ふたた)” の例文
そなたはしきりに先刻さっきから現世げんせことおもして、悲嘆ひたんなみだにくれているが、何事なにごとがありてもふたた現世げんせもどることだけはかなわぬのじゃ。
やせまつろうふたた春重はるしげかおもどったとき春重はるしげはおもむろに、ふところから何物なにものかを取出とりだしてまつろうはなさきにひけらかした。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
そしてまたふたたあがってましたが、いまはもう、さっきのとり不思議ふしぎ気持きもちにすっかりとらわれて、われわすれるくらいです。
と。すですること(二九)はいをはりて、(三〇)田忌でんきひとたびたずしてふたたつ。つひわうの千きんたり。ここおい孫子そんし威王ゐわうすすむ。
しかしてふたたび白の独天下になった。可愛かあいがられて、大食して、弱虫の白はます/\弱く、どんの性質はいよ/\鈍になった。よく寝惚ねぼけて主人しゅじんに吠えた。
みみずのたはこと (新字新仮名) / 徳冨健次郎徳冨蘆花(著)
ふたたび起こる喝采かっさいの声! かくてM大尉エムたいいは第一等の栄冠えいかんて、予定通りわが日本のために万丈ばんじょう気炎きえんをはきました。
国際射的大競技 (新字新仮名) / 小酒井不木(著)
と思うか思わない内に、妻は竹の落葉の上へ、ただ一蹴りに蹴倒けたおされた、(ふたたび迸るごとき嘲笑)盗人は静かに両腕を組むと、おれの姿へ眼をやった。
藪の中 (新字新仮名) / 芥川竜之介(著)
第四十条 両議院ハ法律又ハノ他ノ事件ニつき各々おのおのノ意見ヲ政府ニ建議スルコトヲ採納さいのうヲ得サルモノハ同会期中ニおいふたたヒ建議スルコトヲ得ス
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
ふたたび家を東京にうつすに及び、先生ただちにまげられ、いわるるよう、鄙意ひい、君が何事か不慮ふりょさいあらん時には、一臂いっぴの力を出し扶助ふじょせんと思いりしが
私が初めて山陽の詩を読みましたのは、親爺からもらったこの本でした(本を手に持って)。でこの夏期学校にくるついでに、その山陽の本をふたたび持ってきました。
後世への最大遺物 (新字新仮名) / 内村鑑三(著)
そしてすぐに兎上王うがみのみこをまたふたた出雲いずもへおくだしになって、大神のおやしろをりっぱにご造営ぞうえいになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
けれども、晩にはまた出て来るかも知れないと思って、月が出るのを待ってふたたび行ってみました。
狸のお祭り (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
そして、なほも警戒けいかいするやうにねんれるやうにあなのまはりをあるきまはつてゐたが、やがてひよいとあがると、蜘蛛くも死骸しがいをくはへてふたたあなところひもどつてた。
画家とセリセリス (旧字旧仮名) / 南部修太郎(著)
数日の食糧をたづさへてるも中途に餓死がしせんのみ、ふ今夜此地に露宿ろしゆくし、明朝出立二日間位の食糧をたづさへて水源探究たんきうおもむき、而してふたたび当地に帰らんのみと、人夫等異口同音かたく此説を
利根水源探検紀行 (新字旧仮名) / 渡辺千吉郎(著)
ぐっとばしたまつろう手先てさきへ、春重はるしげ仰々ぎょうぎょうしく糠袋ぬかぶくろ突出つきだしたが、さてしばらくすると、ふたたっておのがひたいてた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
思召おぼしめしはまことに有難ありがとうございまするが、一たん三浦家みうらけとつぎましたであれば、ふたたびこのはなれたくはおもいませぬ。
第三十九条 両議院ノいつおいテ否決シタル法律案ハ同会期中ニおいふたたヒ提出ストコトヲ得ス
大日本帝国憲法 (旧字旧仮名) / 日本国(著)
と、あの美夜受媛みやずひめのおうちにおいていらしった宝剣ほうけんも、とうとうふたたび手にとることもできないかとお歌いになり、そのお歌の終わるのとともに、この世をお去りになりました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
甚兵衛はもうたいへん金をもうけていましたし、こわれた人形を見ると、ふたたび人形を使う気にもなりませんでした。さるみやこ見物けんぶつしましたし、そろそろもとの山にもどりたくなってるおりでした。
人形使い (新字新仮名) / 豊島与志雄(著)
松江しょうこうはそういいながら、きゃしゃな身体からだをひねって、おどりのようなかたちをしながら、ふたたかがみのおもてにびかけた。
おせん (新字新仮名) / 邦枝完二(著)
で、わたくしどもにむかって身上噺みのうえばなしをせいとッしゃるのは、わばかろうじてなおりかけたこころ古疵ふるきずふたたえぐすような、随分ずいぶんむごたらしい仕打しうちなのでございます。
そして、宿禰すくねふたたびお祭場にすわって、改めて神さまのお告げをお祈り申しました。
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)