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酩酊
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めいてい
ふりがな文庫
“
酩酊
(
めいてい
)” の例文
その夜私は、相憎他に会合があつたのでその方へ廻つたところ、不覚にも少々
酩酊
(
めいてい
)
したため、狐の竹包をどこかへ紛失してしまつた。
たぬき汁
(新字旧仮名)
/
佐藤垢石
(著)
と其の場を
外
(
はず
)
して次の間へ
退
(
さが
)
り、胸に
企
(
たく
)
みある蟠龍軒は、近習の者に
連
(
しき
)
りと酒を
侑
(
すゝ
)
めますので、
何
(
いず
)
れも
酩酊
(
めいてい
)
して居眠りをして居ります。
後の業平文治
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
映画や小説の芸術に酔うて盗賊や放火をする少年もあれば、外来哲学思想に
酩酊
(
めいてい
)
して世を騒がせ生命を捨てるものも少なくない。
コーヒー哲学序説
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
「いや。病院に入ってから、毎日服んだ。治療のために服まされたんだ。毎日のことだから、だんだん
蓄積
(
ちくせき
)
して、
酩酊
(
めいてい
)
状態になるんだね」
幻化
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
酩酊
(
めいてい
)
の様子でもあるが、舌なめずりしながら、座の左右ばかりでなく、向う側の人々へも、しきりに呼びかけていうのであった。
黒田如水
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
▼ もっと見る
酩酊
(
めいてい
)
を通り越してるグランテールは、ミューザン
珈琲
(
コーヒー
)
店の奥室の
一隅
(
いちぐう
)
で、通りかかった皿洗いの女を捕えて、そんなふうにしゃべり散らした。
レ・ミゼラブル:06 第三部 マリユス
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
第五は、心性、思想の激動して感覚を失する事情にして、例えば火事のとき、また
酩酊
(
めいてい
)
のときは、自らなにをなしたるかを識覚せざるの類をいう。
妖怪玄談
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
けれどその
頬
(
ほお
)
打ちを防ぐためにはいつでも
肱
(
ひじ
)
を上げるだけの覚悟があった。彼にはこの老人が
恐
(
こわ
)
かった。ことに老人が
酩酊
(
めいてい
)
してるときは恐かった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
「金博士は、本日午前十時、セバスチァン料理店に現れ、午後二時まで四時間に
亘
(
わた
)
り
昼酒
(
ひるざけ
)
をやり、大いに
酩酊
(
めいてい
)
せり」
独本土上陸作戦:――金博士シリーズ・3――
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
彼の右隣の男は、今や十二分に
酩酊
(
めいてい
)
で、オイと
云
(
いっ
)
て
猪口
(
ちょく
)
をその芸妓に
献
(
さ
)
し、お前の名は何と云う、名札を呉れ名札をと、同じことを二つ重ねて問懸けた。
油地獄
(新字新仮名)
/
斎藤緑雨
(著)
開きけるに皆々
漸次
(
しだい
)
に
酩酊
(
めいてい
)
して前後を
失
(
うしな
)
ふ程に
五體
(
ごたい
)
俄
(
にはか
)
に
痿痺出
(
しびれだ
)
せしも只醉の廻りしと思ひて
正體
(
しやうたい
)
もなきに大膳等は
此體
(
このてい
)
を見て時分は
宜
(
よし
)
と風上より我家に火を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
大納言の官能は、したたか
酩酊
(
めいてい
)
に及びはじめた。ふらりふらりと天女に近づき、片手で天女の片手をとり、片手で天女の頬っぺたを
弾
(
はじ
)
きそうな様子であった。
紫大納言
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
私は混乱し、恐怖と
滑稽
(
こっけい
)
とをないまぜに感じつづけながら、
酩酊
(
めいてい
)
のあまり、いつのまにかそのまま眠ってしまっていた。気づいたのは翌日の昼ちかくである。
軍国歌謡集
(新字新仮名)
/
山川方夫
(著)
時にはひとしく
酩酊
(
めいてい
)
した
朋輩
(
ほうばい
)
を連れてきて部屋のなかでキャッキャッと動物のような声を立て、しまいには喧嘩をしたり泣き出したり、なかなか大変なのだが
如何なる星の下に
(新字新仮名)
/
高見順
(著)
ビールの後で飲んだバーガンディが大分利いたと見え、フンク氏の家を辞した時は、かなり
酩酊
(
めいてい
)
していた。
光と風と夢
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
骨牌
(
かるた
)
と
酩酊
(
めいてい
)
とのために狂ったように興奮して、私がまさにいつも以上の
不埒
(
ふらち
)
な言葉を吐いて乾杯を
強
(
し
)
いようとしていたちょうどこのとき、とつぜん自分の注意は
ウィリアム・ウィルスン
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
呂律も廻らぬほど
酩酊
(
めいてい
)
し、彼の腕を掴んで、というより腕にぶら下るようにして、しょぼしょぼの眼を細め、さあ、今夜は大いに飲もう、と彦太郎をぐんぐん引き摺り
糞尿譚
(新字新仮名)
/
火野葦平
(著)
「どうも失礼……今日は二人で山遊びに出掛けて……
酩酊
(
めいてい
)
……奥さん、申訳がありません……」
岩石の間
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
そこへ持って来て、左大臣が好意を示すようになってからは、その感激のせいでつい酒を
過
(
すご
)
し、
酩酊
(
めいてい
)
してから床に這入るので、なおさらしつッこく手足に
絡
(
から
)
み着くようにする。
少将滋幹の母
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
「隠居のところで、御馳走になって、久しぶりで
酩酊
(
めいてい
)
の有様、少し休ませてもらおうかな」
大菩薩峠:21 無明の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
酩酊
(
めいてい
)
せる笑い
上戸
(
じょうご
)
の猛獣共、毒蛇の蛇踊り、その間をねり歩く美女の蓮台、そして、蓮台の上には、
錦
(
にしき
)
の
衣
(
きぬ
)
に包まれたこの国々の王様、人見廣介の物狂わしき笑い顔があるのです。
パノラマ島綺譚
(新字新仮名)
/
江戸川乱歩
(著)
ぼくは自己批判も
糞
(
くそ
)
もなく、
甘
(
あま
)
くて下手な歌や詩を作り、
酩酊
(
めいてい
)
している時が多かった。
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
早い話が僕の家は両隣りが会社員だ。片一方はビールを
醸造
(
じょうぞう
)
して
同胞
(
どうほう
)
を
酩酊
(
めいてい
)
させるけれど、もう一方は飲み過ぎて
脳溢血
(
のういっけつ
)
を起しても損の行かないように、生命保険を引受けてくれる。
親鳥子鳥
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
音楽の魅力は
酩酊
(
めいてい
)
であり、陶酔であり、感傷である。それは人の心を感激の高所に導き、熱風のように狂乱させる。
或
(
あるい
)
は涙もろくなり、情緒に
溺
(
おぼ
)
れ、哀切耐えがたくなって、
嗚咽
(
おえつ
)
する。
詩の原理
(新字新仮名)
/
萩原朔太郎
(著)
……君があの烈しい恋の
酩酊
(
めいてい
)
から醒めたからって、……別に俺が君に対して何を云うことが出来よう?……かしこ過ぎて、ここ
現実
(
おつつ
)
の園に戻り
来
(
きた
)
れば、何事もみなはかなき
一炊
(
いっすい
)
の夢だ。
なよたけ
(新字新仮名)
/
加藤道夫
(著)
ミコライが、手前どもへはいって参りました。しらふでもござりませんが、大して
酩酊
(
めいてい
)
してもおりませず、話はわかるのでござります。
床几
(
しょうぎ
)
に腰をおろしたまま、黙り込んでおります。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
ビイルを、がぶ、がぶ、飲みました。もともと博士は、お酒には、あまり強いほうでは、ございません。たちまち
酩酊
(
めいてい
)
いたしました。
辻占売
(
つじうらうり
)
の女の子が、ビヤホールにはいって来ました。
愛と美について
(新字新仮名)
/
太宰治
(著)
彼は、先刻から酒席の間を、
彼方此方
(
あっちこっち
)
と廻って、酒宴の興を取持っていたが、
漸
(
ようや
)
く
酩酊
(
めいてい
)
したらしい顔に満面の微笑を
湛
(
たた
)
えながら、藤十郎の前に改めて
畏
(
かしこ
)
まると、恐る恐る
酒盃
(
さかずき
)
を前に出した。
藤十郎の恋
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
南洲は
素
(
も
)
と
飮
(
いん
)
を
解
(
かい
)
せず、
強
(
し
)
ひて之を
盡
(
つく
)
す、
忽
(
たちま
)
ち
酩酊
(
めいてい
)
して
嘔吐
(
おうど
)
席
(
せき
)
を
汚
(
けが
)
す。東湖は南洲の
朴率
(
ぼくそつ
)
にして
飾
(
かざ
)
るところなきを見て
酷
(
はなは
)
だ之を
愛
(
あい
)
す。嘗て曰ふ、他日我が志を
繼
(
つ
)
ぐ者は獨此の少年子のみと。
南洲手抄言志録:03 南洲手抄言志録
(旧字旧仮名)
/
秋月種樹
、
佐藤一斎
(著)
見受ける処がよほど
酩酊
(
めいてい
)
のようじゃが内には女房も待っちょるだろうから早う帰ってはどじゃろうかい。有り難うございます。………世の中に何が有難いッてお廻りさん位有難い者はないよ。
煩悶
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
「貴方、酔ってるのね、泊って行くといいわ……」田部は泊って行くといいと云われて、ふっと火箸を持った手を離した。ひどく
酩酊
(
めいてい
)
したかっこうで、田部はよろめきながら厠へ立って行った。
晩菊
(新字新仮名)
/
林芙美子
(著)
「どうです。隊長! 金丸、いかい
酩酊
(
めいてい
)
いたしました。踊りますぞ」
流行暗殺節
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
已
(
やむ
)
を得ずこれも腰の物を抜いて立向ったが、相手は平生から極めて評判のわるい乱暴ものだけあって、
酩酊
(
めいてい
)
しているにも
拘
(
かか
)
わらず、強かった。黙っていれば兄の方が負ける。そこで
弟
(
おとうと
)
も刀を抜いた。
それから
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
吃驚
(
びっくり
)
して文三がフッと
貌
(
かお
)
を振揚げて見ると、
手摺
(
てず
)
れて
垢光
(
あかびか
)
りに光ッた洋服、しかも二三カ所
手痍
(
てきず
)
を負うた奴を着た壮年の男が、余程
酩酊
(
めいてい
)
していると見えて、鼻持のならぬ程の
熟柿
(
じゅくし
)
臭い
香
(
におい
)
をさせながら
浮雲
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
「昨夜、
酩酊
(
めいてい
)
した友達どもが、
悪戯
(
いたずら
)
半分に、当家の窓口から、
抛
(
ほう
)
り込んだ品があるはず、じつは、拙者の品でござる。それを、
頂戴
(
ちょうだい
)
に参ったのだが」
松のや露八
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
大「いや/\まだ
酩酊
(
めいてい
)
という程飲みやアせん、貴様は国にも余り
親戚
(
みより
)
頼りのないという事を聞いたが、全く左様かえ」
菊模様皿山奇談
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
およそ
酩酊
(
めいてい
)
には、黒い幻覚と白い幻覚とがある。葡萄酒は白い幻覚である。グランテールは勇敢な夢食家であった。
レ・ミゼラブル:07 第四部 叙情詩と叙事詩 プリューメ街の恋歌とサン・ドゥニ街の戦歌
(新字新仮名)
/
ヴィクトル・ユゴー
(著)
彼らはたちまちのうちに、言論の
酩酊
(
めいてい
)
から落胆へ落ち込んでいた。彼らは非常に大きな幻影をいだいていた。しかしそれは何にも立脚していない幻影だった。
ジャン・クリストフ:11 第九巻 燃ゆる荊
(新字新仮名)
/
ロマン・ロラン
(著)
避
(
さけ
)
る程の大酒なり
然
(
され
)
ども喧嘩口論は勿論何程に
酩酊
(
めいてい
)
なすとも夢中に成て
倒
(
たふ
)
れ或ひは家業を
怠惰
(
おこたり
)
しと云事なく只酒を飮を
樂
(
たのし
)
みとして
稼
(
かせぎ
)
兄を助ける故人々
心隔
(
こゝろおき
)
なく半四郎を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
自己
欺瞞
(
ぎまん
)
と
酩酊
(
めいてい
)
とに過ごそうとするのか?
呪
(
のろ
)
われた
卑怯者
(
ひきょうもの
)
め! その間を
汝
(
なんじ
)
の
惨
(
みじ
)
めな理性を
恃
(
たの
)
んで
自惚
(
うぬぼ
)
れ返っているつもりか?
傲慢
(
ごうまん
)
な身の
程
(
ほど
)
知らずめ!
噴嚏
(
くしゃみ
)
一つ
悟浄出世
(新字新仮名)
/
中島敦
(著)
自分の
恣意
(
しい
)
によってもう直ぐ一個の生命が絶たれることを思った時、宇治は戦慄に似た快感が胸にのぼって来るのを感じた。その快感も明かに一時的な
酩酊
(
めいてい
)
にたすけられている。
日の果て
(新字新仮名)
/
梅崎春生
(著)
二軒も
梯子
(
はしご
)
で飲み歩いて、無事に屋敷へ帰ったかもわからないような大
酩酊
(
めいてい
)
の人もいた。
夜明け前:02 第一部下
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
金円調達のため
瓜生野
(
うりゅうの
)
村に赴き、やがてその用事も済み、焼酎の
馳走
(
ちそう
)
に
酩酊
(
めいてい
)
して己の村へ帰る途中、光村が
狐
(
きつね
)
に誘われて
藪
(
やぶ
)
の中に入り、その挙動の怪しかりし
顛末
(
てんまつ
)
を記してあった。
おばけの正体
(新字新仮名)
/
井上円了
(著)
宗教は往々人を
酩酊
(
めいてい
)
させ官能と理性を
麻痺
(
まひ
)
させる点で酒に似ている。そうして、コーヒーの効果は官能を鋭敏にし
洞察
(
どうさつ
)
と認識を透明にする点でいくらか哲学に似ているとも考えられる。
コーヒー哲学序説
(新字新仮名)
/
寺田寅彦
(著)
それは立商売を始めてから四週日の金曜日の
宵
(
よい
)
だったが、坂の上の方から
折鞄
(
おりかばん
)
を小脇に抱えた紳士が、少しく
酩酊
(
めいてい
)
の気味でふらふらした足取で、こっちへ近づくのが何故か目に停った。
大脳手術
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
酩酊
(
めいてい
)
した連中はげらげら笑いながら、そのそばに立ち止まると、口から出まかせに
猥褻
(
わいせつ
)
な冗談を言い始めた。と、突然一人の若い紳士が、まるでお話にもならぬ
奇矯
(
ききょう
)
な問題を考えついた。
カラマゾフの兄弟:01 上
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
こういう
酩酊
(
めいてい
)
の
為方
(
しかた
)
も
好
(
い
)
いなあ、と思いかけていましたが、便所に立った
虎
(
とら
)
さんが帰って来て、「オイ表に出てみろよ、大変な
貼出
(
はりだ
)
しが出ているぜ、ハッハッハ」と
豪傑
(
ごうけつ
)
笑いをするので
オリンポスの果実
(新字新仮名)
/
田中英光
(著)
追いつめられてなるにしてもすでに夢に
酩酊
(
めいてい
)
しているか、いずれかであろうが、男子の多くが最後の瞬間まで生きたい才覚と苦闘する率が多いのに比べて覚悟を決した女子の多くが雑念なく
安吾史譚:01 天草四郎
(新字新仮名)
/
坂口安吾
(著)
実際、彼らがもし分別心を失うくらいにまで
酩酊
(
めいてい
)
していなかったなら、自分たちのいる場所の恐ろしさのために、よろめく足取りも麻痺してしまったに違いない。空気は冷たくて霧深かった。
ペスト王:寓意を含める物語
(新字新仮名)
/
エドガー・アラン・ポー
(著)
「いや、戸惑いはいたさぬ、御簾の間を所望で来た身じゃ、
酩酊
(
めいてい
)
はしたが待ち人が遅い——ああ酔った、酔った、こんな酔ったことは珍しい、生れて以来だ、まさに前後も知らぬ泥酔状態だわい」
大菩薩峠:40 山科の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
“酩酊”の意味
《名詞》
酩 酊(めいてい 酩、酊共に酔っ払った状態を意味する)
甚だしく酔っ払っている状態。
(出典:Wiktionary)
酩
漢検1級
部首:⾣
13画
酊
漢検1級
部首:⾣
9画
“酩酊”で始まる語句
酩酊者