敷石しきいし)” の例文
粘土のかめが頭から落ちて、みぞれている大理石の敷石しきいしの上で二つにくだけてしまいました。少女はわっと泣きだしました。
そのうちに、くぐりもんひらくと、ぼろぐつを、玄関口げんかんぐち敷石しきいしっかけるようにして、きずりながら、勝手かってほうへまわったおとがしました。
金歯 (新字新仮名) / 小川未明(著)
小人は左手に持っていたものを敷石しきいしの上におきましたが、右手のものはそのまま持って、かごのほうへよじのぼりました。
要吉は、すがすがしい気持で、それらをながめながら、店さきの敷石しきいしの上を、きれいにはききよめるのでした。
水菓子屋の要吉 (新字新仮名) / 木内高音(著)
「此方は町が何処も敷石しきいしになっているから歩き宜いわね。これでは雨が降っても足駄は要りますまい」
ぐうたら道中記 (新字新仮名) / 佐々木邦(著)
おちたるもおちたるもした敷石しきいし模樣もやうがへのところありて、ほりおこしてみたてたる切角きりかど頭腦づのうしたゝかちつけたれば甲斐かひなし、あはれ四十二の前厄まへやく人々ひと/″\のちおそろしがりぬ
大つごもり (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
かの女は駒下駄こまげたをひっくり返えした。町会で敷いた道路の敷石しきいしが、一つは角を土からにょっきりと立て、一つは反対にのめり込ませ、でこぼこな醜態しゅうたいかわっているのだ。
かの女の朝 (新字新仮名) / 岡本かの子(著)
へとへとになった馬のからだからも、あついきをはく馬のはなからも、こおった湯気ゆげがふうふうたっている。かさかさした雪をふみしだく蹄鉄ていてつが、敷石しきいしにあたってりわたる。
境内けいだい敷石しきいしうへきつもどりつ、べつにお百度ひやくどるは男女なんによ二人ふたりなり。をんな年紀とし四十ばかり。
弥次行 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こわいと思えば怖いのだろう。が、彼は、もう怖いなんていうことは考えない。シャツ一枚で、赤い敷石しきいしの上を、なるたけ冷たくないようにかかとだけで歩くことも忘れている。
にんじん (新字新仮名) / ジュール・ルナール(著)
夫婦ふうふにてあらおとさんと成しゝをり捕手の者まかこし召捕めしとりしと申ぞこれ天命てんめいのがれざる所なり之にても未だちんずるやと威猛高ゐたけだかになつて申けるに傳吉は恐れながらすそならびに敷石しきいしに血のつきたるを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
すぐ目の前の小石が瓦のかけらが一方へ走りだしたと思ったら、敷石しきいしのゆかがかたむき出してその上から地下道へつづいている階段が見えだしたのだ。さあその階段を下りて地面の下へ入って行くのだ。
海底都市 (新字新仮名) / 海野十三(著)
家のまわりの敷石しきいしの上には、香水がまいてありました。
敷石しきいしの闇にはひとり
邪宗門 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
敷石しきいしの上にコツコツという足音が聞こえました。見れば、チビの小人が、またまたもどってきたのです。こんども両方の手に何かを持っています。
また一つのまどからは、うすい桃色ももいろ光線こうせんがもれて、みちちて敷石しきいしうえいろどっていました。よい音色ねいろは、このいえなかからこえてきたのであります。
青い時計台 (新字新仮名) / 小川未明(著)
兵隊は、片足をまっすぐに空にむけ、軍帽と銃剣を下にしたまま、敷石しきいしのあいだにはさまってしまいました。
そのときれたような真黒な暗夜やみよだったから、そので松の葉もすらすらと透通すきとおるように青く見えたが、いまは、あたかも曇った一面の銀泥ぎんでいに描いた墨絵のようだと、じっと見ながら、敷石しきいしんだが
星あかり (新字新仮名) / 泉鏡花(著)
のこすべき此段は憑司がうつたへの通りなり何故に汝が衣類に血のつきたるやとなじれば傳吉は私し昨夜さくや畑村はたむらより日暮ひぐれて歸る時河原にてものつまづ不審ふしんに存じ候が定めて酒によひし人のて居ることゝ存じとがめられては面倒めんだうわきよつて通りぬけしがしんやみゆゑ死人とは一かう存じ申さず今朝衣類いるゐならびに庭の敷石しきいし等へ血のつきりしを
大岡政談 (旧字旧仮名) / 作者不詳(著)
ちょうどあきすえのことで、翌朝よくちょう歯医者はいしゃへいくとき、てらまえとおって、黄色きいろな、いちょうのがたくさん敷石しきいしうえにたまっているのをました。
金歯 (新字新仮名) / 小川未明(著)
そうすれば、きみはまるでおとぎの都市に来たのかと思うでしょう。広い敷石しきいしのあいだには草がえています。
ときれたやうな眞黒まつくろ暗夜やみよだつたから、まつもすら/\と透通すきとほるやうにあをえたが、いまは、あたかくもつた一面いちめん銀泥ぎんでいゑがいた墨繪すみゑのやうだと、ぢつながら、敷石しきいしんだが
星あかり (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
よくとりかごをかけた、戸口とぐちはしら小刀こがたなけずあともそのままであります。あめには、土間どま独楽こまをまわした。そして、よく、かちてた敷石しきいしもちゃんとしていました。
山へ帰りゆく父 (新字新仮名) / 小川未明(著)
平たい敷石しきいしをしいた屋根の上に——そこの欄干らんかん瀬戸物せとものでできているように見えます——白い大きな風鈴草ふうりんそうをさした、きれいな花瓶かびんが置いてありましたが、そのそばに美しいペーが
敷石しきいしうえかわいているが、つちうえをふむとあしあとがつきました。
日の当たる門 (新字新仮名) / 小川未明(著)