トップ
>
贅
>
ぜい
ふりがな文庫
“
贅
(
ぜい
)” の例文
スヴィドリガイロフの身なりは軽快なしゃれた夏着で、特にシャツに
贅
(
ぜい
)
を見せていた。指には宝石入りの大きな指輪をはめている。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
私の捕物小説の主人公、銭形平次については、私はもう語りすぎるほど語り尽くした、今さら何を
贅
(
ぜい
)
することもあるはずはない。
随筆銭形平次:14 捕物帖談義
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
嫌
(
きら
)
った客に招かれた時なぞはほんの形式に
箸
(
はし
)
を取るのみであったから至ってお上品のように思われたけれども内実は食べ物に
贅
(
ぜい
)
を
春琴抄
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
と、
元締
(
もとじ
)
めというようなものが、自然とできて世話をやいたり、頭をはねたりカスリを取ったり、うまいことをして
贅
(
ぜい
)
をつくしたりする。
娘煙術師
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
露伴、幸田氏のものされたる、「いさなとり」を
繙
(
ひもと
)
けば、その壮観、目に親しく
睹
(
み
)
るがごとき詳細なる記述に接す、われ敢てここに
贅
(
ぜい
)
せず。
松浦あがた
(新字旧仮名)
/
蒲原有明
(著)
▼ もっと見る
その借家というのは親日富豪として聞えた有名な某米人が
贅
(
ぜい
)
を凝らして建てた和洋折衷の邸宅で、間数も二十幾つかあり広大な庭園も付き
ナリン殿下への回想
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
あの物さびたところが何とも言われません、
建前
(
たてまえ
)
にこうして渋いところを見せ、間取りには
贅
(
ぜい
)
を
凝
(
こ
)
らしておいて、茶室や袖垣のあんばいに
大菩薩峠:18 安房の国の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
「いや、こちらのことよ。食物は諸事ずんと
贅
(
ぜい
)
をつくしてな。なに程
高価
(
こうじき
)
なものとても苦しゅうない。充分に用意いたせよ」
旗本退屈男:07 第七話 仙台に現れた退屈男
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
いづれの題目といへども芭蕉または芭蕉派の俳句に比して蕪村の積極的なることは蕪村集を
繙
(
ひもと
)
く者誰かこれを知らざらん。一々ここに
贅
(
ぜい
)
せず。
俳人蕪村
(新字旧仮名)
/
正岡子規
(著)
折敷
(
おしき
)
には
乾肴
(
ほしざかな
)
、鶴くびの一壺には冷酒。あれこれの
贅
(
ぜい
)
はなくても陣中の小閑を楽しむには充分である。——まして
皎々
(
こうこう
)
一輪の月は頭上にある。
新書太閤記:05 第五分冊
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
昔の日本人は、他人に見える着物の表面を質素なものにし、見えない裏に
贅
(
ぜい
)
をつくす、というようなやり方を好んだ。
藤村の個性
(新字新仮名)
/
和辻哲郎
(著)
贅
(
ぜい
)
を
尽
(
つく
)
すので高価であり、手間がかかって少量よりできませぬ。何がな立派なものを作ろうと意識を働かせ技巧を凝らしますから、華麗なものとなります。
美の国と民芸
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
事は
五雑組
(
ござつそ
)
に
記
(
しる
)
して
枯骸
(
こがい
)
の
確論
(
かくろん
)
あれども、
釈氏
(
しやくし
)
を
詰
(
なじ
)
るに
似
(
に
)
たる
説
(
せつ
)
なればこゝに
贅
(
ぜい
)
せず。(○高僧伝に義存が㕝ありしかと覚しが、さのみはとて詳究せず。)
北越雪譜:06 北越雪譜二編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
むずかしい理窟なぞを考えたくありません。随って歴史的の古い玩具や、色々の新案を加えた
贅
(
ぜい
)
な玩具などは、私としてはさのみ懐しいものではありません。
我楽多玩具
(新字新仮名)
/
岡本綺堂
(著)
婚礼は極めて
豪奢
(
ごうしゃ
)
だったし、老中からも幾人か客が来たとのことである。甲斐や他の国老重職は、べつに招かれたが、その祝宴も
贅
(
ぜい
)
をつくしたものであった。
樅ノ木は残った:03 第三部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
此人
(
このひと
)
始
(
はじ
)
めは
大藏省
(
おほくらしやう
)
に
月俸
(
げつぽう
)
八
圓
(
ゑん
)
頂戴
(
ちようだい
)
して、
兀
(
はげ
)
ちよろけの
洋服
(
ようふく
)
に
毛繻子
(
けじゆす
)
の
洋傘
(
かうもり
)
さしかざし、
大雨
(
たいう
)
の
折
(
をり
)
にも
車
(
くるま
)
の
贅
(
ぜい
)
はやられぬ
身成
(
みなり
)
しを、一
念
(
ねん
)
發起
(
ほつき
)
して
帽子
(
ぼうし
)
も
靴
(
くつ
)
も
取
(
と
)
つて
捨
(
す
)
て
われから
(旧字旧仮名)
/
樋口一葉
(著)
この事は風俗画報『新撰名所図会』に『好古叢誌』の記事を転載して説いているから
茲
(
ここ
)
に
贅
(
ぜい
)
せない。
向嶋
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
と、それから、人造石の
樺
(
かば
)
と白との
迫持
(
せりもち
)
や
角柱
(
かくばしら
)
ばかし目だった、俗悪な無用の
贅
(
ぜい
)
を
凝
(
こ
)
らした大洋館があたりの均斉を突如と破って見えて来る。「や、あれはなんです」。
木曾川
(新字新仮名)
/
北原白秋
(著)
燧寸
(
マッチ
)
の箱のようなこんな家に居るにゃあ似合わねえが
過日
(
こねえだ
)
まで
贅
(
ぜい
)
をやってた
名残
(
なごり
)
を見せて、今の今まで締めてたのが無くなっている
背
(
うしろ
)
つきの
淋
(
さみ
)
しさが、
厭
(
いや
)
あに眼に
浸
(
し
)
みて
貧乏
(新字新仮名)
/
幸田露伴
(著)
色彩の対照以外に、明るい、軽やかな感じが一句に溢れていることは、
贅
(
ぜい
)
するまでもあるまい。
古句を観る
(新字新仮名)
/
柴田宵曲
(著)
蛍雪が姉娘のお千代を
世帯染
(
しょたいじ
)
みた主婦役にいためつけながら、妹のお絹に当世の
服装
(
みなり
)
の
贅
(
ぜい
)
を尽させ、芝の高台のフランスカトリックの女学校へ通わせてほくほくしているのも
食魔
(新字新仮名)
/
岡本かの子
(著)
寮の人々は食いものの
贅
(
ぜい
)
にも飽きた。明治の中年頃までは大川から隅田川では寒中に
白魚
(
しらうお
)
が
漁
(
と
)
れた。小さい伝馬舟に絹糸ですいた四つ手網を乗せて行って白魚を掬ったのである。
みやこ鳥
(新字新仮名)
/
佐藤垢石
(著)
金の額ぶちのように
背負
(
しょ
)
って、揚々として大得意の
体
(
てい
)
で、
紅閨
(
こうけい
)
のあとを一散歩、
贅
(
ぜい
)
を
遣
(
や
)
る黒外套が、悠然と、柳を眺め、池を
覗
(
のぞ
)
き、火の見を仰いで、
移香
(
うつりが
)
を
惜気
(
おしげ
)
なく、
酔
(
えい
)
ざましに
みさごの鮨
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
それからどちらかと云ふと、禅超の方が持物に
贅
(
ぜい
)
をつくしてゐる。最後に女色に
沈湎
(
ちんめん
)
するのも、やはり禅超の方が甚しい。津藤自身が、これをどちらが出家だか解らないと批評した。
孤独地獄
(新字旧仮名)
/
芥川竜之介
(著)
後見役
(
こうけんやく
)
には師匠筋の太夫、三味線
弾
(
ひ
)
きが
揃
(
そろ
)
って、
御簾
(
みす
)
が上るたびに
後幕
(
うしろまく
)
が代る、
見台
(
けんだい
)
には金紋が輝く、
湯呑
(
ゆのみ
)
が取りかわる。
着附
(
きつけ
)
にも
肩衣
(
かたぎぬ
)
にも
贅
(
ぜい
)
を尽して、一段ごとに
喝采
(
かっさい
)
を催促した。
竹本綾之助
(新字新仮名)
/
長谷川時雨
(著)
大きな真鍮の門には、
贅
(
ぜい
)
をつくして精巧に細工がしてあり、重々しく
蝶番
(
ちょうつがい
)
でひらき、高慢にも、この豪華をきわめた墓へは一般の人間の足などふみこませまいとしているようだった。
ウェストミンスター寺院
(新字新仮名)
/
ワシントン・アーヴィング
(著)
独得のネクタイに
贅
(
ぜい
)
を尽したりする連中、何よりもまず幸福に、愛想よく芸術的に生きることを心がける連中、良き作物は、ただ苦しい生活の圧迫のもとにのみ生まれるということも
トニオ・クレエゲル
(新字新仮名)
/
パウル・トーマス・マン
(著)
事跡は
屋代弘賢
(
やしろひろかた
)
の『道成寺考』等にほとんど集め尽くしたから今また
贅
(
ぜい
)
せず、ただ二つ三つ先輩のまだ気付かぬ事を述べんに、清姫という名余り古くもなき戯曲や道成寺の略物語等に
十二支考:04 蛇に関する民俗と伝説
(新字新仮名)
/
南方熊楠
(著)
花房の父の診療所は
大千住
(
おおせんじゅ
)
にあったが、小金井きみ子という女が「千住の家」というものを書いて、
委
(
くわ
)
しくこの家の事を叙述しているから、
loco
(
ロコ
)
citato
(
チタト
)
としてここには
贅
(
ぜい
)
せない。
カズイスチカ
(新字新仮名)
/
森鴎外
(著)
なかでも一番文句が多かつたのは指物に使ふ木で、あゝでもない、かうでもないと
贅
(
ぜい
)
を言つてゐたが、一度なぞは一日土蔵に入つてこつ/\やつてゐて、日の
暮
(
く
)
れ
方
(
がた
)
に
漸
(
やつ
)
と外へ這ひ出して来た。
茶話:02 大正五(一九一六)年
(新字旧仮名)
/
薄田泣菫
(著)
それはバスルーム付きの十六畳もあろうと思われる大きな
贅
(
ぜい
)
を尽した部屋でした。室の一隅には、大型のベッドが二台並んでいます。その一方に死んでいるのが、
紛
(
まご
)
う
方
(
かた
)
なき嫂の綾子なのでした。
赤耀館事件の真相
(新字新仮名)
/
海野十三
(著)
家具、室内装飾等、
贅
(
ぜい
)
を
尽
(
つく
)
したものであったことはもちろんだが、各室いたるところに、あらゆる角度に大鏡が置かれてあって、屈折を利用して思いがけない場所から
覗
(
のぞ
)
き見できるようになっていた。
戦雲を駆る女怪
(新字新仮名)
/
牧逸馬
(著)
唐木細工の
贅
(
ぜい
)
を尽し、庭園の結構目を驚かす。
明治世相百話
(新字新仮名)
/
山本笑月
(著)
驚くばかりの
贅
(
ぜい
)
が、こらされていた。
貞操問答
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
煙草だけは
贅
(
ぜい
)
を尽したから、落ぶれても
馬糞煙草
(
まぐそたばこ
)
は
喫
(
の
)
めねえ、——と言やがるんで、その口の下から女房も、うちの人は酒を飲まないから
銭形平次捕物控:055 路地の小判
(新字新仮名)
/
野村胡堂
(著)
いずれの題目といえども芭蕉または芭蕉派の俳句に比して蕪村の積極的なることは蕪村集を
繙
(
ひもと
)
く者誰かこれを知らざらん。一々ここに
贅
(
ぜい
)
せず。
俳人蕪村
(新字新仮名)
/
正岡子規
(著)
もちろん時代風紀は水戸にも
蝕
(
く
)
い入っていたが、からくもその
濁風
(
だくふう
)
にみじん染まない
若人
(
わこうど
)
のみは、老公をめぐって、無上の
絢爛
(
けんらん
)
、
贅
(
ぜい
)
たく、享楽
梅里先生行状記
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
事は
五雑組
(
ござつそ
)
に
記
(
しる
)
して
枯骸
(
こがい
)
の
確論
(
かくろん
)
あれども、
釈氏
(
しやくし
)
を
詰
(
なじ
)
るに
似
(
に
)
たる
説
(
せつ
)
なればこゝに
贅
(
ぜい
)
せず。(○高僧伝に義存が㕝ありしかと覚しが、さのみはとて詳究せず。)
北越雪譜:03 北越雪譜初編
(新字旧仮名)
/
鈴木牧之
、
山東京山
(著)
市街
(
まち
)
の中央に本城があったが、これぞこの国の領主の住居で、領主夫婦と家来とが、
贅
(
ぜい
)
を尽くして住んでいた。
蔦葛木曽棧
(新字新仮名)
/
国枝史郎
(著)
家のぐるりの花壇に植えてある香りの高い花に包まれた、
贅
(
ぜい
)
を尽くした立派な英国風の木造コッテージ。つたがからみついて、ばらの花壇をめぐらした玄関。
罪と罰
(新字新仮名)
/
フィヨードル・ミハイロヴィチ・ドストエフスキー
(著)
家具調度なぞも分限者らしい
贅
(
ぜい
)
をつくしているのに、居合わした会葬者は、先刻の恒藤夫人と、ことし六歳になるとかいった子どもをのぞいてはたった六人きりで
右門捕物帖:08 卍のいれずみ
(新字新仮名)
/
佐々木味津三
(著)
この経験については既に小説『冷笑』と『父の恩』との中に細叙してあるから、ここに
贅
(
ぜい
)
せない。
西瓜
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
「この道場と、牝犬のように淫奔なあの三人の女と、柿崎の
贅
(
ぜい
)
をつくした生活を支えるために、これ以上汗をかくのはおれはごめんだ、もうおれたちも考え直すときだと思う」
樅ノ木は残った:02 第二部
(新字新仮名)
/
山本周五郎
(著)
金に飽かせて
贅
(
ぜい
)
を凝らした大粒のダイヤであったから、これもまた両方合わせれば、おそらく四千万、五千万クローネ……あるいはそれ以上の値打ちのものであったかも知れぬ。
グリュックスブルグ王室異聞
(新字新仮名)
/
橘外男
(著)
荷
(
に
)
も
石瓦
(
いしがわら
)
、古新聞、
乃至
(
ないし
)
、
懐中
(
ふところ
)
は
空
(
から
)
っぽでも、一度目指した軒を潜って、座敷に足さえ
踏掛
(
ふんが
)
くれば、銚子を倒し、椀を替え、
比目魚
(
ひらめ
)
だ、鯛だ、と
贅
(
ぜい
)
を言って、
按摩
(
あんま
)
まで取って、ぐっすり寝て
浮舟
(新字新仮名)
/
泉鏡花
(著)
並居る婦人達の中にはあっさりとした
浴衣
(
ゆかた
)
がけの人もいましたけれど、指に宝石を光らしているとか、持ち物に
贅
(
ぜい
)
を凝らしているとか、何かしら彼等の富貴を物語るものが示されているのに
痴人の愛
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
概していいますと、江戸時代は仏教藝術の末期で、見るべきものが少く、仏具もその影響を受けて、いたずらに装飾を過ごしました。門徒宗のお
厨子
(
ずし
)
の如きは
贅
(
ぜい
)
を尽したものが作られました。
手仕事の日本
(新字新仮名)
/
柳宗悦
(著)
大道具小道具にも
贅
(
ぜい
)
を盡して、大野屋の大廣間の幕が開いた時は、集まる客の數は百人を超し、思はず歡聲をあげたのも無理のないことです。
銭形平次捕物控:315 毒矢
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
彼らには仏教の
垢
(
あか
)
も貴族臭い
贅
(
ぜい
)
も身に知ってはいないから、粗食に驚かなかったろうし、牛でも馬でも、食える物はなんでも食べたにちがいない。
随筆 新平家
(新字新仮名)
/
吉川英治
(著)
杉井の墓誌その他の事は本書の第二章に言って置いたから再び
贅
(
ぜい
)
せない。遺族は妻某氏、養子又三郎、その妻村田氏である。又三郎は下田奉行手附でこの年四十一歳である。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
贅
漢検1級
部首:⾙
18画
“贅”を含む語句
贅言
贅肉
贅物
贅沢三昧
贅六
贅沢物
贅沢家
贅沢
贅澤
贅沢品
贅美
贅沢屋
贅説
贅議
贅費
贅美濃厚
贅足
贅食
贅疣
贅餐
...