた烏賊いかのように、道誉の駒影はもう高氏をおいて、彼方へ駈け去っていた。
私本太平記:05 世の辻の帖 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
銅製のつばからつかにかけて血痕が点々としていて、烏賊いかの甲型をした刃の部分は洗ったらしい。
聖アレキセイ寺院の惨劇 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
丁度烏賊いかが、敵を怖れて、逃げるときに厭な墨汁を吐き出すやうに、この男も出鱈目な、その場限りの、遁辞を並べながら、匇卒として帰つて行つた。
真珠夫人 (新字旧仮名) / 菊池寛(著)
内臓を切り放し、外へ引出すときに、烏賊いかの皮をむくときのように、パリパリと音がするのであった。
人体解剖を看るの記 (新字新仮名) / 海野十三(著)
ひやうに曰く證文の文字の消失きえうせしは長庵が計略により烏賊いかすみにて認めしゆゑならんか古今に其例そのためし有りとかや
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
しかし、自分の手で中天へ打ち揚げたのろしの煙が、シュルッとあおい空へ烏賊いかが墨をふいたように流れたのを、その眼は、確かに見とどけていた。
新書太閤記:03 第三分冊 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
そうすると烏賊いかの墨を吐き、ベランメーの刺物ほりものを見せ、主人が羅甸語ラテンごを弄するたぐいと同じ綱目こうもくに入るべき事項となる。
吾輩は猫である (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
近くに𬵩釣の火が見え出し、沖に烏賊いか釣りの船の冷涼すずしくきらめき出した。
蝙蝠 (新字旧仮名) / 岡本かの子(著)
ピラミッドのやうに積み上げた蜜柑を売る店、ゴム靴屋、一ぱい五円の冷凍烏賊いかを並べてゐる店、どんな路地の中にも、さうした露店市が路上にあふれてゐた。
浮雲 (新字旧仮名) / 林芙美子(著)
大抵族霊トテムたる動物を忌んで食わぬが通則だが、南洋島民中に烏賊いかを族霊としてこれを食うをしとするのもある(『大英類典』第九版トテムの条)。
「肚の黒い奴は富山の烏賊いかと、俺のうちの養子の野郎だ」と、彼は人々に吹聴して歩いた。
なおまた海岸地方においては、塩三斗、あわび十八斤、かつお三十五斤、烏賊いか三十斤、紫のり四十八斤、あらめ二百六十斤等をもって調とすることができる。
日本精神史研究 (新字新仮名) / 和辻哲郎(著)
昆布がある。烏賊いかがいる。荒布あらめなびき、大きな朱色の蟹が匍い、貝が光る。
フレップ・トリップ (新字新仮名) / 北原白秋(著)
一番年をとった教授は「老人」、四角い頭を持っている人は「立方体」、頭が禿げて、赤味がかった、羊の肋肉に似た頬髭のある英国人の教授は「烏賊いか」である。
或る映画女優は、色を白くする為に、烏賊いかのさしみを、せっせとたべているそうである。
女人訓戒 (新字新仮名) / 太宰治(著)
驚いたことには、烏賊いかの冷凍まであって、これは刺身にして食って、ちっとも変でない。
北国の春 (新字新仮名) / 中谷宇吉郎(著)
魚市の鯛、かれい烏賊いかたこを眼下に見て、薄暗いしずくに——人の影を泳がせた処は、喜見城きけんじょう出現と云ったおもむきもありますが。
菊あわせ (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
——金石かないわみなと、宮の腰の浜へ上って、北海のたこ烏賊いかはまぐりが、開帳まいりに、ここへ出て来たという、滑稽おかしな昔話がある——
瓜の涙 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
烏賊飯いかめし 秋付録 米料理百種「日本料理の部」の「第三十七 烏賊いか飯」
食道楽:冬の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
アメリカの烏賊いかの缶詰の味を、ひそひそ批評しているのと相似たる心理でした。
たずねびと (新字新仮名) / 太宰治(著)
朝干して居た烏賊いかが竹敷から歸りに見ると餘程するめの臭ひになつてゐた。對州も一寸覗いただけでもう壹州へ渡るのだ、仕方が無い。今日は雨である。(六月廿六日)
対州厳原港にて (旧字旧仮名) / 長塚節(著)
かれいあじきす烏賊いかたこ、カサゴ、アイナメ、ソイ、平目、小松魚、サバ、ボラ、メナダ、太刀魚たちうお、ベラ、イシモチ、その他所によつて
日本の釣技 (新字旧仮名) / 佐藤惣之助(著)
その捨てぜりふを烏賊いかすみとして、街中のどこへともなく逃げて行った。
新・水滸伝 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
月明の海上にチラチラといさり火のように見えだしたのも烏賊いか採り舟ではありません——、あれは関所のお船手と、早川番所につめている大久保加賀守小田原の人数です。
江戸三国志 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
倉持は空腹を感じていたので、料理と酒を註文ちゅうもんし、今母のいた部屋で、気仙沼けせんぬま烏賊いかの刺身でみはじめ、銀子も怏々くさくさするので呑んだ。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
しかもあとからあとから目の前にひろがってくる不安の常闇はまるでとこしなへの日蝕皆既のよう絶えずいや増してゆくばかりだった、まるで烏賊いかの吹きいだすあの墨のように。
小説 円朝 (新字新仮名) / 正岡容(著)
そういうと一しょにかれはちろりを取って猪口のなかをみたした。そうしていそがしくそれを口へ運んだ。——と、そのとき烏賊いかの墨のようなものが急に身うちにひろがった……
春泥 (新字新仮名) / 久保田万太郎(著)
お神が窓からほうりこんでくれたお菓子を妹たちにけ、自分ははなづけの気仙沼の烏賊いかをさいて、父と茶漬を食べている銀子に、母が訊くのであった。
縮図 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
泣いてばかりいますから、気の荒いお船頭が、こんな泣虫を買うほどなら、伊良子崎の海鼠なまこ蒲団ふとんで、弥島やしま烏賊いかを遊ぶって、どの船からも投出される。
歌行灯 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
烏賊いか釣ると海の真底まそこのいと暗きものの動きを凝視みつめ我居り
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
卯吉爺はそう言いながら、酒のさかな烏賊いかの塩辛を運んできた。
恐怖城 (新字新仮名) / 佐左木俊郎(著)
と言つて、平気でかますや烏賊いかなままゝで頬張つてゐた。
「こんな新しい海老えびよ、烏賊いかのお刺身も頼んで来たのよ。」
仮装人物 (新字新仮名) / 徳田秋声(著)
変心の暁はこれが口をききて必ず取立とりたてらるべしと汚き小判こばんかせに約束をかためけると、或書あるしょに見えしが、これ烏賊いかの墨で文字書き
風流仏 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
泣いて烏賊いかつる、その舟の火の、やゝありて、イルミネエシヨン。
畑の祭 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
丁度烏賊いかが、敵をおそれて、逃げるときに厭な墨汁を吐き出すように、この男も出鱈目でたらめな、その場限りの、遁辞とんじを並べながら、怱卒そうそつとして帰って行った。
真珠夫人 (新字新仮名) / 菊池寛(著)
中には烏賊いかのように黒い墨をくのもまじっていた。
彼岸過迄 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ほら、腐りかけた、烏賊いかを台所の暗闇に置いてごらんなさい。
はてしなき海の真中に舟をうけ泣くに泣かれずわれは烏賊いか釣る
雲母集 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
辻には——ふかし芋も売るから、その湯気と、烏賊いかを丸焼に醤油したじ芬々ぷんぷんとした香を立てるのと、二条ふたすじの煙が濃淡あいもつれて雨になびく中を抜けて来た。
卵塔場の天女 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
かくて、子供は、烏賊いかというものを生れて始めて喰べた。
(新字新仮名) / 岡本かの子(著)
酒と干し烏賊いかとを朱塗のぜんにのせて運んで来た。
石狩川 (新字新仮名) / 本庄陸男(著)
我々に大きな国家の料理が出来んとならば、この水産学校へ這入はいつて松魚かつおを切つたり、烏賊いかを乾したり網を結んだりして斯様かような校長の下に教育せられたら楽しい事であらう。
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
インド人サラグラマを尊んで韋紐ヴィシュニュの化身とし蛇また前陰の相とす、これは漢名石蛇で、実は烏賊いか航魚たこぶねとともに頭足軟体動物ケファロポタたるアンモナイツの多種の化石で
烏賊いか 七八・九一 一九・一二 〇・五六 一・四一
食道楽:春の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
やっぱり、また、烏賊いかと目刺を買うより他は無い。
十二月八日 (新字新仮名) / 太宰治(著)
前年予田辺の一旅館で山の神がオコゼ魚に惚れ、かわうそなかだちとして文通するを、かねてかの魚を慕いいた蛸入道たこにゅうどう安からず思い、烏賊いかえびを率いて襲い奪わんとし
烏賊いかがあるなら、烏賊をもらおうか」
水魔 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
烏賊いかはゑびすの国のうらかた 重五
俳句への道 (新字新仮名) / 高浜虚子(著)
関東煮屋をやると聴いて種吉は、「海老えびでも烏賊いかでも天婦羅ならわいに任しとくなはれ」と手伝いの意をもうでたが、柳吉は、「小鉢物はやりまっけど、天婦羅は出しまへん」と体裁よく断った。
夫婦善哉 (新字新仮名) / 織田作之助(著)
胡瓜きうり烏賊いかのもの。
城崎を憶ふ (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
海の色の乗り越えて来るような迅さで、かれい烏賊いか、えい、ほっけを入れた笊籠はどこの家の板の間にも転がり、白菜の見事な葉脈の高く積っているあたりから、刈上げ餅を搗く杵音がぼたん、ぼたん、と聞える。
烏賊いかつり船の灯が見え始めた。
みちのく (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
五角、扇形おうぎがた軍配ぐんばい与勘平よかんぺい印絆纒しるしばんてんさかずき蝙蝠こうもりたことんび烏賊いかやっこ福助ふくすけ瓢箪ひょうたん、切抜き……。
顎十郎捕物帳:07 紙凧 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
歯が抜けて筍堅く烏賊いかこはし
病牀六尺 (新字旧仮名) / 正岡子規(著)
るい 烏賊いかでございますよ。
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
章魚たこ烏賊いかとの研究
話の種 (新字新仮名) / 寺田寅彦(著)
男 あゝ、烏賊いかか。
(新字旧仮名) / 岸田国士(著)
「呑もうぜ。料理もいつものようにな。きのうのようにまた烏賊いかのさしみなんぞを持って来たら、きょうは癇癪かんしゃくを起すぞ、あまくて、べたべたと歯について、あんなもの、長州人の喰うもんじゃ。おやじによく言ってやれ」
山県有朋の靴 (新字新仮名) / 佐々木味津三(著)
烏賊いかでも構わぬ。
開扉一妖帖 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
あるいは部屋の中から初島はつしまを眺めてぼんやりしていたり、あるいは烏賊いかばかり食わされて下痢を起こしたり、ときには沢山の石の階段を登って伊豆山神社に参拝したり、またときには熱海あたみまで、月のいい夜道を歩いたりして
メデューサの首 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
××楼のあの座敷は、三度情死のあった場所だろうか、壁を塗り代えても畳をとりかえても、すぐ血痕が附着するとか、線路上に飛散した男女の肉片が、夜来の豪雨に洗い曝された、烏賊いかの甲のようにキレイだったとか——色々のことを私は聴いた。
佐渡島では特に烏賊いかの塩辛だけをキリゴメというそうだが、これは塩とこうじと烏賊のわたとを合せたものへ、生烏賊を小さく刻んで入れ、瓶の中で醗酵させたものというから今の普通の製法とはちがい、よほど黒作りと呼んでいるものに近い。
食料名彙 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
島々の清水屋では、それしゃのあがりらしい女房が、昨日からお待ち申していたの、案内者を用意して置いたのが、ムダになったが、未だ足留めをしているのと、よくひとりでしゃべくる、二階に上って、烏賊いかに大根おろしをかけたのを肴に、茶のいきおいで
谷より峰へ峰より谷へ (新字新仮名) / 小島烏水(著)
第三十七 烏賊いか飯 と申すのは烏賊の袋へお米を詰めて煮たもので最初に烏賊の袋だけ取って中をよく洗ってお米を加減かげんに詰めて口を木綿糸もめんいといますがお米が中でふくれますからその詰め加減が工合ぐあいものです。
食道楽:秋の巻 (新字新仮名) / 村井弦斎(著)
明鯛すけそうからたら、鱈からにしん、鰊から烏賊いかというように、四季絶える事のないいそがしい漁撈ぎょろうの仕事にたずさわりながら、君は一年じゅうかの北海の荒波や激しい気候と戦って、さびしい漁夫の生活に没頭しなければならなかった。
生まれいずる悩み (新字新仮名) / 有島武郎(著)
晩飯の烏賊いかえびは結構だったし、赤蜻蛉あかとんぼに海の夕霧で、景色もよかったが、もう時節で、しんしんと夜の寒さが身にみる。あすこいら一帯に、袖のない夜具だから、四布よのの綿の厚いのがごつごつおもたくって、肩がぞくぞくする。
古狢 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
それは水上トン数約四百噸ばかりの沿岸艇で、オレンジ色に染め変えられた美しい船体は、なにか彩色でもした烏賊いかの甲のように見えたが、潜望鏡と司令塔以外のものはいっさい取り払われて、船首に近い三インチ大仰角速射砲の跡には、小さな艙蓋ハッチが一つ作られていた。
潜航艇「鷹の城」 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)
「まあ、えらい云われ方。———けど、語学の稽古だけやあれしませんね。料理の仕方やら、お菓子の焼き方やら、毛糸の編み方やら、日本語使うてる時かていろいろせて貰うてますねん。あんさんこの間あの烏賊いかの料理たいそう気に入って、もっと外にも教せて貰え云うてはったやおませんか」
細雪:01 上巻 (新字新仮名) / 谷崎潤一郎(著)
またこれだけも一仕事で、口でくわえても藤色縮緬ちりめんを吹返すから、おとがいへ手繰って引結うのに、しなった片手は二の腕まで真白まっしろ露呈あらわで、あこがるる章魚たこ太刀魚たちのうお烏賊いかたぐいが吹雪の浪を泳ぎ寄りそうで、危っかしい趣さえ見えた。
薄紅梅 (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
「そりゃ魚にはあるだろうけれど——例えば烏賊いかなどはその通りだが、眼の縁だけに燐光を放すそんな獣ってあるものだろうか——それはそれとしてもう一つこの新聞記事で見るとどうやら奇怪な動物なるものは、二匹いるように思われるね」ダンチョンはレザールの顔を見ていぶかしそうに云ったものである。
沙漠の古都 (新字新仮名) / 国枝史郎(著)
莞爾くわんじとしてきながら、よし/\それもよし、蒲鉾かまぼこ旅店はたごや口取くちとりでお知己ちかづき烏賊いか鹽辛しほから節季せつきをかけて漬物屋つけものやのびらでとほり外郎うゐらう小本こほん物語ものがたり懇意こんいなるべし。
城の石垣 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
いつも通る横丁があって、そこには朝鮮の人たちの食べる豆もやし棒鱈類をあきなう店だの、軒の上に猿がつながれている乾物屋だの、近頃になって何処かの工場の配給食のお惣菜を請負ったらしく、見るもおそろしいような烏賊いかを賑やかに家内じゅう総がかりで揚げものにしている蒲焼の看板をかけた店だのというものが
今日の耳目 (新字新仮名) / 宮本百合子(著)
「……最初は、まずお吸物だが、こいつは鯛のそぼろ椀ということにいきましょう。皮を引いたらあまり微塵みじんにせずに、葛もごくうすくねがいます。さて、……ちょうど、わらさの季節だから、削切けずりきりにして、前盛まえもりには針魚さより博多はかたづくりか烏賊いか霜降しもふり。つまみは花おろしでも……」
顎十郎捕物帳:16 菊香水 (新字新仮名) / 久生十蘭(著)
「それでは支倉君、硬度の高い割合に、血液のような弱性のアルカリにも溶けるものを、君は幾つ数える事が出来るね。例えば、烏賊いかの甲のような、有機石灰質を主材に作ったとしたら、その鉤は血中で消えてしまって、脱け出した時には、それが繍仏ぬいぶつの硬い指尖に化けてしまうだろう。然し、その変化の中に、驚くべき吸血具が隠されていたのだ」そうして
夢殿殺人事件 (新字新仮名) / 小栗虫太郎(著)