一粒ひとつぶ)” の例文
ポポーヷ (伏眼になって)ルカー、おまえ馬舎うまやへ行ってね、今日はトビーにカラス麦を一粒ひとつぶもやらないように、言って来ておくれ。
自分じぶん真心まごころがいつか、にいさんにわかるときがあろう。」と、おとうとは、一粒ひとつぶのしいの裏庭うらにわめて、どこへとなくりました。
白すみれとしいの木 (新字新仮名) / 小川未明(著)
しかも、その武田の血をうけたものは、世の中にこの伊那丸いなまるひとりきりとなったのだ。焦土のあとに、たった一粒ひとつぶのこった胚子たねである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
みんなはまるで気が気でなく、一生けん命、その辺をかけまわりましたが、どこにも粟は、一粒ひとつぶもこぼれていませんでした。
狼森と笊森、盗森 (新字新仮名) / 宮沢賢治(著)
最も普通の形は畠の片端かたはしに、または家の土間どまの隅に、小さな鼠の穴があって、爺が誤って一粒ひとつぶ団子だんごを、その穴へ転がし落してしまうのである。
海上の道 (新字新仮名) / 柳田国男(著)
君は、一粒ひとつぶの種をまく、という言葉を知っているだろう。ほんとうの仕事はその一粒からはじまるものなんだよ。
次郎物語:05 第五部 (新字新仮名) / 下村湖人(著)
うちもの一粒ひとつぶでもらさねえやうにほかつてりやえゝんだんべが、れえそれから、れことさうだになんだら自分じぶん何處どこさでもけつかつたはうがえゝ
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
大国主神は、そのむくの実を一粒ひとつぶずつかみくだき、赤土を少しずつかみとかしては、いっしょにぷいぷいおき出しになりました。大神はそれをご覧になると
古事記物語 (新字新仮名) / 鈴木三重吉(著)
そうしてそのじれ狂うた性慾の変態的習性と、その形容を絶した痛烈な記憶とを、その全身の細胞の一粒ひとつぶ一粒ごとに、張り裂けるほど充実感銘させていた事と思う
ドグラ・マグラ (新字新仮名) / 夢野久作(著)
ちょうど乾涸ひからびたほしいのようなもので一粒ひとつぶ一粒に孤立しているのだから根ッから面白くないでしょう。
道楽と職業 (新字新仮名) / 夏目漱石(著)
ひとつにでつちて、葡萄ぶだうふさ一粒ひとつぶづゝくちはないたやうで、手足てあしすぢ凌霄花のうぜんあざむく。
祭のこと (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
當主たうしゆ養子やうしにて此娘これこそはいへにつきての一粒ひとつぶものなれば父母ちゝはゝなげきおもひやるべし、やまひにふしたるはさくらさくはるころよりとくに、それより晝夜ちうやまぶたあはするもなき心配しんぱいつかれて
うつせみ (旧字旧仮名) / 樋口一葉(著)
カピ長 いや、はやるものははやくづるゝ。すゑたのみをみなからし、たゞ一粒ひとつぶだけのこった種子たね此土このよたのもしいは彼兒あればかりでござる。さりながら、パリスどの、言寄いひよってむすめこゝろをばうごかしめされ。
冷たく、小さき芥子のたね、その一粒ひとつぶに心せよ
緑の種子 (新字旧仮名) / 北原白秋(著)
一粒ひとつぶ芥種からしだねのごとし。」と答えたら
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
このとき、勇吉ゆうきちは、一粒ひとつぶのぴかぴかひかる、ちいさなたまして、これをどうか先生せんせいせておねがいもうしてくれとたのみました。
一粒の真珠 (新字新仮名) / 小川未明(著)
それらのあわれな物のかげをつづった竹童のすがたは、星影ほしかげの下にあおくくまどられて見えたが、かれの目には、ただ一粒ひとつぶの春の星さえ、うつらぬのである。
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
兩名りやうめい炭燒すみやきが、同一おなじ雪籠ゆきごめつてふうめられたやうになり、二日ふつか三日みつか貯蓄たくはへもあつたが、四日目よつかめから、あは一粒ひとつぶくちにしないで、くまごと荒漢等あらをのこら山狗やまいぬかとばかりおとろへ、ひからせて
雪の翼 (旧字旧仮名) / 泉鏡花(著)
こめでもなんでも一粒ひとつぶもとれやしねえのよ」おつたはぽさりとしたやうにいつた。
(旧字旧仮名) / 長塚節(著)
一粒ひとつぶ芥種からしだねになるか、樹になるか。
正義と微笑 (新字新仮名) / 太宰治(著)
あるおとうと咽喉のどがかわいて、みずしがったときに、まだ、そのときまでたしかだったあには、みずなか一粒ひとつぶ名薬めいやくれておとうとませようとしました。
村の兄弟 (新字新仮名) / 小川未明(著)
大手おおてへかけもどった又八は、すぐ、城兵のなかでも一粒ひとつぶよりの猛者もさ久能見くのみ藤次とうじ岩田郷祐範いわたごうゆうはん浪切右源太なみきりうげんた鬼面突骨斎おにめんとっこつさい荒木田五兵衛あらきだごへえ、そのほか穴山あなやま残党ざんとう足助主水正あすけもんどのしょう
神州天馬侠 (新字新仮名) / 吉川英治(著)
……昨夜ゆうべ戸外おもて舞靜まひしづめた、それらしい、銀杏いてふえだが、大屋根おほやねしたが、一坪ひとつぼばかりのにはに、瑠璃るりあはいて、もうちひさくなつた朝顏あさがほいろすがるやうに、たわゝにかゝつたなかに、一粒ひとつぶ
十六夜 (旧字旧仮名) / 泉鏡花泉鏡太郎(著)
また、しょうちゃんの銀杏ぎんなんは、自分じぶんからちたのをひろって、いいのだけをえらんだもので、たとえおはじきを五でも、一粒ひとつぶ銀杏ぎんなんとはえがたいとうといものでありました。
友だちどうし (新字新仮名) / 小川未明(著)
そのなかから一粒ひとつぶたまいて、少年しょうねんわたしたのであります。
一粒の真珠 (新字新仮名) / 小川未明(著)