かく)” の例文
かくの如く叙し来ったとて、文海の蜃楼しんろう、もとより虚実を問うべきではないが、保胤は日々斯様こういう人々と遇っているというのである。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
いまかならずしも(六四)其身そのみこれもらさざるも、しかも((説者ノ))((適〻))かくところことおよばんに、かくごとものあやふし。
劇藥のかくの如くなるは果して談理に似たるか。われは逍遙子が我を以て共に醫道を語るに足るものとなすや、あらずやを知らず。
柵草紙の山房論文 (旧字旧仮名) / 森鴎外(著)
或は利得の故に教会に結び、或は逆遇に苦しみて教理に帰依きえす、かくの如きは今日の教会にめづらしからぬ実状なり。
各人心宮内の秘宮 (新字旧仮名) / 北村透谷(著)
輿丁よてい相語テ曰ク初秋大風雨ノやぶル所トナリ、ソノ熟セザルコトかくノ如シ。二岩三陸ニ連ツテ皆しかリ。就中なかんずく南部若松更ニ甚シトナスト。余コレヲ聞キ心ひそかニ憂フ。
下谷叢話 (新字新仮名) / 永井荷風(著)
日本民族が現代においてかくごとく生活し是の如く活動しているのは、そこに精神がはたらいているからである。生活のあるところ精神があり、精神のない生活はない。
日本精神について (新字新仮名) / 津田左右吉(著)
娘子じょうし久しく待つ、何ぞ一向いっこう薄情かくごとくなる」と、云って遂に喬生ととも西廊せいろうへ入って暗室の中へ往くと、の女が坐っていて喬生をせめ、その手を握って柩の前へ往くと
牡丹灯籠 牡丹灯記 (新字新仮名) / 田中貢太郎(著)
銀明水に達したるは午後七時になんなんとす、浅間社前の大石室に泊す、客は余を併せて四組七人、乾魚ほしうを一枚、の味噌汁一杯、天保銭大の沢庵たくあん二切、晩餐ばんさんべてはかくの如きのみ
霧の不二、月の不二 (新字旧仮名) / 小島烏水(著)
殊に詩人たらんものは、庭の花をも茨の實をも知り、天上の灝氣かうきにも下界の毒霧にもはうつ鳥をたくはへではかなはずといふ。我。かくの如く詩人を觀んは、卑きに過ぐるには非ずや。友。
膏血かうけつ淋漓りんりたり。下に承くるに盆を以てす。盆満つれば即ち巨桶中に挹注いふちうす。かくの如きもの十余次。巨桶すなはち満つ。数人之を扛して出づ。官文書を判して一吏に付し、ともに同じく出づ。
鴉片 (新字旧仮名) / 芥川竜之介(著)
これは方便にして、名誉の価はほど大ならずともいふべけれど、名誉よりかくの如く観じ候如くに道の上より是の如く観ずるときはおのれのす事が一々愉快に、一々大切なるべく候。
鴎外の思い出 (新字新仮名) / 小金井喜美子(著)
〔譯〕いきどほりを發して食をわする、志氣しきかくの如し。たのしんで以てうれひを忘る、心體しんたい是の如し。らうの將に至らんとするを知らず、めいを知り天を樂しむものかくの如し。聖人は人と同じからず、又人とことならず。
かくの如き業の火、熾然しねんとしてまず
般若心経講義 (新字新仮名) / 高神覚昇(著)
かくの如き人は主人としてはおそろしくもあれば頼もしくもある人で、敵としては所謂いわゆる手強てごわい敵、味方としては堅城鉄壁のようなものである。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
其他此春少壮官医中に蘭軒の規箴きしんを受けたものがあるらしい。わたくしは「戯呈山本莱園小島尚古二公子」の詩を読んでかくの如くに解する。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
... ぐる所以ゆゑんかくごと而已のみ』と。孔子こうしつて弟子ていしつていはく、『とりわれぶをり、うをわれおよぐをり、けものわれはしるをる。 ...
目は此の如し、鼻は此の如しと云はんも、到底これにりて其眞相を想像するに由なからん。だ君の識る所の某に似たりと云ふに至りて、僅にこれを彷彿すべきのみ。山水を談ずるも亦復かくの如し。
かくの如き者はたん。心學も亦こゝに外ならず。
南軍と北軍と、軍情おのずから異なることかくの如し。一は人えきくをくるしみ、一は人ようすをたのしむ。彼此ひしの差、勝敗に影響せずんばあらず。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わたくしは安政二年に抽斎がかいを時事にるるに至ったのを見て、かくの如き観をなすのである。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
(六六)周澤しうたくいまあつからざるに、しか(六七)きはめてなれば、せつおこなはれてこうるときはすなは(六八)とくく、せつおこなはれずしてはいるときはすなはうたがはれん、かくごとものあやふし。
時時かくの如くば心便すなははなたず。
かつて曰く、西北の辺務は、一にもっけいゆだぬと。其の材武称許せらるゝかくの如し。タメルランのきたらんとするや、帝また別におそるゝところあり。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かくの如くに物を観るまなこは、今もなお教育家等の間に、前代の遺物として伝えられている。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
「ナニ。いや、不承知と申さるる筈はござるまい。と存じてこそかくの如く物を申したれ。真実まこと、たって御不承知か。」
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
抽斎の著述はおおむかくの如きに過ぎない。
渋江抽斎 (新字新仮名) / 森鴎外(著)
実際にかくの如き公私の中間者の発生は、栄え行こうとする大きな活気ある町には必要から生じたものであって、しかも猫の眼の様にかわる領主の奉行
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
わたくしは読んでかくの如くに解する。
伊沢蘭軒 (新字旧仮名) / 森鴎外(著)
氏郷はかくの如く厳しい男だったが、他の一面には又人を遇するにズバリとした気持の好いところも有った人だった。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
斉黄の輩の為さんとするところかくの如くなれば、燕王等手を袖にし息をしりぞくるもまた削奪罪責をまぬかれざらんとす。
運命 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
信長の事だから、かくの如き挨拶で扱われては大むくれにむくれて、「九条殿はおれに礼をいわせに来られた」と腹を立って、ぶつついたということである。
魔法修行者 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
其信雄がかくの如くにされたのは氏郷に取って好い心持はせず、秀吉の心の冷たさを感じたことであろう。
蒲生氏郷 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
東京の水を説かんとして先づ隅田川を説くは、例へばなほ水経すいけいの百川を説かんとして先づ黄河を説くが如し、説述の次第おのづからかくの如くならざるを得ざるのみ。
水の東京 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
つまり政敵にたたき落されて死地に置かれたのである。謂はかくの如きの人なのである。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
此中プチアリンは消化作用の一助をなすに止まり、ムチンは蓋し外物の強烈の刺激を緩和する為に存せりと覚しく、味を解きて人に伝ふるものは、実に水の力なり。体内の水の用かくの如し。
(新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
遊びではないように高飛車に出た少年のその無智無思慮を自省せぬ点を憫笑びんしょうせざるを得ぬ心が起ると、殆どまた同時に引続いてこの少年をしてかくの如き語を突嗟とっさに発するに至らしめたのは
蘆声 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
この山かくの如く栄ゆるは、ここの御神の御使いの御狗というを四方の人々の参り来て乞い求むるによれり。御神は伊奘諾伊奘冊二柱の神にましませば申すもかしこし、御狗とは狼をさしていう。
知々夫紀行 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
知礼は問書を得て一閲して嘆賞し、東方にかくの如き深解じんげの人あるか、と感じた。そこで答釈を作ることになった。これより先に永観元年、東大寺の僧奝然ちょうねん入宋にっそう渡天のがんを立てて彼地かのちへ到った。
連環記 (新字新仮名) / 幸田露伴(著)
かくの如き才を草莱さうらいに埋めて置かないで、下総守になり鎮守府ちんじゆふ将軍になりして其父の後をがせ、朝廷の為に用を為させた方が、才に任じ能を挙ぐる所以ゆゑんの道である、それで或は将門をすゝむる者もあり
平将門 (新字旧仮名) / 幸田露伴(著)
親子の情、かくの如く、真実心を以て相願いまする。
雪たたき (新字新仮名) / 幸田露伴(著)