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いやし
ふりがな文庫
“
苟
(
いやし
)” の例文
これ必ずしも意外ならず、
苟
(
いやし
)
くも吾が宮の如く美きを、目あり心あるものの
誰
(
たれ
)
かは恋ひざらん。
独
(
ひと
)
り怪しとも怪きは隆三の
意
(
こころ
)
なる
哉
(
かな
)
。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
一方は赤裸々の心事を、赤裸々に発表すれども、他方は
苟
(
いやし
)
くも人に許さず、甚だ一笑
一顰
(
いっぴん
)
を
吝
(
おし
)
み、礼儀三千
威儀
(
いぎ
)
の中に、高く標置す。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
ソラ、医は仁術なりだろう、
苟
(
いやし
)
くも仁術を看板として、人道問題を耳にしながら、それを聞き流していられると思うか、しっかりしろ
大菩薩峠:26 めいろの巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
何故そんなら、隠れてやつて来て、また隠れて行くやうな、男らしくない真似を為るんだらう。
苟
(
いやし
)
くも君、堂々たる代議士の候補者だ。
破戒
(新字旧仮名)
/
島崎藤村
(著)
「それはいかん。そんな意気地のないことじゃ駄目だ。
苟
(
いやし
)
くも軍人たるものが、プル/\、軍服を
愧
(
は
)
じて何うする? プル/\」
母校復興
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
▼ もっと見る
苟
(
いやし
)
くも我国民の元気を養い、その独立精神を発達し、これを以てこれが
衝
(
しょう
)
に当るに非らざれば、帝国の独立、誠に期し難し(謹聴々々)。
祝東京専門学校之開校
(新字新仮名)
/
小野梓
(著)
もぐりの
流行神
(
はやりがみ
)
なら
知
(
し
)
らぬこと、
苟
(
いやし
)
くも
正
(
ただ
)
しい
神
(
かみ
)
として
斯
(
こ
)
んな
祈願
(
きがん
)
に
耳
(
みみ
)
を
傾
(
かたむ
)
けるものは
絶対
(
ぜったい
)
に
無
(
な
)
いと
思
(
おも
)
えば
宜
(
よろ
)
しいかと
存
(
ぞん
)
じます。
小桜姫物語:03 小桜姫物語
(新字新仮名)
/
浅野和三郎
(著)
愛想
(
あいそ
)
の
尽
(
つ
)
きた
獣
(
けだもの
)
だな、
汝
(
おのれ
)
、
苟
(
いやし
)
くも諸生を教へる松川の妹でありながら、十二にもなつて何の事だ、
何
(
ど
)
うしたらまたそんなに学校が
嫌
(
いや
)
なのだ。
妖怪年代記
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
(著)
この六疊は
苟
(
いやし
)
くも佐多田無道軒の
城廓
(
じやうくわく
)
だ、中が見たかつたら、寺社の御係りを呼んで來い。町方の
不淨
(
ふじやう
)
役人などが入ると、唯は置かないぞツ
銭形平次捕物控:290 影法師
(旧字旧仮名)
/
野村胡堂
(著)
告白文学などゝいふ字は一体誰が言ひ始めたのか知らないが、
苟
(
いやし
)
くも芸術であつてそして告白と言ふことがあるであらうか。
批評的精神を難ず
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
然れども
苟
(
いやし
)
くも円満なる終極の天地を
念々
(
ねん/\
)
して吾人の理想となし得る限りは、「平和」の
揺籠
(
ゆりかご
)
遂に再び吾人を閑眠せしむる事ある可きを信ず。
「平和」発行之辞
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
苟
(
いやし
)
くも法律の執行官たるものが、こんな無責任なだらしのない事でどうする……と自分で自分の心を睨み付けながらそろそろと歩度を緩めた。
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
成「なに……これは怪しからん事を云う、失敬な……車夫とは何んだ、
苟
(
いやし
)
くも官職を帯びて
居
(
お
)
る者を……大方人違いだろう」
霧陰伊香保湯煙
(新字新仮名)
/
三遊亭円朝
(著)
何となれば、この意義における憲法は、
苟
(
いやし
)
くも国家の在るところには必ず存在するものであって、時の古今、国の東西を分かたないからである。
憲政の本義を説いてその有終の美を済すの途を論ず
(新字新仮名)
/
吉野作造
(著)
若し医家の用語を借りれば、
苟
(
いやし
)
くも文芸を講ずるには臨床的でなければならぬ
筈
(
はず
)
である。しかも彼等は
未
(
いま
)
だ
嘗
(
かつ
)
て人生の
脈搏
(
みゃくはく
)
に触れたことはない。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
苟
(
いやし
)
くも田舎を取材にするなら、小作人の立場になって、階級意識の上に書かれた芸術でないかぎりは、所詮、ブルジョア文学たることを免れない如く
街を行くまゝに感ず
(新字新仮名)
/
小川未明
(著)
苟
(
いやし
)
くも、本当に小説家になろうとする者は、
須
(
すべから
)
く
隠忍自重
(
いんにんじちょう
)
して、よく頭を養い、よく眼をこやし、満を持して放たないという覚悟がなければならない。
小説家たらんとする青年に与う
(新字新仮名)
/
菊池寛
(著)
恒産なくして恒心あるは、
惟
(
ただ
)
士のみ
能
(
よ
)
くするを
為
(
な
)
す。民の
若
(
ごと
)
きは
則
(
すなわ
)
ち恒産なくんば因って恒心なし。
苟
(
いやし
)
くも恒心なくんば、
放辟
(
ほうへき
)
邪侈
(
じゃし
)
、
為
(
な
)
さざるところなし。
貧乏物語
(新字新仮名)
/
河上肇
(著)
小説「
黒潮
(
こくちょう
)
」の
巻頭辞
(
かんとうじ
)
を見て、
苟
(
いやし
)
くも兄たる者に対して、甚
無礼
(
ぶれい
)
と
詰問
(
きつもん
)
の手紙をよこした。君自身兄であった。
みみずのたはこと
(新字新仮名)
/
徳冨健次郎
、
徳冨蘆花
(著)
雑録でも短篇でも小説でも
乃至
(
ないし
)
は俳句漢詩和歌でも、
苟
(
いやし
)
くも元日の紙上にあらわれる以上は、いくら元日らしい顔をしたって、元日の作でないに
極
(
きま
)
っている。
元日
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
又飜つて小説を見るに、
苟
(
いやし
)
くも小説の名を下し得べき小説は
如何
(
いか
)
なるものと雖も、
悉
(
こと/″\
)
く人物の意思と気質とに出づる行為、及び其結果より成立せざるはなし。
罪過論
(新字旧仮名)
/
石橋忍月
(著)
唐宋諸賢ノ集中往往ニシテ
粗笨
(
そほん
)
冗長ナルガ如キ者アリトイヘドモ、ソノ実ハ句鍛ヘ字錬リ一語モ
苟
(
いやし
)
クセズ。故ニ長篇ニ至ツテハ
則
(
すなわち
)
北征南山長恨
琵琶
(
びわ
)
ノ数首ノミ。
下谷叢話
(新字新仮名)
/
永井荷風
(著)
それには
苟
(
いやし
)
くも想像力にうぶな、原始的な性能を
賦
(
ふ
)
し、新しい活動の強みを与えるような偶然の機会があったら、それを善用しなくてはならないと云うのである。
田舎
(新字新仮名)
/
マルセル・プレヴォー
(著)
謬妄哲理の彼等が歸納説に及ばざるは、その謬妄なるためにて、
苟
(
いやし
)
くも近世の哲學統といはれむ程のものは、ダルヰン、ハツクスレエが説をも容れざるべからず。
柵草紙の山房論文
(旧字旧仮名)
/
森鴎外
(著)
僕の主義は僕が社會に
懇々
(
こん/\
)
主張したくらゐで、
苟
(
いやし
)
くも自分が努力してゐると思つたことなら、そこに必らず實行が添つてゐる。成功、不成功は問ふところでない。
泡鳴五部作:05 憑き物
(旧字旧仮名)
/
岩野泡鳴
(著)
然し何うも、郡視学も郡視学ではありませんか? ××さんにそんな莫迦な事のあらう筈のない事は、
苟
(
いやし
)
くも
瘋癲
(
ばか
)
か
白痴
(
きちがひ
)
でない限り、
何人
(
なにびと
)
の目も一致するところです。
道
(新字旧仮名)
/
石川啄木
(著)
苟
(
いやし
)
くも敵の総大将の胴に
篏
(
は
)
まっているものである点、斯くの如く優美で、繊細で、気品に充ちている点などは、年齢が多少
老
(
ふ
)
けていると云う短所を補って
餘
(
あま
)
りがある。
武州公秘話:01 武州公秘話
(新字新仮名)
/
谷崎潤一郎
(著)
けれども、
苟
(
いやし
)
くも外国文を翻訳しようとするからには、必ずやその文調をも移さねばならぬと、これが自分が翻訳をするについて、先ず形の上の標準とした一つであった。
余が翻訳の標準
(新字新仮名)
/
二葉亭四迷
(著)
若しその青年が
苟
(
いやし
)
くも男であるなら、あなたの家系などは、爪の
垢
(
あか
)
ほども氣にかけないでせう。ロウズさん、わしは請合つて言ふが、彼が愛してゐるのはあなたその人ぢや。
水車のある教会
(旧字旧仮名)
/
オー・ヘンリー
(著)
併し此
瑣事
(
さじ
)
が僕の心の安寧と均衡とを奪ふのである。
苟
(
いやし
)
くも威厳を保つて行かうとする人間の棄て難い安寧と均衡とが奪はれるのである。
頃日
(
このごろ
)
僕は一人の卑しい男に
邂逅
(
かいこう
)
した。
フロルスと賊と
(新字旧仮名)
/
ミカイル・アレクセーヴィチ・クスミン
(著)
苟
(
いやし
)
くも狂愚にあらざる以上、何人も永遠・無窮に生きたいとは言わぬ、而も死ぬなら天寿を全くして死にたいというのが、万人の望みであろう、一応は無理ならぬことである。
死生
(新字新仮名)
/
幸徳秋水
(著)
苟
(
いやし
)
くも野球趣味を解する者は尽く刮目して、帰来慶応に対し、如何に巧妙なる策戦を為すであらうと、丗八年秋を期して決行せらる可き、三回競技の一日も早からん事を待ち望んだ。
野球界奇怪事 早慶紛争回顧録
(新字旧仮名)
/
吉岡信敬
(著)
がそれでも上に媚びて給料の一円もあげて貰いたいと
女々
(
めめ
)
しく勝手口から泣き込んで歎願に及んだ事は一度も無く、そんな事は
苟
(
いやし
)
くも男子のする事では無いと一度も落胆はしなかった。
牧野富太郎自叙伝:01 第一部 牧野富太郎自叙伝
(新字新仮名)
/
牧野富太郎
(著)
蔑
(
ないが
)
しろに致す
仕方
(
しかた
)
不屆至極
(
ふとゞきしごく
)
なりと
叱
(
しか
)
り玉へば越前守には少しも恐るゝ色なく全く越前自己の
了簡
(
れうけん
)
を立んとて御重役を
蔑
(
ないが
)
しろに致すべきや此吟味の儀は御法に
背
(
そむ
)
き候とは
苟
(
いやし
)
くも越前御役を
大岡政談
(旧字旧仮名)
/
作者不詳
(著)
彼は
苟
(
いやし
)
くも深井と自分とを対等に置いて考えることを恥辱だと考えた。
地上:地に潜むもの
(新字新仮名)
/
島田清次郎
(著)
およそいかなる物でも物として
表裏
(
ひょうり
)
なきものはあるまい。いかに
薄
(
うす
)
き平面にても
苟
(
いやし
)
くも実物である以上は必ず表と裏とがある。表裏なき表面は、ただ
幾何学
(
きかがく
)
上に現れた理想的の形たるにとどまる。
自警録
(新字新仮名)
/
新渡戸稲造
(著)
苟
(
いやし
)
くも国家のために犠牲を払はれた同胞の一人に対して、そんな待遇はできません。さあ、どうか……。それとも、おからだに、どこか御不自由なところがおありですか。靴をお脱がせしませうか。
運を主義にまかす男
(新字旧仮名)
/
岸田国士
(著)
大体イギリスは伝統を重んじ、格式を
矢釜
(
やかま
)
しくいう国でして、服装なぞ非常にうるさいのです。
苟
(
いやし
)
くも紳士淑女たるものは午前と午後と夕方と夜と、一日に四回着る着物がちゃんと決っているのです。
お蝶夫人
(新字新仮名)
/
三浦環
(著)
たとえ悪魔ではあり、
夜叉
(
やしゃ
)
ではあろうとも、
苟
(
いやし
)
くも人間の形をしている以上は、人間の権威のために、これを見殺しにはできまい。
大菩薩峠:37 恐山の巻
(新字新仮名)
/
中里介山
(著)
世襲制においては、養子は実に欠くべからざるものなり、
苟
(
いやし
)
くも相続者なくんば、家名断絶、遺族離散の恐れなくんばあらず。
吉田松陰
(新字新仮名)
/
徳富蘇峰
(著)
故に
苟
(
いやし
)
くも粋を立抜かんとせば、文里が
靡
(
なび
)
かぬ者を遂に靡かす迄に心を
隠
(
ひそ
)
かに用ひて、而して靡きたる後に身を引くを以て最好の粋想とすべし。
粋を論じて「伽羅枕」に及ぶ
(新字旧仮名)
/
北村透谷
(著)
勿論
(
もちろん
)
その人はその人自身
烈
(
はげ
)
しい性欲を持っている余り、
苟
(
いやし
)
くもちゃんと知っている以上、行わずにすませられる
筈
(
はず
)
はないと確信している為であろう。
侏儒の言葉
(新字新仮名)
/
芥川竜之介
(著)
苟
(
いやし
)
くもその緩と急とを
択
(
えら
)
ばず、その順序を失するあらば、一身の細事
猶
(
な
)
お且つ挙らず、況んや天下大事の一たる子弟教育の事に於てをや(謹聴々々)。
祝東京専門学校之開校
(新字新仮名)
/
小野梓
(著)
唯それだけの事に失望して了つて、その失望の為に、
苟
(
いやし
)
くも男と生れた一生を
抛
(
なげう
)
たうと云ふのだ。人たるの
効
(
かひ
)
は
何処
(
どこ
)
に在る、人たる道はどうしたのか。
金色夜叉
(新字旧仮名)
/
尾崎紅葉
(著)
かういふ捉へられた頭で、また何事をも知らない頭で、
苟
(
いやし
)
くも芸術の批評をしやうとするのは、あらゆる文学史を無視したものと言はなければならない。
エンジンの響
(新字旧仮名)
/
田山花袋
、
田山録弥
(著)
「私、橋本さんの方からお断りして戴くのなら、厭でございますわ。
苟
(
いやし
)
くも断られた
方
(
かた
)
なんか相手に致しません」
求婚三銃士
(新字新仮名)
/
佐々木邦
(著)
畠
(
はたけ
)
のもの、
畔
(
あぜ
)
に立つ
榛
(
はん
)
の木、
蛙
(
かえる
)
の声、鳥の音、
苟
(
いやし
)
くも彼の郷土に存在する自然なら、一点一画の微に至る迄
悉
(
ことごと
)
く其地方の特色を
具
(
そな
)
えて叙述の筆に上っている。
『土』に就て:長塚節著『土』序
(新字新仮名)
/
夏目漱石
(著)
私は近い
中
(
うち
)
にこの第六感が活躍する実例を種類別にして、纏めて、「第六感」と題する書物にして出版するつもりだから、
苟
(
いやし
)
くも探偵事件に興味を持つ人々は
暗黒公使
(新字新仮名)
/
夢野久作
(著)
手の裏を
反
(
かえ
)
すようなものです……
苟
(
いやし
)
くも自己の利益に成るような事なら、何でも
行
(
や
)
ります……自分が手柄をした時に、そいつを誇ること、
他
(
ひと
)
の功名を
嫉
(
ねた
)
むこと
家:02 (下)
(新字新仮名)
/
島崎藤村
(著)
苟
(
いやし
)
くも
未来
(
みらい
)
の
有無
(
うむ
)
を
賭博
(
かけもの
)
にするのである。
相撲取草
(
すまうとりぐさ
)
の
首
(
くび
)
つ
引
(
ぴき
)
なぞでは
其
(
そ
)
の
神聖
(
しんせい
)
を
損
(
そこな
)
ふこと
夥
(
おびたゞ
)
しい。
聞
(
き
)
けば
此
(
こ
)
の
山奥
(
やまおく
)
に
天然
(
てんねん
)
の
双六盤
(
すごろくばん
)
がある。
其
(
そ
)
の
仙境
(
せんきやう
)
で
局
(
きよく
)
を
囲
(
かこ
)
まう。
神鑿
(新字旧仮名)
/
泉鏡花
、
泉鏡太郎
(著)
苟
漢検1級
部首:⾋
8画
“苟”を含む語句
苟且
苟合
苟安
蠅営狗苟
事苟
章苟
苟且偸安
苟守的
苟安自適
苟簡
阿諛苟合